不思議探偵誌〜オカルト編集長の陰謀〜のイラスト(7)
- 2017.07.31 Monday
- 10:26
JUGEMテーマ:自作小説
JUGEMテーマ:自作小説
便所と便所を繋ぐワームホール。
そこは長く暗い穴だった。
《臭い!》
とんでもない臭いが充満している。
だけどしばらく我慢していると、突然どこかに放り出された。
「ぐはあッ!」
ケツから落っこちて、ブっと放屁してしまう。
「久能さん!」
由香里君が走ってくる。
俺の傍に膝をつき、「よかった・・・」とため息をついた。
「なかなか出てこないから心配してたんです。」
「途中でちょっと詰まってしまってな。」
「詰まるような場所なんてありましたっけ?」
「運動不足のせいさ。」
腹の肉を掴んでみせると、「じゃあ私と一緒に空手をやりましょうよ」と言われた。
「引き締まるし強くなるし、一石二鳥ですよ。」
「気持ちだけもらっとくよ。」
ポンと由香里君の頭を叩いて、よっこらっしょっと立ち上がる。
「おお、本当に人形塚だ。」
周りは木立に囲まれる山。
手前には小さな古墳があって、その上に便器が建っていた。
「なんであんな場所なんだよ。もうちょっと他にあるだろ。」
不満を言いつつも、とりあえず帰って来られてほっとした。
「さあて、これで古代人の事件は終わりだ。事務所へ帰ろう。」
「ですね。早くお風呂に入りたいし。」
便所のワームホールを通ったせいで、まだ臭いが残っている。
色々なことがあった事件だが、終わりよければ全てよし。
今の俺たちに必要なのは休息だ。
「じゃあみんな、帰るか。」
俺たちは山を降りる。
しかし麓まで来た時に、ほぼパンツ一丁だったことを思い出した。
「まずいな・・・この格好で歩いたら捕まる。」
上は短い毛皮のコート。
下はパンツ。
これで街を歩いたら、パトカーに乗せられること請け合いだ。
「由香里君、悪いが君の宇宙服を貸してくれないか?」
「嫌ですよ、私までお巡りさんに捕まるじゃないですか。」
「でも水着を着てるだろ?」
「だから嫌なんです。」
「平気さ。君みたいな美人が水着で歩いていたら、むしろ歓迎されるよ。」
「歓迎するのは久能さんみたいな人だけです。」
「冷たいな。だったら俺はどうすればいいのさ。」
どこからどう見ても変態の格好をしているのに、街へ出るのは恥ずかしい。
どうしたもんかと困っていると、爺さんが「これ持ってけ」と何かを差し出した。
「それは?」
「儂の股引じゃ。」
「・・・・・・・・。」
「何があるか分からんから、いつも予備を持ち歩いとるんじゃ。」
「・・・・そうか、では・・・・、」
何もないよりはマシ。
そう思って受け取ると、今度は婆さんが「これもやる」と何かを差し出した。
「それは?」
「ブラジャーじゃ。」
「なぜそんな物を・・・・、」
「もしもの時の為に、予備を持ち歩いとる。」
「・・・そうか。なら使わせてもらうよ。」
なんの予備かは分からないが、好意を無駄にするのは悪い。
爺さんの股引を穿き、婆さんのブラジャーを胸に着けた。
「どうだい由香里君?似合ってるかな?」
「こっち向かないで下さい!」
ガバっとコートを広げてみせると、思いっきりカカト落としをくらった。
「ごはあッ・・・・、」
「ほんっとにそういう所は治りませんよね。小学生レベルのイタズラですよ。」
「少年の心を持っていると言ってくれ。」
「変態の間違いでしょう?」
由香里君の目は冷たい。
でもそれが快感だった。
「お楽しみのところ悪いんだけど・・・・、」
茂美が口を開く。
「先に帰るわね。」
「あんたはいいな。スーツのままだ。」
「私ならパンツ一丁でも気にせず帰るけどね。」
「あんたほと神経が太くないんでな。」
「ふふふ、いつでも平静がモットーなの。」
クスクス笑いながら街へ向かっていく。
「ついでにお爺さんとお婆さんも送っていくわ。」
「ああ、頼む。」
茂美は街へ向かっていく。
爺さんと婆さんは「世話になったな」と言った。
「また家に来い。採れたての野菜を食わせてやるから。」
「普通の野菜にしてくれよ。UFOはもうゴメンだ。」
二人は手を振りながら去っていく。
由香里君が「また遊びに行きますね〜!」と手を振り返した。
「いいお爺ちゃんとお婆ちゃんでしたね。」
「変わり者っていった方が正しいだろ。」
「それを言うなら、今回の事件そのものが変わったことばかりですよ。」
「確かにな。まさか本物の古代人に会うとは。」
「ちゃんと新しい住処が見つかるかなあ。」
由香里君は心配そうに空を見上げる。
《平気さ。宇宙のどこかに新しい家を建てるだろうから。》
新たな住処は月か火星か?
どこへ住むにせよ、今後俺たちと会うことはないだろう。
《達者でな、古代人たちよ。》
空に向かって呟くと、由香里君が「何か言いました?」と振り返った。
「達者でなと言っただけさ。」
「みんな幸せに暮らしてくれるといいですね。」
「ああ。それよりも・・・・これはどうにかならんものか。」
上は短いコートとブラジャー、下は股引。
これでは新手の変態にしか見えない。
「なあ由香里君、どこかで服を買ってきてくれないか?」
「無理ですよ、財布なんて持ってないし。」
「う〜む・・・・困った。」
「ていうか私だって宇宙服のままなんですからね。これもけっこう恥ずかしいんですよ。」
「じゃあ代わりに俺が着てあげよう。君は水着で・・・・、」
「けっこうです。」
「冷たいな。」
「じゃあタクシーでも拾いましょうよ。事務所まで帰ればお金があるでしょ?」
「おお、その手があったか。」
俺たちはコソコソと街へ出る。
なるべく物陰に隠れながら、通りゆくタクシーに手を振った。
しかし二人してこんな格好では停ってくれない。
「全然ダメだな。」
がっくりと肩を落とすと、由香里君が「こうなったら・・・」と呟いた。
「どうした?」
「・・・・・・・・。」
「おい!いきなり何を・・・・、」
彼女は宇宙服を脱ぎ捨てる。
エロくて健康的な水着姿となって、俺の息子が反り返った。
「ちょっと待ってて下さい。」
そう言って迫って来るタクシーに手を挙げた。
「・・・・・おお!停った。」
ガチャリとドアが開き、「久能さん、早く!」と手招きする。
俺はそそくさとタクシーに乗り込んだ。
運転手のおっさんがルームミラー越しに由香里君を見つめている。
彼のあそこも反り立っていた。
「ええっと・・・・どこまで?」
思いっきり鼻の下が伸びている。
由香里君は宇宙服で身体を隠しながら「神戸まで」と答えた。
「いやあ、助かったよ由香里君。」
「だってこうしないと誰も停ってくれないから。」
「さすがはミスコンの勝者、男なんてイチコロだな。」
「そういう意味で水着になったんじゃありません。宇宙服よりはマシだと思っただけです。
それにミスコンはノーコンテストだし。」
「いや、君の方が勝っていたさ。」
「そんなの分からないですよ。ティムティム女王は手強かったし。」
「いいや、君の方が可愛い。」
「ほ、ほんとですか・・・?」
嬉しそうに頬を赤くする。
しかし俺の息子を見て、「一気に萎えたました・・・」と目を逸らした。
「下心が丸見えですよ。」
「正直が俺のモットーさ。」
「我慢も覚えて下さい。」
「ま、いずれはね。」
「そんなこと言うんだったら、茂美さんの所に就職先を替えようかなあ。」
「それはダメだ。あいつの所へ行くくらいなら、君が所長をやってもいいからウチにいてくれ。」
「え?ほんとに?」
「本当に茂美の所へ行くつもりならな。」
「ふふふ、冗談ですよ。」
さっきまでの不機嫌はどこへやら。
嬉しそうに笑っている。
「なあ由香里君。」
「なんですか?」
「今回の依頼、茂美からギャラをふんだくるつもりだ。」
「ちゃんと払ってくれますかね?」
「元はと言えばあいつのせいだから。何がなんでも払わせてやるさ。」
こんな珍事に巻き込まれ、定期購読までさせられたのだ。
それなりの見返りを貰わないと割に合わない。
「それでさ、もしたんまりとギャラが入ったら、二人で旅行でも行かないか?」
「それさっきも言ってましたね。」
「君にはいつも助けられてる。ここは所長として労わないとと思ってね。」
そう言って肩を竦めると、「別にいいですけど・・・」と怪訝な顔をした。
「ほんとにただの旅行ですよね?」
「ん?」
「またエッチなこと考えてるんじゃないかと思って。」
「考えてるさ。」
「なッ・・・・堂々と言い切りましたね。」
嬉しそうにしていた顔が、また鬼のように変わる。
「久能さん!今日という今日は言わせてもらいます!いい加減そのセクハラまがいのことはやめて下さい。
私は久能さんのことをよく知ってるからいいけど、もし依頼人にそんな態度を取ったら訴えられて・・・、」
「セクハラじゃないさ。」
「はい?」
「下心だけならそうなるだろう。でもそれだけじゃなかったとしたら?」
「ど、どういうことですか・・・?」
急にうろたえる由香里君。
俺は「そのまんまの意味さ」と笑った。
「君が事務所を離れている間、俺は気づいたんだ。やっぱり俺には君が必要だと。」
「またそんなこと言って。エッチな本ばっかり見てたんでしょう?」
「いいや、君がいないのに読んでもつまらない。」
「なんですかそれ?ああいうのって一人で読むものなんじゃ・・・、」
「君がいつもカカト落としをしてくれる。いつだって正拳突きをかましてくれる。
そういうのがないと張り合いがなくてさ。」
そう言って肩を竦めると、「要するに構ってほしいんですね」と笑われた。
「そうさ。君がいない事務所は寂しくて仕方ない。だから傍にいてほしいのさ。」
「そう言ってもらえるのは嬉しいですけど、私は久能さんのお母さんじゃありませんからね。
あんまり甘えてばっかりいると、いつまで経ってもまともな仕事なんか来な・・・・、」
「君がいればいいさ。」
「はい?」
「君が隣にいてくれればそれでいい。」
「・・・・・・・。」
「二人で久能探偵事務所、そうだろ?」
「久能さん・・・・。」
「今までも、そしてこれからも二人で探偵をやっていこうじゃないか。
古代人が相手でもUFOが相手でも、どんなアホな依頼でも君と二人なら楽しめるさ。」
我ながら臭いことを言ってしまった。
少々恥ずかしくなり、「ううん!」と咳払いする。
「まあ・・・なんだ。旅行でも行って、嫌なことはパーっと忘れよう。だからどうか茂美の所へ行くのだけは・・・、」
「いいですよ。」
由香里君は小さく頷く。
「エッチだしちゃらんぽらんな所長だけど、やる時はやる人ですから。
だからこれからも傍にいてあげます。」
そう言ってクスっと笑った。
「由香里君・・・・・。」
彼女の手を握り、「二人で朝陽を眺めよう」と言った。
「一つのベッド、そこで朝を迎える俺たち。君の肩を抱きながら、水平線から昇りゆく朝陽を・・・・、」
「それ下心なしで言ってます?」
「もちろんさ。・・・いや、エロい心はもちろんある。しかしだね、そういう気持ちだけで言っているわけでは・・・・、」
「また下半身が膨らんでますけど?」
「・・・・ぬうあ!」
いつもの3倍くらい膨張している。
「鎮まれ!」と叩いていると、「はあ・・・」とため息が聴こえた。
「危うく騙されるところだった。」
「いやいや!今のは本心だよ、うん。何もエロい気持ちだけじゃ・・・・、」
「旅行に行くのはいいですけど、部屋は別々で。」
「そんな!」
「あ、しぼんだ。」
「え?・・・・おいコラ!なんて分かりやすい反応をするんだ!出来の悪い奴め!」
呆れる由香里君、焦る俺。
いい加減息子を躾けないと、また就職先を替えるなんて言い出しかねない。
「ま、まあ・・・アレだ。とにかく今は家に帰って休もう。その後は茂美からギャラをふんだくらないと。」
「そうですね。私ももう一度就職のことを真剣に考えないと。」
「そんな!」
「だから冗談ですって。この世の終わりみたいな顔しないで下さい。」
「なら二人で朝陽を・・・・、」
「別々の部屋でね。」
「だけど俺たちは付き合いが長いんだよ?お互いのことをよく知っているわけだし、もうそろそろ下半身が交わっても・・・・、」
「くたばれ!」
「うごうッ!」
タクシーの中なのにカカト落としがめり込む。
驚く運ちゃん。
彼の息子もしぼんでいった。
JUGEMテーマ:社会の出来事
ストリートファイターの音楽はいつ聴いてもテンションが上がります。
ガイルのBGMが一番好きです。
なんなんでしょうね、あの渋さとカッコよさは。
バイソンのテーマもいいです。
熱くなります。
バルログやリュウのテーマもそうだけど、テンポが良くて息つかせない感じがいいです。
格ゲーは盛り上がりとか、テンションが上がるとか、熱くなるのが一番大事です。
あのBGM・・・・どのキャラも良い意味で熱いんですよ。
しかも何がすごいって、それぞれのキャラやお国柄を感じさせる曲調なんです。
ブランカとかダルシムとか感心しますよ。
よくこんな曲作れるなって。
海外では一部「差別的だ」なんて意見があるそうです。
それぞれの国のテンプレなデザインにするのは差別だと。
実に馬鹿らしい意見です。
私は日本人ですが、リュウやエドモンド本田のデザインを見て差別だなんて感じません。
リュウはともかく、エドモンド本田は相撲取りで、しかも顔に隈取があるんです。
そしてステージの背景は銭湯。
外国人がイメージするであろう「THE日本!」ですが、まったくもって差別なんか感じません。
私は行き過ぎたグローバリズムなんて大嫌いです。
民族や国の伝統を大事にして何が悪いのか?
ストリートファイターはゲームなんだから、もうちょっとおおらかな目で見てほしいものです。
エンターテイメントには誇張だって必要なんです。
体に障害があるとか、明らかな差別用語とか、そういうものを面白おかしく見せるのはよくありません。
だけどストリートファイターって全然そんな要素はないですよ。
ダルシムはヨガの達人で、手足が伸びます。
しかも「ヨガファイヤー!」って火も吹きます。
だけどね、これを見て「インド人への差別だ!」なんて思う人は、いったいどれだけいるんでしょうか?
ヨガを究めようが、手足は伸びないし、火を吹けないことくらい、みんな知っていますよ。
日本の武道だって波動拳は出せないし、軍隊格闘技を習ってもソニックブームは撃てません。
例えばウルトラマンを指さし、「あれは巨人症の人を馬鹿にしている!」なんて言う人はいないでしょう。
エンターテイメントとして誇張することと、悪意をもって差別することは、まったく違うものです。
差別を撤廃する為に戦う人は尊敬します。
しかし一部、過剰に反応する人がいるのも事実です。
何が差別で、何が差別じゃないのか?
「これはこうだから差別だ」と簡単に決めてしまうのは、下手をすれば本当に差別を受けている人を見過ごす危険もあります。
ストリートファイターは面白いゲームだし、キャラデザもBGMも好きです。
私はまったく差別とは思いません。
でも傷つく人がたくさん出てきたとしたら、その時は考えなきゃいけないでしょう。
だけど今は違います。
ゲームや漫画を指さし、差別だというのなら、フランスのカフェで東洋人が奥に追いやられるのを失くしてから言ってほしいものです。
叩きやすいものを叩き、そうでないものは怖いから指を指せない。
差別とはまったく違った問題が起きているように思います。
JUGEMテーマ:自作小説
JUGEMテーマ:生き物
バージェス動物群と呼ばれる、昔の生き物たちがいます。
カンブリア紀という、恐竜よりもっと昔の時代です。
このころ、神様が気紛れでデザインしたような、変わった生き物がたくさんいたようです。
有名なのはアノマロカリス。
ウミサソリという、今では絶滅してしまった種族です。
他にもマナコにトゲトゲと付けたようなハルキゲニア。
ミミズと魚を融合させたようなピカイア。
三葉虫もこの時代の生き物です。
しかしそれ以前には別の動物群がいたようです。
その名はエディアカラ動物群。
この動物群の時代、今では考えられないような平和があったそうです。
というのも、今のような弱肉強食の関係は、バージェス動物群の時代に誕生したからです。
捕食者が被食者を食う。
被食者は捕食者から身を守る。
アノマロカリスはバージェス動物群で最強の生き物です。
大きな体、獲物を捕らえる長い触手、そして発達した目。
そんな恐ろしい捕食者から逃れる為に、三葉虫などの生き物も武器を手に入れました。
硬い殻、素早い逃げ足など。
獲物を食いたいアノマロカリス。
敵から身を守りたい三葉虫。
両者の関係はイタチごっこで、片方が進化すれば、もう片方も進化を遂げます。
トラやライオンは一流のハンターです。
強い腕力、鋭い爪、骨まで噛み砕く牙。
それに対抗するように、インパラは逃げ足を究め、象やサイは体を大きくすることで、敵を追い払えるほど強くなりました。
恐竜時代でも、ギガノトサウスルスやティラノサウルスなど、獲物を仕留める、食べる為に進化を遂げた者がいます。
ギガノトサウスルスはナイフのような歯を備えていて、これで獲物の肉を切り裂きます。
巨大な草食恐竜が相手でも、一度傷をつければ出血で弱ります。
そこを狙っていたようです。
ティラノはバナナのようなぶっとい牙です。
そして噛む力も強いです。
子供のティラノが獲物を追い立て、親が凄まじいパワーで噛み砕く。
同じ肉食恐竜でも、違った進化を遂げています。
そんな奴らに対抗するように、トリケラトプスは角と襟巻で身を守りました。
アンキロサウルスは鎧とハンマーを身に着け、パラサウロロフスは俊足で敵から逃れます。
食う食われるのイタチごっこは、人間が支配する今の時代にまで続いているわけです。
その流れはアノマロカリスのいたバージェス動物群から始まっています。
だけどそれ以前のエディアカラ動物群は、弱肉強食の時代ではなかったようです。
もちろん食う食われるの関係はあったそうですが、今ほど殺伐としたものではなく、もっとゆるかな世界だったそうです。
食う側は牙も爪も持っておらず、獲物を追いかける俊足も、獲物を見つける高度な感覚器官もありません。
食われる側も、身を守るような甲殻や、毒や俊足は持っていません。
今の時代より、もっともっとゆったりしていたんでしょうね。
平和です。
ほとんど争いがありません。
だけどバージェス動物群が登場してからは、あっさりと駆逐されてしまったようです。
なぜなら戦う力、身を守る力を持っていなかったからです。
平和はいいことです。
だけどそこに力のある者が台頭してきたら、途端にやられてしまうわけです。
きゅうりの板が野球民に乗っ取られたのと同じです。
VIPや鬼女版を乗っ取ろうとする奴はそうそういないでしょう。
返り討ちに遭うだけですから。
かつて力を求めない生き物たちがいて、平和が広がっていました。
だけど今は戦いの世界です。
大昔、バージェス動物群から始まった弱肉強食の関係。
それが今でも続いているということは、地球生命は力を求める道を選んだということです。
欲しいのは強い力。
進化はその付属品でしかないのかもしれませんね。
JUGEMテーマ:自作小説
漫才を終えた俺は、ふうっと冷や汗を拭った。
《緊張したあ・・・・。ていうか一人二役は疲れる。》
恐る恐る顔を上げ、観客たちを見る。
するとみんな泣き崩れていた。
「なんで!?」
『うう・・・・いい話だしょ。』
「女王まで!?」
口元を押さえながら、顔を涙でグショグショにしている。
するとUFOの中からも泣く声が聴こえた。
『いい話もす・・・・。』
『感動したもり・・・。』
「なんなんだこいつら・・・・。」
ちょっとばかし気味が悪くなる。
今の漫才のどこに感動する要素があったのか?
俺の狙いとしては、笑いで気持ちを和ませつつ、古代人と現代人が理解し合えないことを伝えたかっただけなのに。
マネキンを現代人、土偶を古代人と置き換えて、永遠に交わらない二人の会話を演じたつもりだ。
理解し合えない者同士は、下手に関わらない方がいい。
古代人には古代人の考え方があって、現代人には現代人の考え方がある。
今までティムティム女王やペンゲンたちを見ていて、俺たちは永久に分かり合えないと思った。
それならば、今後一切俺たちは関わるべきではないと伝えたかったのだ。
茂美のアホが古代の人形を蘇らせ、それが元で今に至る珍事が起きている。
正直なところ、もうこいつらとは関わりたくない。
だからモリモリとタムタムが助かったら、二度とこんな場所には来たくない。
そして土偶や埴輪にも関わりたくはない。
ただの人形ならいざ知らず、古代人の魂が宿った人形など、トラブルの元でしかないのだ。
《俺が伝えたかったのは、お互いに一線をたもちつつ、この地球で暮らしていきましょうってことだ。
それを分かりやすく伝える為に、漫才という形を取っただけなんだけどな。》
ウケるか?
それともスベるか?
どちらかの反応しか予想していなかった。
なのにどうしてみんな泣いているのか?
《古代人の気持ちはよく分からん。》
頭を掻きながら困っていると、ティムティム女王が握手を求めてきた。
『探偵、久能司・・・。感動的な寸劇だっただしょ。』
「そ、そうか・・・。寸劇ではなく漫才のつもりだったんだが、喜んでもらって何よりだ。」
『ぐふう!まさか・・・・まさか現代人にもわらわたちの気持ちを理解してくれる人がいたなんて。』
「はい?」
『うう・・・・ぐふう!』
「あの・・・・なんでそんなに泣いてるんだ?」
『笑ってるんだしょ。』
「笑ってたの!?なんで?」
『だってわらわたち古代人は、一日の8割をウンコのことを考えて過ごしてるから・・・・、』
「ええ!?ただのネタなのに事実だったのか!」
『さっきの寸劇・・・土偶を古代人、マネキンを現代人に見立てたんだしょ?』
「ああ。二つの種族は分かり合えないってことを伝えたかったんだ。
そして今後はお互いに関わらないようにするべきだと・・・、」
『何言ってるだしょか!わらわたちは理解し合えるだしょ!』
「なんで!?どこをどう見てそう思うんだ!」
『だってウンコのことを考えてたのはマネキンの方だしょ。だったら現代人がウンコのことを考えてるってことになるだしょ。』
「・・・・・・あ。」
『しかも一日に8割も・・・・・ぶははははは!!』
「笑うんじゃない!あれはただの漫才であって、現代人はウンコのことなんて・・・、」
『お前たちは仲間だしょ。これからも仲良くするだしょ。』
「今までも仲良くした試しはないだろ!」
予想外の結果になってしまった。
古代人は誰しもが笑い転げ、喜び、ウンコを叫ぶ。
『ウンコ〜!』
『ウンコ探偵!』
《誰がウンコ探偵だ!》
嬉しくない結果に終わってしまった。
しかし心象は悪くないようだ。
《これなら勝てるかもしれないな。》
観衆のハートはガッチリ掴んだ。
そう思って喜んでいると、「久能さん!」と誰かがやってきた。
「おお!由香里君!」
すっかり元気になった由香里君が、「やりましたね!」とはしゃぐ。
「みんな大喜びですよ!」
「残念ながら。」
「何を落ち込んでるんですか!これなら絶対に勝てますよ!」
「だといいが・・・、」
チラリと女王を振り返ると、まだ笑っていた。
しかし目の奥には不敵な光が宿っている。
《こいつ・・・絶対に不正を働くな。》
ミスコンの勝者は投票で決まる。
その時、この女王は必ず不正を仕掛けてくるはずだ。
なんたって超がつくほどの負けず嫌いなので、どんな手を使ってでも勝ちにくるだろう。
司会がマイクを握り『最高のパフォーマンスをありがとう!』と叫んだ。
『以上でミスコンは終わりだ!今から投票を開始する!みんなが良かったと思う方の名前を書いて、投票箱に入れてくれ。』
ステージの前に設置された箱に、ペンゲンたちが票を入れていく。
それと同時に、女王はステージの脇へはけていった。
「久能さん・・・・。」
「ああ、何かやらかすつもりだ。」
「ここまで頑張ってきたんです。不正で負けるなんて絶対に嫌ですよ。」
「分かってるさ。こんな時の為に超能力があるんだからな。」
投票箱の前には行列が出来ている。
すべてのペンゲンが投票を終えるまで、10分ほどかかった。
『さあて!それでは集計に入るぜええ!果たして優勝するのは女王か?それとも由香里ちゃんか?
みんなちょっとばかし待っててくれ!』
司会は箱から票を取り出して、ステージの上で数えていく。
それと同時に、俺は透視能力を使った。
眉間に意識を集中させて、ステージの周りの様子を探る。
すると・・・・、
「やっぱりか。」
ステージの裏側に女王の姿が見える。
傍には一匹のペンゲがいて、女王から何かを渡されていた。
《あれは投票用紙。それもかなりの数があるな。》
さらに透視を続けると、投票用紙に書かれた名前が見えてきた。
『ティムティム女王様』
そう書かれているのが分かる。
大量のその用紙を受け取ったペンゲンは、代わりに女王から金貨をもらっていた。
《賄賂で勝利するつもりとは・・・心底腐ってやがる。》
買収されたペンゲンが、俺たちのいるステージへ現れる。
そしてゆっくりと司会の方へ近づいていった。
背中を向け、手にした投票用紙が見えないように隠しながら。
そいつはヒソヒソと司会に話しかける。
そしてこっそりと金貨を渡した。
「今だ!」
ガバっと飛びかかり、不正の現場を押さえた。
「おいお前たち!これはなんだ!?」
ペンゲンの手から投票用紙を奪う。
『な、なんだいきなり・・・、』
うろたえるペンゲン。俺はニヤリと笑った。
「こいつは不正な投票用紙だ。金貨と引き換えに、票を操作するつもりだったな?」
『馬鹿なことを。』
「認めないつもりか?」
ペンゲンは何食わぬ顔でふんぞり返っている。
「ようし、だったら不正の証拠をみんなに公表しちゃおうじゃないの。」
投票用紙と金貨を持って、観衆を振り返る。
「みなさん!こいつら悪いことしてますよ!なんと金貨と引き換えに票を操作しようとしたんです。」
そう言って「見て下さい!」と不正な用紙を掲げた。
「ここにたくさんの投票用紙があります。これは投票箱の中に入っていたものではありません。
そこのペンゲンが金貨と引き換えに、女王から受け取ったものです。」
会場がざわめく。
俺は勢いよく続けた。
「この用紙にはティムティム女王の名前が書いてあります。
おそらく自分で書いたのでしょう。ほら、見て下さい!」
用紙を広げ、観衆に見せようとした。
しかし・・・・・、
「・・・・・・・。」
「どうしたんですか?」
由香里君が首を傾げる。
「早くみんなに見せてあげて下さい。女王の不正を暴かないと。」
「無理だ・・・・。」
「どうしてですか?」
「見てごらん、えらいことになってる。」
由香里君に投票用紙を渡す。
すると「なんで!?」と絶叫した。
「これ・・・私の名前じゃないですか!」
「ああ・・・・。」
「だってさっきはティムティム女王の名前が書いてあったんでしょ?」
「透視した時はな。おそらくだけど、どこかですり替えたんだ。」
「すり替える?」
「女王は予測していたんだと思う。投票の瞬間、俺たちが彼女の不正を疑うことを。だから・・・・、」
「だから・・・・私たちの方がハメられたってことですか?」
「ああ。俺が透視していることに気づいていたんだ。きっとそこのペンゲンがどこかで票をすり替えたに違いない。」
「そんな・・・まさかそこまでするなんて・・・、」
「ちなみにこの金貨も偽物だ。」
「え?」
由香里君の手に金貨を落とす。
「あれ?これってもしかして・・・・、」
金貨の表面に爪を立てる。
中から茶色い塊が出て来て、一口齧った。
「・・・・チョコレート。」
「票はすり替えられ、金貨はただのお菓子。こんなものを観衆に見せたら・・・・、」
「逆に私たちが不正しようとしたんじゃないかって疑われる?」
「そこまでいかなくても、票の集計を妨害したと見なされるだろう。最悪は失格になるはずだ。」
「そんな!せっかくここまで戦ってきたのに・・・。」
由香里君は悔しそうに唇を噛む。
観衆はさらにざわめいて、『何があったんだよ!』とヤジを飛ばし始めた。
『さっさと集計しろよ!』
『どっちが勝ったの!女王?現代人の女の子?』
『もったいぶってねえで早く発表しろ!』
《まずいな・・・・せっかく漫才で心を掴んだのに。》
攻勢が一転して、崖っぷちに追い詰められる。
その時、背後から冷たい視線を感じた。
「・・・・女王。」
ステージの袖から女王が覗いている。
その顔は悪どい笑みに満ちていた。
《おのれ女王・・・・。》。
司会がマイクを掴み、俺たちに詰め寄る。
『あんたら、これはどういうことだ?』
「いやあ、これはその・・・・ちょとした勘違いというかだな・・・、」
『集計を妨害するとはいい度胸だ。そんなに負けるのが嫌だったか?』
そう言うと、由香里君が「それは女王の方でしょ!」と怒った。
「票を操作して不正を働こうとしたんだから!」
『なんだと?』
「久能さんが超能力で見てたんだから!」
『では証拠を見せろ。』
「その証拠をすり替えられたの!」
『なんだそりゃ?言いがかりもいいとこだな。』
司会はクスっと肩を竦める。
由香里君は「あんただってグルのくせに!」と怒鳴った。
『なにい!?俺がグルだと!』
「だって金貨を受け取ろうとしてたじゃない!実際にはお菓子だったけど、私たちを騙す為に一芝居打ったんでしょ?」
『馬鹿なことを!私はそんなことはしていない。』
「嘘よ!絶対にあなたも・・・、」
「よせ由香里君。」
「久能さん・・・・どうして止めるんですか!」
「おそらくだが、その司会は何も知らない。」
「そんなはずありませんよ!だってこの人が協力しなきゃ不正はできな・・・・、」
「さっきも言っただろ?俺たちはハメられたんだ。」
「分かってますよそんなの!だからって黙ってるわけには・・・・、」
「落ち着いて聞け。」
ポンと肩を叩く。
「俺たちはこう思っていた。『女王は必ず不正をするはずだ』と。しかしそう思い込んでいるのを逆手に取られた。
女王の本当の目的は不正ではなく、俺たちを空回りさせて、集計を妨害しているように見せかけることだったんだ。」
「だから分かってます!でもそれは女王の策略で・・・、」
「その策略を司会のペンゲンは知らないはずだ。あえて事実を伝えないことで、俺たちを責めるように仕向けてるんだ。」
「でも!さっきは金貨を受け取ってたじゃないですか!実際はただのお菓子だったけど、何も知らないなら受け取るはずがありませんよ。」
「きっと女王からの差し入れですとかなんとかいって渡されたんだろう。」
「そんな・・・そんなのって・・・、」
「そう考えると、金貨を渡したペンゲンも何も知らない可能性が高い。
ここにいるすべてのペンゲンが、俺たちの方を疑ってるはずさ。」
「なんて人・・・・そこまで計算してたなんて。」
怒りを通り越し、半ば放心状態になっている。
そこへティムティム女王がやってきて、ニヤリと笑った。
『どうしただしょか?』
『ああ!ティムティム様!』
司会が事情を話す。
『なるほど・・・・わらわが不正しようと企んだと。』
『しかし証拠は何もありません。ただの言いがかりでしょう。』
『当然だしょ。不正なんてしなくても、わらわがそんな小娘に負けるはずないだしょ。』
ニヤニヤ笑いながら杖を向けてくる。
人を馬鹿にしたその表情・・・思わずぶん殴ってやりたくなる。
「このッ・・・・いい加減にしなさいよ!」
「よせ由香里君!いま飛びかかったら確実に失格だ!」
「じゃあどうすればいいんですか!?このままじゃ私たちは負けちゃいます。
そうなったらタムタムもモリモリも助からな・・・・、」
『もう充分もす。』
どこからか声が響く。
『これ以上私たちの為に傷つく必要はないもす。』
「この声はタムタム!」
空にUFOが浮かんでいる。
その上に美少女の姿に戻ったタムタムとモリモリが立っていた。
『探偵よ、お前は充分戦ってくれたもす。』
「何を言ってるんだ。このままでは君は消えてしまうんだぞ?」
『とうの昔に尽き果てているはずの命もす。ここらで死ぬのも悪くないもす。』
「馬鹿なことを。命を粗末にしてどうする。」
『もう充分生きたもす。ね、モリモリ。』
『探偵殿が漫才で伝えようとしたこと、すごく胸に響いたもり。』
「モリモリ・・・・。」
『そなたの言う通り、古代人と現代人は関わらない方がよさそうもり。』
そう言ってタムタムと手を繋ぐ。
『私たちはあの世へ旅立つことにするもす。』
『だけどその前に・・・・やるべきことがあるもり!』
二人は土偶とマネキンに変わる。
そしてティムティム女王に飛びかかった。
『な、何するだしょか!』
『私たちの最後のエネルギーを使って、お前を封印するもす。』
『封印!?』
『再び埴輪に戻るもり!』
『や、やめるだしょ!誰か助けるだしょ!』
女王は必死に叫ぶ。
するとペンゲンたちが『女王様を救い出せ!』とステージへ上がってきた。
しかしそこへUFOが降りてくる。
「暴れるならこの街ごと吹き飛ばすわよ?」
ピカピカと点滅するUFO。
ペンゲンたちは慌てて逃げ出した。
『こらお前たち!わらわを助けるだしょ!』
『ごめんなさい!まだ死にたくありません!』
『わらわがいなくなったら、誰がここを治めるんだしょ!?』
『そんなこと言ったって、さっきは俺を盾にしようとしたじゃないですか!』
『そうですよ!私たちは女王様の身代わりじゃありません!』
『ぐぐう〜・・・・今まで世話をしてやったのに・・・・この恩知らずども!』
女王の目が黒く染まる。
おぞましい殺気が溢れて、古代都市の中を包んでいった。
しかしタムタムとモリモリも本気を出す。
土偶は目からビームを撃ち、マネキンは『てい!』とチョップをした。
『ぐぎゅうッ・・・・、』
『ティムティム、もう終わりにするもす。』
『大人しく人形に戻り、永遠の眠りにつくもり!』
土偶とマネキンは呪文を唱え始める。
『ぐあああああ!やめろだしょ!』
女王は耳を塞いで苦しむ。
毒でも打たれたよに、七転八倒にのたうち回った。
『わらわにこんな事してタダで済むと思ってるだしょか!』
可愛い顔が鬼のように歪む。
『呪ってやる!何もかも呪ってやるだしょ!!』
鬼を通り越し、悪魔のような顔になる。
彼女の歪んだ性格が、そのまま表情に現れていた。
しかし土偶とマネキンは手を緩めない。
ひたすら呪文を唱え続ける。
『ぎゃああああああ!やめるだしょ!もう・・・・身体が・・・たもて・・・な・・・・、』
女王はカランと杖を落とす。
そのまま倒れこみ、ピクリとも動かなくなった。
そして・・・・、
『今もす!』
『埴輪に戻るもり!』
二人は古文書を掲げる。
一つは稲妻の古文書、もう一つは冷気の古文書だ。
二つの古文書から、稲妻とブリザードが放たれる。
『ぴぎゃッ!』
女王はビクンと反り返る。
そして・・・・とうとう埴輪に戻ってしまった。
『今こそ封印のチャンスもす!』
『永久に眠るがいいもり!』
埴輪に戻った女王を、二つの古文書でグルグル巻きにする。
そこへUFOが飛んできて、茂美と爺さんと婆さんが降りてきた。
「自動運転の設定は出来てるわ。いつでも飛ばせる。」
土偶とマネキンは頷き、古文書でグルグル巻きにした埴輪を抱えた。
『もはや地球に我らは必要ないもす!』
『宇宙へ飛んでいけもり!』
二人して『どおおおりゃああああ!』と埴輪を投げた。
吹っ飛んでいく埴輪は、上手いことUFOの中に入っていく。
そしてスーパーボールをぶつけたみたいに、カコンガコンとUFOの中を跳ねた。
『茂美殿!』
『奴めを宇宙へ!』
「任せて。」
茂美はリモコンのような物を操作する。
するとUFOは高く舞い上がり、古代都市を覆う南極の氷を貫いて、地表へと飛び出した。
「さようなら、ティムティム女王。」」
茂美はピっとボタンを押す。
UFOはピカピカと点滅して、一瞬にしてどこかへ飛び去ってしまった。
「・・・・どこ行っちまったんだ?」
「宇宙よ。」
「宇宙・・・。成美さん、あんたあのUFOに何かしたのか?」
「自動操縦を設定しておいたの。あとはこのリモコンで発進させるだけ。」
「なるほど・・・。でもまた戻ってきたりしないか?」
「それはないわ。自動操縦はこのリモコンがないと解除できないから。」
「ならティムティム女王は・・・・、」
「ただっ広い宇宙を延々と旅することになる。二度と戻って来られないわね。」
そう言ってクスっと微笑んだ。
「今頃リモコンの電波も届かない所にいるだろうから、地球へ戻る手段はないわ。これで一件落着。」
「あんたが一番の悪魔だよ・・・・。」
俺も由香里君もゾっと鳥肌を立てた。
そこへ土偶とマネキンがやってきて、『迷惑をかけたもすな』と言った。
『ティムティムは去り、私たちも消えるもす。』
「やはり君たちは死んでしまうのか?」
『もう充分生きたもす。』
『唯一の心配事だったティムティムもいなくなったし、そろそろあの世へ旅立つもり。』
二人は手を繋ぎ、ゆっくりと消えていく。
「おい待て!まだ逝くな!」
『同情はいらないもす。』
『探偵殿、最後まで共に戦ってくれて感謝するもり。』
「だから逝くな!まだアンタたちが必要なんだ!」
『そんなことないもす。』
『私たちの役目はもう終わったもり。』
『生まれ変わったならまた会おうもす。』
『ずっとこの世が平和であることを願ってるもり。』
二人は微笑む。
手を振りながら『さようなら』と消えていった。
「おい待て!」
手を伸ばしても、もうそこには誰もいない。
「久能さん・・・・・。」
由香里君が切ない顔で呟く。
俺は「分かってる」と頷いた。
全ては終わった。
悪しき女王は遠い宇宙へ消え去った。
だがそのせいでUFOも失った。
それに瞬間移動だってもう出来ない。
「どうやって帰ればいいんだ・・・・。」
ここは南極。
地球の真下に位置する極寒の大陸。
パンツ一丁だったことを思いだし、「ぶえっくし!」とクシャミが出た。
JUGEMテーマ:テレビ全般
JUGEMテーマ:エンターテイメント
元世界王者の亀田興毅さんが、アベマテレビで試合をしていました。
対戦相手は四人。
ホスト、高校教師、ユーチューバー、元暴走族の総長。
総長は格闘技経験者なので強かったです。
ストレートもすごい真っ直ぐ伸びるし、それに打たれ強いし。
でも一番面白かったのはユーチューバーのジョーさんです。
ユーチューバーといえばヒキカンさんが有名ですが、他にも面白い人はいます。
亀田さんとの試合以来、ジョーさんの動画を見ています。
すごい面白い人です。
日本だけでなく、海外も旅していて、しかも危険な街まで行ってしまう。
ジョーさんは人の情報を鵜呑みにせず、自分の目で見て、自分の手で触れたものを信じるようです。
危険と言われる街は本当に危険なのか?
実際に行ってみて、噂とは違う場合もあれば、噂通り危険な街もあるようです。
それって行ってみないと分からないことですよね。
だけど動画の中で、真似はしないでほしいと、ちゃんと忠告もしていました。
こういう動画を挙げたからといって、危険なことを勧めているわけではないと。
面白いし、すごく好感の持てる人だなと思いました。
結局人間性なんですよね。
ヒカキンさんもジョーさんも、良い人なんだなと分かります。
それでいて自分のやりたい事には妥協しない。
普通の人ならビビるような事でも、やると決めたらやってしまうのがすごいです。
ああいった人たちがいるおかげで、自分では出来ないことを楽しめるんです。
ジョーさんの言った通り、危険な街へ行くのはやめた方がいいです。
でも気になるのも事実。
そういう場所へ行ったり、みんなが気になることを体当たりで取材したり。
なんていうか・・・・今のテレビからは失われてしまった、昔のテレビの良さがあるような気がします。
何かやれば叩かれるテレビでは、かつてのような危険な事、非常識な企画は無理でしょう。
ユーチューバーだから出来ることってあるんですね。
だけどユーチューバーというものが世間に広く認知され、テレビに並ぶ存在になってしまったら、今の面白さは失われるでしょう。
かつてテレビが辿った道と同じように、規制の波に飲まれて、こじんまりとした企画しか出来なくなる可能性はあります。
漫画やゲームだってそうだけど、なんでも黎明期が一番楽しいですよ。
天才とか呼ばれる人たちも、だいたい黎明期に現れています。
後世に同等の才能を持った人が現れても、新しいものを生み出すのは難しいです。
すでに先人たちがやり切っているんですから。
重箱の隅をつつくようなやり方でしか、世間に認めてもらいにくくなるでしょう。
小さなマーケットでは大したことはできず、大きなマーケットだと規制がかかる。
だったらその中間にある時期が一番面白いです。
新しい物事が生まれて、だんだんと形になっていく途中が、やってる方も見ている方も幸せでしょう。
今から数十年後、ヒカキンさんやジョーさんは、ユーチューバーをけん引した大物として、大きな地位についている可能性もあります。
テレビに出ているタレントさんだって、今までにない人が出て来ると、チンピラだとか下劣だとかなじられたりします。
そういう人ほど、時間と共に天才と呼ばれるんですから。
新しいものは賛否両論。
色んな意見があるだろうけど、面白いものは理屈じゃないです。
テレビだろうとユーチューブだろうと、面白いが一番だと思います。
JUGEMテーマ:自作小説
パンツ一丁で人前に出るなんていつ以来だろう?
小学生の頃にウンコを漏らした時が最後か。
ていうかそんな事はどうでもいい。
どうして俺がミスコンに出場しなければいけないのか?
いくら由香里君の頼みとはいえ、この状況は辛すぎる。
《なんて説明すればいいんだこんなの・・・・。》
観衆の目が冷たい。
南極のブリザードよりも寒い。
「ええっと・・・・・、」
しどろもどろになっていると、『ぶふッ!』と笑い声が聴こえた。
《女王の奴・・・・笑ってやがる。》
一瞬イラっとしたけど、この格好じゃ笑われても仕方ない。
だってなあ・・・ミスコンにパンツ一丁のオッサンって。
司会が困った顔で『あの・・・』とマイクを向けてくる。
『さっきの女の子は?』
「実は体調を崩してしまってな。今は休んでる。』
『なら棄権ということで?』
「いいや、棄権はしない。」
『でも体調が悪いんでしょ?』
「俺が代理を務める。」
『・・・これミスコンですよ?』
「そうだ。」
『あんたオッサンだよな?』
「見れば分かるだろう。」
『しかもなぜパンツ一丁なんだ?』
「事情があるんだ。深く聞かないでくれ。」
『まあどっちにしても男は出場できないから。棄権ってことでいいな?』
「そこをどうにかしてもらえないか?」
『無理だろ・・・。誰がオッサンの裸を見て喜ぶんだよ。』
会場は白けきっていて、スマホをいじっている奴もいる。
《クソ!やはり無理があったか・・・・。》
寒いわ恥ずかしいわで、今すぐここから消えたくなる。
・・・・いや、この突き刺すような冷たい視線、案外クセになるかも・・・、
『いいだしょよ。』
女王が前に出て来る。
『特別にお前の出場を認めるだしょ。』
「本当か!?」
喜ぶ俺だったが、司会は異論を挟んだ。
『お言葉ですがティムティム様、ミスコンにオッサンを出すのはどうかと・・・、』
『わらわが許可するだしょ。』
『しかし女王様は参加者ですから、ルールを変えることは出来な・・・・、』
『明日から雑用係になりたいだしょか?』
『OKベイベ〜!そこの男性、特別に出場を許可しよう!』
《なんて理不尽な上司だ。》
少しばかりこの司会が可哀想になる。
でもしょせんは他人事。
俺は俺自身と由香里君の為に戦うだけだ。
『ではオッサン!あなたのメッセージをみんなに伝えちゃって下さい!』
「オッサンではない。探偵の久能司だ。」
一歩前に出て、観衆を睨みつける。
「まずお詫びしたい。実は由香里君が体調を崩してしまって、俺が代理で立つことになった。」
・・・反応はない。
誰もオッサンのパンツ姿など見たくないようだ。
「気持ちは分かる。あの水着の美女はどこへ行ったのか?
どうして代理がパンツ一丁のオッサンなのか。色々不満はあるだろう。」
『ぶふッ!』
また女王の笑いが聴こえる。
ニヤニヤしながら、余裕の笑みで見つめてくる。
もはや勝利を確信しているようだ。
《なんて嫌味な顔だ。》
苛立つ気持ちを堪え、「ううん!」と仕切り直した。
《さて、パンツ一丁のオッサンが何を喋ったところで、誰も心を動かさないだろう。
正直なところ棄権していた方がマシだったかもしれない。》
観客の白けようは、南極を超える絶対零度のよう。
心象は最悪だろう。
・・・であればどうするか?
《由香里君は俺にバトンタッチした。だったら俺も、誰かにバトンタッチすればいいだけだ。》
ニヤリと笑いながら、「そこのお二人」と振り向く。
「どうだい?ここは一つ、君たちも参加してみないかね?俺の代理ということで。」
タムタムとモリモリにそう尋ねると、女王が『それはイカンだしょ』と言った。
『これ以上ルールを変えることは出来ないだしょ。』
「でも俺の参加は認めてくれたじゃないか。」
『ルールの変更は一度きりだしょ。』
そう言って司会を睨むと、『その通りでございます!』と頷いた。
『これ以上ルールの変更を求めるなら、この場で失格になりますよ。』
「そう硬いことを言わずに。」
『ダメです。』
「どうしても?」
『どうしても。』
司会は頑として譲らない。
なぜなら彼の後ろで女王が睨んでいるから。
しかし女王の隣にいる土偶とマネキンは、『面白そう!』とハモった。
『ねえティムティム、私たちも参加させてほしいもす。』
『せっかく仲直りしたんだし、出てもいいもり?』
『イカンだしょ。これ以上のルールの変更は認めないだしょ。』
『ふう〜ん・・・そういうこと言うもすか。』
『ティムティムちゃん、私たちのことを怖がってるみたいもり。』
二人はクスクスと笑う。
そして一言、『ダサ』と言い放った。
『んなッ・・・・ダサいだしょと!?』
『だって私たちのことビビってるもす。』
『ビビってなんかいないだしょ!』
『顔が真っ赤。やっぱり怖いもり?』
『違うだしょ!これ以上ルールの変更を認めたくないだけだしょ。
そうポンポンとルールを変えてしまったら、大会そのものが滅茶苦茶になってしまうだしょ。』
『ルールかあ。だったら仕方ないのかな。』
『そうだしょ。ルールだしょ。』
『でもティムティムちゃん、昔のミスコン大会ではルールを守らなかったもり?』
『は?何を言ってるだしょか?わらわは公平な戦いをしただしょ。』
『あなたが当選すれば、民は半年間の税金の免除があったもり。』
『それに私に生牡蠣を送って、食中毒で棄権させたもす。』
『そんな大昔のことなど知らんだしょ。』
『あ!もしかしたら、由香里ちゃんが棄権したのもティムティムのせいなんじゃ・・・、』
『違うだしょ!わらわは何もしていないだしょ!』
『本当かなあ?』
『本当だしょ。疑うんなら好きなように調べればいいだしょ。』
そう言ってツンとそっぽを向く。
『ねえモリモリ、ティムティムはやっぱり私たちのことが怖いみたいもす。』
『そうみたいね。だったら・・・強制参加しちゃおうかもり?』
二人は頷き合い、ピカっと光って人の姿に変わった。
どちらも女王に負けず劣らすの美少女だ。
『こらお前たち!勝手な真似は許さんだしょよ!』
女王は怒る。
しかし二人はそれを無視して、観衆に手を振った。
『アトランティスの王タムタムもす!』
『イエ〜イ!!』
『私はムー大陸で大臣をやっていたモリモリもり。』
『可愛い〜!!』
『私たち!』
『今からミスコンに参加します!』
『おおおおおおお!!』
美少女が二人増えたことで、会場は大盛り上りだ。
『というわけもす、女王陛下。』
『みんなウェルカムムードもり。』
『もし私たちの参加を拒否したら、また女王陛下のイメージが悪くなるもす。』
『来年あたりには、女王が入れ替わってるかもしれないもり。』
不敵に笑う二人の女。
女王は『むぎぎぎ〜・・・・』と歯ぎしりをした。
『お前たち・・・・覚えてろだしょ。後で絶対に酷い目に遭わせてやるだしょ。』
『え〜?なに〜?聴こえない〜もす。』
『もっと大きな声で言ってほしいもり。』
こんなこと大声言えるわけがない。
女王は『うぐうッ・・・・・』と悔しそうにした。
『・・・・・・・。』
『ティムティムちゃん?』
『参加・・・・してもいいもり?』
『・・・・勝手にしろだしょ。』
耳まで真っ赤にしながら、プイっと背中を向ける。
『というわけで〜!』
『私たちも参加するもり!』
二人が手を振ると、観衆は大いに沸いた。
そして俺を振り向き、ニコっとウィンクを飛ばした。
《助かった・・・・この二人が出てくれるのなら勝目がある。》
タムタムもモリモリも、大昔のミスコンで酷い目に遭わされている。
女王に本気で復讐するなら、今しかないと踏んだのだろう。
それならばこんなパンツ一丁のオッサンはさっさと退場するに限る。
そう思って脇へはけていくと、『どこへ行くだしょ?』と女王が睨んだ。
『逃げるつもりだしょか?』
「逃げるなんてそんな。ここはオッサンがいるような場所じゃないと思ってね。」
『わざわざルールを変えてまで参加を認めてやったんだしょ。逃げるなんて許さんだしょ。』
目に殺気が宿っている。
逃げたら後ろから刺されかねない。
「分かったよ。」
渋々ステージへ戻ると、両脇をタムタムとモリモリに挟まれた。
二人共腕を組んできて、ニコっと微笑む。
「なんだ?」
『応援するもす。』
『必ずティムティムを倒すもり。』
「もちろんそうしたいが、それは君たちに任せるよ。オッサンの俺では票は集まらないだろうから。」
『そうしたいのは山々もすが、私はもう時間がないのでもす。』
「まさか・・・もう消えてしまうのか?」
『もす。』
『だからここは・・・・探偵殿!あなたに任せるもり!』
二人はムギュっと抱きついてくる。
「おい、何をしてるんだ?」
『お前のパワーの源は煩悩もす。』
『こうして私たちが肉感を与えることで、それを刺激してるもり。』
「まさかまた股間から女王を召喚しようというのか?」
『いや、召喚の儀はもう消えてるはずもり。さっきあれだけ恥をかかされたから。』
「じゃあなんでこんな事を?」
『探偵殿は煩悩が高まると、普通ではあり得ないパワーを発揮するもり。
だからこうして色仕掛けをして、煩悩を刺激してるもり。』
そう言ってさらに身体を押し付けてくる。
「残念ながら俺にロリ属性はない。ムチっとしたボディじゃないと反応しないんだ。
君らの気持ちはありがたいが、これじゃあ息子は反応しな・・・・、」
『心配するなもす。』
『私たちだって魔術が使えるもり。』
二人はブツブツと何かを唱える。
すると一瞬でエロいお姉さんに変身した。
豊満な胸、引き締まったウエスト、むっちりしたお尻と太もも。
それら肉の塊を、ムギュっと押し付けてくる。
「はうあッ!」
息子は一瞬で反り立った。
『これなら煩悩が高まるもす。』
『こう見えても私たちはウン百万歳。子供じゃないもり。』
「うおおおおお・・・・煩悩が・・・・高まっていく。すべてのエネルギーが息子へ・・・・、」
耐え難いほどの熱が集まってくる。
痛く、熱く、そして輝いていく。
すると・・・・、
「むうああ!」
股間から土偶とマネキンが咲いた。
「おお!すごいことになったぞ!」
『うわあ・・・・、』
『探偵殿、あなたはちょっとおかしいもり・・・。』
二人はササっと離れていく。
「しょうがないじゃないか。君たちから煩悩をもらったんだ。土偶とマネキンくらい咲くさ。」
『魔術を超えた怪奇現象もす。』
『古代でもこんな光景な見たことがないもり。』
驚き、呆れ、表情を歪めていた。
『と、とにかく!今がチャンスもす。』
『その状態ならば、何かすごいことをやらかすはずもり!』
「すごい事とは?」
『知らないもす。』
『後は任せるもり。』
二人は土偶とマネキンに戻る。
美少女が消えたことで、会場は一気にトーンダウンした。
『さっきの可愛い子ちゃんたちは?』
『パンツのおっさんとかいらないんだけど。』
『なんで股間から土偶とマネキンを生やしてるんだ?』
『そういう病気じゃない?』
《そんな病気があるか!》
そう思いながらも、もしかしたら病気かもと思ってしまう。
股間から生えた土偶とマネキン。
志村けんでさえアヒルなのに・・・・。
《俺はいつからコメディアンになってしまったんだ・・・。》
『ぶふッ!』
《おのれ女王・・・・ニヤニヤ笑いやがって。》
あの顔は自分の勝ちを確信している。
モリモリとタムタムがいなくなった今、俺など敵ではないのだろう。
《いいさ、そこまで馬鹿にするならやってやろうじゃないの!》
普通なことをやったって、誰も喜んでくれない。
であれば何をするか。
《ここが正念場だ。・・・・考えろ久能司。》
股間から生える土偶とマネキン。
お笑い芸人しかしないようなこの格好で、いったい何が出来るのか・・・・。
「・・・・今からトリオ漫才をやります!その漫才の中で、私からの・・・・いや、現代人からのメッセージを伝えます。」
ポンポンと股間を叩くと、クスクスと失笑が起きた。
《受けるかズベるかのどちらかだ。・・・・頼んだぞ、土偶とマネキン。》
二人に増えた息子たち。
こいつらと一緒なら勝てる気がする。
ステージの中央に立ち、「はいどうも〜!」と漫才を始めた。