不思議探偵誌〜オカルト編集長の陰謀〜のイラスト(7)

  • 2017.07.31 Monday
  • 10:26

JUGEMテーマ:イラスト

 

     爺さんと婆さんとカボチャのUFO

 

 

 

     ミスコン開催!

 

 

 

     女王のイタズラ

 

 

 

     人形漫才

 

 

不思議探偵誌〜オカルト編集長の陰謀〜 最終話 オカルト編集長の陰謀(3)

  • 2017.07.31 Monday
  • 10:21

JUGEMテーマ:自作小説

古代人の事件から一週間後、事務所でタバコを吹かしていた。
茂美からギャラをふんだくってやろうと思ったのに、なぜか奴は姿を見せない。
上の階にある出版社にも行ったけど、ここ数日は出勤してないとのことだった。
編集長が出勤しないで雑誌が作れるものなのか?
色々不思議に思ったが、内容なんてないに等しい雑誌なので、特に問題ないのだろう。
もしこのまま奴が現れなければ、それはそれで喜ばしいことだ。
ギャラはもらえなくなるが、今後一切のあの女の関わらないですむというのなら、それは何よりの報酬になる。
そんな事を考えながら煙を吐き出していると、コンコンのノックが鳴った。
「はいはい。」
由香里君がドアを開けに行く。
そして「成美さん!」と叫んだ。
《チッ・・・・戻ってきやがったか。》
椅子を回し、背中を向ける。
茂美は「久能さんいる?」などと、わざとらしく尋ねた。
「ええ、いますけど・・・・でもどうしたんですか?その格好は。」
「ああ、これ?面白いでしょ?」
「面白いっていうか・・・・なんで?っていうか。」
由香里君が驚いている。
《茂美の奴、いったいどんな格好をしているんだ?》
興味はあるが、振り返る気分にはなれない。
目を合わしたら最後、また余計な依頼を持ちかけられるのだ。
この際ギャラは諦めて、自腹で旅行に行くしかない。
「ふふふ、久能さんったら。また私のこと警戒しちゃって。」
背中越しに不敵な笑みが伝わってくる。
コツコツとヒールの音を響かせながら、「久能さん」と近づいてきた。
「この前はお疲れ様。」
「ああ。」
「大変な仕事だったわね。」
「まったくだ。どっかの誰かさんが余計なことをしてくれるから。」
「怒らないで。その分のギャラを持ってきたんだから。」
そう言って俺の目の前に紙切れを振った。
「なんだこれは?」
「小切手よ。」
「・・・・ほう、いいのか?こんなに貰って。」
「今回の事件は私にも原因があるからね。」
「あんた以外に原因が思い当たらないぞ。」
「それに色々と危険だったから。」
「なら貰っておくよ。」
小切手には700万の数字が。
これならかなり良い所へ旅行に行ける。
「わざわざ払いに来てもらってすまんな。じゃあ帰ってくれ。」
羽虫でも追い払うように、シッシと手を振る。
するとその手を掴まれて、何かを握らされた。
「ん?なんだこりゃ?」
「見れば分かるでしょ?」
「ああ、ただの石ころだ。」
「お礼よ。」
「お礼?なんの?」
「ティムティム女王から。」
「なんだって?」
「この前彼女が会いに来たのよ。」
「会いにって・・・・あんたにか?」
「彼女ね、今は土星の近くに住んでるの。」
「・・・・・・・。」
「新しい住処が見つかって、無事に暮らせるようになったわけ。だからお礼を言いに来てくれたの。」
「ちょ、ちょっと待て!」
慌てて話を止める。
「由香里君。」
チョイチョイと手招きをすると、「なんですか?」と面倒くさそうに言った。
「いま事務所のホームページの更新で忙しいんです。」
「実はタバコが切れてしまってね。買って来てくれないか?」
「自分で行って下さい。」
「そうしたいけど、茂美さんと仕事の話をしてるんだ。ちょっと手が離せなくてな。」
「ほんとに!また依頼を持って来てくれたんですか?」
嬉しそうに立ち上がる。
俺は「そういうわけなんでちょっと頼む」と千円を渡した。
「すぐ行ってきます!帰って来たら私にも聞かせて下さいね!」
「もちろんさ。あ、あと釣りはいらないから。アイスでも買いたまえ。」
「子供みたいに言わないで下さい。」
由香里君は上着を羽織り、千円をポケットにつっこんで出ていった。
「・・・・さて、詳しく聞かせてもらおうか。」
灰皿を消し、茂美を振り返る。
「・・・・あんた、その格好はなんだ?」
「ふふふ、似合ってるでしょ?」
「それ宇宙服じゃないか。」
全身タイツに宇宙人のアップリケ。
これは間違いなくあの宇宙服だ。
「なんでそんな物を着て・・・・・、」
言いかける俺の口を、茂美は指で止めた。
「ふふふ、優しいわね久能さんは。」
「何が?」
「だって女王との約束なんでしょ?由香里ちゃんには何も話さないって。」
「ああ。そしてその事を知ってるあんたも、俺と同じく女王の真意を知っているということだな?」
「まあね、順を追って話すわ。」
茂美はデスクに腰掛ける。
ピッチリタイツの宇宙服が、そのエロいボディを引き立てていた。
「すぐ息子さんが元気になるのね。ほんとに若いこと。」
「いつか躾けるさ。それよりあんたの話を詳しく聞かせてくれ。」
手にした石を見つめながら、「お礼ってなんのことだ?」と尋ねた。
「ふふふ、実はね、今回の事件はティムティム女王が私に依頼してきたのよ。」
「・・・・・はい?」
「人形塚の土偶が目覚めたのは、私が古文書を取ったから。だけどそうするように頼んできたのはティムティム女王なのよ。」
「話が見えん。どういうことだ?」
不穏な雲行きになってきた。眉間に皺が寄る。
「あのね、古文書の封印の力は元々弱まっていたの。このままではいずれ土偶は復活してしまう。
そうなれば人形が支配する世の中になってしまうわ。」
「実際にそうしようとしていたからな。」
「それを阻止する為に、ティムティム女王が私に会いに来たの。」
「なんであんたに会うんだ?」
「だって私はオカルトに詳しいもの。今までに散々ムー大陸やアトランティスのネタを扱ってるわ。
内容はほとんどがデタラメなんだけど、稀にそうじゃないこともあるの。
以前に一度だけ「呪われた人形」ってタイトルで特集を組んだことがあるのよ。
その時に人形塚の取材をしたわけ。」
「よくあんな所へ取材に行ったな。呆れる神経だよ。」
「その時にね、ティムティム女王が私のことを見ていたらしいの。
そしてこの女は使えるかもと思って、後日に声を掛けてきたわけ。」
「ほんとかよ?女王に責任をなすりつけようとしてないか?」
「いいから最後まで聞いて。女王は土偶が復活することを心配していたの。
そうなれば再び人形戦争が起きてしまうから。」
「それを阻止する為に、あんたに協力してくれと頼んできたと?」
「ええ。だけど私はか弱い女子だから、大したことは出来ないって答えたの。」
「あんたほど図太い神経の落ち主はいないと思うがな。」
「だから知り合いの探偵を紹介してあげるわって言ったのよ。
今までに幾つもの難事件を解決してきた腕利きの探偵を。」
「おい待て、ちょっと話がおかしくなってきたぞ。」
思わず立ち上がる。
動悸と目眩がして、台所で水を一杯飲んだ。
「あんたが俺を紹介したって?」
「ええ。」
「ということは、あんたが俺たちを巻き込んだってことだな?」
「巻き込むなんて人聞きの悪い。仕事を紹介してあげたんじゃない。」
「アホかお前は!こんな事件になるって分かってたら、最初から断ってたぞ!」
「でもいつもは危ない仕事がしたいって言ってるじゃない。」
「それはそうだが・・・・いや、しかしだな!古代人だのUFOだの、そんなオカルトじみた危険はゴメンだ。」
「そんなに怒らなくても。」
「怒るに決まってるだろ!なんでそういう大事なことは最初に言わない?」
「最初に言ったら断られると思って。」
「確信犯じゃないか!」
頭が痛くなってきた・・・・。
やっぱりこの女に関わるべきじゃなかった。
「要するにだ・・・・あんたは最初から全てを知っていたわけだ?
土偶が暴れ出すことも、女王がそれを鎮める為にミスコンを開くであろうことも。」
「ええ。」
「今回の事件、一から十まであんたの手の平の上だったわけだな?」
「そういう言い方しないで。この作戦は女王と私で考えたんだから。」
「嘘つけ!絶対にお前のアイデアだろ。」
「シナリオの99パーセントは私が考えたわね。」
「主犯だろうがそれ!」
「でも残りの1パーセントはティムティム女王よ。」
「どの部分だ?」
「ミスコンでどんな衣装を着るかって部分。」
「オシャレしたいだけじゃないか!どっか他でやれ!」
「だからそう怒らないでってば。事件はもう終わったんだし、みんな無事だった。それでいいじゃない。」
「タムタムとモリモリはあの世へ逝ってしまったんだぞ。みんな無事なわけないだろ。」
「でもそれは古代人同士の問題だから。私たちがどうこう言うことじゃないわ。」
「ぐッ・・・・こういう時だけまともなこと言いやがって。」
怒りを通り越して呆れてくる。
タバコを咥え、「帰ってくれ」と手を振った。
「もうあんたの顔は見たくない。」
「なんでそんなに怒るのよ?」
「怒らない方がどうかしてる。」
「ちゃんと依頼料は払ったじゃない。700万も。」
「割りに合わない気がしてきた。」
「それに私は雑誌の売り上げを伸ばせるわ。」
「定期購読が幾つも取れたもんな。」
「それだけじゃないわ。今回の事件、大々的に特集を組むつもりなの。
なんたって私も事件の中心にいたんだから、リアルな記事が書けるわ。」
「出来上がっても見せには来るな。あんたへの恨みが倍増しそうだ。」
呆れを通り越し、イライラが戻ってくる。
窓を開け、盛大に煙を吹かした。
「あ、ちなみになんだけど・・・・、」
「なんだ?」
「宇宙旅行へ行かない?」
「は?」
「実は今朝まで宇宙にいたのよ。ティムティム女王のUFOに乗って。」
「そうかい。そのまま宇宙の果てまで飛んでってくれればよかったのに。」
「それでね、新しい古代都市が出来たから、ぜひ遊びに来ないかって言ってくれたの。」
「誰が行くか!」
「私は行ってきたわよ。はい、これお土産。」
そう言ってお菓子の箱を置く。
「なんだこりゃ?」
「ムー大陸まんじゅうよ。」
「誰が食うかこんなもん。」
「でも向こうじゃ人気なのよ。火星人も買いに来てるし。」
「そうかい。儲かってけっこうなことだ。でも俺は金輪際関わることはない。
女王だって『もう会うことはない』ってメイトリックスばりに言ってたんだから。」
「そんなこと言わずに行ってあげればいいじゃない。」
「お断りだ。」
「でも彼女は決着を着けたがってるわ。」
「決着?」
「ミスコンよ。由香里ちゃんとの対決はノーコンテストに終わったでしょ?だから次こそはって・・・・、」
「馬鹿らしい。由香里君がそんなのOKするわけが・・・・、」
「やります!」
バン!とドアが開いて、勇ましい女戦士が現れる。
「・・・・由香里君、帰って来てたのか。」
目を釣り上げながら、ズンズン歩いてくる。
「はいこれ。」
ポンとタバコを置いて、「お釣りでアイスを買いました」とレジ袋を揺らす。
「う、うむ・・・・美味そうだな。」
「茂美さん、私行きます。宇宙へ。」
「まあ。」
「私も決着をつけたいと思ってたんです。うやむやなまま終わっちゃったから、ずっと胸に引っかかってて。」
「さすがは由香里ちゃん、話が分かるわ。」
茂美は嬉しそうに手を叩く。
俺は「やめとけ」と言った。
「どうせまたロクなことにならない。」
「でもこのまま終わりたくないんです。」
「君はいつからそんな子になったんだい?ミスコンなんて興味ない子だと思っていたが?」
「ミスコンがどうとかじゃなくて、きっちり決着をつけたいだけです。勝負は最後までやり抜かないと。」
グっと拳を握るその姿は、戦に赴く戦士のよう。
もはやどんな言葉でも止められないだろう。
「で、いつですか?」
「由香里ちゃんの都合の良い時でいいって言ってたわ。」
「じゃあ今から行きましょう。」
「いいの?忙しいんじゃない?」
「どうせ大した仕事はないから。」
そう言って俺を振り返る。
「久能さん、悪いけどちょっと宇宙へ行ってきます。」
「本当に行くのか?」
「ホームページに仕事の依頼が二件入っていました。」
「ほう、どんな?」
「逃げたオタマジャクシを捜してほしいって。」
「そうかい。田んぼに行って新しいのを捕まえてこいって返信しとくよ。」
「それと犬の躾をお願いしたいって。」
「俺は息子の躾で手いっぱいだ。だいたいそれは探偵の仕事じゃない。」
「どっちも久能さん一人でできますよね?」
「一ミリもやる気が起きないな。」
「じゃあ断っておいて下さい。私は女王と戦ってきますから。」
眉間に皺を寄せ、鼻息荒く事務所を出て行く。
「おい由香里君!旅行はどうするんだ?明後日に行く約束だろう?」
「久能さん一人でどうぞ。」
「そんな!ちゃんとゴムも買ったのに・・・・、」
「え?何か言いました?」
「・・・いや、何も。」
人を殺しそうな目で睨むので、一気に息子が萎えた。
「茂美さん、早く行きましょう。」
勇ましい足取りで出て行く由香里君。
もはや誰も止めることは出来まい。
「ふふふ、ほんとに勇ましい子。」
「茂美さん・・・・あんたが来なけりゃこんな事にはならなかったんだ。ほんとに疫病神め。」
「ごめんなさいねえ、よかったらゴム代払いましょうか?」
「馬鹿にしやがって。宇宙でもどこへでも好きなとこへ行ってこい。」
これ以上は付き合いきれない。
この女に関わるくらいだったら、犬にお手を教えていた方がマシだ。
「これ返すよ。」
女王からのお礼を投げ渡す。
「いらないの?」
「そんな石ころいるか。」
「あらそう?不思議な力を持った石なのに。」
茂美は残念そうに言う。
思わず「何か秘密があるのか?」と尋ねてしまった。
「これね、煩悩をコントロールする石なの。」
「なんだって?」
「水に溶かせば煩悩を押さえる薬になるの。」
「それはすごいな。息子を躾できる。」
「逆に油で揚げれば煩悩が増す。」
「ほう、そりゃ面白い。」
「しかも飲んだ相手が惚れてしまうというオマケ付き。」
「な、なんだってええええ!?」
慌てて石を取り返す。
こんな素晴らしい石、誰が返すものか。
「ふふふ、ねえ久能さん。」
「なんだ?薄気味悪い顔しやがって。」
「宇宙にはまだ見ぬ美人がいるかもしれないわ。」
「ん?」
「その石を使えば・・・・ねえ?美人な宇宙人のお嫁さんが見つかったりして。」
「・・・・いや、宇宙人の嫁さんは欲しくないな。」
「じゃあ由香里ちゃんに使えば?」
「なッ・・・・彼女に?」
「だって旅行に行くはずだったんでしょう?そこで一発ヤルつもりだったわけでしょう?」
「下品な言い方をするな。裸の付き合いをした後に、共に朝陽を眺めようとだな・・・・、」
「なら宇宙から眺めればいいじゃない。燦々と輝く太陽を。」
「そ、それは・・・つまり・・・・、」
「由香里ちゃんと宇宙旅行・・・・悪くないと思わない?」
不敵な笑みをしながら顔を近づけてくる。
俺は引き出しを開け、昨日買ったゴムを見つめた。
「・・・・いやいや!そういうのはイカンよ、うん。薬を使ってどうこうしようなんて、そんなのは犯罪者と同じ発想であって・・・、」
「あ、ちなみに好意のない相手には効かないからね。」
「え?」
「もし由香里ちゃんが久能さんに好意を持っていたら、煩悩によってそれが刺激されるわけ。
逆に久能さんのことが好きじゃないなら、何も起こりはしないわ。」
「・・・・・・・・。」
「本当は久能さんが煩悩をコントロールできるようにって、女王から預かった物なの。
だけどあなたに渡した以上、それはあなたの物。どう使おうと勝手よ。」
「・・・・・・。」
「私の見る限り、久能さんは嫌われてないと思うわ。だからそれを使えば・・・・、」
俺は立ち上がり、窓の外に石を投げ捨てた。
「あら。」
「・・・・間違いを起こしそうだ。やっぱりいらん。」
「ふふふ、後悔しない?」
「さあな。」
茂美に背中を向け、投げ捨てた石を見つめる。
車が走ってきて、コツンと弾いた。
コロコロと転がって、ドブの中に流されていく。
「ふ・・・・これでいいのさ。」
若干の後悔はあるものの、あんな物に頼って由香里君をどうこうしようとは思わない。
それはさすがに反則というものだろう。
「というわけで、とっとと帰ってくれ。くれぐれも由香里君が危ない目に遭うことがないようにだけ気をつけてくれよ。」
そう言って振り返ると、ガチャリと手錠を掛けられた。
「おい、何してる?」
「久能さん、ちょっとは成長したわね。」
「はあ?」
「あれはただの石ころよ。」
「はああ!?」
「ふふふ、煩悩に負けてついて来ると思ったのに。まさか捨てちゃうとはね。」
「アンタあ・・・・また騙そうとしたな。」
ほんっとにこの女だけは油断ならない。
思いっきり睨みつけてやったが、まったく悪びれていなかった。
「こうなったら実力行使しかないわ。」
茂美は自分の腕にも手錠を掛ける。
「おい!何をするつもりだ?」
「実はね、また女王から依頼を受けたのよ。」
「依頼?」
「なんでも土星に住む古代人がイチャモンを付けてきてるらしいの。
ここは自分たちの縄張りだから出て行けって。」
「そうかい。なら別の星に住めばいいさ。」
「でも他に住めそうな場所がないのよ。だからね、女王は挑戦状を叩きつけたの。
ミスコンをやって、わらわが勝ったらここに住まわせてくれって。」
「またミスコンか。ほんとに好きだな。」
「敵の大将もかなりの美少女でね。しかも家臣に至るまで美人揃いなのよ。」
「ほう、そりゃすごい。是非とも拝んでみたいけど、俺は行かないぞ。」
「こままミスコンをやれば、女王は確実に負けるわ。」
「なんで?」
「ミスコンはチーム戦で行うの。となると、古代人の方は女王しかまともに戦えないわ。」
「そりゃ他はペンゲンだらけだからな。」
「そこで私たちにお声がかかったってわけ。」
茂美はクスリと笑う。
目の奥には不穏な影が宿っていた。
「おい、あんたまさか・・・・、」
「そう、私たちは助っ人。地球人代表として、女王のチームで参加するの。」
「馬鹿な!なんだそのアホは展開は!」
「女王、由香里ちゃん、そして私でチームを組むわ。」
「あんたも出るのか!?」
「久能さんにも出てほしいの。」
「なんで!俺は男だぞ!」
「男性枠もあるのよ。向こうじゃむさ苦しい男がモテるらしいから、久能さんでも充分戦力になるわ。」
「お断りだ!」
「でも引き受けちゃったから。」
「だからなんで勝手に決めるんだ!?一言くらい相談しろよ!」
「見返りとして100年先まで定期購読してもらうことになったの。だから断れなくて。」
「そん時にはあんたは死んでるだろ!」
「いいえ、どうにか生きてみせるわ。どんな手を使ってもね・・・・。」
「怖いぞお前・・・・。」
茂美は本気のようだ。
こいつなら1000年先でも生きているかもしれない。
「というわけで、今から土星に行きましょ。」
「嫌だ!もうお前に関わりたくないんだ!」
「でも由香里ちゃんが待ってるわよ。」
そう言って窓の外を指さす。
そこには勇ましく空手の型をする由香里君がいた。
「茂美さん!早く行きましょう!!」
「ほら、助手があれだけ張り切ってるのよ。逃げるなんて恥ずかしいと思わない?」
「何を言う!この話を知ったら、由香里君だって断るに決まってる!」
窓から身を乗り出し、「由香里君!」と叫んだ。
「君は騙されてるぞ!この女はまた俺たちを利用しようとして・・・・、」
「はい、それじゃ行きましょう。」
「おいコラ!引っ張るな!」
「ふふふ、今回も良い記事になるわ。」
「なにい!?」
「移住先に土星を勧めて正解だった。あそこには美人の宇宙人が揃ってるからね。
きっとこういう展開になると思ってたのよ。」
「また悪だくみか!」
「商売の為よ。」
「あんた怖すぎるぞ!ていうかなんで土星人がいるなんて知ったるんだ!?」
「コネよコネ。」
「どんなコネだ!?」
「だから宇宙人とのコネ。NASAに知り合いがいてね、その伝手で紹介してもらったの。」
「・・・・オカルト雑誌の編集長なんかやめて、今すぐメンインブラックに入ったらどうだ?」
もはや逆らうまい。
きっとこいつ自身が宇宙人なのだ。
手錠を引っ張られ、外に連れ出される。
「由香里ちゃん、久能さんも行くって。」
「ほんとに?」
「ほんとほんと。」
「だってミスコンですよ?久能さんは出られないんじゃ?」
「男性枠もあるの。」
「そうなんですか!」
なぜか喜んでいる。
俺の手を握り、「一緒に戦いましょうね!」と叫んだ。
「君はいつだって元気だな。」
「勝負になると燃えてくるんです。」
「そうかい。でも行ったらきっと後悔するよ。」
「そんなの行ってみなきゃ分かりません。ねえ茂美さん。」
「そうよお。助手がこれだけやる気になってるんだから、所長の久能さんが弱気でどうするの?」
「今すぐあんたの頭をカチ割ってやりたい。」
もうどうにでもなるがいい。
人生は水の流れのごとし。逆らわず、刃向わず、大きな流れに身を委ねるに限る。
「久能さん!今度こそ女王をギャフンと言わせてやりましょうね!」
再戦に喜ぶ由香里君・・・・真実を知ったらどう思うだろう?
いや、案外燃えるかもしれないな。
相手が誰であれ、この子は勝負となれば本気になるから。
「まあ・・・なんだ。気楽に行こうじゃないか。」
そう言ってポンと肩を叩いた時、ポケットからアレが落ちた。
「ん?何か落ちましたよ?」
由香里君は膝をかがめ、アレを拾う。
その瞬間、プルプルと震え出した。
「・・・・なんですかこれは?」
「ゴムさ。」
「どうしてこんな物を?」
「そりゃあれだよ、旅行に行くからさ。」
「はい?」
「沖縄への旅行はキャンセルになってしまった。だったら宇宙旅行に切り替えようと思ってね。」
「・・・・・・・・。」
「UFOの中、一つのベッドで過ごす俺たち。目が覚めたなら、君の肩を抱きながら燦々と輝く太陽を見つめるのさ。」
「へえ・・・・。」
「あ、ちなみに下心だけじゃないよ。ちゃんと愛のある夜を過ごそうじゃないか。
俺たちは付き合いが長いんだ。だったらもうそろそろ裸の付き合いをしてもと思ってだね・・・・、」
「また膨らんでますけど?」
「・・・・こりゃ失敬。」
「はあ・・・・ほんとに変わらないんだから。」
さっきまでの勢いはどこへやら。
呆れと憐憫のため息をつく。
「まああれだ。地球へ帰って来る頃には、俺たちは新しい形の関係になっているかもしれない。」
「はいはい、好きなだけ妄想して下さい。」
肩を竦めながら首を振っている。
踵を返し、「さっさと行きますよ」と歩き出した。
「ふふふ、先が思いやられるわね。」
「あんたさえいなけりゃもっと上手くいくんだ。」
「そうかしら?」
馬鹿にしたように笑うので、「見てろ」と言い返した。
「由香里君、そいつを返してくれ。」
「途中で捨てておきます。」
「そう言うな。君はウチに就職するんだ。だったらもっとお互いのことを知らないと。
そろそろこいつを必要とするに仲になってだね、二人で明るい未来を築こうじゃないか。」
極上の笑顔でポンとお尻を叩く。
すると由香里君も極上の笑顔を返した。
「由香里君、同じベッドで朝を迎えよ・・・・、」
「くたばれ!」
鬼神のごとくキレる由香里君。
極上のカカト落としがめり込んだ。

        不思議探偵誌〜オカルト編集長の陰謀〜  -完-

不思議探偵誌〜オカルト編集長の陰謀〜のイラスト(6)

  • 2017.07.30 Sunday
  • 10:00

JUGEMテーマ:イラスト

 

     ティムティム女王

 

 

 

     タムタム

 

 

 

     モリモリ

 

 

 

     女傑結集

 

 

 

     因縁の関係

 

 

不思議探偵誌〜オカルト編集長の陰謀〜 第二十八話 オカルト編集長の陰謀(2)

  • 2017.07.30 Sunday
  • 09:33

JUGEMテーマ:自作小説

便所と便所を繋ぐワームホール。
そこは長く暗い穴だった。
《臭い!》
とんでもない臭いが充満している。
だけどしばらく我慢していると、突然どこかに放り出された。
「ぐはあッ!」
ケツから落っこちて、ブっと放屁してしまう。
「久能さん!」
由香里君が走ってくる。
俺の傍に膝をつき、「よかった・・・」とため息をついた。
「なかなか出てこないから心配してたんです。」
「途中でちょっと詰まってしまってな。」
「詰まるような場所なんてありましたっけ?」
「運動不足のせいさ。」
腹の肉を掴んでみせると、「じゃあ私と一緒に空手をやりましょうよ」と言われた。
「引き締まるし強くなるし、一石二鳥ですよ。」
「気持ちだけもらっとくよ。」
ポンと由香里君の頭を叩いて、よっこらっしょっと立ち上がる。
「おお、本当に人形塚だ。」
周りは木立に囲まれる山。
手前には小さな古墳があって、その上に便器が建っていた。
「なんであんな場所なんだよ。もうちょっと他にあるだろ。」
不満を言いつつも、とりあえず帰って来られてほっとした。
「さあて、これで古代人の事件は終わりだ。事務所へ帰ろう。」
「ですね。早くお風呂に入りたいし。」
便所のワームホールを通ったせいで、まだ臭いが残っている。
色々なことがあった事件だが、終わりよければ全てよし。
今の俺たちに必要なのは休息だ。
「じゃあみんな、帰るか。」
俺たちは山を降りる。
しかし麓まで来た時に、ほぼパンツ一丁だったことを思い出した。
「まずいな・・・この格好で歩いたら捕まる。」
上は短い毛皮のコート。
下はパンツ。
これで街を歩いたら、パトカーに乗せられること請け合いだ。
「由香里君、悪いが君の宇宙服を貸してくれないか?」
「嫌ですよ、私までお巡りさんに捕まるじゃないですか。」
「でも水着を着てるだろ?」
「だから嫌なんです。」
「平気さ。君みたいな美人が水着で歩いていたら、むしろ歓迎されるよ。」
「歓迎するのは久能さんみたいな人だけです。」
「冷たいな。だったら俺はどうすればいいのさ。」
どこからどう見ても変態の格好をしているのに、街へ出るのは恥ずかしい。
どうしたもんかと困っていると、爺さんが「これ持ってけ」と何かを差し出した。
「それは?」
「儂の股引じゃ。」
「・・・・・・・・。」
「何があるか分からんから、いつも予備を持ち歩いとるんじゃ。」
「・・・・そうか、では・・・・、」
何もないよりはマシ。
そう思って受け取ると、今度は婆さんが「これもやる」と何かを差し出した。
「それは?」
「ブラジャーじゃ。」
「なぜそんな物を・・・・、」
「もしもの時の為に、予備を持ち歩いとる。」
「・・・そうか。なら使わせてもらうよ。」
なんの予備かは分からないが、好意を無駄にするのは悪い。
爺さんの股引を穿き、婆さんのブラジャーを胸に着けた。
「どうだい由香里君?似合ってるかな?」
「こっち向かないで下さい!」
ガバっとコートを広げてみせると、思いっきりカカト落としをくらった。
「ごはあッ・・・・、」
「ほんっとにそういう所は治りませんよね。小学生レベルのイタズラですよ。」
「少年の心を持っていると言ってくれ。」
「変態の間違いでしょう?」
由香里君の目は冷たい。
でもそれが快感だった。
「お楽しみのところ悪いんだけど・・・・、」
茂美が口を開く。
「先に帰るわね。」
「あんたはいいな。スーツのままだ。」
「私ならパンツ一丁でも気にせず帰るけどね。」
「あんたほと神経が太くないんでな。」
「ふふふ、いつでも平静がモットーなの。」
クスクス笑いながら街へ向かっていく。
「ついでにお爺さんとお婆さんも送っていくわ。」
「ああ、頼む。」
茂美は街へ向かっていく。
爺さんと婆さんは「世話になったな」と言った。
「また家に来い。採れたての野菜を食わせてやるから。」
「普通の野菜にしてくれよ。UFOはもうゴメンだ。」
二人は手を振りながら去っていく。
由香里君が「また遊びに行きますね〜!」と手を振り返した。
「いいお爺ちゃんとお婆ちゃんでしたね。」
「変わり者っていった方が正しいだろ。」
「それを言うなら、今回の事件そのものが変わったことばかりですよ。」
「確かにな。まさか本物の古代人に会うとは。」
「ちゃんと新しい住処が見つかるかなあ。」
由香里君は心配そうに空を見上げる。
《平気さ。宇宙のどこかに新しい家を建てるだろうから。》
新たな住処は月か火星か?
どこへ住むにせよ、今後俺たちと会うことはないだろう。
《達者でな、古代人たちよ。》
空に向かって呟くと、由香里君が「何か言いました?」と振り返った。
「達者でなと言っただけさ。」
「みんな幸せに暮らしてくれるといいですね。」
「ああ。それよりも・・・・これはどうにかならんものか。」
上は短いコートとブラジャー、下は股引。
これでは新手の変態にしか見えない。
「なあ由香里君、どこかで服を買ってきてくれないか?」
「無理ですよ、財布なんて持ってないし。」
「う〜む・・・・困った。」
「ていうか私だって宇宙服のままなんですからね。これもけっこう恥ずかしいんですよ。」
「じゃあ代わりに俺が着てあげよう。君は水着で・・・・、」
「けっこうです。」
「冷たいな。」
「じゃあタクシーでも拾いましょうよ。事務所まで帰ればお金があるでしょ?」
「おお、その手があったか。」
俺たちはコソコソと街へ出る。
なるべく物陰に隠れながら、通りゆくタクシーに手を振った。
しかし二人してこんな格好では停ってくれない。
「全然ダメだな。」
がっくりと肩を落とすと、由香里君が「こうなったら・・・」と呟いた。
「どうした?」
「・・・・・・・・。」
「おい!いきなり何を・・・・、」
彼女は宇宙服を脱ぎ捨てる。
エロくて健康的な水着姿となって、俺の息子が反り返った。
「ちょっと待ってて下さい。」
そう言って迫って来るタクシーに手を挙げた。
「・・・・・おお!停った。」
ガチャリとドアが開き、「久能さん、早く!」と手招きする。
俺はそそくさとタクシーに乗り込んだ。
運転手のおっさんがルームミラー越しに由香里君を見つめている。
彼のあそこも反り立っていた。
「ええっと・・・・どこまで?」
思いっきり鼻の下が伸びている。
由香里君は宇宙服で身体を隠しながら「神戸まで」と答えた。
「いやあ、助かったよ由香里君。」
「だってこうしないと誰も停ってくれないから。」
「さすがはミスコンの勝者、男なんてイチコロだな。」
「そういう意味で水着になったんじゃありません。宇宙服よりはマシだと思っただけです。
それにミスコンはノーコンテストだし。」
「いや、君の方が勝っていたさ。」
「そんなの分からないですよ。ティムティム女王は手強かったし。」
「いいや、君の方が可愛い。」
「ほ、ほんとですか・・・?」
嬉しそうに頬を赤くする。
しかし俺の息子を見て、「一気に萎えたました・・・」と目を逸らした。
「下心が丸見えですよ。」
「正直が俺のモットーさ。」
「我慢も覚えて下さい。」
「ま、いずれはね。」
「そんなこと言うんだったら、茂美さんの所に就職先を替えようかなあ。」
「それはダメだ。あいつの所へ行くくらいなら、君が所長をやってもいいからウチにいてくれ。」
「え?ほんとに?」
「本当に茂美の所へ行くつもりならな。」
「ふふふ、冗談ですよ。」
さっきまでの不機嫌はどこへやら。
嬉しそうに笑っている。
「なあ由香里君。」
「なんですか?」
「今回の依頼、茂美からギャラをふんだくるつもりだ。」
「ちゃんと払ってくれますかね?」
「元はと言えばあいつのせいだから。何がなんでも払わせてやるさ。」
こんな珍事に巻き込まれ、定期購読までさせられたのだ。
それなりの見返りを貰わないと割に合わない。
「それでさ、もしたんまりとギャラが入ったら、二人で旅行でも行かないか?」
「それさっきも言ってましたね。」
「君にはいつも助けられてる。ここは所長として労わないとと思ってね。」
そう言って肩を竦めると、「別にいいですけど・・・」と怪訝な顔をした。
「ほんとにただの旅行ですよね?」
「ん?」
「またエッチなこと考えてるんじゃないかと思って。」
「考えてるさ。」
「なッ・・・・堂々と言い切りましたね。」
嬉しそうにしていた顔が、また鬼のように変わる。
「久能さん!今日という今日は言わせてもらいます!いい加減そのセクハラまがいのことはやめて下さい。
私は久能さんのことをよく知ってるからいいけど、もし依頼人にそんな態度を取ったら訴えられて・・・、」
「セクハラじゃないさ。」
「はい?」
「下心だけならそうなるだろう。でもそれだけじゃなかったとしたら?」
「ど、どういうことですか・・・?」
急にうろたえる由香里君。
俺は「そのまんまの意味さ」と笑った。
「君が事務所を離れている間、俺は気づいたんだ。やっぱり俺には君が必要だと。」
「またそんなこと言って。エッチな本ばっかり見てたんでしょう?」
「いいや、君がいないのに読んでもつまらない。」
「なんですかそれ?ああいうのって一人で読むものなんじゃ・・・、」
「君がいつもカカト落としをしてくれる。いつだって正拳突きをかましてくれる。
そういうのがないと張り合いがなくてさ。」
そう言って肩を竦めると、「要するに構ってほしいんですね」と笑われた。
「そうさ。君がいない事務所は寂しくて仕方ない。だから傍にいてほしいのさ。」
「そう言ってもらえるのは嬉しいですけど、私は久能さんのお母さんじゃありませんからね。
あんまり甘えてばっかりいると、いつまで経ってもまともな仕事なんか来な・・・・、」
「君がいればいいさ。」
「はい?」
「君が隣にいてくれればそれでいい。」
「・・・・・・・。」
「二人で久能探偵事務所、そうだろ?」
「久能さん・・・・。」
「今までも、そしてこれからも二人で探偵をやっていこうじゃないか。
古代人が相手でもUFOが相手でも、どんなアホな依頼でも君と二人なら楽しめるさ。」
我ながら臭いことを言ってしまった。
少々恥ずかしくなり、「ううん!」と咳払いする。
「まあ・・・なんだ。旅行でも行って、嫌なことはパーっと忘れよう。だからどうか茂美の所へ行くのだけは・・・、」
「いいですよ。」
由香里君は小さく頷く。
「エッチだしちゃらんぽらんな所長だけど、やる時はやる人ですから。
だからこれからも傍にいてあげます。」
そう言ってクスっと笑った。
「由香里君・・・・・。」
彼女の手を握り、「二人で朝陽を眺めよう」と言った。
「一つのベッド、そこで朝を迎える俺たち。君の肩を抱きながら、水平線から昇りゆく朝陽を・・・・、」
「それ下心なしで言ってます?」
「もちろんさ。・・・いや、エロい心はもちろんある。しかしだね、そういう気持ちだけで言っているわけでは・・・・、」
「また下半身が膨らんでますけど?」
「・・・・ぬうあ!」
いつもの3倍くらい膨張している。
「鎮まれ!」と叩いていると、「はあ・・・」とため息が聴こえた。
「危うく騙されるところだった。」
「いやいや!今のは本心だよ、うん。何もエロい気持ちだけじゃ・・・・、」
「旅行に行くのはいいですけど、部屋は別々で。」
「そんな!」
「あ、しぼんだ。」
「え?・・・・おいコラ!なんて分かりやすい反応をするんだ!出来の悪い奴め!」
呆れる由香里君、焦る俺。
いい加減息子を躾けないと、また就職先を替えるなんて言い出しかねない。
「ま、まあ・・・アレだ。とにかく今は家に帰って休もう。その後は茂美からギャラをふんだくらないと。」
「そうですね。私ももう一度就職のことを真剣に考えないと。」
「そんな!」
「だから冗談ですって。この世の終わりみたいな顔しないで下さい。」
「なら二人で朝陽を・・・・、」
「別々の部屋でね。」
「だけど俺たちは付き合いが長いんだよ?お互いのことをよく知っているわけだし、もうそろそろ下半身が交わっても・・・・、」
「くたばれ!」
「うごうッ!」
タクシーの中なのにカカト落としがめり込む。
驚く運ちゃん。
彼の息子もしぼんでいった。

差別ってなに?

  • 2017.07.29 Saturday
  • 17:49

JUGEMテーマ:社会の出来事

ストリートファイターの音楽はいつ聴いてもテンションが上がります。
ガイルのBGMが一番好きです。
なんなんでしょうね、あの渋さとカッコよさは。
バイソンのテーマもいいです。
熱くなります。
バルログやリュウのテーマもそうだけど、テンポが良くて息つかせない感じがいいです。
格ゲーは盛り上がりとか、テンションが上がるとか、熱くなるのが一番大事です。
あのBGM・・・・どのキャラも良い意味で熱いんですよ。
しかも何がすごいって、それぞれのキャラやお国柄を感じさせる曲調なんです。
ブランカとかダルシムとか感心しますよ。
よくこんな曲作れるなって。
海外では一部「差別的だ」なんて意見があるそうです。
それぞれの国のテンプレなデザインにするのは差別だと。
実に馬鹿らしい意見です。
私は日本人ですが、リュウやエドモンド本田のデザインを見て差別だなんて感じません。
リュウはともかく、エドモンド本田は相撲取りで、しかも顔に隈取があるんです。
そしてステージの背景は銭湯。
外国人がイメージするであろう「THE日本!」ですが、まったくもって差別なんか感じません。
私は行き過ぎたグローバリズムなんて大嫌いです。
民族や国の伝統を大事にして何が悪いのか?
ストリートファイターはゲームなんだから、もうちょっとおおらかな目で見てほしいものです。
エンターテイメントには誇張だって必要なんです。
体に障害があるとか、明らかな差別用語とか、そういうものを面白おかしく見せるのはよくありません。
だけどストリートファイターって全然そんな要素はないですよ。
ダルシムはヨガの達人で、手足が伸びます。
しかも「ヨガファイヤー!」って火も吹きます。
だけどね、これを見て「インド人への差別だ!」なんて思う人は、いったいどれだけいるんでしょうか?
ヨガを究めようが、手足は伸びないし、火を吹けないことくらい、みんな知っていますよ。
日本の武道だって波動拳は出せないし、軍隊格闘技を習ってもソニックブームは撃てません。
例えばウルトラマンを指さし、「あれは巨人症の人を馬鹿にしている!」なんて言う人はいないでしょう。
エンターテイメントとして誇張することと、悪意をもって差別することは、まったく違うものです。
差別を撤廃する為に戦う人は尊敬します。
しかし一部、過剰に反応する人がいるのも事実です。
何が差別で、何が差別じゃないのか?
「これはこうだから差別だ」と簡単に決めてしまうのは、下手をすれば本当に差別を受けている人を見過ごす危険もあります。
ストリートファイターは面白いゲームだし、キャラデザもBGMも好きです。
私はまったく差別とは思いません。
でも傷つく人がたくさん出てきたとしたら、その時は考えなきゃいけないでしょう。
だけど今は違います。
ゲームや漫画を指さし、差別だというのなら、フランスのカフェで東洋人が奥に追いやられるのを失くしてから言ってほしいものです。
叩きやすいものを叩き、そうでないものは怖いから指を指せない。
差別とはまったく違った問題が起きているように思います。

 

不思議探偵誌〜オカルト編集長の陰謀〜 第二十七話 オカルト編集長の陰謀(1)

  • 2017.07.29 Saturday
  • 16:25

JUGEMテーマ:自作小説

探偵・・・それは常に危険と隣り合わせの仕事。
命懸けで依頼を果たし、時には身体を張って依頼人を守りぬく。
そんなシチュエーションに憧れて始めたこの仕事だが、そんな状況になることは滅多にない。
滅多にないのだが・・・・今はその滅多にないことが起きていた。
「パンツ一丁で南極の地下・・・・いったいどうすりゃいいんだ?」
ブルっと震えて、くしゃみが出る。
すると司会をやっていた王様ペンゲンが『これ着てろ』と何かを寄越した。
「それは?」
『ペンゲンの羽毛で作ったコートだ。』
「おお!ありがたい。」
早速着込む。
うむ、温かい。
でもペンゲン用なので裾が短かった。
パンツから下は丸出しだ。
「これじゃ余計に変態に見えるな。」
「元々変態じゃない。」
「成美さん・・・・笑ってる場合か。このままじゃ日本へ帰れないぞ。」
「そうねえ・・・どうしましょ。」
困ったように腕を組むが、全然困っているように見えない。
こいつの神経は出雲大社の注連縄より太そうだ。
「でも久能さん・・・問題はそれだけじゃありませんよ。」
由香里君が不安そうに呟く。
「見て下さい、ペンゲンたちが混乱してます。」
さっきまではワイワイとミスコンを楽しんでいたペンゲンたちが、この世の終わりみたいな顔をしている。
『女王様はどこいったの!?』
『誰がここを治めるんだ!』
『ていうかこのままでここは大丈夫なの?いつかは沈んじゃんでしょ?』
ペンゲンたちの混乱はもっともだ。
指導者を失い、住処まで危険に晒されているのだから。
「女王が言ってましたよね。もうじきここに住めなくなるって。」
「ああ、海底火山やらなんやら、自然現象のせいで沈みかけてるらしいな。」
「それを防ぐには、あの泥人形に魂を入れるしかないんですよね。」
「もしくは引越しするかだ。しかし古代都市の引越しなんてそう簡単にはいかないだろう。」
「ですよね。ペンゲンたちだけじゃどうにも出来ないだろうし。」
「だったらやはり泥人形に魂を入れるしかないわけか。そうなると誰かが生贄にならないといけないわけで・・・・、」
泥人形に魂を入れるということは、すなわち誰かが死ぬということ。
「人間の魂が必要なんだよな。今ここにいる人間は・・・・俺、由香里君、成美さん、そして爺さんと婆さんだ。」
腕を組みながら「さあて、誰に死んでもらうかな」と呟いた。
「俺はまだ探偵を続けたいし、由香里君を生贄に捧げるわけにはいかない。
となると茂美さんか爺さんか婆さんになるわけだが・・・・」
俺としては茂美に生贄になってもらいたい。
そうなればもうこのオカルト編集長と関わらなくてもすむ。
しかし老い先が短い爺さんと婆さんの方が、生贄に適しているか?
「なあアンタら。誰が生贄になるか、三人でジャンケンを・・・・、」
「久能さん!」
思いっきり頭を叩かれる。
「なんてこと言うんですか!!」
「冗談だよ。」
「冗談でも言っていい事と悪いことがあります!」
由香里君は目を釣り上げる。
俺は「失敬」と肩を竦めた。
「でも誰かが生贄にならないと、ペンゲンたちが滅んでしまうぞ?」
「そんなの分かってますよ。でもだからって生贄なんて酷いこと出来ません。」
腕を組んでプリプリしている。
気持ちは分かるが、彼女も良いアイデアは持っておらず、二人して顔をしかめるしかなかった。
「ちょっといいか?」
爺さんが声を掛けてくる。
「なんだ?」
「あんたの話を聞いとったんだが、誰かが犠牲になればすむのか?」
「ああ。」
「なら儂か婆さんがそうしよう。いいじゃろ婆さん?」
「好きにせい。」
「おいおい、さっきのただの冗談だぞ。あんたらを生贄になんて・・・・、」
「じゃあ誰がその役目をやるんじゃ?」
「それが無理だから困ってる。」
「儂らはもう老い先短い。生き甲斐にしようと思っとったUFOもなくなったし、せめて役に立ってから死にたいんじゃ。」
「決断せい、お若いの。年寄りが一人死んであんたらが助かるんだ。気にせんでも恨んだりせん。」
「そういう問題じゃない。人の命を犠牲にするなんて出来ないと言ってるんだ。」
そう答えると、由香里君も「そうですよ!」と頷いた。
「老い先がどうとか関係ないです。だってお爺さんとお婆さんにはお孫さんがいるじゃないですか。
二人が亡くなったらきっと悲しみますよ。」
「なあに、正月と盆にしか会わん孫じゃ。儂らのことなんざすぐ忘れる。」
「そんな・・・・、」
「それに会っても小遣いせびるだけだからな。それでも可愛いからついついあげちまうんだが。」
「だからって生贄なんてダメですよ!そんなの絶対ダメです!」
由香里君は必死に首を振る。
二人の手を掴んで、「そんなの許しませんからね!」と言った。
「ふうむ・・・こうなったらやることは一つしかない。」
俺は後ろを振り返った。
「成美さん、悪いがここで死んでくれ。」
「なんてこと言うのよ。私は嫌よ。」
「5年分定期購読してやるから。」
「命あっての商売よ。死んだら一銭の得にもなりゃしないわ。」
「やっぱりダメか・・・・。」
「そこまで言うなら久能さんが生贄になればいいじゃない。」
「いや、俺がいなくなると由香里君の就職先がなくなるわけで・・・・、」
「ウチで雇ってあげるわ。」
「由香里君をオカルトに染める気か?そんなことは断じて許さん。」
「じゃあ結局誰も生贄は嫌なわけね。」
「ああ。いったいどうしたもんか・・・。」
頭を掻きながら悩んでいると、王様ペンゲンが『俺たちのことはいい』と言った。
「ん?」
『これは元々アンタらには関係のない話だ。』
「そりゃそうだが、あんたたちを見殺しににするのは後味が悪いさ。」
『自分たちでどうにかするよ。』
「出来るのか?もう女王はいないのに。」
『アンタらは甘い。あの人は必ず帰ってくるよ。』
「まさか。宇宙の果てに飛ばされたのに。」
『俺たちは女王のことをよく知ってる。あの程度でどうにかなるような人じゃないんだ。』
「恐ろしいことを言うな・・・・。」
『ま、それはともかく、ペンゲンたちのことは気にしないでくれ。ここを捨てて、どこか他に住める場所を探すから。』
「ほんとにいいのか?」
『辛い道のりだろうが、やるしかないんだ。女王が戻ってくるまで。』
「なんか悪いな・・・・勝手に宇宙へ飛ばしちゃって。」
『気にするな。今までにもこういう事はあったんだ。
悪魔とか死神とかと喧嘩して、マグマの中に落とされたり、月へ縛り付けられたり。
酷い時なんか、地獄の閻魔をブン殴ってこの世に戻ってきた。』
「化け物かよ・・・・。」
『あれでも丸くなった方なんだ。』
「尖った頃の彼女に会わなくてよかったよ。多分俺たちの方が宇宙へ飛ばされてる。」
『まあそういうことなんで、俺たちのことは気にしなさんな。アンタらは自分の国に帰ればいい。』
「それが出来ないから困ってる。何か良い方法はないか?」
『ワームホールがある。』
「なに?」
『ついて来い。』
王様ペンゲンは街の外れに歩いていく。
そこにはプレハブのような小さな建物があった。
「おいこれって・・・・、」
『便所だ。』
「またかよ!」
ペンゲンはドアを開ける。
すると中には和式便器が。
『このトイレは人形塚と繋がってるんだ。』
「そうなの!?」
『あそこの傍にも便所があってな。』
「なんで便所だらけなんだよ・・・。」
『ちなみにこっちからは入れるが、向こうからは入れない。
アンタらが向こうへ帰ったら、この便所は破壊する。
もう二度とあんたらに関わることはないから安心してくれ。』
「そりゃよかった。」
ドアを潜り、便器の前に立つ。
案の定、由香里君は嫌そうな顔をしていた。
「はあ・・・・またトイレの中に入るんですね。」
「古代人の頭は8割ウンコのことを考えてるらしいから。仕方ないさ。」
ポンと肩を叩き、「先に行け」と手を向ける。
「ええ!なんで私が先なんですか?久能さんからどうぞ。」
「いやいや、ここは君に譲るよ。」
「こんなとこで気を遣わないで下さい。久能さんがお先に。」
どっちが先か押し付け合っていると、「儂らが先に行かせてもらうぞ」と爺さんが言った。
「婆さん、便所を通れば帰れるとよ。」
「肥溜めには慣れとる。昔さんざん汲み取ったでな。」
二人は頷き合い、「ほうりゃ!」と飛び込んだ。
「すごいな、なんの迷いもなく行ったぞ。」
「それじゃ私も行くわね。」
「茂美さん・・・あんたも肥溜めを汲み取った経験が?」
「違うわよ、早く帰って今回のことを記事にしたいの。・・・・きっと売れるわよ。」
ニヤリと笑い、便器の中に消える。
「相変わらず逞しい商魂だ。」
あいつはこの世に一人になっても生きていけるだろう。
ある意味古代人以上だ。
「じゃあ・・・私も行きます。」
由香里君も覚悟を決めた。
「気をつけてな。俺もすぐ行くから。」
「じゃあ・・・またあとで。」
泣きそうな顔で便器を見つめる。
目を閉じ、「押忍!」と飛び込んだ。
「みんな行ったな。」
一人残された俺は、ゆっくりと王様ペンゲンを振り返った。
「そろそろ正体を現したらどうだ?」
そう言って睨んでやると、『バレてただしょか』と笑った。
「透視能力が使えることを忘れたか?」
『そういえばそうだっただしょね。』
王様ペンゲンからボワンと煙が上がる。
そして・・・・、
「ティムティム女王、あんたって奴は・・・・、」
『うふ。』
「うふ、じゃないだろ。」
『で、いつからだしょ?』
「ん?」
『わらわがペンゲンに化けてるのを見破ったのは。』
「だから透視能力が使えると・・・・、」
『でも怪しまなかったら使わないだしょ?』
「そうだな。」
『で、いつだしょか?』
「ついさっきだ。」
『さっき?』
「ペンゲンが人形塚のことを知ってるわけがない。」
『どうしてだしょ?』
「どうしてって・・・・ここのペンゲンたちはタムタムやモリモリのことを知らなかったからさ。
あんたがUFOに頭を下げたとき、ペンゲンたちはキョトンとしていた。
いったい誰に謝っているのかと。
そしてあの二人がUFOから出てきた後も、やはり彼女たちが誰だか分かっていなかった。」
『それがなんだって言うんだしょ?』
「人形塚にはタムタム王が眠っていた。土偶の姿となってな。
それを知らないってことは、彼女が封印されていた人形塚の存在も知らないんじゃないかと思っただけさ。」
『なるほど。』
「それにもう一つ気になることが。」
『なんだしょか?』
「あんたはとにかく我が強い。何がなんでも自分が一番じゃないと気が済まない人だ。」
『それくらいじゃないと女王なんて務まらないだしょ。』
「何度も聞いたさ。俺が言いたいのは、そんなアンタがペンゲンたちの目の前で頭を下げるのはおかしいってことさ。」
『どういうことだしょ?』
「ペンゲンたちがタムタムやモリモリのことを知っていたのなら、あんたが衆目の前で頭を下げるのも分かる。
なんたって相手はアトランティスの王と、ムー大陸の大臣だ。
自分に近い身分なんだから、頭を下げたって威信に関わることじゃない。」
『逆だしょ。偉い身分の相手にこそ頭は下げられないだしょ。それこそ威信に関わるだしょ。』
「しかしペンゲンたちは怒っていた。敬愛する女王が、どこの馬の骨とも知れん奴に謝っているんだから。
その結果、暴動にまで発展しかけた。頭の良いアンタなら、この事態を予測できないわけがない。」
『むう・・・結局何が言いたいんだしょ?』
「簡単なことさ。あの時のアンタは本気で謝っていたんだ。」
背筋を伸ばして女王を睨む。
「俺はてっきり演技だと思っていた。だけどそうじゃなかった。
あれは演技に見せかけて、本気で謝っていたんだ。
わらわのせいで辛い思いをさせてしまった・・・申し訳なかったって。」
『そりゃ買いかぶりだしょ。本気謝るつもりなら、とっくの昔にそうしていただしょ。』
「それこそ無理さ。なぜならタムタムは土偶となって封印され、モリモリは重度の引きこもり。謝るチャンスはなかった。
だけどとあるオカルト編集長のせいで、事態は一変したんだ。」
『あのアホが封印の古文書を取ってしまっただしょからね。あの時は呪い殺してやろうかと思ったほどだしょ。』
「そのせいで土偶は目覚め、再び人形戦争が起きようとした。
あんたはそれを防ぐ為に、俺や由香里君を利用したわけさ。」
『利用ってのは言い過ぎだしょ。』
「でも実際にそうじゃないか。俺に瞬間移動能力を与え、ついでに超能力もパワーアップしてくれた。
だけどしょせん俺はただの人間、アトランティスの王に勝てるわけがない。」
『あれだけ力を与えてやったのに、お前はボロ負けだっただしょな。使えん奴だと思っただしょ。』
「このままでは再び人形戦争が起きてしまう。それを危惧したあんたは、わざとあの街から消え去った。
わらわに会いたければ、南極まで来いと書置きを残して。」
『だしょ。』
「その書置き通り、俺たちはここへやってきた。
じゃあなんでわざわざこんな場所に呼び寄せたのかというと、ミスコンを開催する為だろう?」
そう尋ねると、わずかに眉が動いた。
「あんたはタムタムを止める為に、重度の引きこもりであるモリモリまで連れ出した。
きっと激しく抵抗されたと思うが。」
『命懸けだっただしょね。モリモリは一流の魔術師だったから。』
「あんたの目論見通り、モリモリとタムタムを引き合わせたことで、争いは止まった。
しかしこのままではタムタムは死んでしまう。彼女は美少女の姿に戻ると、すべてのエネルギーを使い果たしてしまうから。」
『・・・・・・・。』
「そしてモリモリもまた死のうとした。タムタムと再会したことで、彼女と一緒に心中を図ろうとした。
このままでは二人とも消えてしまう。
そうなれば、心に深い傷を抱えたままあの世へ旅立つことになってしまう。
あんたはそれをどうにか止めたかったのさ。」
女王の眉がまた動く。
俺がいったん口を閉じると、すぐに表情を戻した。
『・・・・・続けろだしょ。』
「あの二人はあんたの友達だった。心を許せる数少ない親友だった。
だけどあんたはとにかく我が強いから、そのせいで二人を深く傷つけてしまった。
しかも今さら謝ったところで傷は消えない。
かといってこのまま消えていくのを見送るのは胸が傷む。
それなばら、もう一度ミスコンを開催するしかない。
そしてあの二人に花を持たせることで、心の傷を取り除いてやろうとしたんだろう?」
『ずいぶん好意的な解釈だしょな。わらわがそんな善人だと思うだしょか?』
「でもそれ以外にミスコンを行う理由が思いつかない。
提案したのは俺たちだが、あれも計算のウチなんだろう?」
『さあ、どうだしょかな。』
「タムタムとモリモリを助けるには、あんたの力が必要だ。
でも俺たちは正面から挑んで勝てない。だったら勝負の方法を考える必要がある。
力で戦うのではなく、もっと別の方法で・・・・、」
『そういうのはもういいだしょ。』
これ以上無駄な説明はいらないという風に、小さく首を振った。
『屁理屈の言い合いしても意味ないだしょ。さっきから色々言ってるけど、結局は何が言いたいんだしょ?』
「だから単純なことさ。あんたはあの二人に謝りたかった。そして心に抱えた傷をどうにかしてやりたかったんだ。
あんたならタムタムに力を与え、命を長らえさせることは出来ただろう。
しかしそれをやってしまうと、さらにあの二人を傷つける可能性がある。」
『タムタムの恨みは200万年も続いているんだしょ。謝ったところでどうにもならないだしょ。
きっと恨みに突き動かされて、また人形戦争を起こしてしまうだしょ。
そうなれば古代人だけの問題ではすまないだしょ。』
「そう、だから助けてやることは出来ない。となれば、せめて心の傷を癒してやることしか出来ないわけが・・・・。
その為のミスコンさ。あんたはあえて悪者を演じ、最後の最後で痛い目に遭うというシナリオを描いた。
そうすればあの二人は溜飲を下げ、心安らかに旅立てるだろうから。」
『・・・・・・・・。』
「そのお膳立てをする為に、またしても俺と由香里君が利用されたわけだ。
あんたの演じる悪役、それにまんまと引っかかって、不正を働くんじゃないかと疑った。
だけどそれでよかったんだ。ああいう展開にもっていけば、会場は混乱する。
ペンゲンたちの敵意は俺たちに向き、それを止めようとタムタムとモリモリが奮闘した。
そしてあんたはUFOに乗って宇宙へGO。
あの二人はあんたの描いたシナリオ通り溜飲を下げたんだ。」
女王は何も言い返さない。
クルリと背中を向けて、街へ歩き出した。
「ティムティム女王。」
呼び止めると、チラリと振り返った。
「あんたは強いな。例え自分に原因があるにせよ、200万年も友に恨まれていた。
それにも関わらず、あの二人をどうにかしてやろうと頑張った。」
『買いかぶりだしょ。』
「それにここにいるペンゲンたち、ちゃんとみんなの面倒を見ている。
行き場を失った古代人たちに居場所を与えてやっている。」
『女王の責任を果たしているだけだしょ。』
「もう一度言う、あんたは強い。」
素直な気落ちでそう言った。
俺としては賛辞のつもりだったのだが、女王は俯いた。
『強いっていうのは、寂しいことでもあるだしょ。対等に話せる相手がどこにも・・・・、』
そう言いかけて口を噤んだ。
『探偵。』
「なんだ?」
『この事はお前の胸にしまっとけだしょ。』
「ベラベラ人に喋ったりしないさ。でも由香里君には知る権利がある。彼女だってこんな珍事に巻き込まれたんだから。」
『ダメだしょ。』
「どうして?」
『あの小娘は優しいだしょ。きっとわらわに同情するだしょ。』
「いいじゃないか、同情だって立派な情けだ。人の情けが幸せだって、日本昔話でも歌って・・・・、」
言いかける俺の言葉を遮るように、女王は険しい目で睨んだ。
『わらわは26代目ムー大陸の女王、ティムティムだしょ。同情などいらんだしょ。』
仁王立ちしながら、大地に杖をつく。
その目は力強く、威風堂々としたオーラを放っていた。
見た目は子供でも、中身は比類なき王。
俺は「悪かった」と頭を下げた。
「この事は誰にも言わない。」
そう答えると、クスっと微笑んだ。
『もう用はないだしょ。さっさと帰るだしょ。』
「もちろん帰るさ。でもその前にもう一つ聞きたいことがある。」
『なんだしょ?』
「ここはダメになるんだろ?本当に行くあてがあるのか?」
『・・・・そうだしょな。地球も古代人にとっては住みづらくなってきただしょから・・・。』
遠い目で空を見上げる。
『今度は火星にでも住むだしょかな。』
そう言って杖を掲げると、カボチャのUFOが飛んできた。
「なあ、まさかとは思うが・・・・、」
『これは宇宙人の乗り物ではなく、古代人の乗り物なんだしょ。』
「やっぱり・・・・。あんたほど頭の良い人が、茂美のハッタリに騙されるのはおかしいと思ったんだよ。」
女王はしきりにUFOを怖がっていたが、あれも演技だったようだ。
ハッチが開き、中から王様ペンゲンが顔を出す。
その傍にはあの宇宙人一家がいた。
「斎藤さんじゃないか!」
「お〜い!」と手を振ると、斉藤さんたちは煙を上げた。
「・・・・ペンゲンに変わった。」
『ちょっと魔術を。』
「あんた・・・宇宙人まで仕込んでたのか?」
『何があるか分からんだしょからね。色々用意しとかないと、不測の事態に対応できないだしょ。』
「じゃあ他にも何か用意してたのか?」
『ネッシーとかミステリーサークルとか、それに雪男とか恐竜とか。
色んな場所に待機させておいただしょ。どれかが上手く引っかかってくれれば、おバカさんをここまで誘導しやすいだしょから。』
「要するに俺みたいな奴を利用する餌ってことだな?」
『だしょ。あのオカルト編集長とか。』
「そこまで手の込んだことをしてたのか。あんた・・・・本当にあの二人の傷を癒してあげたっかったんだな・・・、」
『同情はいらんと言ったはずだしょ。』
「こりゃ失敬。」
女王は杖を振る。
するとどこからともなく無数のUFOが現れた。
カボチャだったりニンジンだったりトマトだったり、どれも野菜のUFOばかりだ。
『これに乗って宇宙へ行くだしょ。新たな住処を求めて。』
古代都市にいたペンゲンたちが、UFOの中に吸い込まれていく。
王様ペンゲンが『女王様もお早く』と手招きした。
『というわけだしょから、ここはもう閉鎖だしょ。』
そう言って杖を掲げると、辺りがグラグラと揺れた。
「お、おい!なんだこりゃ・・・・、」
『海底火山の活動を早めたんだしょ。もうじきここはマグマに飲み込まれるだしょ。』
「そんな!」
『タムタムたちと同じ場所に行きたくなければ、とっとと帰るだしょ。』
そう言い残し、UFOへ飛んでいく。
「女王!またいつか会おう!」
『もう会うことはないだしょ。』
映画、コマンドーのメイトリックスばりに決め台詞を吐く。
古代人たちを乗せたUFOは、ピカピカと点滅する。
そして手品のように一瞬で消えてしまった。
「さらばだ、古代人たちよ。」
誰もいなくなった空に手を振る。
その瞬間、地割れが起きてマグマが噴き出した。
「とっとと帰らないと、俺もマグマの中に沈んでしまうな。」
マグマに飲まれていく古代都市。
ここには確かに古代人たちがいた。
もう二度と会うことはないだろうが、「またな」と呟きかける。
俺は俺で待っている人がいるわけで、早く彼女たちの元へ行かないと。
沈みゆく古代都市に背を向け、便所の穴に飛び込んだ。

求めるのは力 進化はただの付属品

  • 2017.07.28 Friday
  • 10:24

JUGEMテーマ:生き物

バージェス動物群と呼ばれる、昔の生き物たちがいます。
カンブリア紀という、恐竜よりもっと昔の時代です。
このころ、神様が気紛れでデザインしたような、変わった生き物がたくさんいたようです。
有名なのはアノマロカリス。
ウミサソリという、今では絶滅してしまった種族です。
他にもマナコにトゲトゲと付けたようなハルキゲニア。
ミミズと魚を融合させたようなピカイア。
三葉虫もこの時代の生き物です。
しかしそれ以前には別の動物群がいたようです。
その名はエディアカラ動物群。
この動物群の時代、今では考えられないような平和があったそうです。
というのも、今のような弱肉強食の関係は、バージェス動物群の時代に誕生したからです。
捕食者が被食者を食う。
被食者は捕食者から身を守る。
アノマロカリスはバージェス動物群で最強の生き物です。
大きな体、獲物を捕らえる長い触手、そして発達した目。
そんな恐ろしい捕食者から逃れる為に、三葉虫などの生き物も武器を手に入れました。
硬い殻、素早い逃げ足など。
獲物を食いたいアノマロカリス。
敵から身を守りたい三葉虫。
両者の関係はイタチごっこで、片方が進化すれば、もう片方も進化を遂げます。
トラやライオンは一流のハンターです。
強い腕力、鋭い爪、骨まで噛み砕く牙。
それに対抗するように、インパラは逃げ足を究め、象やサイは体を大きくすることで、敵を追い払えるほど強くなりました。
恐竜時代でも、ギガノトサウスルスやティラノサウルスなど、獲物を仕留める、食べる為に進化を遂げた者がいます。
ギガノトサウスルスはナイフのような歯を備えていて、これで獲物の肉を切り裂きます。
巨大な草食恐竜が相手でも、一度傷をつければ出血で弱ります。
そこを狙っていたようです。
ティラノはバナナのようなぶっとい牙です。
そして噛む力も強いです。
子供のティラノが獲物を追い立て、親が凄まじいパワーで噛み砕く。
同じ肉食恐竜でも、違った進化を遂げています。
そんな奴らに対抗するように、トリケラトプスは角と襟巻で身を守りました。
アンキロサウルスは鎧とハンマーを身に着け、パラサウロロフスは俊足で敵から逃れます。
食う食われるのイタチごっこは、人間が支配する今の時代にまで続いているわけです。
その流れはアノマロカリスのいたバージェス動物群から始まっています。
だけどそれ以前のエディアカラ動物群は、弱肉強食の時代ではなかったようです。
もちろん食う食われるの関係はあったそうですが、今ほど殺伐としたものではなく、もっとゆるかな世界だったそうです。
食う側は牙も爪も持っておらず、獲物を追いかける俊足も、獲物を見つける高度な感覚器官もありません。
食われる側も、身を守るような甲殻や、毒や俊足は持っていません。
今の時代より、もっともっとゆったりしていたんでしょうね。
平和です。
ほとんど争いがありません。
だけどバージェス動物群が登場してからは、あっさりと駆逐されてしまったようです。
なぜなら戦う力、身を守る力を持っていなかったからです。
平和はいいことです。
だけどそこに力のある者が台頭してきたら、途端にやられてしまうわけです。
きゅうりの板が野球民に乗っ取られたのと同じです。
VIPや鬼女版を乗っ取ろうとする奴はそうそういないでしょう。
返り討ちに遭うだけですから。
かつて力を求めない生き物たちがいて、平和が広がっていました。
だけど今は戦いの世界です。
大昔、バージェス動物群から始まった弱肉強食の関係。
それが今でも続いているということは、地球生命は力を求める道を選んだということです。
欲しいのは強い力。
進化はその付属品でしかないのかもしれませんね。

不思議探偵誌〜オカルト編集長の陰謀〜 第二十六話 さらば古代人よ(2)

  • 2017.07.28 Friday
  • 08:31

JUGEMテーマ:自作小説

漫才を終えた俺は、ふうっと冷や汗を拭った。
《緊張したあ・・・・。ていうか一人二役は疲れる。》
恐る恐る顔を上げ、観客たちを見る。
するとみんな泣き崩れていた。
「なんで!?」
『うう・・・・いい話だしょ。』
「女王まで!?」
口元を押さえながら、顔を涙でグショグショにしている。
するとUFOの中からも泣く声が聴こえた。
『いい話もす・・・・。』
『感動したもり・・・。』
「なんなんだこいつら・・・・。」
ちょっとばかし気味が悪くなる。
今の漫才のどこに感動する要素があったのか?
俺の狙いとしては、笑いで気持ちを和ませつつ、古代人と現代人が理解し合えないことを伝えたかっただけなのに。
マネキンを現代人、土偶を古代人と置き換えて、永遠に交わらない二人の会話を演じたつもりだ。
理解し合えない者同士は、下手に関わらない方がいい。
古代人には古代人の考え方があって、現代人には現代人の考え方がある。
今までティムティム女王やペンゲンたちを見ていて、俺たちは永久に分かり合えないと思った。
それならば、今後一切俺たちは関わるべきではないと伝えたかったのだ。
茂美のアホが古代の人形を蘇らせ、それが元で今に至る珍事が起きている。
正直なところ、もうこいつらとは関わりたくない。
だからモリモリとタムタムが助かったら、二度とこんな場所には来たくない。
そして土偶や埴輪にも関わりたくはない。
ただの人形ならいざ知らず、古代人の魂が宿った人形など、トラブルの元でしかないのだ。
《俺が伝えたかったのは、お互いに一線をたもちつつ、この地球で暮らしていきましょうってことだ。
それを分かりやすく伝える為に、漫才という形を取っただけなんだけどな。》
ウケるか?
それともスベるか?
どちらかの反応しか予想していなかった。
なのにどうしてみんな泣いているのか?
《古代人の気持ちはよく分からん。》
頭を掻きながら困っていると、ティムティム女王が握手を求めてきた。
『探偵、久能司・・・。感動的な寸劇だっただしょ。』
「そ、そうか・・・。寸劇ではなく漫才のつもりだったんだが、喜んでもらって何よりだ。」
『ぐふう!まさか・・・・まさか現代人にもわらわたちの気持ちを理解してくれる人がいたなんて。』
「はい?」
『うう・・・・ぐふう!』
「あの・・・・なんでそんなに泣いてるんだ?」
『笑ってるんだしょ。』
「笑ってたの!?なんで?」
『だってわらわたち古代人は、一日の8割をウンコのことを考えて過ごしてるから・・・・、』
「ええ!?ただのネタなのに事実だったのか!」
『さっきの寸劇・・・土偶を古代人、マネキンを現代人に見立てたんだしょ?』
「ああ。二つの種族は分かり合えないってことを伝えたかったんだ。
そして今後はお互いに関わらないようにするべきだと・・・、」
『何言ってるだしょか!わらわたちは理解し合えるだしょ!』
「なんで!?どこをどう見てそう思うんだ!」
『だってウンコのことを考えてたのはマネキンの方だしょ。だったら現代人がウンコのことを考えてるってことになるだしょ。』
「・・・・・・あ。」
『しかも一日に8割も・・・・・ぶははははは!!』
「笑うんじゃない!あれはただの漫才であって、現代人はウンコのことなんて・・・、」
『お前たちは仲間だしょ。これからも仲良くするだしょ。』
「今までも仲良くした試しはないだろ!」
予想外の結果になってしまった。
古代人は誰しもが笑い転げ、喜び、ウンコを叫ぶ。
『ウンコ〜!』
『ウンコ探偵!』
《誰がウンコ探偵だ!》
嬉しくない結果に終わってしまった。
しかし心象は悪くないようだ。
《これなら勝てるかもしれないな。》
観衆のハートはガッチリ掴んだ。
そう思って喜んでいると、「久能さん!」と誰かがやってきた。
「おお!由香里君!」
すっかり元気になった由香里君が、「やりましたね!」とはしゃぐ。
「みんな大喜びですよ!」
「残念ながら。」
「何を落ち込んでるんですか!これなら絶対に勝てますよ!」
「だといいが・・・、」
チラリと女王を振り返ると、まだ笑っていた。
しかし目の奥には不敵な光が宿っている。
《こいつ・・・絶対に不正を働くな。》
ミスコンの勝者は投票で決まる。
その時、この女王は必ず不正を仕掛けてくるはずだ。
なんたって超がつくほどの負けず嫌いなので、どんな手を使ってでも勝ちにくるだろう。
司会がマイクを握り『最高のパフォーマンスをありがとう!』と叫んだ。
『以上でミスコンは終わりだ!今から投票を開始する!みんなが良かったと思う方の名前を書いて、投票箱に入れてくれ。』
ステージの前に設置された箱に、ペンゲンたちが票を入れていく。
それと同時に、女王はステージの脇へはけていった。
「久能さん・・・・。」
「ああ、何かやらかすつもりだ。」
「ここまで頑張ってきたんです。不正で負けるなんて絶対に嫌ですよ。」
「分かってるさ。こんな時の為に超能力があるんだからな。」
投票箱の前には行列が出来ている。
すべてのペンゲンが投票を終えるまで、10分ほどかかった。
『さあて!それでは集計に入るぜええ!果たして優勝するのは女王か?それとも由香里ちゃんか?
みんなちょっとばかし待っててくれ!』
司会は箱から票を取り出して、ステージの上で数えていく。
それと同時に、俺は透視能力を使った。
眉間に意識を集中させて、ステージの周りの様子を探る。
すると・・・・、
「やっぱりか。」
ステージの裏側に女王の姿が見える。
傍には一匹のペンゲがいて、女王から何かを渡されていた。
《あれは投票用紙。それもかなりの数があるな。》
さらに透視を続けると、投票用紙に書かれた名前が見えてきた。
『ティムティム女王様』
そう書かれているのが分かる。
大量のその用紙を受け取ったペンゲンは、代わりに女王から金貨をもらっていた。
《賄賂で勝利するつもりとは・・・心底腐ってやがる。》
買収されたペンゲンが、俺たちのいるステージへ現れる。
そしてゆっくりと司会の方へ近づいていった。
背中を向け、手にした投票用紙が見えないように隠しながら。
そいつはヒソヒソと司会に話しかける。
そしてこっそりと金貨を渡した。
「今だ!」
ガバっと飛びかかり、不正の現場を押さえた。
「おいお前たち!これはなんだ!?」
ペンゲンの手から投票用紙を奪う。
『な、なんだいきなり・・・、』
うろたえるペンゲン。俺はニヤリと笑った。
「こいつは不正な投票用紙だ。金貨と引き換えに、票を操作するつもりだったな?」
『馬鹿なことを。』
「認めないつもりか?」
ペンゲンは何食わぬ顔でふんぞり返っている。
「ようし、だったら不正の証拠をみんなに公表しちゃおうじゃないの。」
投票用紙と金貨を持って、観衆を振り返る。
「みなさん!こいつら悪いことしてますよ!なんと金貨と引き換えに票を操作しようとしたんです。」
そう言って「見て下さい!」と不正な用紙を掲げた。
「ここにたくさんの投票用紙があります。これは投票箱の中に入っていたものではありません。
そこのペンゲンが金貨と引き換えに、女王から受け取ったものです。」
会場がざわめく。
俺は勢いよく続けた。
「この用紙にはティムティム女王の名前が書いてあります。
おそらく自分で書いたのでしょう。ほら、見て下さい!」
用紙を広げ、観衆に見せようとした。
しかし・・・・・、
「・・・・・・・。」
「どうしたんですか?」
由香里君が首を傾げる。
「早くみんなに見せてあげて下さい。女王の不正を暴かないと。」
「無理だ・・・・。」
「どうしてですか?」
「見てごらん、えらいことになってる。」
由香里君に投票用紙を渡す。
すると「なんで!?」と絶叫した。
「これ・・・私の名前じゃないですか!」
「ああ・・・・。」
「だってさっきはティムティム女王の名前が書いてあったんでしょ?」
「透視した時はな。おそらくだけど、どこかですり替えたんだ。」
「すり替える?」
「女王は予測していたんだと思う。投票の瞬間、俺たちが彼女の不正を疑うことを。だから・・・・、」
「だから・・・・私たちの方がハメられたってことですか?」
「ああ。俺が透視していることに気づいていたんだ。きっとそこのペンゲンがどこかで票をすり替えたに違いない。」
「そんな・・・まさかそこまでするなんて・・・、」
「ちなみにこの金貨も偽物だ。」
「え?」
由香里君の手に金貨を落とす。
「あれ?これってもしかして・・・・、」
金貨の表面に爪を立てる。
中から茶色い塊が出て来て、一口齧った。
「・・・・チョコレート。」
「票はすり替えられ、金貨はただのお菓子。こんなものを観衆に見せたら・・・・、」
「逆に私たちが不正しようとしたんじゃないかって疑われる?」
「そこまでいかなくても、票の集計を妨害したと見なされるだろう。最悪は失格になるはずだ。」
「そんな!せっかくここまで戦ってきたのに・・・。」
由香里君は悔しそうに唇を噛む。
観衆はさらにざわめいて、『何があったんだよ!』とヤジを飛ばし始めた。
『さっさと集計しろよ!』
『どっちが勝ったの!女王?現代人の女の子?』
『もったいぶってねえで早く発表しろ!』
《まずいな・・・・せっかく漫才で心を掴んだのに。》
攻勢が一転して、崖っぷちに追い詰められる。
その時、背後から冷たい視線を感じた。
「・・・・女王。」
ステージの袖から女王が覗いている。
その顔は悪どい笑みに満ちていた。
《おのれ女王・・・・。》。
司会がマイクを掴み、俺たちに詰め寄る。
『あんたら、これはどういうことだ?』
「いやあ、これはその・・・・ちょとした勘違いというかだな・・・、」
『集計を妨害するとはいい度胸だ。そんなに負けるのが嫌だったか?』
そう言うと、由香里君が「それは女王の方でしょ!」と怒った。
「票を操作して不正を働こうとしたんだから!」
『なんだと?』
「久能さんが超能力で見てたんだから!」
『では証拠を見せろ。』
「その証拠をすり替えられたの!」
『なんだそりゃ?言いがかりもいいとこだな。』
司会はクスっと肩を竦める。
由香里君は「あんただってグルのくせに!」と怒鳴った。
『なにい!?俺がグルだと!』
「だって金貨を受け取ろうとしてたじゃない!実際にはお菓子だったけど、私たちを騙す為に一芝居打ったんでしょ?」
『馬鹿なことを!私はそんなことはしていない。』
「嘘よ!絶対にあなたも・・・、」
「よせ由香里君。」
「久能さん・・・・どうして止めるんですか!」
「おそらくだが、その司会は何も知らない。」
「そんなはずありませんよ!だってこの人が協力しなきゃ不正はできな・・・・、」
「さっきも言っただろ?俺たちはハメられたんだ。」
「分かってますよそんなの!だからって黙ってるわけには・・・・、」
「落ち着いて聞け。」
ポンと肩を叩く。
「俺たちはこう思っていた。『女王は必ず不正をするはずだ』と。しかしそう思い込んでいるのを逆手に取られた。
女王の本当の目的は不正ではなく、俺たちを空回りさせて、集計を妨害しているように見せかけることだったんだ。」
「だから分かってます!でもそれは女王の策略で・・・、」
「その策略を司会のペンゲンは知らないはずだ。あえて事実を伝えないことで、俺たちを責めるように仕向けてるんだ。」
「でも!さっきは金貨を受け取ってたじゃないですか!実際はただのお菓子だったけど、何も知らないなら受け取るはずがありませんよ。」
「きっと女王からの差し入れですとかなんとかいって渡されたんだろう。」
「そんな・・・そんなのって・・・、」
「そう考えると、金貨を渡したペンゲンも何も知らない可能性が高い。
ここにいるすべてのペンゲンが、俺たちの方を疑ってるはずさ。」
「なんて人・・・・そこまで計算してたなんて。」
怒りを通り越し、半ば放心状態になっている。
そこへティムティム女王がやってきて、ニヤリと笑った。
『どうしただしょか?』
『ああ!ティムティム様!』
司会が事情を話す。
『なるほど・・・・わらわが不正しようと企んだと。』
『しかし証拠は何もありません。ただの言いがかりでしょう。』
『当然だしょ。不正なんてしなくても、わらわがそんな小娘に負けるはずないだしょ。』
ニヤニヤ笑いながら杖を向けてくる。
人を馬鹿にしたその表情・・・思わずぶん殴ってやりたくなる。
「このッ・・・・いい加減にしなさいよ!」
「よせ由香里君!いま飛びかかったら確実に失格だ!」
「じゃあどうすればいいんですか!?このままじゃ私たちは負けちゃいます。
そうなったらタムタムもモリモリも助からな・・・・、」
『もう充分もす。』
どこからか声が響く。
『これ以上私たちの為に傷つく必要はないもす。』
「この声はタムタム!」
空にUFOが浮かんでいる。
その上に美少女の姿に戻ったタムタムとモリモリが立っていた。
『探偵よ、お前は充分戦ってくれたもす。』
「何を言ってるんだ。このままでは君は消えてしまうんだぞ?」
『とうの昔に尽き果てているはずの命もす。ここらで死ぬのも悪くないもす。』
「馬鹿なことを。命を粗末にしてどうする。」
『もう充分生きたもす。ね、モリモリ。』
『探偵殿が漫才で伝えようとしたこと、すごく胸に響いたもり。』
「モリモリ・・・・。」
『そなたの言う通り、古代人と現代人は関わらない方がよさそうもり。』
そう言ってタムタムと手を繋ぐ。
『私たちはあの世へ旅立つことにするもす。』
『だけどその前に・・・・やるべきことがあるもり!』
二人は土偶とマネキンに変わる。
そしてティムティム女王に飛びかかった。
『な、何するだしょか!』
『私たちの最後のエネルギーを使って、お前を封印するもす。』
『封印!?』
『再び埴輪に戻るもり!』
『や、やめるだしょ!誰か助けるだしょ!』
女王は必死に叫ぶ。
するとペンゲンたちが『女王様を救い出せ!』とステージへ上がってきた。
しかしそこへUFOが降りてくる。
「暴れるならこの街ごと吹き飛ばすわよ?」
ピカピカと点滅するUFO。
ペンゲンたちは慌てて逃げ出した。
『こらお前たち!わらわを助けるだしょ!』
『ごめんなさい!まだ死にたくありません!』
『わらわがいなくなったら、誰がここを治めるんだしょ!?』
『そんなこと言ったって、さっきは俺を盾にしようとしたじゃないですか!』
『そうですよ!私たちは女王様の身代わりじゃありません!』
『ぐぐう〜・・・・今まで世話をしてやったのに・・・・この恩知らずども!』
女王の目が黒く染まる。
おぞましい殺気が溢れて、古代都市の中を包んでいった。
しかしタムタムとモリモリも本気を出す。
土偶は目からビームを撃ち、マネキンは『てい!』とチョップをした。
『ぐぎゅうッ・・・・、』
『ティムティム、もう終わりにするもす。』
『大人しく人形に戻り、永遠の眠りにつくもり!』
土偶とマネキンは呪文を唱え始める。
『ぐあああああ!やめろだしょ!』
女王は耳を塞いで苦しむ。
毒でも打たれたよに、七転八倒にのたうち回った。
『わらわにこんな事してタダで済むと思ってるだしょか!』
可愛い顔が鬼のように歪む。
『呪ってやる!何もかも呪ってやるだしょ!!』
鬼を通り越し、悪魔のような顔になる。
彼女の歪んだ性格が、そのまま表情に現れていた。
しかし土偶とマネキンは手を緩めない。
ひたすら呪文を唱え続ける。
『ぎゃああああああ!やめるだしょ!もう・・・・身体が・・・たもて・・・な・・・・、』
女王はカランと杖を落とす。
そのまま倒れこみ、ピクリとも動かなくなった。
そして・・・・、
『今もす!』
『埴輪に戻るもり!』
二人は古文書を掲げる。
一つは稲妻の古文書、もう一つは冷気の古文書だ。
二つの古文書から、稲妻とブリザードが放たれる。
『ぴぎゃッ!』
女王はビクンと反り返る。
そして・・・・とうとう埴輪に戻ってしまった。
『今こそ封印のチャンスもす!』
『永久に眠るがいいもり!』
埴輪に戻った女王を、二つの古文書でグルグル巻きにする。
そこへUFOが飛んできて、茂美と爺さんと婆さんが降りてきた。
「自動運転の設定は出来てるわ。いつでも飛ばせる。」
土偶とマネキンは頷き、古文書でグルグル巻きにした埴輪を抱えた。
『もはや地球に我らは必要ないもす!』
『宇宙へ飛んでいけもり!』
二人して『どおおおりゃああああ!』と埴輪を投げた。
吹っ飛んでいく埴輪は、上手いことUFOの中に入っていく。
そしてスーパーボールをぶつけたみたいに、カコンガコンとUFOの中を跳ねた。
『茂美殿!』
『奴めを宇宙へ!』
「任せて。」
茂美はリモコンのような物を操作する。
するとUFOは高く舞い上がり、古代都市を覆う南極の氷を貫いて、地表へと飛び出した。
「さようなら、ティムティム女王。」」
茂美はピっとボタンを押す。
UFOはピカピカと点滅して、一瞬にしてどこかへ飛び去ってしまった。
「・・・・どこ行っちまったんだ?」
「宇宙よ。」
「宇宙・・・。成美さん、あんたあのUFOに何かしたのか?」
「自動操縦を設定しておいたの。あとはこのリモコンで発進させるだけ。」
「なるほど・・・。でもまた戻ってきたりしないか?」
「それはないわ。自動操縦はこのリモコンがないと解除できないから。」
「ならティムティム女王は・・・・、」
「ただっ広い宇宙を延々と旅することになる。二度と戻って来られないわね。」
そう言ってクスっと微笑んだ。
「今頃リモコンの電波も届かない所にいるだろうから、地球へ戻る手段はないわ。これで一件落着。」
「あんたが一番の悪魔だよ・・・・。」
俺も由香里君もゾっと鳥肌を立てた。
そこへ土偶とマネキンがやってきて、『迷惑をかけたもすな』と言った。
『ティムティムは去り、私たちも消えるもす。』
「やはり君たちは死んでしまうのか?」
『もう充分生きたもす。』
『唯一の心配事だったティムティムもいなくなったし、そろそろあの世へ旅立つもり。』
二人は手を繋ぎ、ゆっくりと消えていく。
「おい待て!まだ逝くな!」
『同情はいらないもす。』
『探偵殿、最後まで共に戦ってくれて感謝するもり。』
「だから逝くな!まだアンタたちが必要なんだ!」
『そんなことないもす。』
『私たちの役目はもう終わったもり。』
『生まれ変わったならまた会おうもす。』
『ずっとこの世が平和であることを願ってるもり。』
二人は微笑む。
手を振りながら『さようなら』と消えていった。
「おい待て!」
手を伸ばしても、もうそこには誰もいない。
「久能さん・・・・・。」
由香里君が切ない顔で呟く。
俺は「分かってる」と頷いた。
全ては終わった。
悪しき女王は遠い宇宙へ消え去った。
だがそのせいでUFOも失った。
それに瞬間移動だってもう出来ない。
「どうやって帰ればいいんだ・・・・。」
ここは南極。
地球の真下に位置する極寒の大陸。
パンツ一丁だったことを思いだし、「ぶえっくし!」とクシャミが出た。

テレビもユーチューブも面白いが一番

  • 2017.07.27 Thursday
  • 10:23

JUGEMテーマ:テレビ全般

JUGEMテーマ:エンターテイメント

元世界王者の亀田興毅さんが、アベマテレビで試合をしていました。
対戦相手は四人。
ホスト、高校教師、ユーチューバー、元暴走族の総長。
総長は格闘技経験者なので強かったです。
ストレートもすごい真っ直ぐ伸びるし、それに打たれ強いし。
でも一番面白かったのはユーチューバーのジョーさんです。
ユーチューバーといえばヒキカンさんが有名ですが、他にも面白い人はいます。
亀田さんとの試合以来、ジョーさんの動画を見ています。
すごい面白い人です。
日本だけでなく、海外も旅していて、しかも危険な街まで行ってしまう。
ジョーさんは人の情報を鵜呑みにせず、自分の目で見て、自分の手で触れたものを信じるようです。
危険と言われる街は本当に危険なのか?
実際に行ってみて、噂とは違う場合もあれば、噂通り危険な街もあるようです。
それって行ってみないと分からないことですよね。
だけど動画の中で、真似はしないでほしいと、ちゃんと忠告もしていました。
こういう動画を挙げたからといって、危険なことを勧めているわけではないと。
面白いし、すごく好感の持てる人だなと思いました。
結局人間性なんですよね。
ヒカキンさんもジョーさんも、良い人なんだなと分かります。
それでいて自分のやりたい事には妥協しない。
普通の人ならビビるような事でも、やると決めたらやってしまうのがすごいです。
ああいった人たちがいるおかげで、自分では出来ないことを楽しめるんです。
ジョーさんの言った通り、危険な街へ行くのはやめた方がいいです。
でも気になるのも事実。
そういう場所へ行ったり、みんなが気になることを体当たりで取材したり。
なんていうか・・・・今のテレビからは失われてしまった、昔のテレビの良さがあるような気がします。
何かやれば叩かれるテレビでは、かつてのような危険な事、非常識な企画は無理でしょう。
ユーチューバーだから出来ることってあるんですね。
だけどユーチューバーというものが世間に広く認知され、テレビに並ぶ存在になってしまったら、今の面白さは失われるでしょう。
かつてテレビが辿った道と同じように、規制の波に飲まれて、こじんまりとした企画しか出来なくなる可能性はあります。
漫画やゲームだってそうだけど、なんでも黎明期が一番楽しいですよ。
天才とか呼ばれる人たちも、だいたい黎明期に現れています。
後世に同等の才能を持った人が現れても、新しいものを生み出すのは難しいです。
すでに先人たちがやり切っているんですから。
重箱の隅をつつくようなやり方でしか、世間に認めてもらいにくくなるでしょう。
小さなマーケットでは大したことはできず、大きなマーケットだと規制がかかる。
だったらその中間にある時期が一番面白いです。
新しい物事が生まれて、だんだんと形になっていく途中が、やってる方も見ている方も幸せでしょう。
今から数十年後、ヒカキンさんやジョーさんは、ユーチューバーをけん引した大物として、大きな地位についている可能性もあります。
テレビに出ているタレントさんだって、今までにない人が出て来ると、チンピラだとか下劣だとかなじられたりします。
そういう人ほど、時間と共に天才と呼ばれるんですから。
新しいものは賛否両論。
色んな意見があるだろうけど、面白いものは理屈じゃないです。
テレビだろうとユーチューブだろうと、面白いが一番だと思います。

不思議探偵誌〜オカルト編集長の陰謀〜 第二十五話 さらば古代人よ(1)

  • 2017.07.27 Thursday
  • 09:32

JUGEMテーマ:自作小説
パンツ一丁で人前に出るなんていつ以来だろう?
小学生の頃にウンコを漏らした時が最後か。
ていうかそんな事はどうでもいい。
どうして俺がミスコンに出場しなければいけないのか?
いくら由香里君の頼みとはいえ、この状況は辛すぎる。
《なんて説明すればいいんだこんなの・・・・。》
観衆の目が冷たい。
南極のブリザードよりも寒い。
「ええっと・・・・・、」
しどろもどろになっていると、『ぶふッ!』と笑い声が聴こえた。
《女王の奴・・・・笑ってやがる。》
一瞬イラっとしたけど、この格好じゃ笑われても仕方ない。
だってなあ・・・ミスコンにパンツ一丁のオッサンって。
司会が困った顔で『あの・・・』とマイクを向けてくる。
『さっきの女の子は?』
「実は体調を崩してしまってな。今は休んでる。』
『なら棄権ということで?』
「いいや、棄権はしない。」
『でも体調が悪いんでしょ?』
「俺が代理を務める。」
『・・・これミスコンですよ?』
「そうだ。」
『あんたオッサンだよな?』
「見れば分かるだろう。」
『しかもなぜパンツ一丁なんだ?』
「事情があるんだ。深く聞かないでくれ。」
『まあどっちにしても男は出場できないから。棄権ってことでいいな?』
「そこをどうにかしてもらえないか?」
『無理だろ・・・。誰がオッサンの裸を見て喜ぶんだよ。』
会場は白けきっていて、スマホをいじっている奴もいる。
《クソ!やはり無理があったか・・・・。》
寒いわ恥ずかしいわで、今すぐここから消えたくなる。
・・・・いや、この突き刺すような冷たい視線、案外クセになるかも・・・、
『いいだしょよ。』
女王が前に出て来る。
『特別にお前の出場を認めるだしょ。』
「本当か!?」
喜ぶ俺だったが、司会は異論を挟んだ。
『お言葉ですがティムティム様、ミスコンにオッサンを出すのはどうかと・・・、』
『わらわが許可するだしょ。』
『しかし女王様は参加者ですから、ルールを変えることは出来な・・・・、』
『明日から雑用係になりたいだしょか?』
『OKベイベ〜!そこの男性、特別に出場を許可しよう!』
《なんて理不尽な上司だ。》
少しばかりこの司会が可哀想になる。
でもしょせんは他人事。
俺は俺自身と由香里君の為に戦うだけだ。
『ではオッサン!あなたのメッセージをみんなに伝えちゃって下さい!』
「オッサンではない。探偵の久能司だ。」
一歩前に出て、観衆を睨みつける。
「まずお詫びしたい。実は由香里君が体調を崩してしまって、俺が代理で立つことになった。」
・・・反応はない。
誰もオッサンのパンツ姿など見たくないようだ。
「気持ちは分かる。あの水着の美女はどこへ行ったのか?
どうして代理がパンツ一丁のオッサンなのか。色々不満はあるだろう。」
『ぶふッ!』
また女王の笑いが聴こえる。
ニヤニヤしながら、余裕の笑みで見つめてくる。
もはや勝利を確信しているようだ。
《なんて嫌味な顔だ。》
苛立つ気持ちを堪え、「ううん!」と仕切り直した。
《さて、パンツ一丁のオッサンが何を喋ったところで、誰も心を動かさないだろう。
正直なところ棄権していた方がマシだったかもしれない。》
観客の白けようは、南極を超える絶対零度のよう。
心象は最悪だろう。
・・・であればどうするか?
《由香里君は俺にバトンタッチした。だったら俺も、誰かにバトンタッチすればいいだけだ。》
ニヤリと笑いながら、「そこのお二人」と振り向く。
「どうだい?ここは一つ、君たちも参加してみないかね?俺の代理ということで。」
タムタムとモリモリにそう尋ねると、女王が『それはイカンだしょ』と言った。
『これ以上ルールを変えることは出来ないだしょ。』
「でも俺の参加は認めてくれたじゃないか。」
『ルールの変更は一度きりだしょ。』
そう言って司会を睨むと、『その通りでございます!』と頷いた。
『これ以上ルールの変更を求めるなら、この場で失格になりますよ。』
「そう硬いことを言わずに。」
『ダメです。』
「どうしても?」
『どうしても。』
司会は頑として譲らない。
なぜなら彼の後ろで女王が睨んでいるから。
しかし女王の隣にいる土偶とマネキンは、『面白そう!』とハモった。
『ねえティムティム、私たちも参加させてほしいもす。』
『せっかく仲直りしたんだし、出てもいいもり?』
『イカンだしょ。これ以上のルールの変更は認めないだしょ。』
『ふう〜ん・・・そういうこと言うもすか。』
『ティムティムちゃん、私たちのことを怖がってるみたいもり。』
二人はクスクスと笑う。
そして一言、『ダサ』と言い放った。
『んなッ・・・・ダサいだしょと!?』
『だって私たちのことビビってるもす。』
『ビビってなんかいないだしょ!』
『顔が真っ赤。やっぱり怖いもり?』
『違うだしょ!これ以上ルールの変更を認めたくないだけだしょ。
そうポンポンとルールを変えてしまったら、大会そのものが滅茶苦茶になってしまうだしょ。』
『ルールかあ。だったら仕方ないのかな。』
『そうだしょ。ルールだしょ。』
『でもティムティムちゃん、昔のミスコン大会ではルールを守らなかったもり?』
『は?何を言ってるだしょか?わらわは公平な戦いをしただしょ。』
『あなたが当選すれば、民は半年間の税金の免除があったもり。』
『それに私に生牡蠣を送って、食中毒で棄権させたもす。』
『そんな大昔のことなど知らんだしょ。』
『あ!もしかしたら、由香里ちゃんが棄権したのもティムティムのせいなんじゃ・・・、』
『違うだしょ!わらわは何もしていないだしょ!』
『本当かなあ?』
『本当だしょ。疑うんなら好きなように調べればいいだしょ。』
そう言ってツンとそっぽを向く。
『ねえモリモリ、ティムティムはやっぱり私たちのことが怖いみたいもす。』
『そうみたいね。だったら・・・強制参加しちゃおうかもり?』
二人は頷き合い、ピカっと光って人の姿に変わった。
どちらも女王に負けず劣らすの美少女だ。
『こらお前たち!勝手な真似は許さんだしょよ!』
女王は怒る。
しかし二人はそれを無視して、観衆に手を振った。
『アトランティスの王タムタムもす!』
『イエ〜イ!!』
『私はムー大陸で大臣をやっていたモリモリもり。』
『可愛い〜!!』
『私たち!』
『今からミスコンに参加します!』
『おおおおおおお!!』
美少女が二人増えたことで、会場は大盛り上りだ。
『というわけもす、女王陛下。』
『みんなウェルカムムードもり。』
『もし私たちの参加を拒否したら、また女王陛下のイメージが悪くなるもす。』
『来年あたりには、女王が入れ替わってるかもしれないもり。』
不敵に笑う二人の女。
女王は『むぎぎぎ〜・・・・』と歯ぎしりをした。
『お前たち・・・・覚えてろだしょ。後で絶対に酷い目に遭わせてやるだしょ。』
『え〜?なに〜?聴こえない〜もす。』
『もっと大きな声で言ってほしいもり。』
こんなこと大声言えるわけがない。
女王は『うぐうッ・・・・・』と悔しそうにした。
『・・・・・・・。』
『ティムティムちゃん?』
『参加・・・・してもいいもり?』
『・・・・勝手にしろだしょ。』
耳まで真っ赤にしながら、プイっと背中を向ける。
『というわけで〜!』
『私たちも参加するもり!』
二人が手を振ると、観衆は大いに沸いた。
そして俺を振り向き、ニコっとウィンクを飛ばした。
《助かった・・・・この二人が出てくれるのなら勝目がある。》
タムタムもモリモリも、大昔のミスコンで酷い目に遭わされている。
女王に本気で復讐するなら、今しかないと踏んだのだろう。
それならばこんなパンツ一丁のオッサンはさっさと退場するに限る。
そう思って脇へはけていくと、『どこへ行くだしょ?』と女王が睨んだ。
『逃げるつもりだしょか?』
「逃げるなんてそんな。ここはオッサンがいるような場所じゃないと思ってね。」
『わざわざルールを変えてまで参加を認めてやったんだしょ。逃げるなんて許さんだしょ。』
目に殺気が宿っている。
逃げたら後ろから刺されかねない。
「分かったよ。」
渋々ステージへ戻ると、両脇をタムタムとモリモリに挟まれた。
二人共腕を組んできて、ニコっと微笑む。
「なんだ?」
『応援するもす。』
『必ずティムティムを倒すもり。』
「もちろんそうしたいが、それは君たちに任せるよ。オッサンの俺では票は集まらないだろうから。」
『そうしたいのは山々もすが、私はもう時間がないのでもす。』
「まさか・・・もう消えてしまうのか?」
『もす。』
『だからここは・・・・探偵殿!あなたに任せるもり!』
二人はムギュっと抱きついてくる。
「おい、何をしてるんだ?」
『お前のパワーの源は煩悩もす。』
『こうして私たちが肉感を与えることで、それを刺激してるもり。』
「まさかまた股間から女王を召喚しようというのか?」
『いや、召喚の儀はもう消えてるはずもり。さっきあれだけ恥をかかされたから。』
「じゃあなんでこんな事を?」
『探偵殿は煩悩が高まると、普通ではあり得ないパワーを発揮するもり。
だからこうして色仕掛けをして、煩悩を刺激してるもり。』
そう言ってさらに身体を押し付けてくる。
「残念ながら俺にロリ属性はない。ムチっとしたボディじゃないと反応しないんだ。
君らの気持ちはありがたいが、これじゃあ息子は反応しな・・・・、」
『心配するなもす。』
『私たちだって魔術が使えるもり。』
二人はブツブツと何かを唱える。
すると一瞬でエロいお姉さんに変身した。
豊満な胸、引き締まったウエスト、むっちりしたお尻と太もも。
それら肉の塊を、ムギュっと押し付けてくる。
「はうあッ!」
息子は一瞬で反り立った。
『これなら煩悩が高まるもす。』
『こう見えても私たちはウン百万歳。子供じゃないもり。』
「うおおおおお・・・・煩悩が・・・・高まっていく。すべてのエネルギーが息子へ・・・・、」
耐え難いほどの熱が集まってくる。
痛く、熱く、そして輝いていく。
すると・・・・、
「むうああ!」
股間から土偶とマネキンが咲いた。
「おお!すごいことになったぞ!」
『うわあ・・・・、』
『探偵殿、あなたはちょっとおかしいもり・・・。』
二人はササっと離れていく。
「しょうがないじゃないか。君たちから煩悩をもらったんだ。土偶とマネキンくらい咲くさ。」
『魔術を超えた怪奇現象もす。』
『古代でもこんな光景な見たことがないもり。』
驚き、呆れ、表情を歪めていた。
『と、とにかく!今がチャンスもす。』
『その状態ならば、何かすごいことをやらかすはずもり!』
「すごい事とは?」
『知らないもす。』
『後は任せるもり。』
二人は土偶とマネキンに戻る。
美少女が消えたことで、会場は一気にトーンダウンした。
『さっきの可愛い子ちゃんたちは?』
『パンツのおっさんとかいらないんだけど。』
『なんで股間から土偶とマネキンを生やしてるんだ?』
『そういう病気じゃない?』
《そんな病気があるか!》
そう思いながらも、もしかしたら病気かもと思ってしまう。
股間から生えた土偶とマネキン。
志村けんでさえアヒルなのに・・・・。
《俺はいつからコメディアンになってしまったんだ・・・。》
『ぶふッ!』
《おのれ女王・・・・ニヤニヤ笑いやがって。》
あの顔は自分の勝ちを確信している。
モリモリとタムタムがいなくなった今、俺など敵ではないのだろう。
《いいさ、そこまで馬鹿にするならやってやろうじゃないの!》
普通なことをやったって、誰も喜んでくれない。
であれば何をするか。
《ここが正念場だ。・・・・考えろ久能司。》
股間から生える土偶とマネキン。
お笑い芸人しかしないようなこの格好で、いったい何が出来るのか・・・・。
「・・・・今からトリオ漫才をやります!その漫才の中で、私からの・・・・いや、現代人からのメッセージを伝えます。」
ポンポンと股間を叩くと、クスクスと失笑が起きた。
《受けるかズベるかのどちらかだ。・・・・頼んだぞ、土偶とマネキン。》
二人に増えた息子たち。
こいつらと一緒なら勝てる気がする。
ステージの中央に立ち、「はいどうも〜!」と漫才を始めた。


            *

土偶(以下:土)「よかったよかった、まだ雑貨屋さん開いてた。すいませ〜ん!」
マネキン(以下:マ)「はいはい、いらっしゃい。」
土「ここって埴輪って売ってますか?」
マ「ええ、置いてますよ。」
土「埴輪の友達が誕生日なんで、可愛らしい埴輪をプレゼントしようと思ってるんですけど。いいのありますか?」
マ「埴輪に埴輪をあげるんですか?」
土「やっぱおかしいですか?」
マ「人間だって美少女のフィギュアとか買うわけだからいいんじゃないですか。」
土「ですよね。で、どこに置いてます。」
マ「私です。」
土「え?」
マ「私が埴輪です。」
土「あなたマネキンじゃないですか。」
マ「そう見えますか?」
土「それ以外の何物にも見えませんよ。」
マ「私もそう思います。」
土「誰でもそう思うわ。」
マ「埴輪に憧れがあるんですよ。自分では埴輪と思ってるんです。」
土「・・・思うのは勝手だけど、こっちは本物の埴輪が欲しいんです。どこに置いてますか?」
マ「天井に。」
土「気持ち悪・・・。シャンデリアみたいにいっぱいぶら下がってんじゃん・・・・。」
マ「で、どれにいたしましょう?」
土「届かないよ!天井だから。」
マ「いま脚立をお持ちします。」
土「早くしてよ。今夜の誕生パーティーであげるんだから。」
マ「どうぞ。」
土「え?何が?」
マ「私が脚立です。」
土「なんで!?マネキンだよね?」
マ「実は脚立にも憧れているんです。」
土「何に憧れてんだよ!羨ましい要素がどこにもねえだろ。」
マ「ちなみに梯子は嫌いです。」
土「どっちでもいいわ!なんでもいいから早く埴輪を取ってよ。」
マ「そっちの棚にあるんで自分でお取り下さい。」
土「最初からそっちをすすめろよ!なんで天井にぶら下がってんだよ・・・。」
マ「僕天井にも憧れてるんですよ。」
土「アホなのか?お前の憧れなんか知らんわ。」
マ「お客様に私を理解していただくことが、接客のモットーと心得ておりまして・・・、」
土「逆だろ!お前が客を理解しろよ!お前の歪んだ性癖なんて知りたくもねえわ。」
マ「何が面白いんですか?」
土「は?」
マ「ずっと細目で笑いを堪えてらっしゃるから。」
土「土偶だからね!こういう目なの!」
マ「私の知り合いに腕の良い整形外科医が・・・、」
土「お目々パッチリさせる気はないから!目ん玉ひん剥いてる土偶なんて怖くて誰も寄ってこねえだろ。」
マ「ははは!元々怖いですよ。」
土「シバくぞ!なんだよお前は・・・・俺客だぞ?」
マ「え?いつから?」
土「最初からだよ!」
マ「説明していただかないと分かりません。」
土「よくそれで店を経営してるな!」
マ「あ、私は売り物なんで。」
土「商品だったの!?店長は?」
マ「昨日夜逃げしました。」
土「夜逃げしちゃったの!なんで?」
マ「この仕事に向いてないからって。」
土「まあ仕事は向き不向きがあるからな。」
マ「ちなみに店長も説明を受けないと客かどうか分からない人で・・・・、」
土「よく店を開いたね!そいつもお前と同じアホだな。」
マ「そういうわけなんで帰ってもらえますか?」
土「それ店に入ってきた時点で言ってくれる!無駄なやり取りしたっちゃったじゃん!ねえ?」
マ「私にはなんのことだか。」
土「何笑ってんだよ!?」
マ「愛想笑いですよ。」
土「使う状況間違えてんだよ!ていうか俺は埴輪が欲しいの!店長がいないんだったらアンタが売ってくれよ。」
マ「では商品を選んで下さい。」
土「なんなんだよまったく・・・・。埴輪はこっちの棚だったよな?」
マ「こっちってどっちですか?」
土「だからこっち。」
マ「どっちですか?」
土「だからこっちだって言ってんだろ!指差してんじゃん!」
マ「どこに指があるんですか?」
土「ここだよここ!腕の先っぽに付いてんだろ?」
マ「それ栓抜きじゃないんですか?」
土「土偶を馬鹿にしてんのか!元々こういう指なんだよ!」
マ「当店に栓抜きを必要とする飲料はございません。」
土「だから指だっつってんだろ!」
マ「すいません、そろそろラストオーダーになります。」
土「まだなんも注文してねえだろ!いいから埴輪を寄越せってつってんだよ!」
マ「分かりましたよ・・・・。」
土「なんで呆れてんだよ。こっちだよ呆れたいのは。」
マ「ちなみにご予算はどのくらいで?」
土「ん〜そうねえ。あんまり安いとあげる相手に申し訳ないしなあ。」
マ「ではお高めということで?」
土「でもあんまり高いと気い遣わせちゃうでしょ?だからそこそこっていか、ちょうどいいくらいの値段のやつないかな?」
マ「具体的には?」
土「そうだねえ・・・・だいたい一万くらいのやつかな。」
マ「すいません、万を超えるやつだと10万からになるんですよ。」
土「そうなの?じゃあ一万より安いやつでもいいよ。」
マ「一万以下だと10円のやつになりますけど。」
土「商売下手か!間を置いとけよ間を!」
マ「別の商品なら5000円のやつがあるんですけどね。」
土「そうなの?例えばどんな?」
マ「私です。」
土「お前!?微妙な値段なんだねお前。」
マ「中古なもので。」
土「誰が売りに来たんだよ!雑貨屋だろうがここ。」
マ「左腕だけなら1000円でお売りしますけど・・・、」
土「いらねえよ!タダでもいるかそんなもん!」
マ「右腕とセットだと4900円になります。」
土「えらい跳ね上がったな!腕以外は全部合わせても100円じゃねえか。」
マ「腕だけ砂鉄でできてるんですよ。」
土「重みで倒れるだろそれ!」
マ「だから売られたんですよ」
土「ごめんね!辛い過去思い出させちゃって!」
マ「そろそろ何を買うか決めてもらえますか?」
土「だから埴輪だって言ってんだろ!最初からよ!」
マ「すみませんがお客様とは分かり合えそうにありません。」
土「こっちのセリフだよ!ていうかお前が理解しろよ!客の心をよ!」
マ「・・・・・・・・。」
土「何してんだよ?いきなり顔近づけて。」
マ「いや、どこを見てるのかなと思って。」
土「は?」
マ「だってずっと目を細めてるから。」
土「土偶だからね!元々こういう目なの!」
マ「アイプチとかしたらどうですか?」
土「二重にしてどうすんだよ!そんな土偶気持ち悪いだけだろ!」
マ「ははは!元々気持ち悪いですよ!」
土「喧嘩売ってんのかお前は!マネキンに気持ち悪いって言われてくねえよ!」
マ「マネキンの悪口を言わないで下さい。」
土「お前が言わせてんの!俺だって言いたくて言ってるわけじゃないんだよ!」
マ「僕たちなんで仲良くできないんでしょうね?」
土「さっきからお前が失礼だからだろうが!なんなんだよ、散々土偶を馬鹿にしやがって。」
マ「生まれたての赤ちゃんの顔って、ちょっと土偶に似てますよね。」
土「知らねえよ!お前の主観だろうがそれ!」
マ「僕は人間に似てるってよく言われるんですよ。」
土「そりゃマネキンだからね!似てなかったら廃棄されるよ!?」
マ「でも土偶っていいですよね。」
土「何が?」
マ「だって貴重じゃないですか。土偶とか埴輪って。昔の物だから大事に扱われるでしょ?博物館とかに飾られて。」
土「まあな。それが俺らの特権だから。」
マ「それにひきかえマネキンは・・・・・、」
土「どうした?急に暗い顔して。」
マ「僕らは消耗品なんですよ。どんなに頑張ったって、埴輪や土偶ほど大事にされません。」
土「そりゃ気持ちは分かるけどさ、そればっかりは仕方ないよ。」
マ「僕の気持ち・・・・分かってくれるんですか?」
土「まあ同じ人形としてな。」
マ「よかったあ・・・。」
土「泣くなよ馬鹿野郎。」
マ「笑ってるんですけど。」
土「なんで!?」
マ「だって二人してウンコのこと考えてたなんて・・・、」
土「そんなこと考えてたの!?寂しい気持ちで暗い顔してたんじゃないのかよ!?」
マ「一日の8割はウンコのこと考えてるんですよ。」
土「暇だなお前は。仕事中に何やってんだよ。」
マ「そんな僕の気持ちを分かってくれる方がいたなんて・・・・、」
土「分かるかそんなもん!同情して損したじゃねえか・・・。」
マ「・・・・・・。」
土「なんだよ?また暗い顔して。」
マ「・・・・・・・。」
土「おい、どうした俯いて。泣いてんのか?」
マ「いや、笑ってるんですけど。」
土「だからなんで!?」
マ「二人してウンコのこと考えてたなんて!」
土「一ミリも考えてねえよ!なんなんだよお前は。」
マ「マネキンですけど?」
土「見りゃ分かるよ!」
マ「で、本日は何をお求めで?」
土「殺すぞ!埴輪だっつってんだろ!」
マ「当店にそのような物はございません。」
土「は?いや、天井からぶら下がってるじゃん。」
マ「あれはシャンデリアです。」
土「ほんとにシャンデリアだったの!?どうりでいっぱい群がってると思ったんだよ。」
マ「ちなみにそこの棚にあるのはマネキンです。」
土「これマネキンなの!?どう見ても埴輪だけど!」
マ「中にマネキンが入ってるんですよ。埴輪の頭を外すと・・・・ほら!」
土「気持ち悪!」
マ「ちなみにマネキンの中には土偶が入ってます。」
土「マトリョーシカか!いらねえよそんな気味の悪いもん。」
マ「けっこう売れてるんですよ。」
土「誰が買ってくんだよこんなもん。」
マ「埴輪です。」
土「そうなの!?あいつら趣味悪いんだね。ていうかもういいよこんな店!」
マ「あ、お客様!」
土「今さら売ろうとしても無駄だからな。こんな店で買い物できるか。」
マ「いえ、そうではなくて・・・・、」
土「なんだよ?」
マ「店の戸締りお願いできますか?」
土「なんで!?俺ただの客だよ?お前がやれよ。」
マ「でもそろそろ店に戻らないといけないんで。」
土「は?店はここにあるじゃねえか。」
マ「僕となりの店のマネキンなんですよ。」
土「最初に言えよ!なんなんだよここまでのやり取りは!?」
マ「ちなみに僕の店には一万円の埴輪があるんでよかったら・・・、」
土「もういらねえよ!」
マ「・・・・・・・・。」
土「なんだよ?急に顔を近づけて・・・。」
マ「いや、目を細めてどこ見てんのかと思って。」
土「お前を睨んでんだよ!ていうか元々こういう目のなの!何度も言わせんなよ!」
マ「またご冗談を。」
土「笑うんじゃねえ!土偶を馬鹿にしてんのか?ああ?」
マ「土偶の気持ちは分かりません。」
土「じゃあお互い様だな!理解できないもん同士、これ以上話しても意味ねえや!」
マ「・・・・・・・。」
土「なにをへこんでんだよ?お前から喧嘩売ってんだろ?」
マ「・・・・・・・・。」
土「・・・・おい?」
マ「・・・・・うう。」
土「泣くなよ・・・・ちょっと言いすぎたよ。悪かったよ。」
マ「笑ってるんですけど。」
土「殺すぞ!」
マ「すいません、またウンコのこと思い出しちゃって・・・・、」
土「もういいよ。」
土、マ「ありがとうございました〜!」

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