モノクロのノスタルジー

  • 2017.01.31 Tuesday
  • 14:57

JUGEMテーマ:写真

 

 

 

 

 

まだモノクロ中毒にかかっています。

楽な気持ちで撮れるから楽しいんですよ。

 

 

 

 

 

 

 

モノクロだとどんな景色でも昭和っぽく見えます。

カラーが当たり前になってるから、モノクロ=古いって観念があるのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

ここはかつて城下町だったので、昔ながらの風情があります。

だけど近代的なビル群を撮っても、モノクロだと昔の光景のように見えるんです。

ノスタルジック。

モノクロの持つ特別な力だと思います。

 

ダナエの神話〜星になった神様〜 第四十三話 ダレスの野望(1)

  • 2017.01.31 Tuesday
  • 14:53

JUGEMテーマ:自作小説

カルカロ大陸は、三つの大陸で一番小さな大陸だった。
ここにはかつて大きな国が二つあり、大陸を二分していた。
しかし戦争が起こり、どちらも滅びた。
その結果、ギャングや盗賊が溢れるようになってしまった。
国を失った家臣や民が、好き勝手に暴れ始めたのだ。
暴力、詐欺、盗み、殺し、人身売買。
中には魔物を売り買いするギャングまでいて、治安はますます悪くなった。
誰もが敬遠するような場所だが、一人だけこの大陸に目を付けた者がいた。
それがダレスだった。
カルカロ大陸の西側には豊かな自然が残っている。
国のあった中央と東側は荒れているが、西側にはほぼ手つかずの自然がある。
ここに目をつけ、観光地として開発しようとしたのだ。
カルカロの大陸のギャングは当然のように嫌がらせをしてきた。
開発を邪魔したり、従業員を脅したり。
しかしダレスは金で解決した。
ここに観光地を立てる代わりに、場所代として百億チョリスも払ったのだ。
そして有力なギャングを用心棒として雇った。
もし他のギャングや盗賊が手を出してきたら、それを追い払ってほしいと。
その為のボディガード代もかなりのもので、ダレスに話をもちかけられたギャングは喜んで引き受けた。
ダレスはカルカロ大陸のギャングと手を組み、更なる開発に乗り出した。
今度は大型のリゾートホテルを建てようとしたのだ。
豊かな自然と、高級リゾートホテル。
それを目玉にして、世界中から金持ちを集めるつもりだった。
ダレスはカルカロ大陸の支社から、建設中のホテルを眺める。
完成すれば地上二百階建ての巨大なホテルで、もう三分の二まで出来上がっている。
窓の傍でそれを見つめながら、プカリと葉巻を吹かした。
「すごい大きさね。完成が楽しみだわ。」
ダレスの後ろから女の声がする。
とても冷徹で、なんの感情さえも感じさせない声だった。
「この星も地球と同じようになる。経済が発達し、文明もそれに伴う。
あんたはこの星の王様になるわ。」
「ありがたいね。そうなりゃ次は新しい星を見つけ、それを開拓する。
俺の商売はどんどん広がるってわけだ。」
そう言って後ろを振り向き、女を見つめた。
「邪神・・・まさかお前の方から声を掛けてくるとはな。」
そう言って彼女の向かいに座った。
「俺のオフィスにお前が現れた時はビビったぜ。
何もない所から、いきなりヌっと出て来るんだからよ。」
モクモクと葉巻を吹かし、ブランデーを注ぐ。
「飲むか?」
「頂くわ。」
二人はグラスを掲げ、小さく乾杯をする。
「お前が目の前に現れた時、俺は死を覚悟したよ。
これから超人部隊を完成させ、お前を殺そうとしてたのに、それがパアになると。」
「ふふふ・・・あの時のあんたの顔、見物だったわ。
目を見開いて、血の気が引いて、顎が震えていたわね。」
「情けねえ面だったろうな。部下には絶対に見せられねえ。」
ブランデーを舐め、「しかし・・・」と続ける。
「まさか商売の話を持ち掛けてくるとは思わなかった。」
「私もまたあんたと組むことになるとは思わなかったわ。」
「リーバー・・・あいつの作り方を教えてくれるってんだ。乗らねえわけがねえよ。」
ニヤリと笑い、「すでに量産化に取り掛かってる」と頷いた。
「超人部隊にリーバー。こいつらを量産出来れば、もう敵はいねえ。
地球の悪魔だろうが何だろうがな。」
「その敵の中には私も含まれてたはずよ。それも一番の敵として。」
邪神はグラスを呷り、一息で飲み干す。
「あんたは私を殺そうとしていた。でもこうしてまた手を組んだ。その理由は何?」
「簡単なことだ。」
ダレスは邪神のグラスに酒を注ぐ。
顔を近づけ、獰猛な目で睨んだ。
「俺はお前をぶっ殺してやりたい。今でもそう思ってる。」
「正直ね。」
邪神は肩を竦める。
「だが俺は商人だ。復讐より儲け話を取る。それだけのことだ。」
「あんたのそういうところ、嫌いじゃないわ。」
注がれた酒に口を付け、ニコリと微笑む。
「お互いに欲を貪る者だもの。通じ合うところはあるわよね。」
「お前と通じ合うか。ゾッとしねえな。」
「ふふふ・・・。」
邪神は不敵に笑う。そして「例の彼らはどう?」と尋ねた。
「超人部隊の量産化、上手くいきそう?」
「ああ。」
ダレスは頷き、窓の外を睨んだ。
「この大陸へ逃げてきたシウンの仲間ども。
あいつらを捕まえたからな。今は学者どもに預けて研究させてる。
量産化は時間の問題だ。」
「それはよかったわ。」
「奴らは予想以上の強さだった。リーバーがあっても危うく殺されそうになったからな。
お前が手伝ってくれなきゃ、俺はここにはいなかっただろうぜ。」
ダレスはシャツのボタンを外し、大きな火傷を見せた。
「よかったじゃない。強い兵隊を作ることが出来て。」
「まあな。しかし残念なこともあった。」
「何?」
「お前には手も足も出なかったことだ。
あの灼熱の超人どもをあっさり倒すなんて・・・・正直寒気を覚えた。」
「いくら強いって言っても、しょせんは兵隊に過ぎないわ。私の敵にはならない。」
「もし超人部隊を完成させても、結局お前には勝てなかったわけか。」
「悔しい?」
「ああ、はらわたが煮えくり返るほどな。
しかしこうして儲け話を持って来てくれた。
リーバーの量産化、そして・・・他にも失われた古代兵器があるんだろ?」
そう尋ねると、邪神はクスクスと笑った。
「古代の大砲、そして大型の戦艦。どっちもリーバーを凌ぐ強力な兵器よ。
でも今は渡せない。」
「分かってる。俺らは仲間ってわけじゃねえ。
俺がお前の役に立つかどうか、それを見極めてからだろ?」
「ええ。」
邪神は頷き、グラスの酒を飲み干す。
ダレスが注ごうとすると、「もういいわ」と首を振った。
「今から出掛けなきゃいけなくて。」
「なら送るぜ。どこへ行くんだ?」
「いえ、私一人でいいわ。」
「そうかい。ならこっちはこっちの仕事をするだけだ。」
ダレスは立ち上がり、窓の傍に行く。
そこからは建設中のホテル、そしてその脇に停まる巨大な船が見えた。
「箱舟二号。あのオテンバどもは、必ずアレを取り戻しに来るはずだ。」
「正確には中に捕えられた仲間たちよ。」
「ドリューとカプネ、良い人質だ。」
ダレスは振り返り、「ここで奴らを足止めすればいいんだろ?」と尋ねた。
「ええ。奴らは武神の第三の試練の為に、この大陸にやって来るわ。
でもきっと仲間を先に助けようとするはず。
そこで足止めをしてちょうだい。
私はその間に試練の場に向かい、罠を張るわ。奴らを殺す為に。」
邪神の顔が悪魔のように歪む。
ダレスは寒気を覚え、すぐに目を逸らした。
「なんなら俺がここでぶっ殺してやるが?」
「無理よ。あんたじゃ奴らに勝てない。」
「しかしこっちにはリーバーがある。それに人質もいるし・・・・、」
「その程度でどうにかなる連中なら、今までに何度も煮え湯を飲まされてないわ。」
「・・・・そうだな。」
「余計な思い上がりは身を亡ぼす。あんたは奴らに勝とうなんて思わなくていい。
ただ時間を稼いでくれればそれでいいの。」
「ああ。」
「もしヘマをしたら・・・・どうなるか分かってるわね?」
「ちょっと前までお前の元で働いてたんだ。
ヘマを踏んだ奴がどうなるかくらい分かってる。」
「よろしい。」
邪神は頷き、ダレスの脇を通り抜けて行く。
「なあ。」
「なに?」
「もしお前が銀河の支配者になったら、その時は・・・・、」
「分かってるわ。この星と地球をあんたにあげる。」
「間違いないな?」
「くどいわね。何度も言ったはずよ?」
「くどくなきゃ金貸しなんて出来ねえのさ。」
「私はあんたの顧客じゃない。雇う側だってこと・・・忘れないようにね。」
顔を近づけ、冷徹な目で見つめる。
ダレスはまた寒気を覚え、ドアの外に手を向けた。
「それじゃよろしく頼むわよ。」
そう言い残し、邪神は去って行く。
彼女の背中を見送りながら、ダレスは小さく舌打ちをした。
「今のうちにせいぜい調子に乗っとけ。」
部屋に戻り、大きな椅子に腰かける。
「邪神め、やっぱり気に食わねえ奴だ。だが最後に笑うのはこの俺だぜ。」
葉巻を咥え、天井に向かって煙を吐く。
するとそこへ巻貝の妖怪がやって来た。
スーツに白衣を着ていて、大きな眼鏡をかけている。
ダレスは目を向け、「終わったか?」と尋ねる。
「はい。奴らの身体を隅々まで調べました。実験も少々。」
「で、どうだった?」
「量産化はじゅうぶん可能です。」
「そりゃよかった。今日一番うれしい言葉だぜ。」
そう言って巻貝の獣人の肩を叩いた。
「しかし・・・・、」
「なんだ?何か問題があるのか?」
「人工的に超人を生み出した場合、その性能は落ちてしまいます。」
「性能が落ちる?」
「ええ。シウンの仲間はほぼ完璧な超人です。
それは自ら戦いに挑み、死線を潜り抜けてきた結果だと思われます。」
「死線・・・・。」
「普通の者では鎧の力に耐えかね、完璧な超人にはなれません。
生きたいと願う強い意志がなければ、鎧の力に負けてしまうからです。
だから量産化をする場合は、鎧の力を落とすしか方法はありません。」
「それはダメだ。せっかくあそこまで強い超人が出来たんだ。
何としても同じレベルで量産しろ。」
「そう言われましても・・・・、」
巻貝の獣人はクイっと眼鏡を持ち上げる。
不機嫌そうな顔をしながら、「これ以上は難しいでしょう」と答えた。
「時間をかければ更に研究が進みます。完璧な量産化はその時まで待たれては?」
「そんな悠長なこと言ってる暇はねえんだ。
邪神と組んだ手前、ヘマを踏むわけにはいかねえからな。」
「ですが・・・・、」
巻貝の獣人は首を振り、「性能を落としても充分ぬ強いと思いますが・・・」と反論する。
するとその瞬間、ダレスは鬼にような顔になった。
獣人の胸倉を掴み、牙を剥き出す。
「いいか、よく聴け。」
獰猛な顔で睨まれ、獣人は竦み上がる。
「俺は完璧な超人がほしいんだ。分かるな?」
「え・・・・ええ・・・・、」
「俺が欲しいと言ったら、なんとしてでも作れ。それがお前の仕事だ。」
「・・・で・・・・ですが・・・・、」
「口ごたえは聞きたくねえ。素直に返事をしねえってんなら、お前の住んでる街ごと焼き払ってもいいんだぜ?」
眉間に皺を寄せ、牙を剥いて唸る。
獣人は「分かりました・・・」と答えるしかなかった。
ダレスを怒らせればどうなるか?
この学者もその恐ろしさはじゅうぶん知っていた。
ダレスは獣人を床に落とす。
獣人は尻もちをつき、青い顔をしながら冷や汗を掻いた。
「もしお前がただの使い走りだったら、口ごたえした時点で殺してる。」
「・・・・・・・・・。」
「学者でよかったな。」
そう言って獣人の白衣を直し、「さっさと仕事に取りかかれ」と肩を叩いた。
ダレスはそのまま部屋を出て行く。
獣人は青い顔したまま、彼の背中を見つめていた。
            *
カルカロ大陸の支社には、大きな地下施設がある
ここでは学者たちが様々な研究を行っていた。
別々の魔物を混ぜ合わせたり、武器と魔法を融合したり。
しかし今一番力を入れているのは、超人の量産化だった。
ダレスは地下施設まで降りてきて、高い窓からその様子を眺める。
捕えられたシウンの仲間たちが、呪術のかかった鎖に繋がれている。
周りには冷たい水が溢れ、力を奪われていた。
「・・・・・・・・・。」
ダレスは葉巻を咥え、シウンの仲間たちを見つめる。
学者に囲まれ、怪しげなチューブを刺されて研究の材料にされている。
その様子を見つめていると、ガラの悪そうな男が寄って来た。
それはハゲワシの鳥人で、ヒョウ柄の高そうなコートを着ていた。
目は鋭く、陰湿な表情でダレスに話しかけた。
「旦那、超人の量産化とやら、上手くいきそうですかい?」
「ああ。」
「その割にはおっかない顔してまずぜ。」
「使えねえ部下ばっかりでな。気晴らしに誰かぶっ殺してやりたい気分だ。」
「おっかねえなあ。」
鳥人は下品な声で笑う。ゲラゲラ声を上げ、研究の様子を眺めた。
「あいつら可哀想になあ。
わざわざこんな場所まで逃げて来たってのに、あっさり捕まるなんて。」
「運のねえ奴らだ。」
「運がなきゃどこへ行っても地獄ってね。まあこの大陸はどこ行っても地獄みてえなもんだけど。」
「今日はお前んとこのボスは来てねえのか?」
「兄さんならさっき出掛けましたぜ。今日は別の組との会合があるんでさあ。」
「忙しくて何よりだな。」
「旦那のおかげでウチのファミリーは儲かってますぜ。これからもご贔屓に。」
そう言って背中を向け、地下施設から出て行こうとした。
「おい。」
「へい?」
「これからちと派手な喧嘩があってなあ。」
「喧嘩ですかい?またどこぞの組がちょっかい出して来たんで?」
「そうじゃねえ。前につるんでた連中が、ここへやって来るんだ。」
「へえ、旦那のファミリーだった方ですかい?」
「そんなんじゃねえよ。」
煙を飛ばし、不機嫌そうに顔を歪める。
「なんか事情がありそうな感じですねえ。」
「・・・・・・・・。」
「いや、余計な詮索で。」
鳥人は肩を竦め「いいでしょう、兵隊を用意しておきます」と頷いた。
「奴らは強い。ザコを集めるんじゃねえぞ。」
「旦那の元ファミリーの方なんだから、弱いなんて思っちゃいませんよ。」
「こっちも兵隊を用意する。試験をするにはちょうどいいかもしれん。」
「試験?」
「ああ、超人のな。」
そう言って小さく笑う。
それから数分後、箱舟二号の回りには、ガラの悪い連中が集まっていた。
ムカデの妖怪やハチの魔物、それに首が六つもある巨大なドラゴンゾンビ。
他にも大勢の魔物がいて、船を取り囲んでいた。
「どうです旦那?こんなもんでよろしいんで?」
「上出来だ。」
ダレスは満足そうに頷く。
「しかし旦那の方も兵隊を出すと言ってましたが・・・姿が見えませんね。」
鳥人はキョロキョロと辺りを見渡す。
すると支社の方から何かがやって来た。
「あれは・・・・、」
鳥人は目を凝らす。
「・・・・旦那、あれは何です?まるでマグマが歩いて来てるように見えるんですが。」
「その通りだ。あれはマグマの超人部隊だからな。」
ダレスはこちらに向かってくる部隊に手を上げる。
すると巻貝の獣人が現れて、こちらに走って来た。
「はあ・・・はあ・・・・、」
「間に合ったか?」
「ご命令の通り、レベルを落とさずに兵隊を量産しました。」
「よくやった。」
「しかしどこまでもつか分かりません。なにせすでに死にかけている者もいますので。」
そう言って振り返ると、量産された超人部隊がそこまで迫っていた。
数は二十名。
そのうちの三人が、途中で倒れて燃え尽きた。
「ああ・・・、」
「構わねえ。これは運用テストだからな。廃棄が出るのは計算の内だ。」
そう言って煙を吹きかける。
「借金のカタで集めた連中だ。元々がクズなんだから、死んでも嘆くこたあねえ。」
「はあ・・・・。」
「だが全部死んでもらっちゃ困る。最低でも一人は生き残ってくれねえとよ。
でなけりゃお前の仮説が正しいかどうか分からねえ。」
「仮説?」
巻貝の獣人は首を捻る。
「あの鎧を着た者は、強い意志を持ってないと超人になれねえんだろ?」
「ええ・・・。鎧から注がれるエネルギーに耐え切れず、死を選んでしまいますので。」
「本人の意志の強さで、超人になれるかどうかが決まるってわけだ。
でもな、そんな曖昧なことじゃ困るんだよ。
これから生産ラインに乗せて、大量に作ろうってんだ。
意志の強さどうこうなんてもんで左右されたら、商売にならねえ。」
「ですがこれは仮説ではなく、事実ですので。
シウンとその仲間たちは、あの過酷なテストを最後まで乗り切って見せました。
意志の強さが生命力に影響を及ぼしたと考えて、間違いないかと。」
「もしそうだとしたら、今後の作り方を考えねえとな。
ただ鎧を着せて、過剰な熱を与えりゃいいってもんじゃねえ。
本人の意志なんざ関係なく、戦う為のマシーンになってもらわねえとよ。」
葉巻を吐き捨て、グリグリと踏み潰す。
「幸いなことに、この大陸はクズばかりだ。
死んでも惜しくねえ連中が揃ってる。そうだろ?」
鳥人に目を向けると、「その通りで」と笑った。
「でも旦那、あっしを実験に使わないで下さいよ。やるんなら他のクズどもで。」
「どうだかな。」
「旦那。」
「冗談だよ。」
ダレスは目で頷き、灼熱の超人たちを睨んだ。
「おいテメエら!」
ドスの利いた声で怒鳴りながら、超人たちの前に立つ。
「この戦いを生き残れば、借金はチャラだ。」
新しい葉巻を咥え、巻貝の獣人が火を点ける。
「その後は約束通り元に戻してやる。だから死ぬ気で戦え!」
怖い顔で睨むと、超人たちはコクコクと頷いた。
借金の厳しい取り立てで、誰もが恐怖を植え付けられている。
そのせいで灼熱の超人になっても逆らおうとしなかった。
《こいつらは捨て駒だ。いくら強くなろうが、恐怖で俺に支配されてる。》
ニヤリと笑い《相手を動かすのは、良い意味でも悪い意味でも感情だからな》とほくそえんだ。
《何としても超人を量産化する。それも完璧な形でだ。
その後はマニャも超人に改造し、こいつらの隊長に据える。
無敵の軍隊を作り上げるんだ。その為にはこんな所でつまづくわけにはいかねえんだよ。》
ギリっと歯を食いしばり、葉巻を食い千切る。
するとその時、「旦那!」と鳥人が叫んだ。
「来たみてえですぜ、元ファミリーの方が。」
そう言って南の空に翼を向ける。
そこには一隻の船が浮かんでいた。
《来たか、オテンバども。》
ダレスも空を見上げ、牙を剥いて唸る。
《正直なところ、お前らのことは嫌いじゃねえ。
だがこれ以上うろちょろされると鬱陶しいんだよ。》
ダレスの目に怒りが宿り、射抜くような視線を向ける。
邪神は勝とうとしなくていいと言ったが、勝つつもりでなくては足止めさえ出来ない。
《あいつらは強え。出会った頃より格段に強くなってる。
手加減なんざ出来ねえ。ここで叩き潰す!》
ダレスの仕事はいつだって命懸けだった。負ければ後ろには死が待っている。
胸に宿る商人の魂が、漁火のようにくすぶった。

モノクロ中毒

  • 2017.01.30 Monday
  • 14:34

JUGEMテーマ:写真

 

 

 

 

 

最近ずっとモノクロで撮っています。

たま〜に中毒になったみたいにモノクロが恋しくなるんです。

 

 

 

 

 

 

 

カラーで撮るとつまらないのに、モノクロで撮ると面白い風景ってあるんです。

色がない分、形と陰影がハッキリ見えるからです。

剥き出しの風景が写ります。

 

 

 

 

 

 

 

まだ写真学生の頃、よくモノクロで撮りました。

あの頃は絵になる風景を探していたけど、今は違います。

特別な場所じゃなくてもいいって思って、適当に歩きながらのスナップです。

モノクロはスナップの王様です。

ダナエの神話〜星になった神様〜 第四十二話 新しい大地(4)

  • 2017.01.30 Monday
  • 14:29

JUGEMテーマ:自作小説

火が消えたおかげで、街は落ち着きを取り戻した。
ダナエたちは街の人から詳しい話を聞いた。
「いきなり丸っこい何かが飛んできてよ、大砲をぶっ放したんだ。
そうしたら店が爆発してよ、後は御覧の有様だ。」
「私の家も同じ。たまたま外に出てからよかったけど、中にいたらとっくに死んでたわ。」
「俺は時計塔の中にいたんだ。遠くから光る物体が飛んで来るのが見えたよ。
確か二つ浮かんでたなあ。」
「僕も見たよ。屋根の上にいたら丸い光が二つ飛んできたんだ。
そんで大砲みたいなのをバンバン撃って、そこらじゅう火事になっちゃった。」
人々の話を聞き、ダナエは「うう〜ん・・・」と唸った。
「これってさ、リーバーで間違いなさそうね。」
そう言うと、アドネも頷いた。
「誰かがアレに乗って、この街を襲ったのよ。」
「誰かって・・・・誰?」
「さあね。でも船が勝手に街を襲うなんてことはないんじゃない?」
「確かにそうだけど・・・。」
ダナエは釈然としない思いでいた。
《なんか嫌な感じがするのよね。なんだろう・・・この先悪いことが起きる予感が。》
眉を寄せ、焼けた街を見つめる。
すると遠くの空からコウが戻ってきた。
「コウ!」
「ダナエ!大変だぞ!」
コウは慌てて降りてくる。
「向こうも大変なことになってた・・・・。」
「向こう?ていうかどうしてマッスルモードになってるの?」
「火を消してたんだよ。シウンの村が燃えてたから・・・・、」
「シウンの村が!?」
ダナエは思わず声を上げる。
するとコスモリングからシウンが出て来て、「それは本当か!」と詰め寄った。
「熱ッ!あんまり近づくなよ。」
「答えろ!俺の村が燃えてたって本当か?」
「本当だよ。」
「そんな・・・・親父やお袋は・・・・・・。」
「心配すんな。火はもう消したからよ。」
「みんなは?親父とお袋は!?」
「無事だ。ちょっと怪我した奴はいるけど、でも命に別状はないぜ。」
「そうか・・・・みんな無事か。」
シウンはホッと息をつく。
しかしコウは「でも変な話を聞いたんだ」と言った。
「遠くから丸くて光る物体が飛んできてさ、それが大砲を撃ったっていうんだよ。」
「丸くて光る物体・・・・・。」
「それも二つ。詳しく話を聞いてると、俺たちが見たリーバーってやつとそっくりなんだ。」
それを聞いたダナエは「そっちも!」と叫んだ。
「そっちもって、まさか・・・・、」
「この街もリーバーにやられたのよ。」
「マジかよ!」
「街の人から話を聞いたんだけど、リーバーで間違いないと思う。」
「岬の街と、シウンの村・・・・どっちもリーバーに襲われたってのか。」
コウは険しい表情で唸る。
「となるとやっぱりアイツが・・・・、」
「アイツって・・・・何か心当たりがあるの?」
ダナエはグイッと詰め寄る。
コウは頷き、「ダレスさ」と答えた。
「あのリーバーって船、多分ダレスが乗ってたんだと思う。」
「ダレスが?」
「アイツは強い軍隊を作ろうとしてるだろ?」
「ええ・・・その為にシウンみたいな超人を作ったんだもん。」
「でも兵隊だけじゃ強い軍隊は出来ない。乗り物が必要なんだよ。」
「乗り物?」
ダナエは不思議そうに首を傾げる。コウは「いいか」と説明した。
「前に地球で戦った時、人間は悪魔に戦いを挑んでた。
その時に戦車や戦闘機に乗ってたんだよ。
人間は素手じゃそこまで強くないから、ああいう乗り物が必要になるんだ。」
「ああ、そういうこと。でもダレスの作ろうとしてる超人部隊は強いじゃない。
シウンみたいな兵隊がたくさんいたら、乗り物なんていらないと思うけど。」
「いるさ。」
「どうして?」
「兵隊を運ぶ為。」
コウは空を見上げ「もしあの船をたくさん作れば、遠くまで兵隊を運べるだろ」と言った。
「空を飛べば地形なんて関係ないし、素早く兵隊を運ぶことが出来る。」
「確かに・・・。」
「いわゆる輸送機ってやつだな。でもリーバーはただの輸送機じゃない。
戦闘機みたいに戦いも出来るんだ。
もしあれがたくさん作られたら厄介だぜ。」
顔をしかめ「早いとことっ捕まえないと」と空を睨んだ。
「でもダレスかどうかはまだ分からないんじゃ・・・・、」
「なら他に誰がいる?」
「それは・・・・、」
「キーマが言ってたけど、あれは昔に失われた船だぜ?
そんなもん普通の奴じゃ手に入らないだろ。」
「でもダレスって決めつけるのは早いんじゃないからしら?」
「なら他に心当たりがあるのか?」
そう問われて、ダナエは少し考えた。
そしてすぐに顔を上げ、「邪神・・・」と呟いた。
「邪神?」
「・・・・そうよ。きっと邪神が乗ってたんだわ。」
そう言って強く頷く。
しかしコウは首を振った。
「あのな・・・邪神がアレに乗ってるはずないだろ。」
「どうして?」
「邪神は自分で空を飛べるんだぜ。しかもまだ九頭龍の力が残ってるから、空間移動だって出来るし。」
「でもその力は近いうちに消えちゃうんでしょ?
だったら代わりにリーバーを手に入れたのかも。」
「でも自分で飛べるじゃん。
それにアイツならあんな乗り物なしで街を破壊出来るだろ。」
「それはそうだけど・・・・、」
「邪神がリーバーなんかに乗っても意味ないよ。逆に弱くなるだけなんだから。」
「むうう・・・・・。」
ダナエは納得いかない様子で腕を組む。
コウは「反論があるなら言ってみろよ」と肩を竦めた。
すると黙って聞いていたシウンが「もしかしたら・・・」と口を開いた。
「お、どうした?何か思いついたか?」
「ダレスは欲深い奴なんだ。」
「知ってるよ。」
「アイツは根っからの商人で、何よりも自分の商売を大事にしてる。」
「それも知ってる。」
「だったらさ、邪神と手を組んだってことは考えられないか?」
「邪神と・・・・、」
「手を組む?」
コウとダナエは顔を見合わせ「?」と首を傾げた。しかしシウンは続ける。
「ダレスは邪神を憎んでるんだろ?」
「ああ。絶対にぶっ殺してやるって息巻いてたからな。
そもそも超人部隊を作ろうとしてるのだって、邪神と戦う為だし。」
「奴も俺と同じで、復讐に燃えてるってわけだな。」
シウンは可笑しそうに笑い、「でもな・・・」と続ける。
「さっきも言ったけど、アイツは根っからの商人なんだ。
もし儲け話があるなら、復讐よりそっちを取るはずだ。」
「まあ・・・そうかもな。商売命って奴だし。」
「ここから先は単なる想像だが、邪神の方からダレスに近づいて来たんじゃないか?」
「邪神の方から?」
「そうだな・・・・例えば私と手を組めば、もっと強い武器を与えてやるとか言って。」
「強い武器?どんな武器だよ?」
「分からない。」
「なんだよ、説得力に欠けるな。」
コウはぷくっと頬を膨らませる。
するとダナエが「もしかして・・・・」と呟いた。
「強い武器って・・・リーバーのことなんじゃないかしら。」
「リーバー?」
「うん。あれって昔に失われたものなんでしょ?
でも邪神は密かにその船を持っていた。
そして自分に協力するなら、リーバーをあげるって言ったとか。」
「う〜ん・・・・ダナエにしちゃいい考えだけど、それはないかな。」
「どうして?筋は通ってるでしょ。」
「通らないよ。だってもし邪神がリーバーを持ってるなら、今までの戦いで使ってきたはずだ。」
「でもさっきは邪神がリーバーに乗るはずがないって言ったじゃない。」
「邪神は乗らないさ。でも手下を乗せればいいだろ?」
「手下を?」
「邪神は元々リーバーなんて持ってない。
もし持ってたなら、手下でも乗せて使ってきたはずだからな。
でもそんなことは一度もなかった。
アレはダレスの野郎がどうにかして手に入れたんだと思うぜ。」
「どうやって?」
「そうだな・・・・自分で作ったか、それとも昔に残ってたやつを見つけたか。」
「曖昧ね、コウだって説得力ないじゃない。」
「なら昔に残ってたやつを見つけたってことにしよう。」
「しようって何よ、しようって。いい加減な言い方しないで。」
「いい加減じゃないさ。ダレスは超人部隊を作るのにも苦労してる。
だったら昔に失われた乗り物を、簡単に作り出せるとは思えない。
きっと壊れずに残ってたやつを見つけたんだよ。」
「むうう〜・・・・・。」
「絶対にそうだと思うぜ。でも・・・・そうなるとシウンの推理にも説得力が出て来るな。」
コウは顎に手を当て、難しい顔で唸る。
「邪神からダレスに近づき、手を組まないかと持ち掛けた。
問題はどんな風に持ち掛けたかだけど、おそらくリーバーが関係してるはずだ。」
そう言って空を見上げ、さらに難しい顔をした。
「要するにリーバーは古代の遺物だ。今じゃその技術は失われてる。
でも邪神は大昔からこの星にいるから、リーバーの作り方を知ってる可能性がある。
となると・・・・・、」
みんなを見渡し、たっぷり間をためる。
すると後ろらゴツンと鎌で叩かれた。
「痛ッ!何すんだよ。」
後ろを振り向き、アドネを睨む。
「何すんだじゃないわよ。もったいぶってないでさっさと言いなさいよ。」
「そう急かすなよ。こういうのは引っ張ってから言った方がカッコいいんだから。」
「そんなもんどうでもいいわよ。今は探偵ゴッコに付き合ってる暇はないの。」
「へいへい、死神さんは気が短いことで。」
コウは肩を竦め、やれやれと首を振る。
「お前の彼氏になる男は大変だな。」
「何?また喧嘩売る気?」
「だから刃の方を向けんなって!」
慌ててダナエの後ろに隠れ、「乱暴な女め」と愚痴る。
「あんたねえ、いい加減その減らず口を・・・・、」
「分かった分かった!説明するから。」
顔を髑髏に変えるアドネを見て、慌てて謝る。
「きっと邪神はこう言って近づいたんだよ。
私と手を組むなら、リーバーの作り方を教えてあげるわって。」
「リーバーの・・・、」
「作り方?」
アドネとダナエは顔を見合わせ、「?」と首を傾げる。
「いいか、ダレスは強い軍隊を作りたがってる。その為には強い乗り物が必要だ。」
「うんうん。」
二人は同時に頷く。
「おそらくリーバーはどこかで見つけたもんだ。
その時、ダレスはこう思ったはずだ。
こいつをたくさん作れば、さらに強い軍隊が出来るってな。」
「それでそれで?」
「でも古代の遺物だから、作り方が分からない。
そこへ邪神が現れ、こう言ったんだよ。
私なら作り方を知ってる。それを教えてあげるから手を組まない?って。」
コウは邪神の口真似をしながら言う。
二人に「全然似てない」と突っ込まれ、ぷくっとふてくされた。
「でも良い線いってると思うわよ。ねえダナエ?」
「それなら納得出来るわ。」
「なんで上から目線なんだよ。バカチンどものクセに。」
「何?」
「何か言った?」
「二人して睨むなよ・・・・・。」
身を竦めながら怯えるコウ。
そして「マナはどう思う?」とコスモリングに尋ねた。
「お前は頭がいいからな。俺の推理・・・・どう思う?」
そう尋ねても、うんともすんとも返事はなかった。
「おい、マナってば。」
宝石をつつくが、やっぱり何の返事もない。
するとダナエがクスクスと笑った。
「マナはコウが嫌いみたい。」
「なんでだよ。頭の良いもん同士仲良くしようぜ。」
「そういう態度が嫌われるのよ。もっと謙虚じゃないと。」
「謙虚で邪神と戦えるかよ。」
ぷくっとふてくされ、「絶対に友達になってやるからな」とマナの宝石を指さした。
ダナエはまたクスクスと笑う。
「でもコウの言ってることは正しいかもしれない。」
「だろ?」
「だったらリーバーを放っておくことは出来ないわ。」
そう言って近くにいた街人に声を掛けた。
「ねえ、ちょっといいかな?」
「なんだい?」
「この街に丸くて光る物体が飛んで来たでしょ?」
「ああ、二つな。それが街を燃やしたんだよ。」
バッタの妖怪が触覚を揺らしながら頷く。
「その空飛ぶ丸いやつ、どこへ飛んで行ったか知らない?」
「うう〜ん・・・逃げるのに必死だったからなあ。」
バッタの妖怪は顔をしかめる。
「ごめん、覚えてないや。」
「ううん、答えてくれてありがとう。」
ダナエはニコリと頷く。
そして他の街人に声を掛けようとした時、ポンと肩を叩かれた。
誰かと思って振り向くと、そこには鉢巻を巻いた男がいた。
顔は陽に焼け、逞しい身体をしている。
頭は白髪に染まっているが、その目はギラギラとたぎっていた。
「あああ!あなたは・・・・、」
「よう嬢ちゃん、久しぶりだな。」
「キンンジロウ!」
ダナエはパッと笑顔になる。
金次郎の手を取り「久しぶり!」と笑った。
「元気にしてた!?」
「まあな。」
「ミズチも元気?」
「おうよ。」
金次郎は煙管を吹かしながら、ニヤリと笑った。
「ぎゃあぎゃあ騒いでる奴らがいるから、うるせえって注意しようと思ってよ。
それがまさか嬢ちゃんだったとは。」
金次郎は顔をほころばせ「また会えてうれしいぜ」と言った。
「私もよ。」
ダナエも頷き「そういえばキンジロウはこの街に住んでるんだったわよね」と言った。
「前にラシルの廃墟に行った時はお世話になったわ。あなたのおかげで助かった。」
「ありゃあミズチのおかげだ。アイツが運んでくれたんだからな。」
「ミズチにも感謝しなきゃね。」
二人は再会を喜ぶ。
金次郎は「そういやあの坊主は?」と尋ねた。
「腕白な坊主がいただろ?」
「コウのことね。そこにいるわ。」
そう言って手を向けると、「ぬお!」と驚いた。
「お前・・・デカくなったな。前は手に乗るほど小さかったのに。」
「色々あってな。」
「それにずいぶん逞しくなった。」
感心するように言って「えらく男が上がったじゃねえか」と頷いた。
「ん?男が上がった?」
「だっておめえ、筋骨隆々の身体だぜ。昔の彫刻みてえだ。」
「ああ、これ?これはただの魔法。」
そう言ってマッスルモードを解除すると、「なんでい」と白けた。
「魔法かよこんちくしょう。そんなもんばっかに頼ってると、男が上がらねえぜ。」
「ふん!大きなお世話だ。」
コウはぷいっとそっぽを向く。
金次郎は「がはは!」と笑い、「そういやあのゾンビたちは?」と尋ねた。
「ヘンテコなゾンビが二人いただろ?あいつらはいねえのか?」
「うん、ちょっと色々あってね。あ、でも悲しい別れじゃないのよ。
トミーもジャムも人間に戻って、地球へ帰って行ったから。」
「ほう、そりゃよかった。いつまでもフラフラしてたんじゃ男が上がらねえ。
地球に戻ったんなら、まっとうな仕事に就いて、地に足をつけた人生をだな・・・、」
金次郎はしみじみと男の人生訓を語る。
ダナエは「ちょっと待って」と止めた。
「ねえキンジロウ。聞きたいことがあるんだけど・・・・、」
「男ってのはアレだよ。つまづいてナンボなんだよ。
でもってそこから立ち上がってだな・・・・、」
「あのさ、この街に空飛ぶ丸い物体が来たでしょ。
それでね、その物体がどこへ行ったか知りたいんだけど・・・・、」
「あれは俺が二十三の時だ。漁に出た時にヘマをしちまってよ。
親父に思い切り殴られて・・・・、」
「あの・・・・ちょっと話を聞いてほしいんだけど・・・・、」
「あの時の拳骨・・・痛かったなあ。でも親父の愛情だぜアレは、ああ。
あの拳骨があったから、俺は一人前の漁師になろうと決めて・・・・、」
「あのね、ちょっと話を・・・・、」
「今度は二十七の時だ。あの年の夏にかあちゃんと出会ってよ、俺の方から一目惚れよ。
でも俺は奥手なもんだから、なかなか声を掛けられなくてなあ・・・・、」
金次郎の思い出話は加速していく。
ダナエは「だからあ〜・・・・」と頬を膨らませた。
「話を聞いてってば!」
「ん、なんだ?嬢ちゃんも思い出話がしたいのか?
いいぜ、今日はとことん付き合ってやる。
こうして久しぶりに会ったんだし、俺の家で酒でも飲みながら・・・・、」
「そうじゃないってば!」
「ん?何怒ってんだ?・・・・ああ!悪い悪い、嬢ちゃんはまだ子供だから、酒は飲めねえか。なら昆布茶でも飲みながら・・・・、」
「だからあ・・・・人の話を聞いてってば!」
ダナエはさらに頬を膨らませる。
「この街に空飛ぶ丸い物体が来たでしょ?」
「ん?ああ・・・・アレなあ。いきなりやって来て、街を火の海に変えやがった。
とんでもねえことしやがる。」
そう言って空を見上げ「俺があと十若かったらとっちめてやったのに」と煙管を吹かした。
「その丸い物体なんだけど、どこへ行ったか知らない?」
「どこへって・・・飛んでったよ。街を燃やした後に。」
「どこへ飛んでったの?」
「さあな。海を越えて、ピュンっと北の空へ消えちまったよ。」
「北の空・・・・。」
ダナエは呟き、コウと顔を見合わせる。
「それってシウンの仲間が逃げたのと同じ方角よね?」
「だな。こりゃあ絶対にダレスの野郎が絡んでるぜ。」
「コウの推理、当たってるかもね。」
二人でヒソヒソ言い合ってると、「なんでいお前ら」と金次郎が睨んだ。
「ヒソヒソ喋りやがって。聞かれちゃマズイ話か?」
「え?ああ・・・ううん、そんなことないわよ。」
「はは〜ん・・・・さてはお前ら・・・・、」
金次郎はニヤニヤしながら顔を近づける。
「お前らアレだろ。」
「な・・・何?」
「男と女になっちまったんだろ?」
「・・・・・はい?」
ダナエは素っ頓狂な声を出す。
「がはは!照れんな照れんな!」
金次郎はバシバシと二人の肩を叩く。
「いいもんだよなあ、若い頃の恋は。甘酸っぱくて、でもほんのりと苦くてよ。」
そう言ってまたしみじみとし始めた。
「あれは俺が十七の時だ。隣のクラスのミヨちゃんて子に恋をしてなあ。
でも俺は奥手だったから、中々声を掛けられなかった。」
空を見上げ、ミヨちゃんを思い浮かべる。
「今日こそはって思っても、なかなか話しかけられなかった。
そんでモタモタしてるうちに、ミヨちゃんは転校しちまってよ。
だから今でも思うんだよ。あの時声を掛けてたら、ミヨちゃんと甘酸っぱい青春があったのかなあなんて・・・・、」
しみじみ言いながら振り返ると、そこには誰もいなかった。
「ぬあ!あいつらどこ行った?」
キョロキョロしていると、空から「キンジロウ〜!」と声がした。
「教えてくれてありがとう!」
「お前らいつの間に!」
ダナエは箱舟に乗っていた。
「今度来た時はゆっくり話を聞くから〜!」と手を振る。
「今は急いでるの。だからごめんね〜!」
「へ!いいってことよ。」
金次郎は腕を組み、プカリと煙管を吹かす。
「いつでも俺の恋バナを聞かせてやるぜ!だからまた戻って来いよ!」
「うん、またね〜!」
「気いつけてな!」
箱舟は北の空を向き、岬の街から離れていく。
金次郎は手を振り、「相変わらずのオテンバだな」と笑った。
岬の街から飛び去ったダナエたちは、海を越えてある場所を目指していた。
「ねえシウン。このままカルカロ大陸に行けばいいのよね?」
「ああ。海を越えた先には、あの大陸しかない。でもあそこは・・・・、」
「分かってる、危険な場所なんでしょ。」
「俺も行ったことはないけどな。でも相当治安の悪い場所だとは聞く。
だからあの大陸にだけは行かなかったんだ。」
シウンは窓から北の空を見つめる。
逃げた仲間が、どうか無事でいてくれと願いながら。
ダナエも北の空を見つめ「カルカロ大陸か」と呟いた。
「それって確か・・・・、」
「ああ、第三の試練の場所だ。」
コウはコクリと頷く。
「第三の試練か・・・・。一番過酷だってマニャが言ってたよね?」
「今まででもじゅうぶん過酷だったのに、それ以上となると・・・けこうヤバイかもな。」
そう言って窓の外を見つめた。
「シウンの仲間はわざとあの大陸へ逃げたんだろうな。
治安が悪い方が、かえって身を隠しやすいだろうから。」
「色んな魔物がいるってカプネが言ってたもんね。
そういう場所なら、確かに身を隠しやすいかも。」
「でもこれから向かう場所が、第三の試練の場所でもあるってのがなあ。
これって偶然かな?」
「さあね。でも一番の目的はドリューとカプネを助けることよ。そして・・・・、」
「分かってる。ドリューをリラの所へ連れて行くんだろ。」
ダナエはニコリと頷き「赤ちゃんが生まれる前に連れて帰らなきゃ」と表情を引き締めた。
「その為にも、新しい大陸へ行きましょう。」
「また色々と危ないことがありそうだな。」
「そんなの今までだって一緒じゃない。」
「そうだな。今さら心配したってしょうがないか。」
コウは頭の後ろで腕を組む。
箱舟は海を越え、まだ見ぬ大陸へ向かって行く。
不安を感じるのはダナエも一緒だが、口には出さなかった。
なぜならいつだって未知の場所へ行くのは不安だが、それと同時に楽しみでもあったからだ。
まだ見ぬ世界がそこにある。
例え危険があったとしても、今までにない世界を見るのは楽しい。
箱舟の車輪が夜空を漕ぎ、まだ見ぬ大地を目指していった。

撮るという行為が写真そのもの

  • 2017.01.29 Sunday
  • 15:21

JUGEMテーマ:写真

 

 

 

 

 

写真家の森山大道さんが仰っていました。

写真は量であると。

小手先の美学なんて、量が一蹴すると。

 

 

 

 

 

 

 

カメラがどうとか、テーマがどうとか言う前に、まずは撮れ。

撮らなきゃ始まらないんだから、それ以外のことは後でいいってことです。

撮る、とにかく撮る。

写真は量。

 

 

 

 

 

 

 

撮りたい気持ちはあるんだけど、でもテーマがなかったり、撮りたいものがない時ってあります。

そういう時、森山さんの言葉がすごく励みになります。

ウジウジしてるだけ無駄ってもんで、まずは撮りにいく。

それ以外のことは、後からどうとでもなるってことなんでしょう。

やれテーマだの美学だの言ったって、物がなければ意味がないわけですから。

撮るという行為そのものが写真なのかもしれません。

 

ダナエの神話〜星になった神様〜 第四十一話 新しい大地(3)

  • 2017.01.29 Sunday
  • 15:15

JUGEMテーマ:自作小説

シウンは拳を握ったまま、悲しそうに口元を噛む。
ゆっくりと手を下ろし、茫然と立ち尽くした。
ダナエは呆気に取られ、ポカンと口を開けていた。
「すごい・・・・・。」
コウやアドネでさえ苦戦した獣人を、たったの一撃で倒してしまった。
しかもまだ余力があるようで、身体は青白く光っている。
「こんなに強いなんて・・・・まさに超人だわ。」
ゴクリと息を飲み、立ち尽くすシウンを見つめる。
「・・・・・あ!感心してる場合じゃないわ。」
コウとアドネを抱きかかえ、「早く助けなきゃ」と宙に舞い上がる。
「街の病院へ行けばキーマがいるはず。彼女ならきっと助けてくれるわ。」
そう言って街の方へ飛んで行く。
「シウン!ここで待ってて。絶対にダレスの所に行っちゃダメよ。」
シウンのことは心配だが、今はコウとアドネを助けるのが先だった。
二人を抱えたまま、街の病院まで飛んで行く。
すると病院の方から、一人の人影が飛んできた。
「あれは・・・・、」
ダナエはその人影の方へ向かう。
そして「キーマ!」と叫んだ。
「お嬢さん!さっきすごい爆音がしたけど、何かあったの?」
「コウとアドネが危ないの!」
「なんですって?」
キーマはダナエの腕に抱えられた二人を見つめる。
「酷い怪我ね。虫の息じゃない。」
「早く治さないと死んじゃう!お願い助けて!」
「息があるなら治せるわ。任せて。」
キーマは息を吸い込み、胸の中に魔力を溜める。
そしてアドネに口づけして、自分の魔力を注いだ。
すると見る見るうちに怪我が治り、「ううん・・・」と目を開けた。
「アドネ!」
「ダナエ・・・・あの獣人は・・・・?」
「シウンがやっつけたわ。」
「シウンが・・・・・、」
アドネは身体を起こし、ダナエの腕から舞い上がる。
するとすぐ隣で「むううう!」とコウの声がした。
見るとキーマが口づけをして、魔力を注いでいた。
「・・・・・・おい!また勝手にキスすんな!」
コウは勢いよく飛び起き、恥ずかしそうに口を押さえた。
「コウ!」
ダナエが抱きつき「よかった!」と涙ぐむ。
「ダナエ。あの獣人は・・・・、」
「シウンがやっつけたのよ。」
「シウンが?」
「たったの一撃で倒しちゃったの。すごい力だった。」
「あいつが・・・・・、」
コウは戦っていた場所を振り返り、「やりやがったのか」と睨んだ。
「あいつ戦い方を覚えちまったんだ。これはちょっとそっとじゃ止めらないぞ。」
そう言って不安そうに眉を寄せる。
「ダナエ、シウンはどこに?」
「さっきの場所にいるはずよ。」
「いるはずって・・・・一人にしてきたのか?」
「だってコウとアドネが危なかったから。」
そう言ってキーマを振り返り、「彼女が助けてくれなかったら死んでたわ」と首を振った。
コウは「また助けてもらったのか・・・」とバツが悪そうにした。
「キーマには助けられてばかりだな。この借りはいつか返すよ。」
「ふふふ、いいわよそんなの。それよりいったい何があったの?
坊やがそこまで怪我するなんて、ただ事じゃないわ。」
「ちょっと色々とな。」
コウはポリポリと頭を掻き、「後で話すよ」と答えた。
「今はシウンの復讐を止めるのが先だ。早くしないとダレスを殺しちまう。」
コウは急いでさっきの場所まで戻る。
するとシウンはまだそこにいた。
グツグツと煮えたぎる大地を見つめ、一人佇んでいる。
「シウン。」
声を掛けると、ゆっくりと振り返った。
「お前・・・・まだ復讐をするつもりなのか?」
「・・・・・・・・・。」
「えらく辛そうな顔してるぜ。大丈夫か?」
コウはシウンに近づく。
しかしあまりの熱に傍へ寄れなかった。
そこへダナエたちもやって来て、佇むシウンを見つめた。
「シウン・・・・。」
ダナエは熱さを我慢しながら近づく。
火傷しそうなギリギリの所で足を止め、「ねえ・・・」と呼びかけた。
「もう終わりにしない?この御神体の力で元に戻ろうよ。」
そう言って赤い牙を取り出す。
「これはおじさんとおばさんが預けてくれたものよ。
シウンが元の姿に戻ることを願って。」
「・・・・俺は・・・・、」
シウンは赤い牙を見つめながら、自分の身体に視線を移す。
「俺は・・・・とんでもない身体になてしまったんだな・・・・。
あんな化け物をたった一撃で倒して、その上大地までマグマに変えるなんて。」
煮え立つ大地を見つめ、目を細める。
「ダレスには復讐したい。
でも・・・・万が一アイツに捕まってしまったら、俺みたいな奴がたくさん生まれる。
そうなればダレスは何もかも破壊してしまう。
灼熱の超人部隊を作って、刃向う奴は皆殺しに・・・・・。
でもそれだけじゃ終わらない。超人部隊が暴れた後には、塵一つ残らない。
全てがマグマによって焼き尽くされる。そんなの・・・・絶対にあっちゃいけないことだ。」
グッと拳を握り、「考えるよ」と言った。
「復讐は諦めたくない。でも俺の復讐のせいで、マグマが覆う世界になるなんて絶対にダメだ。
だから考えるよ。復讐することが本当に正しいのかどうか、時間をかけて考える。」
そう言って、煮えたぎる大地に背中を向けた。
「悪かったなあんたら。散々迷惑かけてしまって・・・・。」
申し訳なさそうに言って、どこかへ歩いて行く。
「シウン!どこに行くの?」
ダナエは後を追いかける。
「復讐は考えるんでしょ?だったら村に戻りましょ。
自分の故郷で、時間をかけて考えればいいわ。
そうすれば、きっと復讐したいなんて気持ちもなくなる。
時間があなたの怒りを癒してくれるわ。」
「いや、村には戻らない。」
「どうして?」
「復讐するかどうか、まだ決められないんだ。
だから一人で考えたい。答えが出るまで。」
そう言って小さく頷き、どこかへ去って行く。
ダナエは宙に舞い上がり、シウンの前に立った。
「どいてくれないか?」
「まあまあ、そう言わないで。」
「俺は一人になりたいんだ。邪魔しないでくれ。」
鬱陶しそうに言って、ダナエの横を通り過ぎようとする。
「ねえシウン。一人になりたいなら良い場所があるわ。」
「良い場所?」
「そんなマグマみたいな身体じゃ、どこへ行っても落ち着かないでしょ?
だったら・・・・ここに住めばいいわ。」
ダナエはコスモリングを見せ、ニコリと微笑んだ。
「この腕輪の中に住めばいい。」
「腕輪の中に?」
「ここに三つの宝石が填まってるでしょ?
この宝石は魂を宿すことが出来るの。
今は左の宝石が空いてるから、ここに住むっていうのはどう?」
「・・・・・・・・。」
「ここなら一人になれるわ。それに誰かに気を使う必要もない。
考え事をするには良い場所だと思うけど、どうかな?」
「・・・・・・・・・。」
思いもしないことを言われて、シウンは固まる。
コスモリングを見つめながら、困ったように俯いた。
するとアドネが「いいじゃないそれ」と言った。
「そこなら誰にも迷惑かけずに、考え事が出来るわ。
そして答えが出たら出てくればいい。」
「あんたは?」
「私はアドネ。その腕輪に宿ってる死神よ。」
「死神・・・・・。」
「その腕輪の中は快適よ。まるで海に抱かれてるみたいな気持ちになるの。」
「海に・・・・、」
「広い広い海が見えるのよ。波の音だって聴こえるわ。」
「馬鹿な・・・どうして腕輪の中に海なんか・・・・、」
「だってその腕輪は海の結晶だもの。いつだって海の傍にいる気持ちになれるわ。」
「海・・・・・・・・、」
「住んでる私が言うんだから間違いないわ。
その中に宿って、海を眺めながら考えればいいのよ。
きっと納得のいく答えが出るはずよ。」
そう言われて、シウンはコスモリングを見つめる。
「海・・・・広い海か・・・・・・。」
村を出て、船から広い海を眺めたことを思い出す。
希望に満ち、無限の未来を夢見たあの気持ちを。
「・・・・俺は・・・もう一度あんな気持ちで海を眺めたい。」
あの時の海を思い出し、小さく頷く。
「ダナエさん。」
「ダナエでいいわ。」
「その・・・・コスモリングとやらに住まわせてもらっていいか?」
「もちろん!」
ダナエはコスモリングを掲げ、「ここへ入りたいって願って」と言った。
「ここへ入るには条件があってね。一つは私が認めた者であるっていうこと。
もう一つは、その相手がここへ宿りたいっていう気持ちが必要なの。」
左の宝石を指さし、「ここがあなたの住処。自分の家だと思って」と言った。
「なら・・・・・俺はその宝石に宿りたい。
海を見ながら、じっくり考えたいんだ。復讐をするべきかどうか。」
そう願うと、シウンは炎の柱に変わった。
そして左の宝石の中に吸い込まれ、一瞬だけ赤く光った。
「いつか答えが出るまで、一緒に行こう。よろしくね。」
宝石を撫で、小さく頷く。
するとその時、街の方から眩い光が射した。
真っ暗な夜を切り裂き、光の筋が走る。
「何!?」
眩しさに目をしかめながら、街の方を見る。
するとUFOのような丸い発行体が二つ、夜空に浮かんでいた。
「あれは・・・・、」
UFOのようなその物体は、クルクルと旋回する。
そしてこちらへ飛んできて、ダナエたちを照らした。
「なにこのヘンテコな船は!?」
「分からねえ!こんなの初めて見るぞ!」
ダナエとコウは眩しそうにUFOを見上げる。
するとキーマが「リーバー!」と叫んだ。
「リーバー?」
「古代の乗り物よ。空を飛ぶことが出来る船。」
「古代の船・・・・・。」
ダナエは目を細めながらリーバーを見上げる。
「ねえ!あれ大砲が付いてない?」
「ええ、武装してるみたいね。でも攻撃してくる気配はなさそうだわ。」
二つのリーバーはクルクルと旋回する。
そしてしばらく宙に留まったあと、どこかへ飛び去ってしまった。
「すごい速さ!一瞬で見えなくなっちゃったわ。」
リーバーはあっという間に見えなくなってしまう。
「あれ、箱舟一号より速いわ。ラシルにもあんな船があったなんて。」
驚きながら言うと、「昔はそれなりの文明が栄えていたのよ」とキーマが答えた。
「邪神が暴れたせいで、そのほとんどは失われちゃったけどね。」
「また邪神のせいで・・・・、」
「でもそれでよかったかもしれない。
大きな文明が残っていたら、邪神はきっとそれを利用したわ。
そうなれば戦火は広がるだけだもの。」
「でもダレスは灼熱の超人部隊を作ろうとしてる。
そして強い軍隊を作って、この星を支配しようとしてるわ。」
ダナエは悲痛な顔で俯く。
キーマは「詳しい話は分からないけど、なんだか大変そうね」と頷いた。
「でもどうしてリーバーなんてもんが飛んでたのかしら?
あれはとうの昔に失われたはずよ。いったいどこの誰が・・・・・・、」
そう言いかけた時、街から衛兵がやって来て「なんの騒ぎだ!」と怒鳴った。
「大きな爆炎が見えたが、お前らの仕業か?」
武装した衛兵たちが、ダナエを取り囲む。
「街の傍でデカイ火を起こしやがって。延焼したらどうするつもりだ?」
「待って!これには事情があって・・・・、」
「問答無用。領主様のところまで引っ立ててやる。」
衛兵はダナエたちを捕まえ、街へ連行しようとする。
「ちょっと待って!話を聞いてってば!」
必死に訴えても、衛兵たちは聴く耳を持たない。
どうしたものかと困っていると、衛兵たちは突然フラフラとよろけ始めた。
そしてキーマの元に集まり、「えへへ〜」とデレデレした。
「な・・・何?」
ダナエは怪訝そうに驚く。
するとキーマが「ちょっと誘惑をね」と笑った。
「誘惑?」
「魅惑の魔力を放ったのよ。この魔力を受けると、みんな私に惚れちゃうの。」
「要するに魅了系の魔法ってことね?」
「そういうこと。」
キーマはウィンクを飛ばし、「今のうちに逃げなさい」と言った。
「こっちは私が何とかしとく。」
「ありがとう。」
ダナエは箱舟に向かって駆け出す。
そして「あ・・・・・」と振り返った。
「リラは?赤ちゃんはまだ・・・・、」
「生まれてないわ。」
「なら早くドリューを連れ戻さないと。」
そう言って足早に舟に向かう。
操縦室に入り、舵を握った。
そして宙に舞い上がると、「待って!」とアドネが言った。
「コウがいない。」
「ええ!どうして?」
「あそこ、キーマに魅了されてるみたい。」
アドネは窓の外を指さす。
そこには衛兵に混じって、デレデレするコウがいた。
「・・・・・・・・・・。」
ダナエはジトっと見つめる。
「はあ〜・・・」と首を振り、「ほんっとに女の人に弱いんだから」と呆れた。
「アドネ、悪いんだけど・・・・、」
「うん、連れ戻してくるわ。」
アドネは外へ行き、鎌で殴って気絶させる。
そして急いで箱舟まで戻って来た。
「お待たせ。」
「仕事が早いわよね、アドネって。」
「死神は迅速な仕事が肝心なのよ。魂を狩るハンターだからね。」
「間違ってコウの魂まで狩らないでね。」
「大丈夫よ、多分。」
二人はクスクス笑う。
「ねえダナエ、もしかしてさっきのリーバーってやつを追うつもり?」
「ううん、ドリューたちを助けに行く。
シウンの話じゃ北に向かったって言ってたから。」
「北か・・・・向こうに何かあったっけ?」
「分からない。でもとりあえず岬の街まで行きましょ。
そこから北に向かったって言ってたから、街まで行けば何か分かるかもしれない。」
「そうね。考えるより行動。ダナエらしくていいと思うわ。」
箱舟は空に昇り、岬の街を目指す。
気絶したコウが「キーマ様あ〜・・・・」と呟いていた。
            *
岬の街まで来たダナエたちは、異様な光景に言葉を失っていた。
「なんなのこれ・・・なんでこんな事になってるの!?」
ダナエはヒステリックに喚く。
その隣でアドネも「酷い・・・・」と呟いた。
「街が燃えてる・・・・。」
岬の街は炎に包まれていた。
あちこちで人が逃げまどい、建物は赤く燃え上がっていた。
「なんで・・・・どうしてこんなことに!?」
ダナエは操縦室から出て行く。
するとコウが腕を掴み、「待て」と言った。
「離して!街の人を助けないと。」
「嫌な予感がするんだ。」
「嫌な予感?」
「この街が燃えてるってことは、もしかしたらあの村も燃えてるかもしれない。」
「・・・・どういうこと?」
「俺がちょっと見て来る。ダナエは街の人たちを助けてやってくれ。」
コウは駆け出し、船の外へと飛んで行った。
「ちょっとコウ!」
後を追おうとするダナエだったが、「街の人が!」とアドネが叫んだ。
「あそこの時計塔、中に人がいる。」
高い時計塔が炎に包まれている。
窓から獣人や妖怪が顔を出し、助けを求めていた。
「大変!」
ダナエは急いで助けに向かう。
アドネも後を追い、炎に巻かれる人達を避難させた。
しかし炎の回りは速く、逃げ場は失われていく。
ダナエたちは箱舟に人々を避難させたが、それでも全員を助けるには間に合わない。
「ダナエ!水の魔法で火を消せない!?」
「これだけ燃えてると無理だわ!それに水や冷却系の魔法はそこまで得意じゃないし・・・、」
「ああもう!コウがいてくれたら消せたかもしれないのに!」
コウは水や土の魔法を得意としている。
そのコウがいない今、時間がかかっても地道に助けるしかなかった。
「ダナエ!箱舟にはまだ乗れるよね!?」
「乗れるけど、みんなを乗せる前に火が来ちゃうわ!」
街の人々は怯えながら身を寄せている。
唯一火の来ていない噴水広場に集まり、「助けてくれ!」と叫んでいた。
「今行くわ!」
ダナエは慌てて飛んでいく。
「俺はいい!子供を先に!」
「ちょっと何言ってんの!ウチの子が先よ!」
「お前らのガキなんざどうでもいい!ワシを先に助けろ!
金ならいくらでも払うから!」
「ちょ・・ちょっと待って!順番に助けるから!」
みんながダナエに群がり、子供を押し付けたり、自分から助けろとしがみつく。
「ああもう!こんなに抱えて飛べないから!」
ダナエは大声で怒鳴る。
しかしパニックになった人々は、ダナエから離れない。
遠くではアドネも掴まっていて「みんな落ち着いて!」と叫んだ。
火はだんだんと噴水広場に迫って来る。
「ああ・・・このままじゃみんな焼け死んじゃうわ。」
ダナエは魔法を唱え、広場の回りに竜巻を起こした。
渦巻く風が炎を防いでくれるが、そのせいで余計に激しく燃えがった。
「すごい熱・・・・炎は防げるけど、このままじゃ・・・・、」
熱風は噴水広場全体に広がっていく。
あちこちで「熱い!」とか「助けて!」と悲鳴が上がった。
「どうすれば・・・どうすればいいの!」
ダナエは困り果て、「コウ!早く戻って来てえ〜!」と叫んだ。
するとその時、コスモリングから激しい炎が噴き上がった。
群がっていた人々は慌てて逃げて行く。
炎は地面に降り立ち、中からシウンが現れた。
「シウン!」
「ダナエ、もっと竜巻を強く出来るか?」
「え?そりゃあ出来るけど、でもそんなことしたら余計に熱くなって・・・・、」
「・・・・・・・・。」
「・・・・・ああ!そういうことね!」
ダナエは頷き、風の魔法を唱える。
蝶の精霊が集まり、上空でグルグルと旋回した。
噴水広場を覆っていた竜巻は激しさを増す。
炎は空高くまで燃え上がり、街じゅうの火が一か所に集まった。
「熱い!」
「焼け死ぬううう!」
激しい熱風に人々が身を竦める。
しかしすぐに熱は引いていった。
なぜならシウンが炎を吸収したからだ。
手を広げ、胸の中に炎を吸い込んでいる。
激しい熱風も一緒に吸い込まれ、広場から熱が消えていく。
「すごい・・・・。」
ダナエは感心しながらその様子を見つめた。
シウンは炎を吸い続け、やがて街の火は全て消えてしまった。
「・・・・・・・・・。」
赤く輝く身体を見つめながら、シウンは頷く。
「使い様によっては、人を助ける道具にもなる。まんざら悪いものでもないな。」
そう言ってダナエを振り返り、「もう大丈夫だ」と言った。
「火は全部俺の中だ。熱も吸い取ったし、どこかから出火することもないだろう。」
「あ・・・・ありがとう!」
ダナエは喜び、いつものクセで抱きつこうとした。
「・・・・熱ッ!」
「それ以上近づいたら火傷じゃすまないぞ。」
シウンは可笑しそうに笑い、「じゃあ俺は戻る」と言って、コスモリングに吸い込まれた。
「助かったわ。ありがとうシウン。」
彼の宿る宝石を撫で、ニコリと頷いた。

前の職場に戻ることはいいことか?

  • 2017.01.28 Saturday
  • 14:12

JUGEMテーマ:仕事のこと

今やっている仕事を辞めて、新しい何かをしてみたい。
夢を追うとか、転職するとか。
そういうふうに思って仕事を辞めることってありますよね。
正社員だろうとバイトだろうと、そういう気持ちになることはあるはずです。
でも仕事を辞めたはいいものの、なかなか上手くいかないことの方が多いでしょう。
「こんなはずじゃなかった」とか「もっと自分に合う仕事があるはずだった」とか。
そんな時、前の職場に戻りたくなるものです。
一度外の世界へ出てみて、自分の幻想や甘さに気づくことってあります。
前の仕事が自分に合ってたんだとか、前の職場の方が居心地がよかったとか。
そういう時、以前の職場に戻るのは悪いことではないと思います。
実は私にもそういう経験があって、出戻りをしました。
そして戻った後は、以前よりも真面目に働くようになりました。
一度外の世界へ出てみて、自分の思い上がりや甘さに気づいたからです。
当時の上司にも「ええ経験やったやろ」と言われて、以前よりも多くの仕事を任されるようになりました。
以前なら面倒臭いと思っていた仕事。
だけどもうそんなことは思いませんでした。
こうして戻ってこられたんだから、きっちり働らかなきゃと気合が入りました。
だけど別の理由で辞めた場合はどうでしょう?
仕事が合さな過ぎて苦痛だったとか、あまりに職場の人間関係が悪くて、これ以上そこにいられなかったとか。
そういう場合、戻るのは良くないでしょう。
ていうか最悪は鬱病になりかねません。
もう耐えられないと思って辞めたなら、それは正解です。
無理していると肉体的にも精神的にも負担がかかります。
どんどんストレスが溜まって、夜も眠れなくなって、そのせいでまたストレスが溜まって・・・・。
心も体も負のスパイラルへ一直線です。
それに耐えられずに辞めたなら、元の職場へ戻ってはいけません。
例えば鬱病で休職した場合、同じ職場に戻ると、再発率は50%だそうです。
二度目の復帰だと70%、三度目の復帰だと90%になるそうです。
こんなの自分から病気になりに行っているようなものです。
だから例え鬱病じゃなかったとしても、限界がきて辞めた職場は戻らない方がいいでしょう。
なかなか新しい仕事が見つからなくても、出戻りだけはやめた方がいいと思います。
以前の職場に戻るのはいいことか?
それは辞めた理由によって変わるでしょうね。

ダナエの神話〜星になった神様〜 第四十話 新しい大地(2)

  • 2017.01.28 Saturday
  • 14:10

JUGEMテーマ:自作小説

「じゃあ俺をブッ飛ばしてから行くんだな。でなけりゃ俺がブッ飛ばすぜ!」
コウは一気に駆け寄り、シウンを殴り飛ばした。
「ごはッ・・・・、」
強烈な一撃を受けて、地面を抉りながら吹き飛んでいく。
「コウ!」
「ダナエ、こうするしかないんだ。」
「でもいきなり殴るなんて・・・・、」
「こいつのエネルギーは無限じゃない。戦えば熱を消耗して、また岩に戻るはずだ。」
「で・・・でも!岩に戻ったらまた崩れるんじゃ・・・・、」
「そうなる前に元に戻してやるんだ。何の為に精霊の御神体を持ってんだよ。」
そう言われて、ダナエは「そうだった!」とカバンを漁った。
赤い牙を取り出し、「これがあれば・・・」と息を飲む。
「そいつを託したってことは、シウンの親は期待してんだよ。
お前ならコイツを元に戻してくれるんじゃないかってな。」
「その為にこれを・・・・。」
「他の場所に祀るだけなら、わざわざお前に預けなくてもいいだろ。
でもコイツを元に戻そうとなると、おじさんやおばさんじゃ無理なんだ。」
「・・・・そうね、コウの言う通りだわ。
何の為にこれを預かったのか・・・・今ハッキリわかったわ。」
ダナエは赤い牙を握りしめ、「やってみる」と頷いた。
「これに願いを込めてみるわ。上手くいくかどうか分からないけど、でもそれしかないもんね。」
「頼んだぜ。俺はこの大バカ野郎を弱らせるからよ。その時がチャンスだ!」
コウは駆け出し、シウンに向かって行く。
「いつまでも寝てんじゃねえ!」
そう言って「土の精霊!」と叫んだ。
「俺の拳を大地に伝えろ!」
土の中からミミズの精霊が現れ、コウの拳に吸い込まれる。
そのまま大地を殴ると、グラグラと揺れて地割れが起きた。
倒れていたシウンは慌てて起き上がり、地割れから逃れる。
「遅いぜ!」
コウは大地に向けてアッパーを放つ。
地面を抉るように拳を打ち上げると、シウンの立っている足元が盛り上がった。
「なんだ・・・・、」
慄くシウン。
すると次の瞬間、足元の大地が拳に変わり、シウンを殴り飛ばした。
「ごはあッ!」
「まだまだ!」
コウは羽ばたき、一瞬でシウンの頭上へ回る。
そして右ストレートを放ち、拳から竜巻を撃った。
「うぐおッ・・・・、」
竜巻に巻き込まれ、大地に叩きつけられるシウン。
するとまだ地面が盛り上がり、倒れた大地から拳が飛び出した。
「ああああッ!」
「いくら超人って言ったって、戦い慣れしてなきゃこんなもんだ。」
シウンは強い。コウの攻撃を何度も喰らっているのに、致命傷にはなっていない。
それほどまでに強い肉体だったが、弱点があった。
それは戦闘経験がほとんどない為に、戦い方を知らないのだ。
「この戦い・・・長引かせるわけにはいかねえ!」
コウは一気に攻め込む。
ダラダラと長引くと、シウンは戦い方を覚えてしまうかもしれない。
今のうちに攻め込んで、とにかく弱らせないといけなかった。
「ダレスの元には行かせない。徹底的に弱らせてから、御神体の力で元に戻してやる。」
コウは拳を構え、マシンガンのように連打を放つ。
シウンは腕を上げて防御するが、あまりの激しい攻撃に圧倒されるだけだった。
「クソ!超人になったのに、どうして妖精なんかに・・・・、」
「言ったろ、経験がなきゃこんなもんだ。」
「だったら・・・・覚えてやる。お前との戦いで経験を積んでやる!」
「その前にブッ倒してやるよ!」
コウの渾身の右フックが、シウンの脇腹を抉る。
「ぐはッ・・・・・、」
「頭がガラ空きだぜ。」
左の拳を構え、グッと握りしめる。
「これで終わりだ!」
全体重を乗せた左フックが、シウンのこめかみを打ち抜いた。
「ごあああああッ!」
頭にヒビが入り、中からマグマが飛び散る。
ゴロゴロと地面を転がっていき、マグマをまき散らした。
「う・・・・ぐッ・・・・、」
シウンは苦しそうにもがく。
手をついて立ち上がろうとするが、フラフラとよろけて倒れた。
「そんな・・・・こんな所で・・・・終われない・・・・。
俺は・・・・復讐を・・・・・、」
悔しそうに呟きながら、歯を食いしばる。
しかし力が入らない。うつ伏せに倒れたまま、ピクリとも動かなくなった。
「気を失ったか。なら今のうちに水の魔法で冷やして・・・・、」
そう言いながらシウンに近づこうとした時、「危ない!」とダナエが叫んだ。
「コウ!よけて!」
「よける?」
「後ろ!」
言われて振り向くと、後ろから巨大な魔物が迫っていた。
「うお!」
コウは慌てて飛び退く。そして「こいつは・・・・」と見上げた。
「こいつは・・・・ワームか?」
コウの後ろにいたのは巨大なワームだった。
しかも全身がマグマのように赤くなっている。
「なんてデカさだ・・・・ニーズホッグ並だぞ。」
全長三十メートルはある巨大ワーム。しかもシウンのようにマグマの身体をしている。
大きな口を開け、何本もある牙を見せつけた。
口からはダラダラと唾液がこぼれ、地面に触れただけで煙を上げた。
「このワーム・・・・もしかして・・・・、」
そう呟くと、ダナエが「ムーちゃん!」と叫んだ。
「コウ!そのワームはムーちゃんだわ!」
「だな。アイツ以外にこんなデカいワームはいねえ。」
「でも全身がマグマみたいになってる。これじゃシウンと同じだわ。」
ダナエはグッと息を飲む。
するとムーちゃんの後ろから犬の獣人が現れた。
「あ!テメエは・・・・・、」
コウは犬の獣人を睨む。
「お前はダレスの会社にいた野郎だな。」
「ダレス様の命令により、シウンを奪いに来た。」
「なんだって!?」
「シウンはウチの会社の者だ。大人しく引き渡してもらおう。」
「バカ言ってんじゃねえ!誰がお前らなんかに・・・・・、」
「抵抗するのか?」
「当たり前だ。やるってんなら容赦しねえぜ。」
コウは犬の獣人に拳を向ける。
するとムーちゃんが「ニュウウウウ!」と叫びながら襲いかかってきた。
「うお!」
咄嗟に飛び退くと、ムーちゃんは地面に激突した。
そしてバリバリと地面を食い千切りながら、赤いマグマを垂れ流した。
「おいムーちゃん!お前いつからそんな凶暴になったんだよ!
もっと大人しい奴じゃなかったのか?」
「ニュウウウウウ!」
ムーちゃんは口を開け、マグマと唾液を混ぜた液体を吐く。
コウは咄嗟に水の魔法を唱え、巨大な水の壁を作った。
ムーちゃんの吐いた液体は水の壁にぶつかり、一瞬で蒸発させてしまう。
そしてその後に黄色い煙が上がり、それを吸い込んだコウは「ぐッ・・・」と苦しんだ。
「この煙・・・・毒か?」
「ワームの唾液とマグマの硫黄が混ざって、猛毒に変わったのだ。」
犬の獣人はニヤリと笑う。
「このワームはウチの建設会社で飼っていたものだ。
ゴリラの獣人がペットにしていた。」
「なら・・・やっぱりムーちゃんなんだな。それがどうしてこんな姿に・・・。」
「改造したからさ。」
「か・・・・改造?」
「我が社が開発したのは、鎧や武器だけじゃないんだよ。」
「なに?」
「こういう薬もある。」
そう言って懐からカプセル剤を取り出した。
「コイツにはゴグマの鱗から抽出した成分が入っている。
それをアレやコレやして、色々と混ぜたわけだ。」
「急に適当な説明になったな。お前も理解してないんだろ?」
「うるさい!詳しい中身など理解していなくても、効果が出ればそれでいいんだ。」
犬の獣人は牙を剥き出して唸る。
「当初はこれをメインにするはずだった。
こいつを飲ませれば、誰でも灼熱の超人になれるからな。
しかしそう上手くはいかなかった。
副作用のせいで、時間が立つと死んでしまうからだ。」
「死ぬ・・・・だって?」
「体内の熱が上がり過ぎて、やがて自分自身の炎で焼き尽くされる。
だから実用化はされなかった。
今ここにあるのは、試験用に作った残り物だ。」
そう言って薬をしまい、「しかし使い捨ての駒を強化するには役に立つ」と笑った。
「この薬を飲んだ者には刷り込み現象が起こる。」
「刷り込みって・・・・最初に見たものを親だと思うあれか?」
「そうだ。ワームに薬を飲ませたのは俺だ。
だから俺の言うことなら何でも聞く。死ぬまで俺の命令に従うわけだ。」
犬の獣人はニヤリと笑い、「抵抗するならこのワームでお前たちを殺す」と睨んだ。
「コイツは飯ばかり食う役立たずだったが、薬のおかげで強くなった。
お前らに勝ち目などない。」
「ふん!しょせんワームはワームだろ。そんなもん一撃でブッ飛ばして・・・、」
そう言って飛びかかろうとした時、ダナエが「やめて!」と叫んだ。
「どうした?」
「だってそんなことしたらムーちゃんが・・・・、」
「何言ってんだよ。コイツは敵なんだぞ。」
「それは薬を飲まされたからでしょ。本当は大人しくて優しい子なのに・・・、」
ダナエは悲しそうな目でムーちゃんを見つめる。
「どうして・・・どうしてこんなことするの?
シウンもムーちゃんも、何にも悪いことしてないのに。
それをなんでこんな風に・・・・・。」
変わり果てたムーちゃんを見つめ、目元が潤む。
「どうして何でもかんでも戦いの道具に変えようとするの?
なんでお金儲けの道具にしようとするのよ!」
「儲けて何が悪い?」
獣人の言葉に、ダナエは目を吊り上げた。
「・・・あなたもダレスと同じことを言うのね。」
「ダレス様の言うことは正しい。
強くて賢い者が上に立つ。それ以外の者は利用されても文句は言えない。
嫌なら強くて賢くなればいいだけだ。」
「強いとか賢い以外にも、大事なことはあるわ。」
「ほう、それは何だ?」
「優しさとか思いやりとか、誰かを大切にするとか。
そういうものだって大事じゃない。」
「なるほど・・・・ダレス様が愛想を尽かすわけだ。」
犬の獣人は可笑しそうに笑う。
「ガキの妄想に付き合うだけ時間の無駄だ。
シウンを引き渡す気がないのなら、ここで死んでもらう。」
犬の獣人は「行け!」と命令する。
ムーちゃんは「ニュウウウウウ!」と吠え、地面の中に潜って行った。
「しまった!地中から攻撃するつもりか!」
コウは慌てて宙に舞い上がる。
すると地面が割れて、赤いマグマが噴き出した。
「うおおおおお!」
辺りが溶岩の海に変わり、「ダナエ!」と叫んだ。
「シウンを連れて逃げろ!」
「コウはどうするの!?」
「こいつらを足止めする。」
コウは水の魔法を唱え、サメの精霊を呼び寄せる。
「マグマなら冷やしてやればいいだけだ!」
サメの精霊に指を向け、「行け!」と振り下ろす。
すると魚雷のように飛びながら、マグマの中に突っ込んだ。
サメの精霊はマグマにぶつかり、もうもうと水蒸気を上げる。
コウは次々にサメの精霊を呼び出し、マグマに突撃させた。
激しい水蒸気が上がり、辺りが真っ白に染まる。
するとその水蒸気の中から、再びサメの精霊が現れた。
「こいつらは何度でも突っ込むぜ!マグマがただの岩に変わるまでな!」
サメの精霊は突撃と再生を繰り返す。
マグマはだんだんと冷えていって、やがてただの岩に変わってしまった。
「おのれ・・・・、」
犬の獣人は悔しそうに唸る。
しかし「これで勝ったと思うなよ」と笑った。
「ワームはまだ生きている。この程度ではくたらばない。」
「なら岩になるまで冷やしてやるよ。地上へおびき出してな。」
コウは金属の精霊を呼び寄せ、拳を巨大化させる。
そしてサメの精霊を吸収して、拳を魚雷のように変えた。
「うおおおおおおお!」
大地に向かって急降下し、魚雷のような拳を叩きつける。
するとバキバキと地面が割れて、その中に水が溢れた。
中に潜んでいたムーちゃんは、「ニュウウウウウ!」と叫びながら出て来る。
「身体が冷えちゃマズイもんな。もう地中へは潜れねえぜ!」
コウの一撃で、辺りは地割れと水浸しになっていた。
ムーちゃんは口を開け、憎らしそうに吠えた。
「ニュウウウウウウ!」
「これでトドメだ!」
もう一度拳を魚雷に変え、ムーちゃんに飛びかかる。
するとダナエが「コウ!」と叫んだ。
「ダナエ!悪いがこうするしかねえ!後で弔ってやるから許せ!」
コウは渾身の一撃を叩きこむ。
ムーちゃんは悲鳴を上げ、頭から尻尾までバキバキとヒビ割れていった。
そしてヒビの中から水が噴き出し、マグマが冷えていく。
「ニュウウウ・・・・・・、」
「悪いな・・・・。」
ムーちゃんは熱を失い、ただの岩に変わる。
そして頭からボロボロと崩れていった。
「ムーちゃん・・・・。」
ダナエはグスッと鼻を鳴らし、「ごめんなさい・・・」と呟いた。
「ダナエ!泣いている場合じゃねえぜ。早くシウンを連れて逃げ・・・・、」
そう言いかけた時、犬の獣人が「ウォオオオオン!」と吠えた。
「な・・・・なんだ?」
「おのれクソガキども!シウンは渡さんぞ!」
犬の獣人は大量の薬を取り出す。
それを口に放り込むと、ガリガリと噛み砕いた。
「お・・・・お前・・・何してんだよ!」
「シウンを逃したとなれば、ダレス様に会わせる顔がない!」
「何言ってんだよ!そんなことしたらお前も死んじまうぞ!」
「このまま戻ればクビになる。ダレス様は無能な部下を嫌うからな。」
「だからってそこまでするか・・・・。」
犬の獣人は赤く輝き、マグマの身体へ変わっていく。
大量に薬を飲んだせいで、まるで魔獣のような姿になった。
元の姿の何倍も大きくなり、全身から火を噴いている。
目は真っ赤に染まり、口からマグマを垂れ流した。
「俺は中途半端な奴が一番嫌いだ!」
マグマをまき散らしながら、倒れるシウンを睨む。
「俺も奴と同じように、辺鄙な村の出身だ。
しかしダレス様に雇われ、命懸けで働いた。
そして側近の座を手に入れるまで昇りつめた。」
「シウンと似たような境遇なら、アイツに同情してやったらどうだよ?
気持ちは分かるはずだろ?」
「いいや、俺は奴を許せない!
せっかく生まれ変われるチャンスを掴んだのに、土壇場で逃げ出そうなどと・・・。
変わりたいと望んでも、チャンスの無い奴は大勢いる。それなのに・・・・。」
そう言って牙を剥き、苦しそうに顔を歪めた。
「お前・・・・もう死にそうになってるじゃねえか。」
「あれだけ薬を飲んだんだ。副作用も強くなる・・・・。
だが後悔はしない・・・・。俺は途中で逃げ出したりしないからな!」
魔獣と化した獣人は、灼熱の息を吐きかける。
コウは咄嗟にかわすが、あまりの熱の顔を歪めた。
「うおおおおッ・・・・、」
「自分を変えるのは命懸けだ!
俺はしょうもないあの村から這い上がる為に、文字通り命を懸けた。
ダレス様に認められる為に、死にもの狂いでやってきたんだ!」
クルリと一回転し、巨大な尻尾を叩きつける。
コウは間一髪でかわしたが、また激しい熱が襲ってきた。
「ぐッ・・・・マジかよ・・・・金属の身体が溶けだしてる・・・。」
マッスルモードで強化した身体が、熱に耐え切れずに赤く染まる。
まるで汗を掻くように、表面からポタポタと溶けていった。
「何も持たない者が這い上がるには、命を懸けるしかない!
途中で逃げ出すなど許されないんだ!」
今度は腕を振り上げ、鋭い爪で切りかかった。
その動きは素早く、コウは咄嗟に腕を上げて防御した。
「ぐううおおおおお!」
灼熱に染まった獣人の爪が、いとも簡単にコウの腕を焼き切る。
「ぐああああ・・・・俺の腕が・・・・・、」
「両腕を失ったな・・・・もう勝ち目はないぞ。シウンを渡せ。」
「へ!こんなもん・・・・すぐに回復の魔法で・・・・、」
「そんな暇を与えると思うか?」
獣人は炎の息を吹きかける。
コウはまともにそれを喰らい、さらに溶けていった。
「おああああああああ!」
「逃がさん!」
慌てて後退していくコウに、獣人が噛みつく。
巨大な牙に貫かれ、コウは悲鳴を上げた。
「ぎゃああああああ!」
牙が腹を突き刺し、背中にまで貫通する。
金属の身体はパキパキと音を立て、いつ粉砕されてもおかしくなかった。
「おおおお・・・・ぐうあああああああ!」
「人生は戦いだ。生きるか死ぬかだ。
途中で逃げ出す奴なんざ、何をやったって変わりはしない!」
「ぐはあッ・・・・・うおおおおおお!」
「俺はここで死ぬが、そんなもんはハナから覚悟の上だ。
ダレス様に雇われたその時から、命を懸ける覚悟など出来ている!」
「て・・・てめえ・・・・死んだらそこで終わりだぞ・・・・。
変わるもクソもねえだろうが・・・・・、」
「それは違う。死ぬ覚悟がなければ、どん底から這い上がることなど出来ない。
本当なら辺鄙な村で終えるはずだったこの人生・・・・・。
それがデカい会社の側近にまで昇りつめたんだ・・・・悔いはない!」
獣人はコウを噛み砕こうとする。
メキメキと音を立てながら、さらに牙を食い込ませた。
しかしその時、誰かがその牙を切り払った。
「うおおおお!」
獣人は驚き、慌てて後ろに下がる。
口の中からコウを落とし、「なんだ貴様は!」と睨んだ。
「コウは私の友達よ。殺させたりなんかしない。」
そう言ってコウを守るように立ちはだかったのはアドネだった。
その隣にはダナエもいて、コスモリングから槍を呼び出す。
そして槍の中から武神の剣を伸ばし、「もうやめましょう」と言った。
「これ以上戦ったって、何にも残らないわ。」
「黙れガキども!醜態をさらしたまま終われるか!
せめてシウンを・・・あいつをダレス様の元に届けるまでは・・・・、」
獣人は今までで一番激しく燃え上がる。
立っている地面が溶けだし、自分自身も熱に耐え切れずに溶け始めた。
「シウンを寄こせええええ!」
牙を剥き出し、ダナエたちに飛びかかる。
「ダナエ!早くコウを!」
アドネは鎌を振り上げて迎え撃つ。
しかし獣人の動きは早く、一瞬で距離を詰めてきた。
アドネは正面から受け止め、激しい熱に晒された。
「ああああああああ!」
「アドネ!」
ダナエも加勢に入るが、とても太刀打ちできない。
二人とも獣人の炎に巻かれ、激しい熱風で吹き飛ばされた。
「きゃあああああああ!」
炎に巻かれながら宙を舞う。そして箱舟に叩きつけられた。
「う・・・うう・・・・・、」
ダナエはどうにか身体を起こす。
すると覆いかぶさるようにしてアドネが倒れていた。
「アドネ!」
「・・・・ダナエ・・・・無事?」
「アドネ・・・・私を守って・・・・・。」
アドネは身体の半分が焼かれていた。
手足が炭に変わり、死神の鎌まで焦げている。
「アドネ!しっかりして!」
「私はいいから・・・・コウを・・・・。あのままじゃ死んじゃう・・・。」
コウは腹に穴を空けられて、ぐったりと倒れている。
頑丈な金属の身体が、熱によって粘土のように歪んでいた。
「コウ!」
アドネを抱えたまま、コウの元に飛び寄る。
「しっかりして!」
「・・・・・・・・。」
「目を開けてよ!お願い!」
コウは目を半開きにして、何の反応も示さなかった。
微かに生きてはいるが、このままではいつ死んでもおかしくない。
「私の回復魔法じゃこんなの治せない・・・・どうしたら・・・・、」
どうしたらいいのかと困った時、「そうだ!」と何かを思い出した。
「街に戻ればキーマがいるはず!彼女ならきっと助けてくれるわ!」
アドネとコウを抱え、街を振り返る。
すると目の前に獣人がいて、殺気のこもった目で睨んでいた。
「あ・・・・・、」
「シウンはどこだ?」
「・・・・・・・・。」
「どこに隠した?」
「・・・・教えない。」
「・・・・船の中か?」
そう言って箱舟を睨み、「あの中か?」と尋ねる。
「・・・・・・・・。」
「答えろ。」
「・・・・・ヤダ。」
「そうか・・・・。なら仲間もろとも死ね。」
獣人は口を開け、マグマを垂れ流す。
ダナエは首を振り、「どうしてそこまで・・・・」と呟いた。
「そんな姿になってまで、どうしてシウンを奪おうとするの?
死んじゃったらそこで終わりじゃない。」
「質問に答えろ。シウンはどこだ・・・・?」
「教えない。」
「ならお前の仲間ごと死ぬだけだ。」
「いいえ、コウもアドネも守るわ。」
ダナエはキッと目お吊り上げる。そして背後に蛾の精霊を呼び出した。
「そこをどいて。」
「どけだと?何を馬鹿な・・・・、」
「なら戦うだけよ。」
蛾の精霊の力で、悪魔の姿に進化しようとする。
するとその時、目の前に誰かが立ちはだかった。
「シウン!」
「・・・・・・・。」
シウンは獣人の前に立ち、冷徹な表情で見つめた。
「出て来ちゃダメ!隠れてて!」
「こいつは憐れな奴だ。」
「え?」
「ダレスなんかに命を懸けて・・・・馬鹿な奴だよ。」
シウンは手を広げ、獣人に近づく。
「あんな欲望の亡者に尽くすなんて、お前は可哀想な奴だ。」
「ふん!途中で逃げ出した奴が何を言う!
そんなことだから良いように利用されるんだ!」
「利用されてるのはお前も同じだ。お前が死んだって、ダレスは同情なんてしないぞ。」
「同情などいらん!ダレス様の役に立てればそれでいい!」
「自分よりダレスか?」
「あの方のおかげで、俺は変わることが出来た。
辺鄙な村で人生を終えずに済んだんだ。いくら感謝しても足りない・・・・。」
獣人は一瞬だけ会社を振り返る。
そしてすぐにシウンを睨み、大きな雄叫びを上げた。
「あそこに俺の全てがあった。ダレス様の為、そして会社の為に死ねるなら本望だ!」
身体から激しい炎が噴き上がり、火柱が昇る。
熱風が吹き荒れ、ダナエは「きゃあ!」と後ろへ下がった。
「シウン!早く逃げて!」
「俺は・・・・逃げない。もう逃げたくないんだ。」
「でも死んじゃうわ!死んだらそこで終わりに・・・・、」
「死ぬより怖いことだってある。それは・・・自分を嫌いになることだ!」
シウンは両手を広げたまま駆け出す。
「馬鹿が!自分から飛び込んでくるとは。」
獣人は手を伸ばし、シウンを掴む。
「このままダレス様の所へ連れて行ってやる。
そうすれば灼熱の超人部隊が完成し、この星はダレス様のものだ。」
嬉しそうに笑い、シウンを持ち上げる。
しかしその時、ガクンと力が抜けた。
「な・・・なんだ?」
膝をつき、思わず倒れそうになる。
「力が抜けていく・・・・どうして・・・・、」
「忘れたか?」
「なに?」
「俺は灼熱の超人だ。どんな熱でも吸収し、力に変えることが出来る。」
「・・・・・あ!」
「今頃気づいても遅い!」
シウンは獣人の腕を叩きつける。
たった一撃で粉砕し、灰に変えてしまった。
「うおおおおおお!」
「お前の熱を全て吸収してやる!」
シウンは獣人にしがみつく。
ガッチリと腕を回し、指を食い込ませた。
「この・・・・離れろ!」
獣人は必死に殴りつける。しかしビクともしない。
「ぐうう・・・・おのれ!」
大きな口を開け、丸飲みにしようとする。
しかしどんどん熱を奪われて、立っていることすら出来なくなった。
「そ・・・そんな・・・・こんな臆病者ごときに・・・負けるのか?」
「お前の飲んだ薬は失敗作だろ?でも俺は違う。
テストを乗り越え、超人に生まれ変わったんだ。」
「ううう・・・ぐううッ・・・・・、」
「ダレスの為っていうなら、お前もテストに参加すればよかったんだ。
自分が超人になれば、いくらでもダレスに貢献できたのに。」
「うううう・・・・ぐううおおおおおおお!」
獣人は悔しそうに吠える。
天に向かって牙を剥き、「ふざけるなあああああ!」と叫んだ。
「お前ごときに説教などされたくない!
俺は・・・・俺は命懸けで戦ってきたんだ!
それをこんな臆病者に貶されてたまるかあああああ!」
獣人の身体が青白く光る
マグマを超え、プラズマが発生するほど熱くなった。
あまりの熱に地面が沸騰し、地獄の蓋が空いたかのような光景に変わる。
空気が一瞬で膨張し、爆風が起きた。
「きゃああああああ!」
ダナエは必死にコウとアドネを守る。
ギュッと抱きしめ、熱から遮るように覆いかぶさった。
「あ・・・・・熱い・・・・、」
あまりの熱に羽が溶けていく。
呼吸すらも出来なくなって、「このままじゃ・・・」と呻いた。
「蛾の精霊!私に進化の力を!」
そう叫んで進化しようとした時、熱が引いていった。
「これは・・・・、」
後ろを振り返ると、シウンが青白く輝いていた。
辺りの熱を吸収し、獣人のプラズマさえ吸い込む。
「おおおおおお!おのれええええ・・・・・、」
獣人の光が弱くなっていく代わりに、シウンの光が強くなる。
バチバチと放電しながら、さらに青白く輝いていった。
「くそう・・・・こんな・・・こんな憶病者に・・・・、」
獣人は悔しそうに呻く。
身体は熱を失い、ただの岩へと変わっていく。
シウンは獣人を離し、真っ直ぐに見つめた。
「俺は臆病者なんかじゃない。」
「ううう・・・ぐッ・・・・・、」
「超人になったんだ。弱いから・・・憶病だからここまで来れた。
これからはもう憶病者じゃない。逃げたりなんかしないぞ!」
拳を握り、力を溜める。
「先に向こうへ逝っとけ。じきにダレスも送ってやる。」
「ぐうううう・・・・あおのれえええええええ!」
獣人は天に向かって吠える。
シウンは拳を構え、思い切り殴った。
青白く輝く拳が、一瞬で獣人を蒸発させる。
その威力は凄まじく、獣人の立っていた後ろの大地まで沸騰させた。
青白いプラズマが走り、爆風が起きる。
グツグツと大地が沸騰し、マグマのように変わった。
「・・・・・・・・・・。」
シウンは拳を握ったまま、悲しそうに口元を噛む。
ゆっくりと手を下ろし、茫然と立ち尽くした。

ダナエの神話〜星になった神様〜 第三十九話 新しい大地(1)

  • 2017.01.27 Friday
  • 12:54

JUGEMテーマ:自作小説

プアカブの街には大きなビルが並んでいる。
その中でも特別大きいビルが、ダレスの本社だった。
ダレスはその最上階で葉巻を吹かしていた。
思案気な顔で煙をくゆらせ、グラスに酒を注ぐ。
それをグイと飲み干すと、ニヤリと笑った。
「金に困った能無し共のおかげで、テストは上手くいった。
どこへ逃げても無駄だ。必ず捕まえて、灼熱の超人部隊を作り上げる。」
ダレスは知っていた。シウンたちが生きていることを。
岬の街から二号が飛び去るのが見えて、思わず唸った。
「どうしてあんな場所に箱舟が飛んでたのかは分からねえ。
しかし必ずあの船に乗ってたはずだ。」
箱舟が飛び去るのを見た瞬間、すぐにピンと来た。
今回の件には必ずダナエが関わっていると。
「あのオテンバは、困ってる奴を見捨てておけねえからな。
何かの事情で岬の街の近くまで来て、それでシウンどもと出くわしたに違いねえ。
そして奴らを逃がす為に船を飛ばした。」
酒をつぎ足し、一気に煽る。
「しかし問題なのは、もう一つの箱舟も消えてるってことだ。
ダナエ、コウ、カプネ、ドリュー、全員が姿を消してる。
せっかくスイートルームを用意してやったのになぜだ?」
ダレスは考える。
箱舟が二つとも消えているということは、片方にダナエが乗り、もう片方にカプネが乗っているはずだと。
「あのオテンバは大砲の付いている船は嫌ってたはずだ。
ならもう一つの箱舟に乗ってると考えるのが自然だが、それだと理屈に合わねえ。
岬の街から見えた、大砲の付いた箱舟。あれに乗ってるはずなんだ。
もしあれにカプネが乗っていたら、シウン共を逃がすなんてお人好しな真似はしねえだろうからな。」
また酒を注ぎ、口の中で転がす。
「まあいい。シウン共を追う手段はいくらでもあるんだ。
俺様だって空飛ぶ乗り物の一つや二つは持ってるんだからよ。」
そう言って立ち上がり、窓の外を見つめた。
「強い軍隊を作るには、強い兵隊だけじゃ駄目だ。
その兵隊を輸送する乗り物が必要になる。
あのオテンバの船を借りたおかげで、俺様にも空飛ぶ船が手に入った。」
ダレスはニヤリと笑う。
「この星にだってそれなりの文明はあるんだ。
昔に邪神が暴れたせいで、その大半は失われちまったがな。
しかし地中深くに過去の遺物があった。かつて空を飛んでいた船がな。」
ダレスは様々な会社を持っている。
金融、建設、飲食、不動産、そして地下資源を採掘する会社。
「地下には色んな資源が眠ってる。そいつを掘り起こすのに立てた会社が、まさか昔の空飛ぶ船を見つけるとは思わなかった。」
地下資源を採掘する会社は、重機を使って地中深くの資源を調べる。
しかしその調査の途中で、不思議な形をした船を見つけたのだ。
それも二つ。
どちらもUFOのような丸い形をしていて、船体の下にスクリューのような物が付いていた。
ダレスは学者を雇い、その船を調べさせた。
すると大昔の文献に、これとよく似た船が載っていたのだ。
名前はリーバーといい。、大きさは直径三十メートルほど。
銀と特殊な鉱物で出来ていて、魔力と熱を与えることで飛行することが出来る。
しかしその船は地中深くに埋まっていて、普通の重機では取り出せない。
そこで箱舟二号が必要だった。
あの船の大砲なら、リーバーの埋まっている地中近くまで、一発で吹き飛ばせる。
その後はワイヤーを結び付け、地上へ運び出だすだけだった。
「嬢ちゃんの箱舟のおかげで、無事にリーバーは取り出せた。後は量産化するだけだ。」
学者を雇い、詳しく調べさせ、いずれは軍事利用するつもりだった。
「強い兵隊に、空飛ぶ輸送機。量産化に成功すれば、邪神なんか目じゃねえ。
それどころかこれを商売にして、この星を牛耳ることが出来る。」
笑いを噛み殺しながら、椅子に座る。
残った酒を全部注ぎ、一息に飲み干した。
「後はシウンどもさえ捕まえれば、俺の夢は叶うってわけだ。」
そう言って葉巻を吹かし、「その為にも・・・」と天井を見上げた。
「早えとこリーバーを武装化しねえとな。
シウンどもは灼熱の超人になってるはずだ。
それを捕まえるには、こっちもそれなりの兵力がいる。」
ダレスは部下に指示を出し、リーバーを武装化しようとしていた。
それが完成するまでの間は、シウンを追うことは出来ない。
社長室で寛ぎながら、武装化が完了するのを待つしかなかった。
するとそこへ、「失礼します!」と犬の獣人が入って来た。
「ノックくらいしろ。鼻を折られたいか?」
「申し訳ありません!」
犬の獣人はビシっと敬礼する。
「急ぎの用でしたのでつい・・・・、」
「何だ?」
「は!ダナエという妖精が、ダレス様に会わせろとここへ来ていまして。」
「あのオテンバが?」
「今は一階のロビーにいます。」
「・・・・そうか。すぐに通せ。」
「はは!」
犬の獣人は回れ右をして、駆け足で出て行く。
ダレスは煙を吐きながら、「文句でも言いに来たかな」と笑った。
「箱舟でシウン共を逃がしたってことは、奴らの口から聴いてるはずだ。
俺が今まで何をしてたのかを。」
ダレスは思った。ダナエは怒っているはずだと。
金に困った奴らを利用して、超人を生み出すのに利用した。
ダナエがそれを知ったら、絶対に黙っているはずがない。
ここへ乗り込んで、おっかいない顔で問い詰めて来るだろうと。
「・・・・ガキが。そろそろ連中との関係も終わりだな。」
ダレスは何よりも自分の商売を大事にしている。
ダナエたちは商売の役に立つから、手を組んでいただけだった。
「これ以上は鬱陶しいだけだ。余計な駒はとっとと捨てるに限るからな。」
葉巻を吹かしながら、ダナエがやって来るのを待つ。
するとしばらしくしてから、「お連れしました」と犬の獣人が入って来た。
「通せ。」
「はは!」
犬の獣人の向こうから、ダナエが現れる。
そしてダレスを見るなりこう言った。
「悪そうな顔。」
いきなりそう言われて、ダレスは笑った。
「はははは!もう全部お見通しってわけだな。」
「シウンから聴いたわ。あなたが何をやってたのか。」
「ほう・・・・それで?」
「彼に謝って。」
「謝るだと?」
「ここへ連れて来てるの。」
「なに?」
「だから謝って。」
「・・・・・・・・。」
ダレスは椅子から立ち上がる。
ダナエに近づき、「シウンがここにいるのか?」と睨んだ。
「そうよ。」
「どこだ?」
「船の中。」
「そうか・・・・そりゃいいや。追いかける手間が省けた。」
そう言ってダナエに煙を飛ばし、「連れて来てくれて感謝するぜ」と笑った。
「あいつはウチで雇ってるんだ。こっちへ引き渡してもらおう。」
「お断り。」
「じゃあなんで連れて来た?」
「だから謝ってもらう為よ。」
「・・・・本気で言ってるのか?」
「シウンは酷い目に遭ったわ。そしてすごく怒ってる。ダレスに復讐を誓うほどね。」
「ほう、そりゃおっかねえ。」
「冗談で言ってるんじゃないわ。このままだと、シウンはあなたを殺しかねない。
そんなことをすれば、彼のおじさんとおばさんが悲しむ。」
「もうすでに一人殺してるだろ。ウチの社員だった魚人が見当たらねえ。
おそらくシウンが殺ったんだろうぜ。」
「そうね。だからこそこれ以上誰かを殺すなんてさせたくない。」
「ふん!散々敵をぶっ殺してきた奴に言われてもな。」
「それはそうするしかなかっただけ。やりたくてやったんじゃないわ。」
「まあ相手が悪魔や魔物じゃな。殺す以外にはねえよな。」
「でもシウンは違う。復讐の為に誰かを殺すなんて、不幸になるだけよ。」
「もうなってるさ。今はマグマの怪物なんだろ?」
「今はね。でも元に戻れる可能性はあるわ。」
「なんだと?」
「言っとくけど教える気はないわよ。それを知ったら、どうせまた自分の商売に利用するだろうから。」
「悪いかよ。」
「うん、悪いわ。」
ダナエは首を振り、キッと睨み付ける。
「ダレス、あなたと言い争う気はないわ。ただシウンに謝ってほしいの。
私の頼みはそれだけ。」
ダナエはじっと見つめる。
表情を変えずに、ダレスがどう返事をするのかを待った。
「・・・・謝るねえ。」
ダレスはポリポリと頭を掻き、「条件しだいで謝ってもいいぞ」と答えた。
「シウンをこっちへ引き渡すってんなら、いくらでも謝ってやる。土下座してもいいぜ。」
「そんなの謝ったことにならないわ。」
「なんだと?」
「それは謝ったフリをしてるだけじゃない。そんなのシウンは納得しないわ。」
「フリかどうかなんて、どうしてお前に分かる。俺は心から謝るつもりだぜ。」
「じゃあ条件なんて無しで謝ってよ。それなら納得するわ。」
「それは出来ねえ。」
「どうして?」
「どうしてもだ。」
「・・・・そう。ならこのままシウンを連れて帰るわ。」
ダナエは背中を向け、部屋から出て行こうとする。
「言っておくけど、力づくで奪うなんてしないでね。
もしそんなことをしたら、もう二度とあなたを仲間だなんて思わない。」
「へえ、そうかい。」
「ダレス、今のあなたは信用出来ないわ。そのままだと、いずれ真っ黒に心が染まる。
邪神と同じになっちゃうわ。」
「いいじゃねえか、そうなっても。」
「それ本気で言ってるの?」
「邪神と同じで何が悪い?」
「でも邪神が憎いんでしょ?だったら・・・・、」
「だったら邪神を殺すだけだ。そして俺がこの星を支配する。
いつの時代だって、強くて賢い奴が上に立つんだ。
お前みたいな甘っちょろいガキには分からねえだろうがな。」
そう言って椅子に戻り、「とっとと失せろ」と言った。
「もうお前らに用はねえ。」
「それ・・・どういう意味?」
「お前らとの関係を終わらせると言ってるのさ。
これ以上青臭いおべんちゃらを聞かされるのはゴメンだからな。」
「ダレス・・・・・。」
「俺の商売を邪魔する奴は、誰であろうと許さねえ。邪神だろうとお前だろうとな。」
「・・・・・・・・・。」
「ほら、分かったらとっとと出てけ。」
シッシと追い払うダレス。
ダナエは悲しそうな顔をしながら、「分かったわ」と頷いた。
「でもダレス・・・あなたは本当は悪い人じゃない。それだけは忘れないで。」
「そうかい。嬉しくて涙が出るぜ。」
「今まで手を貸してくれてありがとう。それじゃあ・・・・。」
ダナエは小さく微笑む。そして寂しそうな足音を響かせながら、部屋を後にした。
それを見送ったダレスは「おい」と犬の獣人に言った。
「シウンを奪え。」
「はは!」
「それと『アレ』を使え。あのオテンバどもは強えからな。油断するなよ。」
「は!」
犬の獣人は駆け足で出て行く。
ダレスは窓の傍に行き、街の外れに停まっている箱舟を睨んだ。
「あそこにシウンがいる。夢への鍵がある。絶対に逃がさねえよ・・・・・。」
ダレスの顔が、獰猛な獣のように歪む。牙を剥き、ギラリと目が光る。
「俺の商売は誰にも邪魔させねえ。
この星は俺のもんだ。物も、命も、資源も、金も、文明も、何もかも俺のもんだ。
それを手に入れる為なら、なんだってやってやる。
邪神だろうが悪魔だろうが・・・・あのオテンバだろうが、一切容赦はしねえ。
八つ裂きにしてやるぜ。」
獰猛な顔が、さらに獰猛に歪む。
ダレスの野心は灼熱のように燃え上がった。
            *
「どうだった?」
コウが箱舟から出て来る。ダナエは首を振った。
「浮かねえ顔だな。やっぱ無理だったか?」
「謝ってくれるって・・・・。」
「マジかよ!?信じらんねえ。」
「でも・・・・、」
「でも?」
コウはダナエの顔を覗き込んだ。
「えらい寂しそうな顔をしてるな。なんでそんなに落ち込んでんだ?」
「ダレスは謝るって言ってくれたわ。でもその代わり、シウンを寄こせって。」
「ああ、なるほど。アイツの言いそうなことだな。」
コウは可笑しそうに笑った。
ダナエは首を振り、「それだけじゃないの」と言った。
「もう私たちとの関係は終わりにするって・・・・。」
「ん?」
「仲間じゃないって言われたわ。」
「ふう〜ん、俺たちが鬱陶しくなったのかな?」
「多分ね。」
ダナエはダレスの会社を振り返る。
「このままじゃダレスはどんどん悪い人になっちゃう。
それこそ邪神と同じように・・・・。」
「元々そういう奴だよ、アイツは。ていうかいつかこうなると思ってたぜ。」
「コウ・・・。あんたはダレスを信用してなかったの?」
「うん、まったく。」
「・・・・・・・・。」
「アレを信用する方がどうかしてるだろ。だってトイチの金貸しだぜ?
金に困ってる奴らを利用して、大金を稼ぐのが仕事だ。
どこに信用出来る部分があるんだよ?」
「でも根っからの悪者じゃないわ。前はあんなに酷くなかったのに・・・・。」
塔のようにそびえるダレスの会社を見つめながら、悲しそうに眉を寄せる。
するとシウンがやって来て、「どうだった?」と尋ねた。
「あいつは謝ると言ったか?」
「・・・・ごめん。上手くいかなかったわ。」
「いいさ、最初から分かってたことだ。」
シウンはダレスの会社を睨み、「アイツが誰かに謝るなんてあるわけないんだ」と吐き捨てた。
「自分のことしか考えてない奴だ。謝るなんて絶対にしない。」
「ごめんね、必ず謝らせるって約束したのに・・・・、」
「あんたは悪くない。というより、ここまで運んでくれて感謝してるよ。」
シウンは箱舟から降り、街の方へ歩いて行く。
「シウン!」
ダナエは慌てて追いかける。
シウンの前に立ち、「殺すなんてダメよ」と言った。
「私はおじさんとおばさんに約束したの。復讐なんてさせないって。」
「これは俺の問題なんだ。親父もお袋も関係ない。」
「そんなことないわ。おじさんもおばさんも、シウンのことを心配してる。
あなただけの問題じゃないのよ。」
「いいや、これは俺の問題だ。俺はもうあの村の者じゃないんだからな。」
ダナエの横を抜け、街へと歩いていく。
「ねえ待って!」
ダナエは必死に止めようとするが、シウンは聴く耳を持たない。
「コウ!あんたも手伝ってよ!」
「もう何を言っても無駄だよ。止めるなら力づくじゃないと。」
コウは宙へ舞い上がり、シウンの前に立つ。
「おいシウン。そこで止まれ。」
「俺はダレスを殺す。殺しに行くんだ。」
「何言っても無駄か?」
「ああ。」
「ならこうするしかないな。」
コウは「マッスルモード!」と叫び、全身を金属に変えた。
筋肉が盛り上がり、拳も大きくなる。
「それ以上街へ近づくなら、コイツで止めることになるぜ。」
そう言って拳を向けると、シウンは「やってみろ」と言った。
「今の俺は灼熱の超人だ。妖精なんかに負けない。」
「へ!ダレスごときにビビってる奴がよく言うぜ。」
「なんだと・・・?」
「アイツは見た目は厳ついけど、腕は大したことねえ。なのにお前はビビってる。」
「アイツの恐ろしさはそういうことじゃないんだ。
目的の為なら手段を選ばない。そういう卑劣な部分が怖いんだ。」
「そうかい。だったら超人になった時点で殺しに行けばよかったじゃねえか。
それから村に帰ることも出来ただろ。」
「・・・・・・・・・。」
「お前はビビってんだよ。いくら超人になったって、それまでは普通の獣人だったんだ。
身体は強くなっても、心まで強くなるわけじゃねえ。」
コウはニヤリと笑う。
シウンは俯き「その通りだ・・・」と答えた。
「俺はダレスが怖い。でも逃げるわけにはいかないんだ。じゃないと・・・・・、」
「じゃないと?」
「・・・何も変わらない気がする。
村を出たあの日から、幸せだって思える時なんてなかった。
それはきっと、俺が弱いせいだ。
夢ばっかり見て、上手くいかないのを辺鄙な村のせいにした。
でもそうじゃない。俺はただ・・・・都合の良い未来を夢見てただけなんだ。」
村を出たあの日、大きな希望を抱いていた。
広がる海のように、無限の可能性が詰まった未来を。
しかしそれは幻に過ぎなかった。
ただ村を出ただけでは、何も変わらないのだと知った。
「俺は悔しい・・・・良いように利用されたこと・・・何もかも上手くいかなかったこと。
それを生まれ故郷のせいにした、自分の弱さも・・・・・。
もしここで復讐までやめてしまったら、俺は一生ダメなままだ・・・・。」
「だからダレスを殺すってのか?」
「それしかないんだ!こんな化け物にまでなっちまったんだ。
なんもかんも忘れて元通りってわけにはいかないだろうが!」
シウンの身体が熱くなる。怒りに反応して、どんどん熱が溢れる。
「そうかよ。やっぱ何言っても無駄だな。」
コウは魔法を唱え、拳に風を纏わせる。
「シウン、お前はなんも分かってねえ。」
「なんだと!」
「ダレスを殺したって、お前は変わったりしねえよ。
それどころか余計に自分を嫌いになって、村に帰ることすら出来なくなるだろうぜ。」
「もう帰る気はない。そんな覚悟でやってないんだよ!」
「じゃあ俺をブッ飛ばしてから行くんだな。でなけりゃ俺がブッ飛ばすぜ!」
そう言って一気に駆け寄り、シウンを殴り飛ばした。

脱糞王

  • 2017.01.26 Thursday
  • 14:53

JUGEMテーマ:わんこ

我が家の犬の話です。

去年に狂犬病予防に連れていった時のこと。

ウチの犬はとにかく病院が苦手で、毎回ウンチを漏らしてしまいます。

だから今回は事前にトイレに連れていって、ウンチをさせました。

ところが病院へ行き、診察室に入った途端に脱糞。

看護師さんが取ってくれて「すいません・・・」と頭を下げました。

そしていよいよ注射。

診察台の上に乗せた瞬間、看護師さんが「あ!」と驚きました。

また脱糞・・・・。

先生は「気にしなくていいですよ」と言ってくれて、また看護師さんが取ってくれました。

そして注射の時、暴れるといけないので、私と看護師さんで押さえました。

看護師さんは頭の方、私は「お尻の方をお願いします」と言われました。

「はい」と頷き、しっかりとお尻を固定。

そして注射が終わった瞬間、また看護師さんが「あ!」と声を上げました。

本日四度目の脱糞。

なんだか恥ずかしくなって、とにかく謝りました。

会計を終え、家に帰り、毛だらけになった服を着替えようとしました。

その時、何気なくポケットに手を入れると、小さくて丸い物が指に当たりました。

「なんやこれ?」

財布と診察券しか入っていないはずなのに、この丸い物はいったい・・・・。

取り出してみると、それはウンチでした。

「なんで!?」

驚きました。

なんでポケットからウンチが・・・・。

でもすぐに気づきました。

きっと四度目の脱糞の時だと。

あの時、お尻の方を押さえてたから、ポロっとポケットに入ってしまったんだろうと。

短時間に四度の脱糞。

しかも最後は飼い主のポケットに入れるという神業。

以来、我が家の犬には脱糞王の称号が与えられました。

 

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