お休み

  • 2017.03.31 Friday
  • 17:47
通信制限が掛かった為、今日はお休みします。
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    写真は真実を写さない

    • 2017.03.30 Thursday
    • 16:26

    JUGEMテーマ:写真

     

     

     

     

     

    写真は特殊な芸術です。

    絵画や文学と違って、頭の中から生まれるわけではありません。

     

     

     

     

     

     

     

    自分じゃない物がどう映るか?

    そもそも自分って何だろうって思います。

     

     

     

     

     

     

     

    自分がいる限り、写真は真実を写しません。

    写るのはいつも自分の見ている景色。

    カメラではなく、人の目が見ています。

    人の目が消えた時、写真は本当の力を発揮するのかもしれません。

     

    ダナエの神話〜星になった神様〜 第百一話 空を覆う闇(8)

    • 2017.03.30 Thursday
    • 16:19

    JUGEMテーマ:自作小説

    広間を抜けたダナエたちは、うねる回廊を降りていた。
    道は遥か先まで伸びていて、途中に幾つものドアがある。
    しかし中には誰もおらず、コウは「これもダミーか?」と首を捻った。
    「偽物の窓があったり、誰もいない部屋があったり。
    いったいこの城はどうなってんだろ?」
    ドアはたくさん並んでいるが、誰かがいる気配は感じない。
    ダナエは「もうドアはほっときましょ」と言った。
    「きっと私たちを惑わせる為に、わざと作ってあるんだわ。」
    「そうかなあ・・・・あの邪神がそんなセコい手を使うかな?」
    首を傾げ、「やっぱ気になるな」と呟いた。
    「このまま先に進んだら、後ろから敵が襲いかかって来たりして。」
    「どういうことよ?」
    「だからどっかのドアに敵がいて、後ろから奇襲されるかもってこと。」
    「でもどのドアからも気配を感じないわ。きっと誰もいないのよ。」
    「う〜ん・・・・だといいけど。」
    腕を組み、渋い顔で唸る。
    ダナエは「悩んでても仕方ないわ」と走り出した。
    「みんな一生懸命戦ってるんだもの。私たちも早く邪神をやっつけないと。」
    「・・・・そうだな。迷うだけ損だ。」
    ドアは気になるが、今はとにかく邪神である。
    二人は先を急いだ。
    するとうねった回廊の先に階段が出てきた。
    「おお、なんか様子が変わってきたな。いよいよ邪神が近いのか?」
    「かもね。気合入れて行くわよ。」
    二人は一気に階段を下りる。
    途中にロウソクが立っていて、どこからか不気味なメロディーが流れてくる。
    「なんだこの音?」
    「笛の音ね。楽しいんだか怖いんだか分からない曲だわ。」
    「何かの罠かな?」
    「分からないわ。とりあえず行ってみよう。」
    迷いもなく階段を下りていくダナエ。
    コウは「分からないなら慎重に行こうぜ・・・」と追いかけた。
    ・・・・・階段はとても長かった。
    そして下へ行くほど奇妙なメロディーが響き渡る。
    「これ、階段の下から来てるな?」
    「うん。しかもどこかで聴いたことのある音色だわ。」
    「あ、お前もそう思う?」
    「もし私の記憶が確かなら・・・・、」
    そう言って一気に下まで飛んで行った。
    階段は終わり、赤い終端の敷かれた部屋に出る。
    天井には大きなシャンデリアが吊るしてあり、絨毯の上には長い食卓が置かれていた。
    ロウソクが立てられ、食器が綺麗に並べられている。
    そんな食卓の奥に、一人の悪魔が座っていた。
    足を組み、深くフードを被り、笛を吹いている。
    その音色はとても奇妙で、聴いているだけで気分が悪くなった。
    ダナエとコウは顔を見合わせ、ゆっくりと歩いて行く。
    そしてその悪魔を無視して、先へ進もうとした。
    「待て。」
    慌てて立ち上がる悪魔。フードを外し「私だ」と言った。
    「またこの星へやって来たよ。君たちを殺す為にね。」
    そう言ってビシッと笛を向ける。
    ダナエとコウは一瞬だけ振り向いたが、無視して歩き出した。
    「おいコラ!」
    悪魔は慌てて前に立ちはだかる。
    「どうして無視する?」
    「どうしてって・・・・、」
    「なあ?」
    二人は顔を見合わせ、「今さらって感じだから」と言った。
    「なッ・・・・今さらとは失敬な・・・・、」
    「だって・・・・ねえ?」
    「俺たちあの時より断然強くなってるし。もはや相手じゃないっていうか・・・、」
    「ぐッ・・・・、」
    「それに・・・・ねえ?」
    「お前ロリコンじゃん。」
    「ろ、ロリッ・・・・・、」
    「私のことさらおうとしたもんね。」
    「愛しい悪魔に育てるとか言ってたぜ。俺、正直鳥肌立ったもん。」
    「ぐ・・・・むうううう・・・・・、」
    悪魔はプルプル震える。
    そして「言いたい放題だな」と笑った。
    「だって・・・・・ねえ?」
    「全部事実だし。」
    そう言ってまた無視して行こうとする。
    すると悪魔は「喜劇に付き合う気はないぞ」と言った。
    「私はお前たちを殺しに来たのだから。」
    ピロリと笛を吹き、「このネビロス、受けた痛みは何倍にもして返すのだよ」と言った。
    「お前たちに負け、地球に戻った私は良い恥さらしだった。
    他の悪魔にゲラゲラと笑われ、あげくには下の者にまで馬鹿にされて・・・。」
    「自業自得じゃない。」
    「弱いしロリコン。元々恥ずかしい奴だろ。」
    「ぐうッ・・・・言わせておけば・・・・、」
    ネビロスの顔が歪む。
    しかしすぐに平静を取り戻した。
    「まあいい・・・どの道ここでお前たちは死ぬのだから。」
    「ねえ、何か言ってるわ。」
    「なあ、ウケ狙いかな?」
    「ふ・・・バカにしてられるのも今のウチだ。」
    クルクルと笛を回し、「いいか」と睨む。
    「私は悪魔を監視するのが役目だった。
    堕落した悪魔を見つけ、制裁を加える。
    その為には決して他の悪魔に舐められてはいけないのだ。」
    ピロリと笛を吹き、悲しそうな音色を響かせる。
    「しかしお前たちのせいで、私の威厳は失われた。
    もはや誰も私の事を恐れない。これでは悪魔の監視など無理だ。」
    「だから自業自得じゃない。」
    「そうそう。ていうか堕落したのはお前の方だろ?」
    「黙れ!貴様らに私の屈辱が分かるか!」
    怒って笛を吹くネビロス。
    二人は「なんでいちいち笛吹くの?」と尋ねた。
    「会話が途切れて面倒臭いわ。」
    「言いたいことがあるならさっさと言えよ。」
    「ぐうう・・・・調子に乗りおって・・・・・、」
    ネビロスの怒りは頂点に達する。
    しかしダナエたちの言う通り、戦っても勝てない。
    「確かにお前たちは強くなった。今の私ではどうすることも出来ない。」
    「あら、物分かりがいいわ。」
    「なあ?それでも悪魔かよ。」
    「ふ・・・言いたいことを言っていられるのも今のウチだ!」
    そう言ってピロピロと笛を吹く。
    奇妙な音が広がり、部屋が波打った。
    「コウ、気をつけて。嫌な予感がする・・・・。」
    「ふん!いつでも来いってんだ。」
    コウは拳を握り、自分から攻撃をしかける。
    「喜劇に付き合う気がねえのはこっちも同じだ。即行で終わらせてやるぜ!」
    硬い拳がネビロスの顔面を捉える。
    しかしスルリとすり抜けてしまった。
    「幻術か!?」
    辺りを見渡し、「出て来い!」と叫ぶ。
    「そんなセコい手で勝つつもりか?」
    挑発すると、コウの後ろにネビロスが現れた。
    「お前なんかと遊んでる暇はないんだ!とっとと倒してやる・・・、」
    そう言って振り向いた時、ピタリと固まった。
    「どうしたのかね?私を倒すんだろう?」
    「うッ・・・・・、」
    「ふふふ、この私が丸腰で来ると思ったのかね?」
    ネビロスは勝ち誇ったように笑う。
    「確かに私ではお前たちに勝てない。しかしコイツがいれば別だ!」
    高らかに笑う彼の足元には、恐ろしい敵が立っていた。
    コウはゴクリと息を飲み、「なんで・・・・」と後ずさった。
    「なんでそいつがここにいるんだよ!?」
    コウが恐れる敵、それは死神だった。
    大きな鎌を持ち、骨の馬に跨っている。
    血のように真っ赤な衣を纏い、突き刺すような殺気を放っていた。
    「あ、赤い死神・・・・・。」
    ガタガタと足が震え、「なんで!?」と叫ぶ。
    「なんでお前がそいつを従えてるんだよ!?」
    「ふふふ、不思議か?」
    ネビロスはニヤリと笑う。
    「最強の死神テンジュ。出会った者は死を約束される、破滅の化身だ。」
    笛を吹き、奇妙なメロディを奏でる。
    不思議な音が響く中で、ほんの少しだけ笛とは違う音色が混じっていた。
    コウは「・・・・鈴?」と顔をしかめた。
    「かすかにだけど鈴の音が聴こえる。」
    そう言って「まさか・・・」と引きつった。
    「そう、そのまさかだ。」
    赤い死神テンジュ。
    それは鈴の音と共にやってくる。
    テンジュの持つ真っ赤な鈴を鳴らすと、どこからともなく現れ、敵を皆殺しにしてくれるのだ。
    しかし稀に味方に襲いかかることもある。
    上級の魔王さえ圧倒するこの死神は、従えることが出来れば万軍よりも心強い。
    しかし敵に回れば・・・・。
    泣こうが喚こうが、どんなに命乞いをしようが、その鎌で命を狩られてしまうのだ。
    テンジュは神出鬼没の死神だが、とある事情から地球で戦っていた。
    それもコウの味方として。
    協力してアーリマンと戦ったこともある。
    しかし悪魔の総帥ルシファーによって、本体である鎌を破壊されてしまった。
    テンジュはそのまま消滅しかけた。
    しかしルシファーによって、彼の下僕として再生させられたのだ。
    地球へ戻ったネビロスはルシアーに泣きついた。
    『どうかあの忌々しい妖精どもを倒す力を!』
    ルシファーは冷たくあしらったが、サタンが面白がってこう言った。
    『あの死神の鈴をあげればいいじゃない。そうすればこのポンコツでも勝てるかも。』
    ネビロスはテンジュの鈴をもらい、それを笛の中に仕込んだ。
    笛を鳴らせば、どこからともなくテンジュが現れる。
    そしてネビロスの下僕として、どんな命令でも聞いてくれるのだ。
    「この鈴を持っている以上、私がテンジュの主なのだよ。
    そして主の命令は絶対!」
    笛を咥え、鈴の音と共にメロディを奏でる。
    「行けテンジュ!その妖精を抹殺しろ!ただし・・・・月の王女は殺すなよ。」
    そう言ってダナエを見つめ、ニヤリと微笑んだ。
    「うわあ・・・・コイツまだお前のこと狙ってるぜ。」
    コウは鳥肌をさする。
    ダナエも「しつこいわね」と首を振った。
    「いいわ、そんなに戦いたいなら相手になってあげる。」
    槍を向け「来い!」と挑発する。
    しかしコウが「待て」と止めた。
    「お前は邪神を倒して来い。」
    「でもこの死神めちゃくちゃ強いんでしょ?コウ一人じゃ・・・・、」
    「まあ勝てないだろうな。」
    「なら私も一緒に・・・・、」
    「勝算はある。」
    「え?」
    「勝つことは無理だろう。でも負けなきゃいいんだ。」
    そう言ってニコリと笑った。
    「だからここは俺に任せろ。」
    コウは自信満々に言う。
    ダナエは戸惑ったが、「分かった」と頷いた。
    「先に行ってるわ。でも・・・・必ず追いついてくれるよね?」
    「もちろん。」
    小さく頷き、「こんな所で死んでたまるか」と言った。
    「俺は男になったんだ。負けるわけにはいかないぜ。」
    「前から男じゃない。」
    「いや、そういう意味じゃなくてだな・・・・、」
    「ならどういう意味?」
    「・・・・・・・・。」
    「・・・・・ああ!もしかして昨日の・・・・、」
    「いいから早く行け!」
    顔を真っ赤にしながら、ダナエの背中を押す。
    「なあダナエ。」
    「なに?」
    「この戦いが終わったら・・・・・、」
    「終わったら?」
    「・・・・また一緒に寝よう。」
    少しだけ鼻息が荒くなるコウ。
    ダナエは「いいよ」と頷いた。
    「こんな時までエッチなこと考えられるなら、余裕がある証拠だもんね。」
    可笑しそうに言いながら、「必ず来てくれるって信じてるから」と走り去った。
    「絶対に行くよ、お前を一人で戦わせるもんか。」
    ダナエを見送り、ゆっくりとテンジュを振り返る。
    《それとなダナエ・・・・余裕があるからエッチなこと考えてるんじゃない。
    この死神は怖すぎるんだよ。
    エッチなことでも考えてないと、身体の震えが止まらないんだ。》
    ゴクリと息を飲み、目の前の強敵を睨みつける。
    するとネビロスが「おい」と呼んだ。
    「貴様・・・・まさかあの王女と・・・・・、」
    「ん?」
    「あの王女と・・・・・・、」
    プルプル震え、クワっと目を見開く。
    「一晩を共にしたというのか!?」
    「・・・・・うん。」
    「ぐううううおおお・・・・おのれえええ・・・・・・、」
    ネビロスの顔が怒りで染まっていく。
    笛を向け「貴様は万死に値する!」と叫んだ。
    「あの王女は私が先に目をつけておったのだぞ!それを・・・・よくも・・・・、」
    「んだよ、やっぱロリコンじゃねえか。」
    「そういう意味ではない!純潔だからこそ、如何ようにも染めることが出来るのだ!
    あの王女は真っ白だった。それゆえに、悪魔として生まれ変わらせることも出来たのに。
    貴様が汚したおかげで台無しだ!」
    「あ、そ。結局ロリコンなわけね?」
    「黙れ!もう貴様と交わす言葉などない!」
    ネビロスの怒りは頂点に達する。
    そして「すぐに終わらせよう」と、奇妙な音を奏でた。
    笛の中に鈴の音が混じる。
    小さく・・・チリンチリンと・・・・・・。
    それはやまびこのようにこだまして、死神の耳をくすぐった。
    「行けテンジュ!そのガキを抹殺しろ!」
    バッと笛を向けると、テンジュは鎌を振り上げた。
    「さて・・・・絶対に生き残らなきゃな。」
    コウの額に汗が流れる。
    恐怖は身体を支配し、震えが止まらない。
    しかし昨晩の幸福を思い出すことで、どうにか耐えることが出来た。
    「あんな良いモン一回で終わらせられるか!絶対えまたやってやる!」
    煩悩は強力である。恐怖も悲しみも吹き飛ばすほどに。
    魔力と精神は密接な関係にあり、煩悩を燃やすことで魔力を高めていった。
    するとコウの身体に変化が起きた。
    勝手にクワガタモードが解除されて、元に戻ってしまったのだ。
    「なッ・・・・どうして・・・・、」
    慌てていると、目の前に殺気を感じた。
    「いッ・・・・・、」
    大きな鎌がすぐ目の前にあって、反射的に身を逸らした。
    間一髪でかわすことができたが、すぐに二撃目が襲ってくる。
    返す刃で胴を裂かれ、その次には頭から真っ二つにされた。
    「ははははは!あっけない終わりだったな。」
    ネビロスは勝ち誇ったように笑う。
    しかし目の前を何かが飛んで、「ん?」と顔をしかめた。
    「ようロリコン。」
    「なにッ!」
    斬られたはずのコウが目の前にいた。
    それも小指の先ほど小さくなって。
    「なぜ縮んでいる!?」
    「どうやら俺にも進化の時が来たみたいだ。」
    「進化だとお!?」
    「だって男になったからさ。」
    そう言って可笑しそうに飛び回る。
    テンジュは踵を返し、大きな鎌を一閃させた。
    「そんなの食わないよ。」
    コウはあっさりと鎌をかわす。
    「こんだけ小さいと当てづらいだろ?」
    そう言ってお尻をペンペン叩いた。
    「ふ、馬鹿が。縮小した程度で逃げられると思ってるのか?」
    ネビロスは「殺せ!」と激を飛ばす。
    「絶対に逃がすな!細切れにしてやれ!」
    テンジュは鎌を掲げ、おぞましい声を響かせる。
    そして一瞬にしてコウの首を飛ばした。
    「見たか!小さくなったところで、結局何も出来まい。」
    「それはどうかな?」
    「ん何!?」
    コウはさっきよりも小さくなっていた。
    今は米粒ほどの大きさしかない。
    「なぜ生きている!?」
    「さあ?」
    「さあ?だと。」
    「教えるわけないじゃん。この変態野郎。」
    「貴様・・・・・・、」
    ネビロスの顔が怒りで引きつる。
    コウはニヤニヤと笑いながら、死神の鎌をかわしていった。
    ・・・・妖精には秘密がある。
    それは人間とは年齢の重ね方が違うということだ。
    人は時間と共に歳を刻む。
    しかし妖精の成長は時間ではなく、経験によって促されるのだ。
    昨晩、コウは男になった。
    妖精は一五歳で成人する。
    しかし男の妖精の場合、その壁を超えるには性を経験する必要があるのだ。
    戦いや冒険、そして性。
    妖精はあらゆる経験を蓄えないと、歳を取ることが出来ない。
    ダナエがコウよりも早く成長したのは、面と向かって邪神と戦ってきたからだ。
    コウは彼女より少しだけ成長が遅れていたが、ダナエと夜を共にすることで、成人への壁を超えることが出来た。
    そして今、まさに大人に向かって進化を始めようとしていた。
    ・・・・コウは感じていた。
    こうしてどんどん小さくなっていくのは、進化の証なのだろうと。
    今までにも進化を経験したことはあるが、今度のは更に大きな進化だ。
    子供の壁を越え、大人になった時、本当の意味でダナエの力になれる。
    精神的な支えだけではなく、戦いの面でもサポート出来るようになるのだと。
    だからコウは飛び回った。
    決して死神に命を取られないように、休むことなく羽ばたき続けた。
    「むううう・・・・ちょこまかと逃げおって・・・・、」
    ネビロスは焦る。
    もしもコウを仕留められなかったら、二度と地球へ帰ることは出来ない。
    一度敗北し、テンジュの助けまで借りて、リベンジに臨んだ。
    もしもここで目的を達成できなかったら、待っているのはサタンの拷問である。
    《私は今までに何度も見てきた。サタンによって痛めつけられる同胞を。》
    ネビロスの役目は悪魔の監視。
    堕落した悪魔がいれば、すぐに制裁に乗り出す。
    しかし自分の手に負えない悪魔は、ルシファーに報告するのだ。
    この時、制裁を加えるのはルシファーではなくサタンだった。
    《今までに何度も聴いてきた同胞の悲鳴、絶叫・・・・・。
    魔王と恐れられる悪魔でさえ、サタンの前では赤子のようになる。
    奴の狂気は同胞の悪魔でさえ震え上がらせる・・・・・。
    私は・・・・奴のオモチャにはされたくない!》
    何が何でも負けられないネビロス。
    勝つことでしか生き延びる道はなく、勝つことでしか監視者としての威厳を取り戻せない。
    「どうしたテンジュ!最恐の死神ともあろう者が、たかが妖精一匹に手こずるのか!」
    激を飛ばし、「やれ!」と笛を向ける。
    しかし今のコウは米粒ほど小さく、凄まじい速さで飛び回る。
    テンジュは鎌を振るのをやめて、ピタリと動かなくなった。
    そして・・・・・、
    「おいよせ・・・・、」
    ネビロスが怯える。「こんな場所でそれをやるな!」と後ずさった。
    テンジュは衣に手を掛け、ゆっくりと開いていく。
    すると中から魔王の悪霊が出てきて、おぞましい悲鳴を響かせた。
    「ウウウゴオヴェエエエエエエエエエ!」
    苦痛の断末魔が響き渡る。
    それは並の悪魔なら、聴いただけで絶命するほどのおぞましさだった。
    「うううおおおおおおお!」
    ネビロスは耳を塞ぐ。
    苦痛に顔をゆがめ「やめんか!」と叫んだ。
    「私の頭までイカれてしまう!」
    膝をつき、「ぐううおおおお!」と頭を押さえる。
    テンジュの衣の中から悲鳴を上げているのは、サタンが拷問した魔王だった。

    映画評論家 語るに落ちる

    • 2017.03.29 Wednesday
    • 15:39

    JUGEMテーマ:映画

    真面目にしか物を語れない人がいます。
    最近ゴジラばっかりのネタを書いていますが、また特撮について思うことがありました。
    ゴジラはかつて、キングコングと戦っています。
    かなり昔の映画ですが、アメリカでも上映されたそうです。
    その時、向こうの特撮ファンは喜んだようです。
    しかし芸術的で文学的な高尚な映画を好む評論家は、総じて辛口だった模様。
    というより、見下して相手にしなかった模様。
    アメリカ人の特撮ファンが書いたとある本の中で、そういった人たちを批判する内容がありました。
    「賢いことしか語れないそういった評論家たちは、結局自分自身で作り上げた真面目という鎖に縛り付けられている。」
    そんな内容です。
    芸術的であったり文学的であったり、そういった映画についてはよく語れるくせに、そこから外れるともうダメだと皮肉っているんです。
    これはどういうことかというと、ゴジラのような特撮映画を観た時に、素人と同レベルの感想しか言えないとダメ出ししているんですよ。
    「あんなものは子供が見るもの」
    「チープで馬鹿げた映画」
    そういう風に批判することは、素人でもできます。
    特撮に興味のない人が、特撮を見下したり相手にしなくても、私は別段何も思いません。
    好みは人ぞれぞれ、好き嫌いがあって然るべきです。
    しかしその道で飯を食っている人が、素人同然の事しか言えないというのは、致命的ではないかと思います。
    特撮が嫌いならそれでいい。
    しかしそれなら黙ってやり過ごすとか、無視して相手にしないとか、色々とやりようはあるはずです。
    口を開いて語る以上、プロならばそれなりのことを言ってみせてほしいものです。
    映画評論家という肩書は、その名の通り映画の全てを包括して評論しなければなりません。
    苦手なジャンルがあるならば、最初から白旗を挙げればすものを、素人同然の言葉で見下すのは、果たしてプロのすることか?
    そういえなヨーロッパでシンゴジラが公開されたそうです。
    ですが結果は散々なようで、かなりの酷評を浴びています。
    「会議ばっかりでつまらない」
    「災害や行政の在り方を問題的するのに、現実に在りはしない生き物を持ってこないと語れないのは幼稚だ」
    そういった酷評があります。
    これ、どれも的を射ています。
    プロが言ったのか素人が言ったのか分からないけど、誰が言ったにしてもかなり確信を突いています。
    怪獣映画なのに会議ばっかりというのは、確かに不満の要素の一つです。
    好きな人もいるだろうけど、怪獣同士のドンパチが見たい人にとっては、退屈なシーンでしかありません。
    また現実的な問題を提起するのに、空想の怪物を持ち出さなければ説明できないというのも、幼稚と言われても仕方ありません。
    メッセージ映画を作りたいなら、現実に向かい合って表現してみろってことなんでしょう。
    こいった意見なら納得できます。
    そもそもシンゴジラはどう見ても国内向けで、海外で酷評されるのは仕方ありません。
    それを差し引いても、納得のいく意見だと思います。
    ただですね、賢い映画を観て賢いことしか語れない人たちが、ゴジラを見て素人と同レベルの意見しか語れなかったとしたら問題です。
    職務放棄の末に、ただで給料をもらってるようなものです。
    苦手な映画なら無視するか、黙ってやり過ごせばいい。
    見下すのは自由ですが、語るに落ちるということに気づいてほしいです。

    ダナエの神話〜星になった神様〜 第百話 空を覆う闇(7)

    • 2017.03.29 Wednesday
    • 15:37

    JUGEMテーマ:自作小説

    ヘカトンケイル。
    それはギリシャ神話随一の怪力を誇る巨人。
    桁外れの腕力と、桁外れの耐久力。
    生命力も強く、アンデッドさえ舌を巻くほどのタフネスだ。
    不死身に近いほど頑強な身体を持っていて、圧倒的な腕力で敵を粉砕する。
    ダナエはその腕力に捕まらないようにしながら、神器の槍を振り回した。
    縦横無尽に駆ける刃が、ヘカトンケイルの腕を斬り払う。
    しかし斬っても斬っても生えてきて、これではキリがなかった。
    「なんてしぶといの!」
    何本もの腕を掻い潜り、懐に入り込む。
    しかしヘカトンケイルにはたくさんの顔がある。
    上手く死角に入ったつもりでも、すぐに見つかってしまった。
    大きな手が迫り、慌ててかわす。
    「こうなったら魔法で・・・・、」
    距離を取り、頭上に槍をかざす。
    魔力を溜めて、槍の先から電気を放った。
    「丸焦げになれ!」
    バリバリと電気が走り、特大の雷が落ちる。
    しかしヘカトンケイルには効かない。
    いや、効いてはいるのだが、ほとんどダメージにはならなかった。
    馬鹿げたタフネスと生命力のせいで、渾身の魔法でさえも致命傷には至らない。
    ダナエは「なんて奴・・・」と舌を巻いた
    「斬っても再生するし、魔法でも焼けないし。
    それに神器の槍を刺しても、ぜんぜん効果がないわ。」
    ダナエは最初の一撃で槍を刺していた。
    本来なら傷口に魔力が集まり、体内から爆発するはずだった。
    しかしあまりに頑丈過ぎるヘカトンケイルの身体は、体内からの爆発にも耐えきった。
    外からもダメ、内からもダメ。物理攻撃も魔法も効果が薄い。
    それならば毒を打ち込もうかと考えたが、それも効かないだろうと首を振った。
    「多分無理ね・・・。ここまでやって何も効かないんだから、毒なんかじゃ倒せないわ。」
    ダナエは焦る。何をやっても効果がなく、時間ばかりが過ぎていく。
    「モタモタしてたら、いつ邪神が羽化するか分からない。早く倒さないと。」
    どうしたものかと困っていると、「ダナエ!」と声がした。
    「弓矢を使え!」
    「コウ。」
    「あれは魂に刺さる矢だ!だったら効くかもしれない。」
    「そうね・・・試してみるわ。」
    ダナエは神器の槍を引っ込めて、代わりに弓矢を呼び出す。
    それを番えると、ヘカトンケイルの胸を狙った。
    しかしぶんぶん腕を振り回されて、狙いが定まらない。
    「もう!じっとしててよ!」
    「敵がじっとしてるわけないだろ。」
    コウは呆れたように言って、ヘカトンケイルの傍に飛んでいった。
    「あ!近づいちゃダメよ!」
    「俺が引き付けるから、その隙に撃て。」
    コウは危険を顧みずに飛んでいく。
    ヘカトンケイルの怪力で殴られたら、一撃で粉々になるだろう。
    しかしダナエを助けることが自分の役目と思い、巨大な腕の中に飛び込んでいった。
    《こいつ動きはトロいけど、手が多すぎなんだよ。
    ここはクワガタモードを解除して、スピードを優先した方がいいな。》
    コウはクワガタとの融合を解除し、元に戻る。
    そして魔法を唱え、オニヤンマの羽に変えた。
    パワーとタフネスは下がったが、その分スピードが増す。
    《どっちにしろ一撃でも喰らったらお終いなんだ。
    命懸けでかわすしかねえ!》
    神経を集中させて、敵の攻撃を掻い潜る。
    「オラオラ!当ててみろデカブツ!」
    お尻を出し、ペンペンと挑発する。
    「図体だけの筋肉野郎!悔しかったら捕まえてみろ!」
    「ムウガアアアアアアア!」
    ヘカトンケイルの頭に血が昇る。
    コウは「ちょっと怒らせすぎたかな・・・」と怯えた。
    無数の手が一斉に襲いかかる。
    コウは「ひいいいいいい!」と逃げ惑った。
    《一撃で即死だからな・・・・絶対に喰らっちゃダメだ!》
    必死に羽を動かし、腕をかわしていく。
    しかしヘカトンケイルにはたくさんの目がある。
    どこへ逃げようとも、視界から逃れることは出来ない。
    「ダナエ!早く撃て!」
    「分かってる!でもこっちを向いてくれないのよ・・・・、」
    「ぐッ・・・・しゃあねえなあ。」
    コウはクルリと旋回し、ヘカトンケイルの頭上に舞う。
    「オラオラ!こっちだヴォケ!」
    またお尻を出し、ペンペン叩く。
    その時、ダナエが「危ない!」と叫んだ。
    「え?」
    後ろを振り向くと、すぐそこに巨大な手が迫っていた。
    「うおおおお!」
    間一髪でかわし、「危ねえ・・・」と息をつく。
    「バカ!油断しちゃダメ・・・・、」
    ダナエが言う前に、ヘカトンケイルの手がコウの脇腹を掠めた。
    「がはッ・・・・・、」
    指先がほんの少し掠っただけなのに、アバラが何本も砕かれる。
    折れた骨が内臓に刺さり、口から血を吐いた。
    「ぐごッ・・・・、」
    「コウ!」
    ダナエは慌てて助けに入る。
    しかしヘカトンケイルの巨大な手で叩き落とされてしまった。
    「あああああ・・・・、」
    物凄い勢いで床に叩きつけられ、ミシミシと骨が鳴る。
    「ぐッ・・・・・がは・・・・、」
    全身の骨がバラバラにされたような痛みが走る。
    もし月の魔力で守られていなければ、即ミンチになっていただろう。
    「こ、こんなので負けたりしないわ・・・・。」
    額の刻印を光らせて、月の魔力を高めていく。
    ダメージはすぐに消えていったが、痛みはまだ残っていた。
    膝に手をつき、どうにか立ち上がる。
    するとその時、「ぎゃあああああああ!」と悲鳴が響いた。
    「コウ!」
    ダナエはすぐに立ち上がる。
    そして「コウを離せええええ!」と飛びかかった。
    「お前の動き・・・・・もう覚えた。」
    ヘカトンケイルの巨大な拳が、ダナエに襲いかかる。
    「こんなの喰らわないわ!」
    そう言ってサッとかわすが、すぐに別の拳が飛んできた。
    「やばッ・・・・、」
    咄嗟に槍を呼び出し、拳を受け止める。
    しかし圧倒的な腕力の前に、成す術なく吹き飛ばされた。
    「きゃああああああ!」
    広間の端まで飛んでいき、壁にめり込む。
    そして力なく床に落ちてしまった。
    「な、なんて力なの・・・・・・、」
    ヘカトンケイルは、その腕力だけでギリシャの神々を恐れさせたほどである。
    いかに月の魔力を解放しようとも、力では太刀打ちできなかった。
    「こうなったら、魔法の力も乗せてぶった斬ってやるわ!」
    槍を掲げ、炎を纏わせる。
    その時、また「うぎゃああああああ!」と悲鳴が響いた。
    「コウ!」
    コウはヘカトンケイルの手に捕まっていた。
    ダナエは「すぐ助けるわ!」と飛びかかる。
    炎を纏った槍が、ヘカトンケイルの腕を狙った。
    しかしコウを前に突き出されて、「う・・・・」と動きを止めた。
    「これ・・・・人質。」
    「こいつ・・・・けっこう賢い。」
    ただの脳筋だと思っていたのに、人質を取るとは思わなかった。
    「お前強い・・・・倒すの面倒・・・・。だからこれ人質にする。
    殺されたくなかったら、そこ動くな。」
    そう言って少しだけ力を入れる。
    ベキベキっと骨が折れ、「ぎいやあああああああ!」と絶叫した。
    「やめて!」
    「動くな。」
    「うッ・・・・、」
    「死ぬぞ、いいのか?」
    「あああああ・・・・ぎゃあああああ・・・・、」
    「やめてってば!」
    ダナエは槍を捨て、両手を上げる。
    「これでいい・・・・?」
    「そこ動くなよ。」
    ヘカトンケイルは拳を振り上げる。
    そして血管が浮くほど力を込めた。
    「逃げろ・・・ダナエ・・・・そんなパワーで殴られたら、いくらお前でも・・・、」
    「うるさい。」
    「ああああっぎゃあああああああ!」
    内臓に刺さった骨が、さらに深く食い込む。
    ダナエは「お願いだからやめて!」と叫んだ。
    「動かないから!抵抗もしないわ。」
    「それでいい。」
    ヘカトンケイルはニヤリと笑う。
    そして渾身の一撃を振り下ろした。
    ダナエは限界まで魔力を上げて、どうにか耐える。
    しかし恐るべき巨人の一撃は、想像以上の威力だった。
    「あああああああ!」
    月の魔力をフルパワーで解放しているのに、拳を押し返すことが出来ない。
    最後は力負けして、床に叩きつけられてしまった。
    「ダナエ!」
    コウはボロボロになりながらも、彼女を心配する。
    「俺に構うな!ここでやられたら誰が邪神を・・・、」
    「喋るな、殺すぞ?」
    「うぎゃああああああああ!」
    「こ、コウ・・・・・・、」
    ダナエは立ち上がり、「許さないわよ・・・・」と睨んだ。
    「もしコウを殺したりなんかしたら・・・・絶対に許さない・・・・。
    どこまでも追いかけて八つ裂きにしてやる・・・・・。」
    暗い感情がこみ上げ、悪魔のような殺気を放つ。
    「地球だろうが地獄だろうが・・・・どこへ逃げても殺しに行くわ・・・。
    絶対に・・・・許したりしない・・・・・、」
    目の色が紫に変わる。
    顔が猛獣のように歪み、額の刻印が点滅した。
    異常なまでの殺気、異常までの怒り・・・・・。
    それはダナエを包み込み、新たな進化を促そうとした。
    ヘカトンケイルは思わず後ずさる。
    ダナエが発する気は、もはや妖精のものではない。
    アーリマンやベルゼブブに匹敵するほどの暗い魔力だった。
    これ以上怒らせたら、上位の魔法と同等の力を発揮する。
    そう感じたヘカトンケイルは、「大人しくしていれば殺さない・・・」と言った。
    いくら怪力自慢の巨人でも、さすがにアーリマンやベルゼブブには敵わない。
    彼らと同等の悪魔になられたら、それは死を意味するのだ。
    しかし人質を解放しても、これまた殺されるだろう。
    殺されたくないヘカトンケイル。
    コウを死なせたくないダナエ。
    両者は迂闊に動くことが出来なくなった。
    しばらく睨み合いが続く。
    するとダナエの方から口を開いた。
    「取引しない?」
    「取引?」
    「今すぐコウを解放してくれたら、あなたを見逃してあげるわ。」
    「・・・・・・・・。」
    「だけどもしコウを殺したりしたら・・・・・、」
    ダナエの顔が狂気に歪む。
    ヘカトンケイルは心底怯えた。
    出来るなら、今すぐ人質を解放して逃げ出したい。
    逃げ出したいが・・・・そうもいかなかった。
    このまま地球へ逃げ帰ったとしても、待っているのは地獄だからだ。
    なぜなら敵にビビッて逃げたりなどしたら、サタンが黙っていない。
    死ぬよりも酷い目に遭わされてから、奴隷として虐待されるだろう。
    それも永遠に・・・・。
    「・・・・・・・・・。」
    ヘカトンケイルはブルブル震える。
    前にも後ろにも進むことが出来なくなって、頭は完全にパニックだった。
    「うう・・・おおお・・・・おおおおお・・・・・、」
    恐怖は身体に伝わって、コウを握る手に力が入る。
    「あああああぎゃあああああああ!」
    「コウ!」
    これ以上握られたら、確実にミンチになってしまう。
    ダナエは一気に飛びかかった。
    それと同時に、ヘカトンケイルが発狂する。
    「おおおおおおおおおおお!」
    城が揺れるほどの雄叫びを上げて、コウを投げ飛ばした。
    「コウ!」
    ダナエが慌てて受け止める。
    「大丈夫?しっかりして!」
    泣きそうな顔で見つめると、コウは小さく笑った。
    「まだ・・・生きてるぜ・・・・死ぬほど痛いけど・・・・、」
    「よかった・・・・すぐ治してあげるからね。」
    しかしその瞬間、背中にヘカトンケイルの拳が飛んできた。
    「がはッ・・・・・、」
    ミキミキと背骨が鳴る、意識が遠のきそうになり、それでもどうにか食いしばった。
    《コウを・・・・コウを守らないと!》
    槍を構え、ヘカトンケイルを貫こうとする。
    しかしまた拳が飛んできて、「危ない!」とコウを庇った。
    最大まで魔力を発揮して、どうにか耐えようとする。
    しかし二発、三発と殴られて、ついには倒れ込んだ。
    「ぐ・・・・がはッ・・・・・、」
    引き裂かれそうなほどの痛みを堪え、それでもコウを守ろうとする。
    「だ・・・ダナエ・・・・逃げろ・・・・、」
    「イヤよ!絶対に見捨てたりなんかしない!」
    「でもお前がやられたら、誰が邪神を・・・・・、」
    「コウのいない世界で生きたって意味がない!それだったら死んだ方がマシよ!」
    「ダナエ・・・・・、」
    ヘカトンケイルの拳が雨のように降り注ぐ。
    恐怖でパニックを起こしたこの巨人は、もはや手が付けられなかった。
    「のおおおおお!全部ぶっ壊してやるうううううう!」
    滅茶苦茶に拳を振り回し、台風のように暴れ狂う。
    「あああああああああ!」
    ダナエの背骨にヒビが入る。
    足は折れ、羽は曲がり、それでもコウを離そうとしなかった。
    「死なせない・・・・・絶対に死なせない・・・・・、」
    「ダナエ・・・・。」
    何も出来ない自分に、コウは怒りが湧く。
    ギュッとダナエを抱きしめ、「誰でもいい!助けに来てくれえええええ!」と叫んだ。
    するとその時、轟音と共に広間の壁が吹き飛んだ。
    そして次の瞬間、何者かがヘカトンケイルに襲いかかった。
    「な・・・なんだ・・・?」
    コウは息を飲んで「何者」かを見つめる。
    そして「おお・・・・」と喜んだ。
    大きな大きな歯が、ヘカトンケイルの頭に噛みついている。
    そして力任せに持ち上げて、外に投げ飛ばした。
    「おおおおおおおお!」
    遠くへ飛んでいくヘカトンケイル。
    ホームランのように孤を描いて、海の底へ落ちていった。
    「フン!怪力ダケノ巨人ガ。」
    ヘカトンケイルを投げ飛ばした犯人は、カチカチと歯を鳴らす。
    そしてコウを振り返り、「助ケニ来テヤッタゾ」と言った。
    「に、ニーズホッグ・・・・。」
    コウはホッと笑顔を見せる。
    「もっと早く来いよ・・・・、」
    「神器ヲ授カッテオキナガラ、ナンテ様ダ。アノ時俺様ニ勝ッタノハマグレカ?」
    カチカチと歯を鳴らしながら、「早ク立テ」と言った。
    「寝テイル暇ハナイハズダ。」
    「分かってるよ・・・・・。」
    コウは「ぐうううう・・・・」と歯を食いしばり、「来い!」とクワガタの精霊を呼んだ。
    再びクワガタモードになることで、どうにかダメージに耐える。
    「骨が折れてても、クワガタには外骨格があるからな。どうにか動けるぜ・・・・。」
    頑丈な甲殻は、骨の代わりに身体を支えてくれる。
    どうにか立ち上がり「ダナエ!」と頬を叩いた。
    「しっかりしろ!」
    「コウ・・・・・・、」
    「すぐ治してやるからな。」
    魔法を唱え、水と土の精霊を呼び寄せる。
    癒しの魔力が、二人の傷を消し去っていった。
    「うう・・・・、」
    「大丈夫か?」
    怪我は治ったが、受けたダメージは大きい。
    ダナエは立ち上がり、フラフラとよろけた。
    コウは「無理するな」と支える。
    「あの怪力で殴られまくったんだ。無事じゃすまないよ。」
    「コウ・・・・また助けられちゃった。」
    ニコリと笑うダナエだったが、その顔は辛そうだった。
    「邪神に辿り着く前に、こんなにボロボロにされるなんて・・・。
    こんなんじゃダメだわ。」
    そう言うと、後ろから「マッタクダ」と声がした。
    「・・・・ああ!ミミズさん!」
    ダナエはパッと笑顔になり、「ミミズさんが助けてくれたのね」と駆け寄った。
    「オ前達ダケデハ不安ダッタノデナ。」
    「おかげで助かったわ!」
    ダナエはペシペシとニーズホッグを叩く。
    「喜ブ暇ガアッタラ、サッサト邪神ヲ倒シテコイ。」
    「うん、ありがとう。」
    ダナエは「行こう!」と駆け出す。
    「きっともう悪魔はいないわ!」
    「それ何の根拠があるんだよ?」
    「だって悪魔はこの魔法陣から出て来てるのよ。だったらこの先にはいないでしょ?」
    「いや、先で待ち構えてるかもしれないだろ。」
    「つべこべ言わずに行くわよ!」
    ダナエはコウの手を握り、広間の奥へ駆けていく。
    「ミミズさん!悪いけど新手が来たらやっつけといて!」
    そう言ってさっさと先へ行ってしまった。
    「ムウウ・・・俺様ハ雑用係カ・・・・?」
    相変わらずのダナエに、小さく首を振る。
    するとその時、海の方から何かが飛んで来た。
    「おおうううああああああ!」
    ヘカトンケイルが猛スピードで飛びかかってくる。
    そして渾身の一撃で殴りかかった。
    硬い音が響き、ニーズホッグの横面にめり込む。
    「・・・・・・何カシタカ?」
    「・・・・・おお?」
    「悪イ腕ダナ。食ッテオコウ。」
    「いいい・・・・ぎゃあああああ!」
    大きな口を開けて、まとめて腕を食い千切る。
    「・・・・・不味イナ。」
    ぺっと吐き出して、「頭ハドウダ?」と齧りつく。
    「おおおううおおおお!痛だい!」
    一気に五つも顔を齧られて、バタバタとのたうち回る。
    「・・・ムウ、コッチハ食エンコトハナイナ。」
    「おお・・おおお・・・お前えええええええ!ぶっ殺す!」
    怒ったヘカトンケイルは、めちゃくちゃに殴りかかる。
    しかしニーズホッグはビクともしない。
    硬すぎる鱗が、頑丈過ぎる身体が、怪力自慢の拳を防いでしまう。
    「俺様ハサンドバッグデハナイゾ。」
    そう言ってガチガチ!っと何度も噛みついた。
    ヘカトンケイルはたまらず倒れる。
    「ひいいぎょおおおおお!」
    あちこち齧られて、再生が追いつかない。
    このまま齧られ続けたら、何もかもなくなってしまうだろう。
    「俺にとって、お前は相性が悪い!俺がパーなら、お前はグーだ!」
    「ソレダトオ前ガ勝ツデハナイカ。」
    「黙れ!お前・・・・もう戦わない!他の奴襲う!」
    そう言って城の外へ逃げ出そうとした。
    「待テ。」
    足に噛みつき、そのまま引きずり倒す。
    「やめろ!」
    「断ル。」
    ヘカトンケイルを持ち上げ、床に叩きつける。
    すると床が抜けてしまい、下の層へと落ちていった。
    「逃ガサンゾ。」
    ニーズホッグも下の層へ飛び降りようとする。
    しかしその時、信じられないものが目に入った。
    「キ、貴様ハ・・・・・、」
    プルプル震えながら、下の層を睨む。
    「フレスベルグ!」
    「ん?」
    巨大な怪鳥は上を見る。
    そして「ミミズ野郎!」と叫んだ。
    「誰ガミミズダ!コノチキン野郎ガ!」
    「チキンだと!俺は臆病者ではないぞ!」
    「ソッチノ意味デハナイ!ダカラオ前ハ馬鹿ナノダ。」
    「ムウウウ・・・・ミミズの分際で鳥類を馬鹿にするか・・・。」
    フレスベルグは「ほわ!」と飛び上がる。
    「ここで会ったが百年目!今度こそブチ殺してくれる!」
    「貴様トノ因縁ハ百年ドコロデハナイ。ヤハリ阿呆ダナ。」
    「カカカアー!また馬鹿にするか!」
    フレスベルグの頭がトサカのように逆立つ。
    その時、下の層から「逃げる気か!?」とシウンが叫んだ。
    「お前の相手は俺だろう!」
    「ふん!お前はそっちのデカブツと遊んでろ。」
    「なに?」
    シウンは顔をしかめる。
    すると背後から巨大な影が立ち上がった。
    「あの竜は相性が悪い・・・・でもお前なら簡単にやっつけられそうだ。」
    ヘカトンケイルはポキポキと拳を鳴らす。
    シウンは「ほう」と振り返った。
    「俺もお前みたいな奴の方がやりやすい。」
    そう言ってガツンと拳を叩く。
    上の層ではニーズホッグとフレスベルグが。
    下の層ではシウンとヘカトンケイルが。
    お互いに睨み合い、殺気をぶつける。
    北欧の怪物同士の戦いが、そして怪力巨人と超人の戦いが始まった。

    本物の特撮は命懸け

    • 2017.03.28 Tuesday
    • 15:45

    JUGEMテーマ:特撮

    ゴジラのスーツアクターを務めていた、薩摩剣八郎さんの本を読みました。
    映画を観ている時って全然意識しないけど、特撮って中に人が入っているんですよね。
    薩摩さんは何度も死にかけたそうです。
    ゴジラの着ぐるみってただでさえ重くて、歩くだけでも大変なようです。
    それに加えて戦闘シーンがあったり、燃えるシーンがあったり。
    呼吸困難で命の危険があることもしばしばのようです。
    最近は特撮といっても、CGに変わってしまいました。
    私は中に人が入っている特撮が好きです。
    CGのような演出は出来なくても、生の人間が動かすリアリティがあるからです。
    微妙な指の動きや、躊躇ったり痛がったりの細かい仕草。
    人が演じているんだから、とても繊細な動きが表現できます。
    だけどそうなると、ミニチュアで街を作らないといけないわ、中の人に命の危険が及ぶわで、とても大変なことです。
    でもね、そういう危機感やリアリティって、ちゃんと画面越しに伝わるんですよ。
    決してCGでは出せないものが、生の人間には出せるんです。
    ミニチュアの街であっても、そこに実在しているからリアリティがあるんです。
    特撮ファンにとっては、やはりCGよりも生がいいです。
    人が中に入り、背景はジオラマ。
    だけど作る側の人達の立場に立つと、決して強要はできないのだと思います。
    いつ死ぬか分からない過酷な仕事。
    一度失敗したら、一から作り直さないといけないジオラマ。
    臨場感ある緊迫した映画の裏には、文字通り命懸けの舞台があります。
    アクション映画でもCGが増えて、スタントマンが危険なことをする必要は少なくなりました。
    安全性という意味ではすごく良いことです。
    だけど作品性という意味では・・・・・。
    見たいけど強要できない。
    難しいところです。
    だけどそれでも、今までに命懸けで作ってきた特撮映画には、CGにはない魅力があります。
    いかにチープに見えようとも、やはり生のものはいい!
    強要はできない。
    だけど人が中に入り、作りこまれたジオラマの中で戦うのが、特撮の醍醐味です。
    これからはもう見られなくなるかもしれません。
    その分昔の作品を大事にしたいですね。

    ダナエの神話〜星になった神様〜 第九十九話 空を覆う闇(6)

    • 2017.03.28 Tuesday
    • 15:44

    JUGEMテーマ:自作小説

    「あいつら大丈夫かな?」
    コウが心配そうに呟く。
    「どいつも強そうな悪魔だったからなあ・・・・やっぱ俺も残った方がよかったか?」
    今さら言っても仕方ないが、つい口にしてしまう。
    するとシウンが「先のことだけ考えろ」と言った。
    「仲間を信じるなら、目の前のことに集中するんだ。」
    「そりゃ分かってるけどさ・・・・、」
    シウンの顔はいつになく厳しい。
    コウは「どうした?」と尋ねた。
    「いっつも難しい顔してるけど、今日はさらに難しい顔してるぞ。
    便秘でもしてんのか?」
    そう尋ねると、「村が・・・」と答えた。
    「俺の故郷はとうに無くなっていた。」
    「え?」
    「跡形もなく消え去っていた。家もみんなも。」
    「マジかよ・・・・・。」
    コウは言葉を失くす。シウンは淡々と続けた。
    「誰がやったか分からない。だが邪神が関係していることは間違いないはずだ。」
    「だろうな。今この星で起きてるトラブルは、ほとんどアイツのせいだ。」
    「俺にはもう帰る場所も待つ人もいない。何も無いんだ。」
    「んなことねえだろ。俺たちがいるじゃねえか。」
    シウンの先に回り込んで、顔を覗き込む。
    「ここまで一緒に戦ってきたんだ。もう他人じゃないだろ?」
    「なら邪神を倒した後はどうする?」
    「どうするって・・・・、」
    「お前たちには目的があるんだろう?」
    「まあ・・・なあ。
    まずは大きな神様に会いに行って、その後はどっかの星でダナエが会社を建てると思う。
    俺はその手伝いでもするかな。」
    「なら先があるわけだ。」
    シウンは羨ましそうに言う。
    「だが俺には何もない。邪神を倒しても、大事なものは戻って来ないんだ。」
    怒りが湧き、身体が熱くなる。
    「俺が邪神を倒そうとするのは、これ以上不幸な人達を生み出したくないからだ。
    しかし邪神を倒した後、俺はいったい何を目的に生きればいい?」
    険しい顔はさらに険しくなる。
    コウは慰める言葉が見つからず、黙ってそっぽを向くしかなかった。
    「俺は最後まで戦う。しかしその先はどうなるか分からない。」
    「分からないって・・・どういうことだよ?」
    「キーマと同じように、もうこの世に未練がなくなるかもしれ・・・・、」
    そう言いかけた時、ダナエが「一緒に行こうよ」と言った。
    「邪神を倒したら、大きな神様に会いに行こ。シウンも一緒に。」
    ダナエは前を見つめたまま言う。
    「その後は私の会社で働かない?シウンはすっごく真面目だし、それに優しいし。
    会社が大きくなったら、みんなに慕われる上司になると思うわ。」
    そう言って一瞬だけ笑顔を見せた。
    シウンはへの字に口を結び、「この星を飛び出すのか?」と呟いた。
    「もちろんシウンがよければよ?」
    「・・・・そうだな。この星から出るのも悪くないかもしれない。」
    顔を上げ、少しだけ希望を灯す。
    しかし「決めるのは戦いが終わってからだ」と答えた。
    「それまで返事を待ってくれるか?」
    「もちろんよ!」
    ダナエは頷き、また怖い顔に戻る。
    三人は回廊を駆けていく。
    すると少し先で道が崩壊していた。
    「俺が来たのはここまでだ。」
    シウンは足を止め、「気をつけろ」と注意した。
    「あの先に大広間があるんだ。その部屋にはあちこちに魔法陣が描かれていて、そこに悪魔たちがいた。」
    「だったら・・・・、」
    「まだいるはずだ。アドネたちが戦っているよりも強い悪魔が。」
    壊れた回廊の前まで来て、三人は足を止める。
    瓦礫があちこちに散乱し、床が地割れのように壊れている。
    そこかしこから煙が上がり、むわっと熱が籠っていた。
    「ここで戦ったのね?」
    「ああ。」
    「シウンが苦戦した悪魔って、どんな感じの奴なの?」
    「巨人のように大きな奴だ。顔がたくさんあって、腕もたくさん生えている。」
    「巨人みたいで、顔と腕がたくさんか・・・・。想像しただけでも強そうね。」
    「それに筋骨隆々としていたな。
    馬鹿げたほどの怪力で、どんな攻撃でも歯が立たなかった。」
    「どんな攻撃も効かないのかあ・・・・。バリアでも張ってるのかな?」
    「いや、そうじゃない。とにかくタフなんだ。
    俺の攻撃をまともに喰らっても、まったくビクともしなかった。」
    「桁外れに強いってことね。ならやっぱり私が戦うしかないわ。」
    ダナエは気を引き締める。
    眉間に皺を寄せて、額に月の刻印を浮かばせた。
    大きな魔力が彼女を包み、青白く輝く。
    そして槍の先から神器を伸ばした。
    「この槍さえ刺されば、勝機はあると思う。」
    長く伸びた神器の槍。
    エメラルド色の刀身が、疾風の風のように輝いた。
    「顔と手がいっぱいある悪魔は私が倒すわ。
    もし他にも悪魔がいたら、そっちはお願いね。」
    三人は顔を見合わせ、コクリと頷く。
    気合を入れ、壊れた道を一気に駆け抜けた。
    回廊の奥には大広間があった。
    シウンの言った通り、あちこちに魔法陣が描かれている。
    大広間へ入った三人は、言葉を失った。
    ・・・・まず最初に見たものは、数体の悪魔の死体だった。
    翼が生えていたり、牛の顔をしていたり。
    蛇みたいな悪魔もいたし、ダナエより小さな悪魔もいた。
    しかしどの悪魔も強い悪魔である。
    力の差はあれど、邪神が呼び寄せた折り紙付きの猛者たちだ。
    その猛者たちが、死体になって転がっている。
    全身を切り刻まれたり、氷漬けにされたり。
    頭に穴が空いている者もいた。
    予想もしていなかった光景に、三人は言葉を失う。
    しかしすぐに次の衝撃が襲ってきた。
    広間の奥に、巨大なシルエットが見えたのだ。
    巨人のように大きく、手がたくさんある。
    シウンは「アイツだ!」と指さした。
    「あれが化け物のように強いんだ!」
    遠くから見るその悪魔は、確かに恐ろしい気配を放っていた。
    今までラシルで会ったどんな悪魔よりも強い気配だ。
    そしてその悪魔は今、誰かと戦っていた。
    たくさんある手を振って、暴れ狂っている。
    広間の奥は光が薄く、ハッキリ見えない。
    ダナエは「もしかして・・・」と呟いた。
    「あの悪魔がこれをやったのかな?」
    そう言って死体になった悪魔を見つめる。
    コウは「仲間割れってことか?」と尋ねた。
    「そうとしか考えられないわ。」
    「仲間を襲うほど凶暴な奴か・・・・確かにおっかないな。」
    二人は気合を入れ直す。
    敵は思っていた以上に凶暴で、しかも残忍だ。
    しかしコウは「ある意味チャンスだな」と笑った。
    「ダナエ、今のうちに奇襲を仕掛けようぜ。」
    「そうね。卑怯な気もするけど、今はそんなこと言ってられないわ。」
    二人は力を溜め、同時に飛びかかろうとした。
    しかしシウンが「待て!」と止めた。
    「何か様子がおかしい。」
    巨人のような悪魔は、ブンブン手を振り回している。
    その奥には、これまた巨大な鳥のシルエットが浮かんでいた。
    「大きな鳥がいるわね。あれも悪魔なのかしら?」
    巨人の悪魔は、鳥の悪魔と戦っている。
    そしてその二体の間に、数体の悪魔がいた。
    その悪魔たちは、巨人の悪魔に味方しているようだった。
    「クソ!けっこういるな・・・・。」
    コウは「これじゃ奇襲も難しいな」と唇を尖らせる。
    「せっかくチャンスだと思ったのに。」
    そう言って拳を下ろすと、「そうじゃない」とシウンが返した。
    「よくあいつらを見ろ。」
    「ん?」
    コウは目を凝らしてみる。
    すると巨大な鳥のシルエットが、他の悪魔に襲いかかっていた。
    大きな足で踏みつけ、鋭いクチバシで喰い裂き、翼から放った冷気で凍らせていく。
    「すげえなアイツ!あっという間に三体も倒したぞ!」
    コウは興奮気味に言う。
    シウンは浮かない表情をしながら「さっきはあんな奴いなかった」と答えた。
    「俺がここへ来た時は、あんな鳥は見ていない。」
    「なら新しくやって来た悪魔ってことか?」
    「おそらくな。しかも強い・・・・。」
    巨大な鳥は、あっという間にほとんどの悪魔を倒してしまった。
    残ったのは巨人のような悪魔だけで、ぶんぶん手を振り回している。
    しかし鳥の悪魔は俊敏にそれをかわす。
    そして「カカカカカカ!」と馬鹿にしたように笑った。
    「やっぱ仲間割れみたいだな。」
    コウは嬉しそうに言う。
    「おかげでほとんどの悪魔がいなくなった。これなら奇襲出来るぜ。」
    そう言って「なあダナエ」と笑いかける。
    しかし彼女は笑わなかった。
    ゴクリと息を飲み、神妙な顔をしている。
    「どうした?やるなら今がチャンスだぜ。」
    「そうね・・・・。」
    「卑怯とか気にすんなよ。これはラシルの命運が懸った戦いなんだ。
    勝たなきゃ意味ないんだぜ?」
    せっかくのチャンスを逃してはまずい。
    コウは「早くやろうぜ」とせっついた。
    しかしダナエは動かない。
    ギュッと目を細め、悪魔の戦いを睨んでいる。
    「ねえコウ。」
    「なんだ?」
    「私・・・・あの大きな鳥を知ってるわ。」
    「なんだって?」
    「きっとアイツに間違いない・・・。」
    「前に戦ったことがあるのか?」
    「私は戦ってないわ。ミミズさんが戦ったの。」
    「ニーズホッグが?・・・・・・おい、それってまさか・・・、」
    「うん、フレスベルグだと思う。」
    ダナエが地球に行った時、何度も悪魔と遭遇した。
    その中にフレスベルグという恐ろしい怪鳥がいたのだ。
    あのニーズホッグと対等に渡り合うほどで、とにかく獰猛な性格をしている。
    極限のピンチでも生き延びるほど逞しく、一筋縄ではいかない相手だ。
    「あの時、ミミズさんはカルラと協力して戦ったわ。
    それでも仕留めることは出来なかった。」
    そう言って「悪い予感が当たった」と首を振った。
    「ジル・フィンからフレスベルグの話を聞いた時、ずっと気になってたのよ。
    もしかしたら、あの鳥もラシルに来てるんじゃないかって。」
    「お前もか?」
    「コウも?」
    「ああ。ニーズホッグはめちゃくちゃ強いだろ?
    だったらそれに対抗できる悪魔とか魔獣を、邪神が呼び寄せてる可能性は充分にあると思ったんだ。
    こりゃヤバイよな・・・・。」
    ニーズホッグでも手こずる相手となると、楽に勝てるはずがない。
    「俺たちの中で勝てそうなのはダナエだけだ。
    でもお前は巨人の悪魔と戦わなきゃいけないからなあ。」
    「さすがに二体も相手にするのは厳しいかも・・・・、」
    「分かってるって。だからあっちの鳥は俺たちでどうにかするしかない。」
    そう言ってシウンを振り返った。
    「あの鳥、冷気を操るみたいだ。だったらお前の攻撃が効きやすいかも。」
    「そうだな。しかし俺は冷気に弱い。厳しい戦いになりそうだ。」
    シウンは拳を握り、ぶるりと震えた。
    「なんだ?ビビッてんのか?」
    「いいや、逆だ。ウズウズしてる。」
    そう言って身体の熱を上げていった。
    「俺は故郷も家族も失った。
    その怒りを誰にぶつけていいのか分からなくて、ずっとイライラしてたんだ。」
    「なるほど、なら盛大に八つ当たりしてやれよ。」
    「言われなくても。」
    三人は飛びかかるタイミングを窺う。
    フレスベルグと巨人のような悪魔。
    二体は激しく戦い、まったくこちらに気づいていない。
    そして・・・・フレスベルグの鉤爪が、巨人のような悪魔の顔を抉った。
    鮮血が飛び散り、悪魔は痛そうに唸る。
    「今だ!」
    コウの掛け声を合図に、三人は飛びかかる。
    ダナエは巨人の悪魔に、コウとシウンはフレスベルグに。
    まずダナエの槍が一閃した。
    刃が疾風のように駆け抜け、悪魔の腕を切り落とす。
    次にコウとシウンの拳が炸裂した。
    フレスベルグの腹に向かって、同時に殴りかかる。
    しかしこれは当たらなかった。
    俊敏なフレスベルグは、とっさに身を引いてかわしたのだ。
    「しまった!」
    「外したか・・・・。」
    二人は悔しそうに口元を歪める。
    フレスベルグは宙へ羽ばたき、鋭い目で見下ろした。
    「カカカカカー!」
    馬鹿にしたように笑って、冷気を吹きかけてくる。
    コウは魔法を唱え、風を起こした。
    冷気は風に阻まれて、四方へ散っていく。
    その隙にシウンが駆け出し、フレスベルグに飛びかかった。
    拳に力を溜めて、青白く輝かせる。
    狙うのは頭、高く飛び上がって右の拳を振った。
    しかしこれもかわされてしまう。
    そしてすれ違いざまに、鉤爪で切り裂かれてしまった。
    「ぐぽおッ・・・、」
    「シウン!」
    背中が抉らえて、マグマが飛び散る。
    「この鳥野郎!真っ二つにしてやる!」
    コウは拳を構え、一直線に飛びかかる。
    そしてフレスベルグの手前で直角に曲がった。
    脇に入り込み、抉るようなボディブローを見舞う。
    当たった。・・・・そう思ったが、これも不発に終わった。
    またもや俊敏な動きでかわされて、頭上から冷気を吹きつけられる。
    「効くか!」
    拳を振り、冷気を切り裂く。
    しかし続いてクチバシが襲いかかってきて、「うおおおお!」と受け止めた。
    「カカカカカ!」
    「変な声で鳴いてんじゃねえ!」
    足を踏ん張り、クチバシを掴んで投げ飛ばす。
    フレスベルグは「やるな」と笑って、鮮やかに着地した。
    「妖精のクセに大したもんだ。」
    「鳥に褒められても嬉しくねえぜ。」
    「カカカカカ!」
    フレスベルグは羽ばたき、冷気の嵐を起こす。
    その時、広間が揺れて、足元にヒビが走った。
    「カ?」
    割れた床からプラズマの光が漏れる。
    フレスベルグは宙へ舞い上がり、翼から冷気を吹き下ろした。
    その威力は絶大で、プラズマの光は一瞬で掻き消されてしまった。
    「カカカカカ!弱い弱い!」
    そう言って全身の羽を逆立てて、グルグルと回転した。
    「気をつけろ!何かしてくるぞ!」
    二人は身構える。
    ・・・次の瞬間、フレスベルグの羽がミサイルのように降り注いだ。
    「うおおおおおお!」
    二人は腕をクロスして防御する。
    しかし羽のミサイルは超低温で、触れただけでも氷漬けになるほどだ。
    「クソ!このままじゃ冷凍保存されちまう!」
    コウは魔力を溜めて、全身から放出する。
    風が衝撃波のように放たれて、羽のミサイルを弾いた。
    「ちょこまか動きやがって!その動きを封じてやるぜ!」
    両手に重力の渦を浮かばせて、フレスベルグに投げつける。
    「カカカカ・・・・・カ?」
    強力な重力に引き寄せられて、思うように飛べない。
    必死に羽ばたくが、どんどん吸い寄せられていった。
    「シウン!やれ!」
    「おう!」
    拳を握り、幾つもの突起を伸ばした。
    「一撃で決めてやる・・・・。」
    故郷を失った怒り、家族や仲間を失った悲しみ。
    それらの全てを拳に乗せる。
    すると今までない変化が起きた。
    なんと身体全体から突起が生えてきたのだ。
    「な、なんだ・・・・?」
    突然の異変に、コウは息を飲む。
    「俺は・・・・灼熱の超人・・・・。
    怒りと悲しみが・・・・俺をっもっと熱くする・・・・・。」
    シウンのパワーは感情に直結している。
    大きな怒りと悲しみは、今までにない力を与えようとしていた。
    ・・・・・神器の覚醒。
    一部しか使うことの出来なかった神器の力が、その全てを解放しようとしている。
    コウは息を飲みながら、「すげえ・・・」と唸った。
    シウンの中から底知れぬ力が溢れようとしている。
    身体中から伸びた突起は、彼の熱を吸い取り、別の力に変換していった。
    全てを焼き尽くす灼熱の炎、それは破壊をもたらす熱である。
    しかしその熱は今、破壊の力を失いつつあった。
    その代わりとして、生命エネルギーを増大させる、命の熱となった。
    マグマの超人であるシウンは、いつでも熱を放出している。
    ただ触れるだけで誰かを傷つけてしまうし、ただ立っているだけでエネルギーを消耗してしまう。
    灼熱の超人には大きなデメリットがあり、それを克服する為に、ダレスも鎧に身を包んだ。
    しかしシウンに宿る神器の棍棒は、そのデメリットを消し去り、プラスの力に変換した。
    破壊ではなく再生、放出ではなく備蓄。
    溢れる熱は、自分の力を増大させるエネルギーへと変わった。
    ある力を別の力に変換する。
    これこそが神器の棍棒の力だった。
    激しい怒りと悲しみによって、シウンは神器の力を百パーセント引き出した。
    今の彼はテールランプのように赤く輝いている。
    それはマグマの光ではなく、怒りと悲しみの光だった。
    「カカ!こりゃえらいことになった。」
    神器の力を完全に引き出したシウン。
    もはやどんな神や悪魔でさえも、彼の前では無力になる。
    しかしフレスベルグは神でも悪魔でもない。
    巨人族の末裔であり、恐るべき魔獣なのだ。
    神器は魔獣や神獣に対しては、大した力を発揮しない。
    そのことを知っているフレスベルグは、慌てることはなかった。
    「これでは、いくら邪神が悪魔を呼び寄せても無駄になる。
    それはつまり、俺様のような魔獣が重宝されるということだ。」
    そう言って翼を広げ、重力の渦を包み込んだ。
    フレスベルグの大きな魔力が、重力の渦を消し去っていく。
    コウは「しまった!」と叫んだ。
    「せっかく動きを止めていたのに・・・・、」
    「止める?あの程度で?カカカカ!無駄無駄!」
    「何言ってんだ!実際に止まってたじゃねえか。」
    「ちょっと油断してただけだ。お前みたいな妖精の魔法なんて効かない。」
    翼を羽ばたき、風を起こす。
    烈風が襲いかかり、コウは吹き飛ばされてしまった。
    「うおおおおおおお!」
    するとシウンが一瞬でコウの後ろに回り込んだ。
    両手でしっかりと受け止め、「大丈夫か?」と尋ねる。
    「お、おう・・・・。」
    「お前はダナエを手伝ってやれ。俺はこの鳥をやる。」
    そう言ってフレスベルグを見上げる。
    「カカカカ!やってみろ。出来るものなら。」
    「ああ、すぐに焼き鳥にしてやる。」
    コウを降ろし、拳を握る。
    それを軽く振ると、赤い光が走った。
    その光は強烈な閃光を放ち、フレスベルグは「むお!」と目を閉じた。
    ・・・・・それは大きなミスだった。
    ほんの一瞬目を閉じただけで、シウンはフレスベルグの頭に飛び乗っていた。
    「むうお!速いッ!」
    慌てて振り落とそうとするが、それより先にシウンの拳骨がめり込む。
    「ぶひゅうッ!」
    頭がへこみ、ブバっと鼻血が吹き出す。
    今度は横っ面を殴られ、首が百八十度後ろまで曲がった。
    「ぐぎょおお・・・・、」
    「タフだな。普通の悪魔なら死んでるぞ。」
    「むぎゅう・・・・おのれええ・・・・、」
    どうにか首を戻し、「ぶっ殺す!」と叫んだ。
    しかし頭の羽を掴まれて、「痛ででででで!」と悲鳴を上げた。
    シウンは力任せに振り回し、そのまま床に叩きつける。
    「どぶろッ!」
    轟音が響いて、大広間が揺れる。
    床に穴が空き、下の層へ落ちていくフレスベルグ。
    目からも血を噴き出して、たったの三発でボロボロになってしまった。
    「ちゅ・・・・・ちゅよい・・・・・、」
    クチバシが震え、ピクピクと痙攣する。
    シウンは彼の腹に飛び降りて、ハンマーのように拳を叩きつけた。
    「おうぶおおおお!」
    口を開け、胃液をまき散らす。
    二度、三度と殴られて、最後は思い切り蹴り飛ばされた。
    「はぎょろもおおおおおおおお!」
    壁にぶつかり、壁画のようにめり込む。
    しかしまだ生きていて、「くううおのおおおお・・・・」と目を光らせた。
    「おのれえええあああああ!たかが超人の分際で!
    舐めてんじゃねえやダボハゼええええああああああ!」
    フレスベルグの恐ろしさは、そのしぶとさにある。
    鳥の魔物でありながら、巨人やドラゴンよりもタフなのだ。
    しかも傷つくほど獰猛になり、底なしの殺気が溢れる。
    シウンは「まだやる気か?」と睨んだ。
    「もう勝負は着いている。大人しく降参するなら、命まではとらない。」
    「カカカカ!」
    「何がおかしい?」
    「ネビロスの言う通りだ。この星の住人は甘い。
    これならいくら力を持っても、地球の悪魔には勝てないな。」
    「なんだと?」
    「勝負はまだ続いてる。死なない限りは終わらない、カカカカ!」
    壁から抜け出したフレスベルグは、獰猛に襲いかかる。
    「無駄だ。」
    シウンは片手で攻撃を受け止め、床に叩きつけようとした。
    しかしフレスベルグは力いっぱい羽ばたく。
    冷気を吹き荒らし、一瞬で極寒の世界に変えてしまった。
    「お前は冷気に弱いと見た。」
    「だから何だ?この程度でどうにかなると思ってるのか?」
    今のシウンには、冷気さえ大したダメージにはならない。
    神器のおかげで、体内に熱を溜め込むことが出来るからだ。
    いくら表面が冷えようが、中まで伝わることはない。
    しかしフレスベルグは違った。
    辺りが極寒の世界になったおかげで、より力が増していく。
    「お前なんて、ニーズホッグのバカに比べれば脆いもんだ。」
    冷気を吸い込み、全身を氷柱のように尖らせた。
    そして翼を広げると、氷柱の羽がミサイルのように放たれた。
    全弾シウンに命中して、カチコチに凍ってしまう。
    「カカカカ!このまま砕いてやる。」
    大きなクチバシを開けて、切断機のように食い千切ろうとする。
    しかしその瞬間、シウンの氷は弾けて、ショットガンのように飛び散った。
    「カカ!?」
    「今の俺に冷気は効かん!」
    拳を振り上げ、力を溜める。
    それを床に叩きつけると、一本の赤い線が走った。
    フレスベルグは危険を感じ、咄嗟に飛び退く。
    すると一瞬遅れて、赤い線から灼熱の光線が放たれた。
    それはフレスベルグの右の翼を貫き、胴体から切り離してしまった。
    「カアアア!」
    大事な翼を失い、悲しみとも怒りともつかない声で叫ぶ。
    「貴様あああああ!」
    落ちた翼を睨み、泣きそうな顔になる。
    「よくも俺様の自慢の翼を!」
    「もう一枚も落とさせてもらう。」
    「カカ!?」
    シウンはもう一度床を叩きつける。
    再び赤い線が走り、残った翼を焼き落とした。
    「カアアギャアアア!」
    両の翼を失ったフレスベルグは、何とも滑稽な姿になった。
    「これではニワトリと変わらんではないか!」
    「大事な武器を失ってしまったな。それで勝ち目があるとは思えないが?」
    「ククウッ・・・・降参しろとか言うのか?」
    「出来れば命は取りたくない。しかし続けるというのなら・・・、」
    拳を振り上げ、力を溜める。
    フレスベルグは「待った待った!」と首を振った。
    「お前の勝ちだ!」
    そう言って床にひれ伏した。
    「俺の負けだ。命だけは勘弁してくれ。」
    「最初からそうすれば、翼を失わずにすんだものを。」
    シウンは拳を下ろす。そして「妙な気を起こすなよ?」と睨んだ。
    「少しでも下手な動きをしたら、今度は首から上がなくなる。」
    拳を向け、脅すように言う。
    フレスベルグは「カアー!」と床に突っ伏した。
    「カカカカカカ!」
    クチバシで床をつつき、悔しさを滲ませる。
    シウンは「大人しく地球へ帰れ」と忠告した。
    「カカカカカ!」
    「悔しがっても無駄だ。お前では俺に勝てない。」
    「カカカカカカ!」
    いつまでも悔しがるフレスベルグに、シウンは首を振った。
    「カカカカ・・・・・ジカアアアアアア!」
    突然フレスベルグが立ち上がる。
    シウンは「忠告しはたずだぞ」と言って、トドメを刺そうとした。
    床を殴り、赤い線を走らせる。
    しかしフレスベルグはあり得ない速さでそれをかわした。
    「何!?」
    「カアアア!バカのマヌケめ!カカカカカアアアア!」
    フレスベルグは翼を広げる。
    シウンは「馬鹿な!」と叫んだ。
    「翼が復活している!?」
    「復活じゃない。元々斬られてないからな。」
    「なに・・・?」
    「お前が斬ったのはただの氷だ。」
    「氷だと?」
    フレスベルグはぶるぶると身体を振る。
    すると氷柱の羽が抜け落ちて、元の姿に戻った。
    「ほれ、ちゃんと付いてるだろう?」
    「・・・・なるほど。さっきのは氷柱で作ったダミーか。」
    「そういうことだ。おかげでお前の戦い方を見させてもらった。」
    「そうか。それで感想は?」
    「強い。」
    「褒めてくれて光栄だ。だが手加減はしないぞ。」
    シウンは両方の拳を振り上げ、床を叩きつける。
    赤い線が蜘蛛の巣のように走り、灼熱の光線を放った。
    しかしフレスベルグは動じない。
    無数に飛び交う光線を、難なくかわしていった。
    「なッ・・・・、」
    驚くシウン。
    フレスベルグは「カカカカ!」と笑う。
    「何度も同じ攻撃は当たらない。」
    フレスベルグはとにかく俊敏に動く。
    まるで光線の動きを見透かしているかのように。
    シウンは口を開けたまま立ち尽くした。
    「・・・・目か?異常なまでの動体視力で、光線の動きを捉えているのか?」
    ブレスベルグは無駄のない動きで光線をかわす。
    しかもその動きがデタラメに速い。
    「カカカカ!どんな強い攻撃も、当たらなきゃ意味がない!」
    「くッ・・・・、」
    「確かにお前は強い。でも俺様との相性は悪いな。」
    フレスベルグの言う通り、パワータイプのシウンでは攻撃を当てるのは難しい。
    せっかく神器の力を解放したのに、この怪鳥が相手では力を発揮できなかった。
    「クソ・・・・、」
    「悔しがるな。別にお前が弱いわけじゃない。
    残念なのはオツムが足りなかったことだ。」
    「俺が馬鹿だというのか?」
    「だってそうだろ?俺じゃなくて、ヘカトンケイルを相手にしていれば勝てたかもしれないのに。」
    「ヘカトンケイル?」
    「手と顔がいっぱいある巨人のことだ。」
    そう言って上の層を指した。
    「あいつはパワー馬鹿だからな。お前と同じで脳筋ってやつだ。」
    「貴様・・・・それ以上俺を馬鹿呼ばわりすると、タダではおかない。」
    シウンは弾丸のように飛びかかる。
    フレスベルグは余裕でかわし、大きな足で彼を掴んだ。
    「カカ!」
    「なんの!足を引き千切ってやる!」
    「無駄無駄。」
    猛禽類の握る力は凄まじい。
    鷲が本気で足を握れば、大人が三人がかりでも開かないほどである。
    巨大な怪鳥のフレスベルグともなると、その握力は尋常ではない。
    パワーアップしたシウンでさえ手こずるほどだった。
    「ぐううおお・・・・・、」
    「やはり強いな。」
    シウンのパワーは、フレスベルグの握力を上回る。
    しかし足が開き切る前に、クチバシで咥えられてしまった。
    「うおおおお!」
    「さっきのお返しだ。」
    ブンブン振り回して、勢いをつけてから叩きつける。
    「ぐおおおおおおお・・・・・、」
    シウンは床を貫き、遥か下の階層まで投げ飛ばされた。
    「カカカカカ!俺様の相手ではなかったな。」
    勝ち誇るフレスベルグ。しかし「まだ終わってないぞ!」とシウンが飛び出してきた。
    「んなッ・・・・・、」
    遥か下まで落としたはずのに、もう飛び上がってきた。
    フレスベルグは驚き、一瞬だけ動きが鈍る。
    そこへシウンの拳がめり込み、「ごぎゃあああああ・・・」と天井まで吹き飛んだ。
    ぶばっと血を吐き、羽を散らしながら床に落ちる。
    しかしすぐに立ち上がって、「ぶっ殺おおおおおおお!」と叫んだ。
    シウンも拳を握り、「ここからが本番だ」と言った。
    「お前のスピードが勝つか、それとも俺のパワーが勝つか。」
    「望むところだ!指一本触れさせずに仕留めてやる!」
    フレスベルグは目にも止まらぬ速さで襲いかかる。
    シウンは両方の拳を叩きつけ、無数の光線で迎え撃った。
    シウンのパワーか?フレスベルグのスピードか?
    一進一退の攻防が始まった。

    サブカルチャーの自由

    • 2017.03.27 Monday
    • 16:40

    JUGEMテーマ:漫画/アニメ

    二次創作。
    漫画でいうところの同人誌。
    法律的にはアウトなのかもしれませんが、そういった世界からプロになる人もいます。
    またプロも同人誌を描くことがあるそうです。
    漫画界の表と裏、光と影。
    漫画やアニメ、それにゲームもそうだけど、そういう世界の器の大きさって、二次創作を黙認しているってことです。
    好きな作品があるなら、好きなキャラクターがいるなら、自分で描いてみたい。
    コスプレだって似たようなものです。
    好きなキャラになってみたいという思いは分かります。
    本来ならタブーなんだろうけど、それをほぼ容認しているサブカルチャーは、やはり懐が大きいです。
    かの手塚治虫は、ディズニーに憧れてアニメを始めたといいます。
    そして日本でもアニメが定着した頃、今度はディズニーが手塚治虫のアニメを真似たそうです。
    しかし手塚治虫はこれを喜んだといいます。
    ディズニー側はてっきり文句を言いに来ると思っていたのに、手塚治虫が口にしたのは感謝の言葉でした。
    なぜなら憧れのディズニーが真似るということは、自分のアニメを認めてくれたということだからです。
    本家が欲しがるほどの出来栄えになっていたんですね。
    これを喜べる手塚治虫は懐が大きいです。
    漫画やアニメ、それにゲームなどの世界は、オマージュが多いです。
    でも誰もそれを責めたりしません。
    だから逆も然り。
    漫画、アニメ、ゲームの同人誌は、あって然るべきものです。
    持ちつ持たれつなんです。
    なんでも規制や禁止に走るのではなくて、「そっちが真似てもいいけど、こっちも真似るよ」って姿勢が重要なんだと思います。
    あまりに規制にうるさくなると、どの分野にしろ閉鎖的になってしまうでしょう。
    一時期、音楽CDでコピーを規制するものが出回ろうとしました。
    コピーコントロールCDってやつです。
    でもこれは流行りません。
    そんなことをしてしまえば、ロクにiPhoneやiPodで聴けなくなってしまいます。
    何千曲って入る道具の中に、全てダウンロードで曲を入れるわけがありません。
    どうしてもCDからのコピーが必要になります。
    音楽を聴く媒体は時代によって変わるから、それに追随することは音楽業界にとってもメリットがあるはず。
    ある程度オープンにした方が、自分たちも恩恵を受けられます。
    サブカルチャーの世界はとにかくオープンです。
    それこそがここまで普及し、人気が出た秘訣でしょう。
    完全なる自由は崩壊を早めてしまうけど、完全な締め付けはもっと終焉を早めてしまうはず。
    規制に向かう世の中は、回り回って自分の首を絞めることになりかねません。
    サブカルチャーの自由は空気は、これからも大事にしたいですね。

    ダナエの神話〜星になった神様〜 第九十八話 空を覆う闇(5)

    • 2017.03.27 Monday
    • 16:39

    JUGEMテーマ:自作小説

    「アドネ大丈夫かな?」
    ダナエが心配そうに呟く。
    任せるとは言ったものの、やはり不安だった。
    かと言って戻るわけにも行かず、城の下層を目指して進んでいた。
    うねうねと曲がった道は、幾つにも分かれている。
    どっちへ行ったらいいのか分からなくなると、シウンが「こっちだ」と言った。
    「分かれ道のほとんどはダミーだ。先へ進んでも何もない。」
    「シウンが見て来てくれたおかげで助かるわ。ありがとね。」
    ダナエはニコリと笑う。
    「ねコウ、シウンは馬鹿じゃない。ちゃんと考えての事だったでしょ?」
    「そうだな。全員で行ってたら、アドネ以外石にされてたかも。」
    コウはうんうんと頷く。
    「なあシウン、他にどんな悪魔がいたんだ?」
    そう尋ねると、「どいつも恐ろしい奴ばかりだ」と答えた。
    「俺が見た悪魔は全部で八体だった。」
    「そのうちの二体がゴーゴンとバロールだな?」
    「ああ。しかし他の悪魔の中には、明らかにバロールより強い奴もいた。
    何発もプラズマの光を当てているのに、ビクともしないんだ。」
    「攻撃が吸収されたのか?」
    「そうじゃない。ただ単に力の差があり過ぎたんだ。
    俺ではどうしようもない相手だった。」
    「マジかよ・・・。」
    コウは少しだけ青くなる。
    仲間の中で一番パワーがあるのがシウンだ。
    そのシウンの攻撃が通用しないとなると、他の仲間の攻撃も通用しないことになる。
    ただ一人、ダナエを除いて。
    「ねえコウ。」
    ダナエが神妙な顔で話しかける。
    「シウンが勝てなかったその悪魔、私が戦うわ。」
    「言うと思ったよ。でもダメだ。」
    「どうして?シウンが勝てないんじゃ、他のみんなでも無理よ。」
    「そうだけど、でもお前は邪神と戦うんだぞ?
    もちろん俺たちだって一緒に戦うけど、それまでに力を消耗しちゃいけない。
    なるべく万全の状態で臨まないと。」
    「でもその前にやられちゃったら意味ないじゃない。
    だからその悪魔は私が戦う。この槍で串刺しにしてやるわ!」
    怖い顔をしながら、槍の穂先を光らせる。
    その目は殺気に満ちていて、コウは寒気を覚えた。
    《コイツ・・・・戦いの鬼になるつもりだな。》
    今日のダナエはいつもと違う。
    優しさを押し殺し、戦いの事だけを考えていた。
    コウは《これなら期待がもてるな》と頷いた。
    《コイツはやる気になればとことん強い。
    だけど暴走すると困るから、そこだけ注意しとかないと。》
    さっきアドネに言われた『ダナエを守って』という言葉。
    コウは自分が犠牲になってでもダナエを守るつもりだった。
    死なせないことはもちろん、暴走して悪魔にさせてもいけない。
    その為には、常にダナエの傍にいる必要があった。
    「ダナエ、その強い悪魔は俺も一緒に戦うよ。」
    そう言うと、ダナエは「ダメよ」と首を振った。
    「コウはみんなと一緒にいてあげて。」
    「いや、でもな・・・・、」
    「私なら平気だから。」
    「平気じゃないから言ってんだ。また前みたいに暴走したらどうすんだよ?」
    「しないわ。」
    「何を根拠に・・・・、」
    「だってコウがいてくれるから。」
    ダナエは一瞬だけ表情を崩す。
    「離れていても、コウがいてくれる。昨日の夜みたいに。」
    「・・・・・・・。」
    コウの顔がまた真っ赤になる。
    恥ずかしそうに俯きながら、「分かったよ」と頷いた。
    「でも危なくなったら、すぐ助けに入るからな。」
    「うん。」
    ダナエの傍から離れたくないが、確かにそれでは戦力のバランスが崩れる。
    コウは《俺ってちょっとダナエに執着し過ぎか?》と反省した。
    「おいガキ。」
    ノリスがニヤニヤしながら見つめる。
    「・・・・分かってる。でも何も言うな。」
    「分かってるって、何を分かってるんだ?」
    「どうせ俺をからかうつもりなんだろう?」
    「いいや。」
    「じゃあなんだよ?」
    「気づかないのか?」
    「何に?」
    「悪魔の臭いだ。」
    ノリスは後ろを振り返り、素早く銃を撃った。
    三発の弾丸が火を噴く。
    何もない空中へ飛んでいった弾丸は、見えない壁に弾かれるように爆発した。
    「なんだ!?」
    コウは顔をしかめる。
    すると爆炎の向こうから、人間と同じくらい大きさの悪魔が現れた。
    身体は真っ赤で、一糸纏わぬ全裸だ。
    顔の下半分が髑髏になっていて、背中から無数のサソリが生えていた。
    「やっぱいやがったか?」
    ノリスはタバコを吐き捨て、「さっきから臭えと思ってたんだよ」と言った。
    「ここに入ってから、コソコソ俺たちのこと付けてたろ?」
    そう言って銃を向けると、悪魔は一息で間合いに踏み込んできた。
    「危ない!」
    ダナエが槍を振り、悪魔を切り払う。
    しかし刃はすり抜けてしまった。
    「幻術!?」
    ダナエは「本体はどこ?」と探した。
    「上だ。」
    ノリスが天井に銃を向ける。
    すると一瞬だけ黒い影が走って、さっきの悪魔が現れた。
    すぐに引き金を引くノリス。
    弾丸は悪魔の胸に命中し、カチコチに凍らせてしまった。
    「すごい・・・どうしてわかったの?」
    驚くダナエに、ノリスは鼻を動かした。
    「臭うつったろ。」
    そう言って氷漬けになった悪魔を蹴飛ばした。
    ゴロゴロと床を転がり、壁にぶつかる。
    「お前ら先に行け。」
    「ノリス・・・あなたも一人で戦う気?」
    「そうしねえと先へ進めねえだろ。」
    「でも・・・・、」
    「それによ、こういうコソ泥みてえな悪魔は俺向きだ。
    お前らが一緒にいたんじゃ、かえってやりににくいぜ。」
    新しいタバコを咥え、ふっと煙を吐きかける。
    「邪魔だからとっとと行きやがれ。」
    「ノリス・・・・。」
    背中を向け、悪魔と向かい合うノリス。
    敵は氷漬けになっているが、それでもまだ生きている。
    ダナエは迷ったが、すぐに踵を返した。
    「行こうみんな!」
    そう言って先へ飛んでいく。
    コウはノリスを振り返り、「頼むぜ」と言った。
    「後から必ず追いついてくれ。待ってるから・・・・。」
    「ごちゃごちゃ言ってねえで行け。」
    銃を振り、さっさと行けと鬱陶しそうにする。
    コウは背中を向け、ダナエの後を追いかけた。
    「てめえは船長さんだけ守ってりゃいいんだよ。他の事は気にすんな。」
    遠のくコウの背中に言い残す。
    コウは一瞬だけ振り返り、すぐにダナエを追いかけて行った。
    「さて・・・こんなんでくたばるタマじゃねえよな?」
    撃鉄を起こし、銃を向ける。
    すると悪魔の前に黒い影が走り、次の瞬間にはノリスの後ろに回り込んでいた。
    「二度も同じ手え使ってんじゃねえ。」
    後ろに回った悪魔には構わず、足元に向かって銃を撃つ。
    弾は床を貫通し、その下からさっきの悪魔が現れた。
    「おっと!」
    咄嗟に飛び退き、二丁を向ける。
    悪魔はコキコキと首を回しながら、「面白い武器だな」と笑った。
    「燃やしたり凍らせたり。俺にくれ。」
    「いいぜ、お前が勝ったらな。」
    二人はじっと睨み合う。
    するとノリスの背後で、何かが崩れる音がした。
    それは悪魔を凍らせていた氷だった。
    ノリスはチラリと振り向き、「氷の中から脱出できるとはな」と笑った。
    「お前手品師か何かか?」
    「テスカトリポカ。」
    「ああ?」
    「俺の名前。」
    「そうかい、良い名前だな。舌を噛みそうになるぜ。」
    ノリスは笑いながら銃を撃った。
    しかしテスカトリポカは素手で摘み、まじまじと弾丸を見つめた。
    「これに神器が宿ってるのか?」
    「知ってるのか?神器のことを。」
    「邪神から聞いてる。お前たちに神器を奪われたと。」
    「ほう、じゃあ何か?お前らが邪神に代わって取り返すってのか?」
    そう言って銃を振ると、一瞬で目の前まで距離を詰められた。
    ノリスはテスカトリポカの頭に銃を突きつける。
    それと同時に、テスカトリポカの手がノリスの頭を掴んだ。
    「神殺しの神器は恐ろしい。でもお前はまだまだダメだな。」
    「ああ?」
    「感じてるはずだ。俺の力はお前の遥か上だと。
    中途半端に神器の力を引き出しても勝てない。」
    「そうかな?」
    「長引かせる気はない。いたぶれば本当の力を引き出すかもしれないからな。」
    テスカトリポカはニヤリと笑う。
    そしてかぼちゃでも潰すように、ノリスの頭を砕いた。
    しかし「ん?」と顔をしかめる。
    「手応えが・・・・、」
    そう呟いた瞬間、背中に凄まじい衝撃が走った。
    「むぐおッ・・・・・、」
    振り向くと誰もいない。
    しかし背中には確かにダメージがあった。
    「なんだ?」
    不思議に思っていると、ふと目の前を何かが横切った。
    「あれは・・・・ピクシー?」
    小さな妖精がふわふわと飛んでいる。
    そしてこちらを向いて、ニコリと笑った。
    「なんだ?」
    顔をしかめ「おい」と手を伸ばす。
    すると今度は股間に衝撃が走った。
    「いぎッ・・・・・、」
    思わず倒れ込むテスカトリポカ。
    泣きそうになるのを我慢しながら、「誰だ!」と周りを見渡した。
    「よう。」
    目の前にノリスがいた。
    銃を向け、「早い決着だな」と笑う。
    「お前・・・・獣人のクセに幻術を使えるのか?」
    「ん?」
    「さっき頭を潰したはずだ!しかし手応えがなかった・・・・。」
    「ああ、あれはコイツがやったんだ。」
    ノリスはテスカトリポカの後ろを指さす。
    そこにはマナが飛んでいた。
    「妖精・・・・こいつがやったのか?」
    「そういうこった。」
    そう言って頭に銃を突きつける。
    「誰も一人で戦うなんて言ってねえよなあ?」
    「・・・・・・・・・。」
    「ま、騙されたお前が悪いってこった。」
    ゲラゲラと笑い、カチっと引き金を引く。
    テスカトリポカの頭に穴が空き、「あ・・・・」と悲鳴を上げた。
    次の瞬間、身体が燃え上がって、そのまま灰に還ってしまった。
    魂が抜け、どこかへ飛び去っていく。
    ノリスは「あっけなかったな」と肩を竦めた。
    「おい妖精、ナイスだ。」
    そう言って煙を飛ばすと、「私も一人で戦うのはゴメンだからね」と頷いた。
    「あんたが一人で戦ったら、私だって一人で戦う流れになる。
    それが嫌だから手を貸しただけよ。」
    「なら今回は金は無しだな。」
    「まあね。」
    二人は回廊の奥を睨み、小さく頷く。
    そしてダナエたちを追いかけようと走り出した時、背後から何かの気配を感じた。
    「なんだ・・・・?」
    「良くないのがいるわね。それも・・・・テスカトリポカより遥かに強いわ。」
    二人はゴクリと息を飲む。
    何かが来る・・・・・。
    そう感じた瞬間、床を突き破って、巨大な男根が現れた。
    「うおおお!なんだこりゃあ!?」
    見たこともないほど巨大な男根が、目の前にそびえたつ。
    それは見た目もさることながら、凄まじい魔力を放っていた。
    「こいつも悪魔か?さっきの奴とは比べものになんねえぜ・・・・。」
    見上げるほど大きな男根。
    それはヌルヌルの粘液を出しながら、奇妙な動きをした。
    そして男根の根本から、人の顔と腕が生えてきた。
    「うお・・・・なんか出てきやがったぜ。」
    銃を向けながら後ずさるノリス。
    マナも彼の後ろに隠れた。
    「なんじゃい。強敵と聞いていたのに、こんな小粒どもが相手か。」
    男根から生えた顔は、「はあ・・・」とため息をつく。
    「この程度の小虫なら、わざわざ儂が出張ることもなかろうに。
    邪神め、よっぽど追い詰められていると見える。」
    そう言って「おい小虫ども」と睨んだ。
    「大人しくしておれば、痛みもなく殺してやるぞ。」
    低く、ドスの聞いた声。
    ノリスは思わず身震いした。
    それは見た目だけのせいではなく、この悪魔から底知れぬ強さを感じていたからだ。
    「やべえなこいつ・・・・。」
    「色々とね。」
    「見た目も中身も勝てそうにねえぜ。」
    「規格外よね。」
    「お前嬉しそうだな?」
    「別に。」
    二人は逃げる準備に入っていた。
    しかしそれを察知した悪魔が、先っぽから粘液を飛ばした。
    「危ねえ!」
    咄嗟にかわしたが、粘液によって逃げ道が塞がれてしまう。
    「あの液体、触りたくねえな。」
    「色んな意味でね。」
    逃げ場を塞ぐ粘液は、ただならぬ気配を放っている。
    もし触れたら無事ではすまないだろう。
    生き残りたければ戦うしかない。
    勝ち目は薄いが、それはしか道はなかった。
    「おいチンポ野郎。それ以上臭えもんまき散らしたら、自慢のブツに風穴空けるぜ。」
    そう言って銃を向けると、悪魔は笑った。
    「なぶり殺される方を選ぶか。まあそれもよかろう。」
    悪魔は怒り、何倍にも膨張する。
    天井を突き破り、太く、長くなっていった。
    「・・・・・やる気だな。」
    「色々とね。」
    膨れ上がった男根は、悪魔の塔のようにそびえ立つ。
    「儂の名はマーラ!あらゆる意味で他を圧倒する、魔王の中の魔王なり!
    貴様らに地獄を見せてやろうぞ!」
    ピキピキと血管が浮かび上がり、黒く変色していく。
    「腐れチンポ野郎が、やってやるぜ!」
    怒張した男根が二人に襲いかかる。
    ノリスとマナの、色々な意味で命を懸けた戦いが始まった。

    どこにも行けない夜

    • 2017.03.26 Sunday
    • 15:12

    JUGEMテーマ:写真

     

     

     

     

     

    どこにも行けない夜。

    人が眠る代わりに、何かが起きてきそう。

     

     

     

     

     

     

     

    夜になると、どうして色んな物が不気味に見えるのか?

    目に見えない首をもたげているかのよう。

     

     

     

     

     

     

     

    人の知らない所から、人の見えないところから、何かがわんさか湧いているのかも。

    マリオの土管のように、この穴に飛び込めば、クッパ城に行けたりして。

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