竜人戦記 第四十七話

  • 2010.09.22 Wednesday
  • 09:27
 突如として襲ってきた魔人に、地獄の門の鍵の地図を奪われてしまった。
ウェインはそのことに全く動じていないようだったが、ケイトは心配だった。
もし魔人がケイト達より先に地獄の門の鍵を見つけたらどうしよう。
そんな不安が頭をよぎる。
魔人から地獄の門の鍵の地図を奪われて二週間。
ケイト達は山道を歩いていた。
確か地獄の門の鍵のある塔は、山奥にあったはずだ。
ウェインは地獄の門の鍵の地図の内容は頭に入っていると言っていた。
その言葉に嘘はないようで、ウェインは迷うそぶりをみせずに先頭を歩いていた。
そしてしばらく山道を歩いていると、一つの村が見えてきた。
ケイトは、いつもならば村の宿屋に泊りたいと思うところだった。
しかし魔人に地獄の門の鍵の地図を奪われて焦っていた。
ケイトはその村に泊りたいとは言わなかった。
しかしウェインがその村の前で足を止めた。
「この村で一晩休んでいくか。」
ウェインはそう言った。
「でもウェインさん。
今は急いだ方がいいんじゃないですか。
魔人に地獄の門の鍵の地図を奪われたんですよ。」
ケイトは言った。
するとウェインはケイトを見て、「疲れているんだろう。」と言った。
「二週間も野宿だったんだ。
そろそろ疲れてきているんじゃないのか。」
ウェインにそう言われ、ケイトは驚いた。
今までウェインがケイトに気を遣ってそんなことを言ってくれたことは一度もなかった。
「ウェインさん、熱でもあるんですか?」
ケイトはウェインに言った。
「別に嫌ならいい。
このまま先を歩き続けるだけだ。」
ウェインはケイトから目をそらして言った。
ケイトはウェインの好意を無碍にするのも躊躇われ、その村に泊ることにした。
「実は疲れていたんです。
この村で一晩泊りましょう。」
ケイトはそう言いながら村に入った。
ウェイン達もあとからついて来る。
とても小さな村だった。
酒場らしき小さな建物と教会があり、あとは人々の暮らす家がいくつかあるだけだった。
果たしてこの村に宿屋があるのかなと不安になった。
相変わらず、ウェインはさっさと酒場へと入って行った。
「俺達も酒場に行くから、宿の予約をしといてくれよ。」
フェイはそう言ってマルスとともに酒場へと入って行った。
「村の人に宿屋があるか聞いてみようよ。」
リンがそう言ってケイトの腕の引っ張る。
ケイトは近くにいた村人をつかまえて、宿屋がないか聞いてみた。
すると教会のすぐ右の建物が宿屋だと教えてくれた。
ケイトは宿屋があってホッとした。
「じゃあ宿屋に行こう。」
そう言ってまたリンがケイトの腕を引っ張る。
宿屋は二階建てだった。
そして宿屋のドアを開けて中に入ると、宿屋の番をしているおばあさんがいた。
ケイトはそのおばあさんに「ここに一晩泊りたいんですが。」と言った。
宿屋のおばあさんは頷き、「何人ですか?」と聞いてきた。
「五人です。
男三人に、女二人。
出来たら男と女の部屋を分けて欲しいんですが。」
ケイトがそう言うとおばあさんは頷き、料金は前払だというので懐からお金を出して払った。
「そこの階段を上がって、すぐ左の部屋が男性の部屋、その向かいが女性の部屋です。」
おばあさんは優しくそう言い、ケイトは「分かりました。」と笑顔で答えた。
「とりあえず予約だけで、あとでまた泊りに来ます。」
ケイトがそう言うと、おばあさんはゆっくりと頷いた。
ケイトとリンは宿屋を出て、ウェイン達がいる酒場へと向かった。
酒場は小さな建物で、中にはウェイン達を除いて二人の客がいるだけだった。
「宿の予約とっといたよ。」
リンがそう言うと、「おう、ありがとう。」とフェイが答えた。
ウェイン達はテーブル席に座っており、ケイトとリンも同じ席に座った。
「ケイト達も何か飲むか?」
マルスが尋ねてくる。
「私はいいや。」
リンは言った。
「ケイトは?」
「じゃあ私は水をもらおうかしら。」
そう言うとマルスは立ち上がり、カウンター行った。
そして水を手にして戻って来た。
「ありがとう。」
ケイトはそう言ってマルスから水を受け取った。
「なあ、ウェイン。
魔人に地獄の門の鍵の地図を奪われちまったけど、本当に大丈夫なのか?」
フェイがウェインに尋ねる。
「心配するな。
地獄の門の鍵の封印を解く石はこっちが持ってるんだ。
それに・・・。」
そう言いながらウェインは懐から鍵を取り出した。
確かあの鍵は、トリスが地獄の門の鍵のある塔に入る為のものだと言っていた。
ケイトが受け取ったあと、ウェインに渡したのだ。
「あのトリスのことだ。
きっと地獄の門の鍵のある塔の扉には、何かの封印がしてあって、この鍵がないと中に入れないようになっているはずだろう。
例え魔人が俺達より先に地獄の門の鍵のある塔に行ったとしても、中には入れないだろう。」
ウェインはそう言うと、お酒を一口飲んだ。
「確かにウェインの言う通りだな。
地獄の門の鍵の地図を奪われたからといって、そんなに焦ることじゃないのかもしれない。」
マルスが言った。
「でもよお、地獄の門の鍵のある塔まで行ったら、また魔人が襲って来るんじゃねえか。
そのトリスからもらった鍵と、地獄の門の鍵の封印を解く石を狙って。」
フェイが腕組みしながら言った。
「その時はその時だ。」
そう言ってウェインはお酒をグイッと飲んだ。
「俺は魔人に負けるつもりなはない。
今度襲ってきたら、その時こそ決着をつけてやるさ。」
ウェインは強気な口調でそう言った。
それからしばらくして、ケイト達は酒場を出た。
みんなで宿屋に向かう。
宿屋に入り、ケイトが男達の部屋の場所を説明すると、ウェインはさっさと自分の部屋に入って行った。
「じゃあ俺達も部屋にいるから、何かあったら呼んでくれ。」
マルスはそう言って、フェイとともに自分達の部屋に入って行った。
「ねえ、おばあさん。
この宿屋にはお風呂はないの?」
リンが宿屋の番をしているおばあさんに聞く。
「あいにくだけどお風呂はないねえ。」
おばあさんはそう言った。
「そっかあ・・・。」
リンはちょっと残念そうだった。
そしてケイトとリンも自分の部屋に入った。
部屋はそう広くはなかった。
ケイトとリンは荷物を置くと、同じベッドに座った。
「また魔人と闘うことになるのかもしれないね。」
リンが言った。
「そうね。
そうなったらウェインさんが頼りだけど。」
ケイトは答えた。
「なんか魔人と闘っている時って、私達って役立たずって感じだよね。」
リンが悔しそうに言う。
「そんなことないじゃない。
この前だって、魔人の召喚した狼の魔物を、フェイとマルスと協力して倒していたじゃない。」
「まあ、そうだけど・・・。」
リンはベッドに座ったまま、足をぶらぶらさせていた。
「でもこの前の魔人との闘いでは、ケイトも活躍したよね。
その聖者の首飾りで、ウェインを守ってたじゃない。」
「まあそうだけど。
でもあれって闘いの役に立ったって言えるのかしら。」
ケイトは聖者の首飾りを触りながら言った。
「十分役に立ったと思うよ。
ケイトのおかげでウェインは守られたんだよ。」
そう言われると少し嬉しい。
「私も立派な武道家だったら、魔人と戦えるのかなあ。」
リンは宙を見て言った。
「さあ、どうかしらね。
それはリンが立派な武道家になってみないと分からないわね。」
「それはそうだけど・・・。」
リンは足をぶらぶらさせるのをやめて、ベッドに寝転がった。
「シェリーの占いが本当なら、私が立派な武道家になるには五年後かあ。」
リンは独り言のように呟いた。
「でもその前に、三年後に彼氏が出来るってシェリーが言ってたじゃない。」
ケイトは寝転がっているリンに行った。
「そう!
それよ!」
そう言ってリンは体を起こした。
「ねえ、ケイト。
私の彼氏になる人ってどんな人だと思う?」
リンが真剣な目で尋ねてくる。
「さあ、どんな人かしら。
私は想像出来ないわね。
リンはどんな人が彼氏だったら嬉しいの?」
ケイトは聞き返した。
リンはしばらく考え込む仕草を見せた。
「うーん。
そうねえ。
まず私より強い人がいいな。」
リンは言った。
リンより強い人。
その時点でかなり彼氏になれる人の範囲が狭まると思うのだが、ケイトは口にしなかった。
「それから優しい人がいいな。
こまめに私に気を遣ってくれるの。
それでいてカッコイイ人がいい。」
リンは目を輝かせながら言った。
リンより強く、こまめに気遣いが出来て、カッコイイ人。
そんな男性はほとんどいないだろう。
「でも彼氏が出来たら、私結構大変になっちゃうかも。
彼氏とデートもしなきゃいけないし、武道の修行もしなきゃいけないし。」
リンは色々と想像を膨らませているようだ。
「ねえ、ケイトはどうしてあの時シェリーに彼氏のことを占ってもらわなかったの?」
リンが身を寄せて尋ねてくる。
あの時は、リンが勝手にシェリーにケイトの彼氏はいつ出来るのかと占いを頼んで、そしてケイトが慌てて占いを止めたのだ。
「ねえ、ケイトはどんな彼氏が欲しいの?」
リンがさらに身を寄せて尋ねてくる。
「どんなって・・・。」
ケイトは返事に困ってしまった。
今まで特にそういうことは考えたことはなかった。
「ねえねえ、どんな彼氏が欲しいの?」
リンがケイトの目をじっと見ながら尋ねてくる。
「私はあまりそういうのは考えたことはないから・・・。」
「でも、理想のタイプとかあるでしょ。
それを聞かせてよ。」
リンはケイトが答えるまで、引き下がるつもりはないようだった。
ケイトは仕方なく答えた。
「まあ、特に理想とかはないんだけど、真面目で誠実な人がいいわね。」
ケイトは少し赤面しながら答えた。
「ふーん、何かケイトらしい答えだね。」
それからリンは、ケイトが思ってもいないことを聞いてきた。
「ケイトって、ウェインのことが好きなんじゃないの?」
そんなことを聞かれ、ケイトは大きく慌てた。
「い、いきなり何を言うのよ!」
ケイトは大きな声で言った。
「なんかそんな気がしたから。
ウェインって無口だけど、真面目で誠実そうじゃない。
ケイトの理想にピッタリなんじゃない?。」
リンは悪戯っぽく笑いながら言ってくる。
「私はウェインさんにそんな感情は持っていないわよ。
ただ大切な仲間だとは思ってるけど・・・。
それに向こうは私のことなんか何とも思っていないわよ。」
ケイトは早口に言った。
「ふーん。」
リンはまだ悪戯っぽく笑いながらケイトを見ていた。
「もうこの話題は終わりにしましょ。」
ケイトはまだ赤面したまま言った。
それからケイトとリンは他愛無いお喋りを続け、気が付くと夜になっていた。
荷物から食べ物を出して夕食をとり、ケイトとリンは早めに眠りについた。
それから少ししてからのことだった。
「ねえ、ケイト。
起きてよ。」
リンがケイトの体をゆさぶる。
ケイトは目をこすりながら起きて、「どうしたの?」と言った。
「今、窓の外にお化けがいたの。」
リンが怯えた表情で言ってくる。
「お化け?」
ケイトはリンに聞き返しながら、窓を開けて外をのぞいてみた。
誰もいなかった。
「リン、きっと寝ぼけてたのよ。」
そう言ってリンに振り返ると、リンが怯えた顔をしてケイトの後ろを指差している。
ケイトは後ろを見た。
そこには半透明の女性が宙に浮いて立っていた。
ケイトは言葉を失い、しばらくその半透明の女性を見ていた。

竜人戦記 第四十六話

  • 2010.09.21 Tuesday
  • 09:13
 ケイト達の行く手を塞いでいた岩の壁は、馬の騎士を倒して手に入れた透明な小さな石を当てると消えた。
そうして岩の壁を過ぎて旅を続けること一週間。
途中に村や町はなく、平坦な道が続いているだけだった。
「このまま何事もなく、地獄の門の鍵のある塔まで行けるといいな。」
マルスが言った。
「そうだといいんだけど。
でも岩の壁みたいに、また私達の行く手を塞ぐ物があるかもしれないわよ。」
ケイトは答えた。
もしかしたら、また試練のようなものがあって、強敵と闘わなければいけないのかもしれない。
そうでなければいいなとケイトは思った。
「きっと大丈夫だよ。
このまま地獄の門の鍵のある塔まで何事もなく行ける気がするな。」
リンが言った。
しかしケイトは不安だった。
まだシェリーの言ったことが気になっているのだ。
シェリーは近い未来に魔人が襲って来ると言っていた。
その言葉が、ずっとケイトを不安にさせていた。
ケイトはそんな不安を抱えながらも、地獄の門の鍵がある塔を目指して歩き続けた。
途中で魔物に遭遇したが、ウェイン達があっさりと倒してしまった。
このまま何事もなければいい。
ケイトはそう願いながら歩いた。
しかしケイトの不安は的中した。
とても邪悪な気がこちらに迫って来ているのだ。
ケイトはこの気を知っている。
これは魔人の気だ。
ウェインもそれに気付いたようで、足を止めて後ろを振り返っている。
「どうしたんだ?」
フェイがウェインに尋ねる。
ウェインはそれに答えないまま、ずっと後ろを見ていた。
すると遠くから黒い霧のような物がやってきた。
ケイトは思った。
魔人が来たと。
その黒い霧はケイト達にだんだんと近づいて来る。
ウェインは大剣を構えた。
フェイ達もこちらに迫って来る黒い霧に気付いたようだった。
「おい、あの黒い霧ってまさか・・・。」
マルスが黒い霧を見て固まっている。
そして黒い霧はケイト達の前までやって来ると、魔人の姿になって地面に降り立った。
「勘を頼りに来てみれば、まさか本当にお前達を見つけることが出来るとはな。」
魔人は言った。
ウェインが魔人に一歩近づく。
「わざわざ倒されに来るとはご苦労なことだ。」
ウェインは魔人にそう言った。
すると魔人は不敵な笑みを浮かべた。
「お前達は、地獄の門の鍵の地図と、その封印を解く石を持っているな。」
ケイトはその言葉にドキっとした。
魔人はケイト達が地獄の門の鍵の地図と、その封印を解く石を持っていることを知っている。
どうやってそれを知ったのかは分からないが、魔人はそれを狙っているのだ。
「俺達の持つ地獄の門の鍵の地図と、その封印を解く石を奪うつもりか?」
ウェインが言った。
「ああ、その通りさ。
俺は禁断の魔法を手に入れた。
あとは地獄の門の鍵さえ手に入れれば、地獄の門を開けるからな。」
魔人は両手を剣のように変化させて言った。
「奪えるものなら奪ってみろ。」
そう言うとウェインは大剣を魔人に向けた。
ウェインの体を光の膜が覆い、大剣は黄金の光を放ち始めた。
「来い、バース!」
ウェインは言った。
「地獄の門の鍵の地図と、その封印を解く石、何としても奪ってみせる。
いくぞ、ウェイン。」
そう言って魔人はウェインに斬りかかって来た。
ウェインは大剣でそれを受け流すと、魔人に向かって斬りつけた。
すると魔人は体を黒い霧に変えた。
ウェインの振った大剣は、黒い霧をすり抜けた。
魔人は黒い霧から魔人の姿に戻ると、口から黒い霧を出してウェインに吹きかけた。
ウェインは手で顔をかばう。
その間に魔人は剣の両手でウェインに斬りかかってくる。
ウェインは後ろへ飛んでそれをかわすと、右手を前に出して光の球を放った。
魔人は光の球をかわすと、呪文を唱え始めた。
すると地面から無数の黒い手が現れた。
「何あれ、気持ち悪い!」
リンがそれを見て言う。
地面から現れた無数の黒い手は、ウェインにまとわりついてきた。
身動きがとれなくなるウェイン。
そこへ魔人が斬りかかってきた。
魔人の剣がウェインの体を斬りつけていく。
ウェインは必死に黒い手から逃れようとするが、黒い手はウェインを離さなかった。
その間にも魔人はウェインに斬りかかってくる。
ウェインは何とか大剣でそれを防いでいるが、魔人の攻撃は激しかった。
ウェインの体がどんどん斬られていく。
赤い血を流しながら苦しそうな顔をするウェイン。
「うおおおお!」
ウェインはそう叫ぶと、体から衝撃波を放った。
その衝撃波をくらい、魔人は後ろへ吹き飛ばされ、ウェインにまとわりついていた黒い手も消滅した。
そしてウェインの顔が変わっていく。
竜と人を混ぜたような顔だ。
ウェインが本気になった証拠である。
ウェインは魔人に素早く距離を詰めると、斬りかかった。
魔人は両手の剣でそれを受け止める。
そして魔人はまた呪文を唱えた。
すると魔人の体が変わっていく。
大きさは倍ほどになり、黒い山羊の顔に角を生やした姿に変わった。
魔人は口から黒い霧を吐いた。
ウェインは上に飛んでそれをかわすと、魔人に斬りかかった。
魔人は両手の剣でそれを受け止めると、角をぶつけてウェインを後方へ突き飛ばした。
魔人がまた呪文を唱える。
すると魔人の上に魔法陣が現れ、そこから頭の三つある黒い巨大な狼の魔物が現れた。
狼の魔物は三つある口を開けて、ウェインに向かって炎の球を放った。
ウェインは横へ飛んでそれをかわす。
そこへ魔人が斬りかかって来た。
ウェインは大剣で魔人の剣を受け止める。
すると狼の魔物がウェインに襲いかかってきた。
狼の魔物の巨大な口がウェインを飲み込もうとする。
ウェインは狼の魔物の口に大剣を突き立てた。
苦しそうな声をあげる狼の魔物。
そこへ魔人が斬りかかって来る。
ウェインは防ぎきれずに魔人の剣をくらってしまった。
ウェインの体は大きく斬られ、大量の血が流れた。
そしてまた魔人が呪文を唱える。
その間に狼の魔物がウェインに襲いかかる。
ウェインは狼の魔物の攻撃をかわしてその体に斬りつけた。
狼の魔物は苦しそうな声をあげながらも、ウェインに襲いかかってくる。
そうしている間に、魔人が呪文を唱え終わった。
するとウェインの足元に黒いイバラが生えてきて、ウェインの足をからめていった。
再び身動きがとれなくなるウェイン。
そこへ魔人と狼の魔物が襲いかかってきた。
狼の魔物の牙はウェインの体を傷つけ、魔人の剣はウェインを斬りつけていく。
ウェインはだんだんとダメージを受けていく。
そしてウェインは狼の魔物に、腕を噛まれてしまった。
「ぐううう!」
苦しそうな声を出すウェイン。
「これで終わりだ、ウェイン。」
そう言って魔人がウェインの心臓めがけて剣を突き刺そうとしてきた。
その時ケイトは聖者の首飾りに願った。
ウェインを守って欲しい。
すると聖者の首飾りは光り出し、ウェインの周りを光のシールドが囲んだ。
魔人の剣は光のシールドによって防がれた。
「何だ、これは!」
魔人が光のシールドを見てそう言う。
ウェインの腕を噛んでいた狼の魔物は、光のシールドによって後方に吹き飛ばされた。
魔人は何度も光のシールドを攻撃する。
しかし光のシールドはびくともしなかった。
やがて聖者の首飾りの光が消え、ウェインを囲っていた光のシールドも消えた。
そこへ狼の魔物が襲ってくる。
その時だった。
「おりゃああ!」と言ってフェイが狼の魔物に飛び蹴りを放った。
しかし狼の魔物はあまり効いていないようだった。
そこへリンとマルスが加勢する。
「ウェイン、この狼の魔物は俺達が相手をする。
お前は魔人に専念しろ。」
フェイがそう言った。
ウェインはその言葉を聞いて頷く。
ウェインは再び体から衝撃波を放つと、足をからめていた黒いイバラを吹き飛ばした。
魔人は再びウェインの心臓めがけて剣を突いてくる。
ウェインは大剣でそれを受け流すと、魔人の体に斬りつけた。
ウェインに斬りつけられ、ぐらつく魔人。
ウェインはさらに魔人の体に斬りつけた。
魔人は苦しそうにしながらも剣を振ってくる。
ウェインと魔人の斬り合いが続いた。
一方、フェイ、リン、そしてマルスは狼の魔物と闘っていた。
狼の魔物は三つの口をあけて炎の球を吐き出した。
三人はそれをかわすと、フェイは狼の魔物の真ん中の頭に飛び蹴りを放ち、リンは狼の魔物の体にパンチを何発も打ち込み、マルスは狼の魔物の足に斬りつけた。
しかし三人の攻撃は、ほとんど狼の魔物には効いていないようだった。
狼の魔物はフェイめがけて襲いかかってきた。
その動きは素早く、フェイは間一髪でかわした。
そしてリンが狼の魔物の頭の後ろに向かって飛び膝蹴りを放った。
マルスは狼の魔物の体に斬りつける。
狼の魔物は大きく吠え、今度はマルスに向かって襲いかかってきた。
狼の魔物の巨大な牙がマルスに迫る。
マルスは剣でその牙を何とか受け流すと、狼の魔物の顔に斬りつけた。
狼の魔物は怒って、マルスに噛みつこうとする。
そこへフェイが狼の魔物の体に強烈なパンチを放った。
ドスン!という低い音が響く。
狼の魔物は少しよろめいた。
そしてリンも狼の魔物の真ん中の顔にパンチと蹴りを放った。
狼の魔物は少し苦しそうな声をあげた。
だんだんと三人の攻撃が効き始めたようである。
狼の魔物がリンに襲いかかる。
リンは上へジャンプしてそれをかわし、狼の魔物の真ん中の頭に肘打ちをくらわした。
マルスは狼の魔物の左側の首に斬りつけた。
狼の魔物が苦しそうな声をあげる。
そこへフェイが強烈なパンチを何発も狼の魔物の体に打ち込んだ。
ドスン!という低い音が何度も響く。
狼の魔物はたまらず倒れ込んだ。
そして真ん中の頭にフェイが強烈なパンチを打ち込み、左側の頭にマルスが剣を突き立て。右側の頭にリンが何発も蹴りを放った。
狼の魔物は動かなくなり、砂のように崩れ去ってしまった。
三人は狼の魔物を倒した。
ウェインの方はまだ魔人と斬り合いを続けていたが、どう見てもウェインの方が優勢だった。
ウェインの大剣が、何度も魔人の体を斬りつける。
魔人はたまらず後退した。
「これでとどめだ!」
そう言ってウェインが魔人に斬りかかろうとした時、ウェインの懐から地獄の門の鍵の地図が落ちた。
魔人はそれを見逃さなかった。
魔人は何とかウェインの大剣を防ぐと、すぐに地獄の門の鍵の地図を拾い上げた。
そこへウェインが魔人に斬りかかる。
すると魔人は体を黒い霧に変えて、ウェインの大剣から逃れた。
「地獄の門の鍵の地図は手に入れた。
出来ればその封印を解く石も欲しかったが、とりあえずはこれだけでいい。」
魔人はそう言うと、地獄の門の鍵の地図を持ったまま、黒い霧となって逃げて行った。
「何てこった・・・。」
それを見いていたフェイが呟いた。
しかしウェインは動じていなかった。
ウェインは大剣を背中に戻すと、いつも通りの顔に戻り、体を覆っていた光の膜も消え、大剣の黄金の光も消えた。
「どうするんだ、ウェイン。
魔人に地獄の門の鍵の地図を奪われてしまったぞ。」
マルスが焦ったように言う。
ウェインは魔人が逃げ方を見ながら言った。
「地獄の門の鍵の地図の内容ならもう頭に入っている。
それに地獄の門の鍵の封印を解く石は奪われてはいない。
そこまで焦ることじゃない。」
ケイトはウェインに近寄って、聖者の腕輪でウェインの傷を治した。
「これからどうするんですか、ウェインさん。」
ケイトは尋ねた。
「予定通り地獄の門の鍵のある塔を目指す。
魔人が地獄の門の鍵の地図を手に入れても、その封印を解く石がなければ地獄の門の鍵は手に入らないからな。
地獄の門の鍵のある塔を目指せば、魔人もそこへやって来るだろう。」
ウェインはそう言ってまた先を歩き始めた。
フェイ達もそれについて行く。
ケイトは魔人に地獄の門の鍵の地図を奪われて、本当に大丈夫だろうかと心配になった。
ケイトは魔人が去って行った方を見て、不安に思いながらもウェイン達と旅を続けた。

竜人戦記 第四十五話

  • 2010.09.20 Monday
  • 09:21
 地獄の門の鍵に関する神殿にやって来ると、そこにはエリーナがいた。
エリーナはマリーンに闘いを挑んで来た。
もうそろそろマリーンに追われるのはうっとうしくなったと言って、鞭を振ってきた。
鞭を振ってくるエリーナに、マリーンは弓矢を構えて応戦した。
エリーナの鞭をかわし、矢を放つが、マリーンの矢もかわされてしまった。
エリーナは連続で鞭を振ってくる。
マリーンは後ろに飛んでそれを回避した。
そして連続で三本の矢を放った。
エリーナはマリーンの放った全ての矢を鞭で叩き落としてしまった。
「マリーン、あなたじゃ私に勝てないわ。」
そう言いながらエリーナはマリーンに距離を詰め、鞭を振ってくる。
マリーンはそれをしゃがんでかわし、近距離から矢を放った。
エリーナはそれをかわそうとしたが、矢はエリーナの左肩をかすめた。
マリーンが次の矢を構える。
その間にエリーナは二回鞭をふってきた。
一回目の鞭はかわしたが、二回目の鞭を右足にくらって、マリーンの白い肌から赤い血が流れる。
マリーンは鞭をくらった右足に強烈な痛みを感じたが、それを我慢して次の矢を放つ。
エリーナはそれをかわすと、連続で鞭を振ってきた。
マリーンはその鞭をかわきれず、エリーナの鞭をくらってしまった。
マリーンの体を赤い血が流れる。
マリーンは鞭のダメージで、思わず倒れ込んだ。
「これでお終いね。」
倒れているマリーンに、エリーナが鞭を振ってくる。
その瞬間、マリーンの体が宙に浮いて、エリーナの鞭をかわした。
エレンがマリーンの体を宙に浮かせたのだ。
「マリーン、私も一緒に闘ってあげる。」
エレンはそう言うと、両手を広げた。
すると神殿の部屋が、一瞬にして広い草原の風景に変わった。
「これは、一体何?」
エリーナが戸惑う。
エレンが幻覚を使っているのだ。
マリーンは戸惑って無防備になったエリーナに、矢を放った。
それに気付いたエリーナは、とっさに体を捻って矢をかわそうとしたが、矢はエリーナの右腕に命中した。
「く・・・、これは幻覚ね。」
エリーナは言った。
「マリーンにこんな力はない。
そこのフェアリーがやっているのね。」
エリーナはエレンに向かって鞭を振ろうとした。
しかしその瞬間、エレンの姿が消えた。
マリーンは思った。
そう言えばエレンは自分の姿を消す魔法が使えるのだと。
「どこに行ったの!」
エリーナが叫びながらエレンを捜す。
マリーンはその間にまた矢をはなった。
矢はエリーナの右足に命中した。
「この!
目障りなフェアリーめ!」
エリーナはそう言いながらもマリーンに向かって鞭を振ってくる。
しかし鞭を持つエリーナの右腕には矢が刺さっている。
エリーナの鞭にいつものスピードはなかった。
マリーンは余裕でエリーナの鞭をかわすと、連続で矢を二本放った。
エリーナはそれをかわそうとしたが、右足にマリーンの放った矢が刺さっているので、動きは鈍かった。
エリーナはマリーンの放った二本の矢のうち、一本はかわしたが、もう一本は左肩に命中した。
エリーナはたまらず後退した。
「マリーン、調子に乗るんじゃないわよ。」
そう言うとエリーナは体に刺さった矢を全て抜き、何か呪文のようなものを唱え始めた。
するとエリーナの傷が癒えていった。
その間にエレンも魔法を使って、もマリーンの傷を治していた。
マリーンとエリーナは、お互い全く傷の無い、闘いの始めの状態と同じになった。
「ここからが本番よ。」
そう言ってエリーナは鞭を振ってくる。
マリーンはそれを何とかかわして矢を放った。
しかしエリーナはその矢をかわすと、マリーンめがけて連続で鞭を振ってきた。
マリーンはまたエリーナの鞭をくらい、倒れ込んでしまった。
それと同時に、エレンの幻覚も解けたようで、部屋は元の姿に戻った。
「マリーン!」
姿を現したエレンがマリーンの元へ飛んでくる。
そこへ、エレンめがけてエリーナが鞭を振った。
「危ない!」
マリーンは咄嗟にエレンをかばった。
マリーンの背中にエリーナの鞭が当たる。
「うぐう!」
苦しさのあまり、マリーンは声をあげた。
「マリーン、しっかりして!」
エレンがマリーンの体をゆさぶる。
そこへエリーナが近づいて来る。
「マリーン、そのフェアリーと一緒に、あの世へ送ってあげるわ。」
そう言ってエリーナは大きく鞭を振りかぶった。
その瞬間、マリーンは持っていた弓をエリーナに投げつけた。
一瞬たじろぐエリーナ。
マリーンは矢を直接手で持って、エリーナの体をめがけて突き刺そうとした。
エリーナ右腕でそれを防ごうとする。
マリーンの握っていた矢は、エリーナの右腕に突き刺さった。
エリーナはマリーンを突き飛ばし、後ろへジャンプした。
エリーナは右腕に刺さった矢を抜いた。
その間に、エレンが魔法を使ってマリーンの傷を治してくれた。
マリーンは弓を拾い上げ、矢を構える。
そこへエリーナが鞭を振ってくる。
しかし鞭を持っている右腕を怪我しているエリーナの鞭は遅かった。
マリーンはエリーナの鞭をかわすと、矢を放った。
エリーナは横に飛んでそれをかわした。
エリーナは再び呪文を唱えて右腕の傷を癒そうとする。
しかし、マリーンはエリーナが呪文を唱え終わる前に矢を放った。
呪文を唱えるのを中断して矢をかわすエリーナ。
そしてマリーンは連続で三本の矢を放った。
そのうちの一本がエリーナの左足に命中した。
エリーナは連続で鞭を振ってくる。
しかし鞭を持つ右腕に怪我を負ったエリーナの鞭は遅かった。
マリーンはそれを余裕でかわすと、再び連続で二本の矢を放った。
そのうちの一本はエリーナの左肩に、もう一本は左腕に命中した。
「このお!」
悔しそうな声を出すエリーナ。
マリーンは次の矢を放った。
それをかわしたエリーナは、また呪文を唱えようとした。
しかしマリーンはそれをさせない。
エリーナにめがけて矢を放つ。
「くっ!」
エリーナはそう言って呪文を唱えられずに矢をかわした。
闘いはマリーンに有利だった。
エリーナは体に刺さった矢を全て抜くと、「これ以上の闘いは私に不利ね。」と言った。
「降参するの?」
マリーンは矢を構えたまま言った。
するとエリーナは笑いながら、「そんなわけないでしょ。」と言った。
エリーナは右手を前に突き出した。
そしてそこから黒い霧を放った。
部屋が黒い霧で満たされて何も見えなくなる。
「今日はこれくらいにしておきましょう。
次に闘う時は必ずあなたを殺してあげる。」
黒い霧の中でそう言うエリーナの声が聞こえた。
黒い霧で何も見えないせいで、マリーンとエレンはエリーナを見失った。
そしてだんだんと黒い霧が晴れてくると、もうそこにはエリーナの姿はなかった。
「逃げられた・・・。」
マリーンはそう呟いた。
「まだだよ。
まだ私の力で捜せる。」
そう言うとエレンは気を集中させて目を閉じた。
きっと遠くを見る魔法を使ってエレンを捜しているのだろう。
エレンが目を開けると、「西だよ!西に逃げた!」と言った。
マリーンはエリーナを追う為に、神殿の部屋を出た。
そして池のほとりに戻ると、ベッカルが岩の上に座っていた。
「随分長い間神殿の中におったな。
何をしておったんじゃ。」
ベッカルが尋ねてくる。
マリーンはことの経緯を説明した。
「何!
そうじゃったのか!」
そう言って岩から立ち上がると「さっき神殿から一人のエルフが出て来て西に向かって走って行ったんじゃ。
あれがお前さんの妹なんじゃな。
そうと知っておればわしが止めたのに。」
ベッカルは悔しそうに言った。
「ベッカルさん、私は今から妹を追います。
ここまで案内してくれてありがとうございました。」
マリーンはベッカルにそう言い、エリーナのあとを追おうとした。
すると「ちょっと待て!」と言ってベッカルがマリーンを呼びとめた。
ベッカルはマリーンの方に歩いて来る。
そして自分の懐をごそごそやって、何かを取り出した。
「役に立つかどうか分からんが、持って行け。」
そう言ってベッカルが渡そうとしてくれた物は、赤い宝石のついた指輪だった。
「これは強者の指輪といってな。
一時的にではあるが、使った者の戦闘力が増すんじゃ。」
ベッカルは強者の指輪をマリーンに手渡した。
「いいんですか、こんな物をもらって?」
マリーンは言った。
「かまわんよ。
どうせわしには必要のない物じゃ。」
そう言ってベッカルは二コリと笑った。
「ありがとうございます。」
マリーンはお礼を言い、強者の指輪を右手の指にはめた。
「気をつけて旅をするんじゃぞ。」
ベッカルにそう言ってもらい、マリーンは「はい。」と頷いた。
「じゃあこれでわしは帰るからの。」
そう言ってベッカルは去って行った。
マリーンはベッカルの背中をしばらく見送ったあと、エレンを見て言った。
「さあ、エリーナを追いましょう。」
エレンは頷き、マリーン達はエリーナの逃げた西に向かって進んだ。
エリーナを追う途中、マリーンはエレンに向かって言った。
「ありがとう。
あなたのおかげで随分助かったわ。」
「えへへー。
私って役に立つでしょ。」
エレンは嬉しそうに言った。
「ええ、あなたがいなかったら、私はエリーナにやられていたかもしれない。
本当に助かったわ。」
エレンはマリーンの周りを飛びながら、嬉しそうにしていた。
「でもマリーン。
次にあの妹と闘ったら、勝つのは難しいんじゃないの?」
エレンはそう言ってきた。
「そうね。
エリーナは強敵だわ。
私だけじゃ勝てないかもしれない。
エリーナは魔人によって力を与えられている。
彼女はどんどん強くなっているわ。」
マリーンは思った。
次にエリーナと闘ったら、今度は本当にやられてしまうかもしれない。
しかしだからと言ってエリーナを止める旅をやめるわけにはいかない。
マリーンは、エリーナがまだ魔人と繋がっていることを悲しく感じていた。
魔人はエリーナを利用している。
そう思うと、魔人に対する怒りがわいてきた。
エリーナをダークエルフに変えてしまった魔人。
何としても魔人は許せない。
しかし、魔人を倒す役目を背負っているのは竜人だ。
マリーンは早くウェイン達が魔人を倒してくれることを願った。
「今度また妹と闘うことがあったら、私も今日みたいに、力になってあげるからね。」
エレンはマリーンの肩に乗ってそう言った。
「頼りにしているわ。」
「うん、任せてよ!」
エレンは胸を張って言った。
マリーンはそんなエレンを見て、少し心強く思った。
エリーナはそう遠くには逃げていないはずだ。
また近いうちに闘うことになるかもしれない。
そう思っていると、エレンが尋ねてきた。
「マリーンはさ、もし妹を倒したら、そのあとどうするつもりなの?」
「さあ、どうしようかしらね。」
マリーンは曖昧に笑って答えた。
もしエリーナを倒したら、そのあとはどうするか。
そんなことは今は全く考えていなかった。
今はただ、エリーナを止めることだけを考えていた。
「マリーンはもし妹を倒したら、誰かのお嫁さんになるとか考えないの?」
エレンの唐突な質問に、マリーンは返事に困ってしまった。
「そうね。
もし私をお嫁さんにもらってくれる人がいたら、それもいいかもしれないわね。」
マリーンは笑って答えた。
自分が誰かのお嫁さんになる。
今まで考えもしなかったことだった。
しかし今マリーンの頭にあるのは、やはりエリーナを止めるということだけだった。
マリーンとエレンは、エリーナを追って西へと旅を続けた。

竜人戦記 第四十四話

  • 2010.09.19 Sunday
  • 09:22
 ウッズベックを出航した船は、二週間かけて無事にカリオンの街に到着した。
マリーン達は船長と船員達に船に乗せてくれたお礼を言い、船を降りた。
港に降り立ったマリーンに、カインが駆け寄って来た。
カインはマリーンの前まで来ると、二コリと笑いながら言った。
「マリーン、二週間の間、一緒に船旅が出来て嬉しかったよ。」
カインは少し顔を赤くした。
「私もあなたと船旅が出来て嬉しかったわ。」
マリーンは微笑んでそう言った。
船旅の初日、カインから付き合ってくれないかと告白されて、マリーンは断った。
マリーンはカインの気持ちを嬉しく思ったが、エリーナを追うという使命を背負っている為、彼の気持ちにはこたえられなかった。
マリーンがカインの告白を断ったあと、カインは友達のようにマリーンに接してきた。
短い船旅の中、マリーンはカインと楽しく会話をしていた。
まるで弟が出来たような感覚だった。
「マリーン。
君の目的は何かは分からないけど、それが叶うように祈っているよ。」
カインはそう言って笑った。
「ありがとう。
あなたと色々とお話が出来て楽しかったわ。」
マリーンがそう言うと、カインは握手を求めてきた。
マリーンはカインの手を握った。
カインはしばらくマリーンを見つめていた。
そしてふうっと息を吐き出すと、「それじゃあ。」と言ってマリーンの手を離し、船に戻っていった。
去り行くカインに、マリーンは手を振った。
カインも振り向き、マリーンに手を振った。
マリーンは和やかな気持ちで、カリオンの街に入った。
「ねえ、マリーン。
やっぱりカインに愛の告白をされたんでしょ。」
エレンがマリーンの目の前を飛びながらそう言ってくる。
「だから、それは秘密だってば。」
マリーンは笑って誤魔化した。
「きっと愛の告白をされたんでしょ。
そうに決まってるわ。
マリーンって美人だし。
ねえ、何て言われて告白されたの?」
「さあね。」
マリーンはエレンの質問を曖昧に誤魔化し、カリオンの街を歩いた。
「ねえ、教えてよー。」
エレンはそう言いながらマリーンの肩にしがみついてくる。
マリーンはそれに対して笑って返しただけだった。
マリーンは顔を引き締め、クルックの言っていた言葉を思い出した。
確かクルックは、カリオンの街にベッカルというドワーフがいると言っていた。
そしてそのベッカルが地獄の門の鍵に関する神殿について詳しく知っていると言っていた。
マリーンは街人をつかまえ、ベッカルというドワーフの家はどこかと尋ねた。
その街人は案の定、エレンを見て驚いてから言った。
「ベッカルの家ならすぐそこにあるよ。
あの七色のカラフルな家だ。」
マリーンは街人が指差した方を見た。
そこには確かに七色のカラフルな家があった。
家の前にはガラクタがたくさん置かれていた。
マリーンは街人にお礼を言い、その七色のカラフルな家のドアをノックした。
すると、しばらくしてから「何じゃい。」と言って、立派な顎鬚をたくわえた年老いたドワーフが出て来た。
「私は、エルフのマリーンといいます。
こっちはフェアリーのエレン。
あなたがベッカルさんでしょうか?」
マリーンは尋ねた。
「ほう、フェアリーか。
珍しいな。」
そのドワーフはエレンをしげしげと見つめたあと、「わしがベッカルじゃ。」と答えた。
「実はドワーフのクルックさんから、あなたのことをお聞きしてやって来ました。」
そう言うと、「おお、クルックか!懐かしいのお。」とベッカルは嬉しそうに言った。
「クルックは元気にしとったか?」
ベッカルが顎鬚を触りながら尋ねてくる。
「はい。
とてもお元気です。」
「そうか。
それは何よりじゃわい。」
ベッカルは顔をほころばせた。
「それで、このわしに何の用じゃ?」
ベッカルがマリーンに尋ねてくる。
「はい。
実は私の妹がダークエルフでして。
それで地獄の門の鍵に関する神殿のことを知ってしまったんです。
彼女はそこにある地獄の門の鍵の地図と、その封印を解くという石を狙っています。
私は妹を止める為にやって来ました。
クルックさんが、その神殿のことならベッカルさんに聞けば詳しく知っていると言っていたものですから、こうしてお訪ねして来たんです。」
するとベッカルは「ふーむ。」と唸った。
そしてマリーンを見て言った。
「実は一ヶ月ほど前にな、竜人とその仲間がわしの所に訪ねて来てな。
それでその神殿に案内してやったんじゃよ。」
「竜人?」
マリーンが聞き返すと、ベッカルは頷いた。
きっとケイト達のことだと、マリーンは思った。
「それで、そのあとどうなったんですか?」
マリーンは勢い込んで尋ねた。
「うむ。
神殿の中には地獄の門の鍵の地図と、その封印を解く石を守る馬の騎士がおってな。
竜人はその馬の騎士に勝って、地獄の門の鍵の地図と、その封印を解く石を手に入れて地獄の門の鍵を見つける為に旅立っていった。」
「そうなんですか・・・。」
そう言ってマリーンは考え込んだ。
ケイト達はもう地獄の門の鍵を目指して旅をしている。
じゃあその神殿に行っても何も無いということだ。
それでもマリーンは、その神殿に行ってみようと思った。
「ベッカルさん。
その神殿はこのカリオンの街から西に三日ほどあるいた場所にあるんですよね?」
「そうじゃよ。」
ベッカルは頷いた。
「私、今からその神殿に行ってみます。
この街を出て真っすぐ西へ行けばいいんですよね?」
顎鬚を触りながら、ベッカルは頷いた。
「よかったら、わしが案内しようか?」
ベッカルはそう言ってくれた。
「いいんですか?」
そう聞き返すマリーンに、「どうせ暇じゃからかまわんよ。」とベッカルは言ってくれた。
「ありがとうございます。」
ケイトはお礼を言った。
「じゃあ旅の支度をしてくるからちょっと待っといてくれ。」
そう言ってベッカルは家の中へ引っ込んで行った。
そして旅支度を整えて出て来たベッカルとともに、マリーンはその神殿を目指した。
そうして神殿のある場所まで旅を続けること三日。
途中で何度か魔物に襲われたが、全てベッカルが倒してしまった。
クルックといい、ベッカルといい、ドワーフにはつわものが多いなとマリーンは思った。
そして目的地に着くと、近くの池には神殿とそこへ続く道があった。
「おかしいな?」
ベッカルは言った。
「神殿は普段は池の中に隠されていて、この岩の下のスイッチを押さんと現れんはずなんじゃが。」
ベッカルは不思議そうに言った。
「多分、私の妹のせいだと思います。
彼女は、クルックさんのお孫さんを人質にとって、この神殿のことを詳しく聞いていましたから。
もちろん岩の下のスイッチのことも知っています。」
「何と!」
ベッカルは驚いた声を出した。
「クルックの孫は無事なのか?」
「ええ、大丈夫です。」
マリーンがそう答えると、ベッカルはホッとした様子だった。
「神殿の中に入ってもいいですか?」
マリーンはベッカルに聞いた。
「かまわんよ。
ただ部屋の中央に行くと馬の騎士が現れるんじゃ。
その馬の騎士はとても手強い。
くれぐれも闘わんようにな。」
ベッカルにそう忠告され、マリーンは頷いた。
「じゃあわしはここで待っとるよ。」
ベッカルは岩の上に腰掛けた。
マリーンは神殿へと続く道を歩き、神殿の入り口まで来た。
そこで背筋に冷たいものを感じた。
これはエリーナの気だ。
エリーナがこの神殿の中にいる。
マリーンは気を引き締め、神殿の中へと入った。
すると部屋の中央にエリーナが立っていた。
「随分早く追いつかれちゃったわね。」
エリーナは笑いながらそう言った。
「エリーナ、ここで何をしているの。」
マリーンは強い口調で言った。
「何って、決まってるじゃない。
地獄の門の鍵の地図と、その封印を解く石を手に入れる為に来たのよ。
でももう遅かったみたいだけど。」
エリーナは部屋を見回して言った。
「ここにあった地獄の門の鍵の地図と、その封印を解く石は、竜人が持って行ったようね。」
エリーナはマリーンを見ながら言った。
「どうしてそのことを知っているの。」
マリーンは驚きながら尋ねた。
「実はさっきまで、ここに魔人がいたのよ。」
「魔人が!」
マリーンは思わず叫んでいた。
「私はウッズベックの街で魔人と会ったの。
それでこの神殿にことを教えたわ。
そして一緒にここまで来たのよ。
それで神殿に入って部屋の真ん中まで歩いてみると、部屋の奥に魔法陣が現れて、人間の上半身に馬の胴体と足をした騎士が現れたの。
魔人は言ったわ。
この馬の騎士を倒せばきっと地獄の門の鍵の地図と、その封印を解く石が手に入るだろうって。
その馬の騎士は、魔人に闘いを挑んで来たわ。
魔人の存在は許せんとか何とか言いながらね。」
エリーナはそう言い、腰につけていた鞭を右手に持った。
そして部屋を歩きながら続けて言った。
「あの馬の騎士、とても強かったわ。
魔人も結構手こずったのよ。
でも魔人は最終的には馬の騎士を殺してしまった。
そこで魔人は言ったの。
これで地獄の門の鍵の地図と、その封印を解く石が手に入るぞってね。
でも馬の騎士を倒しても、それは手に入らなかった。
魔人は、おかしい、こんなはずはないと言っていた。」
エリーナはそう言いながら鞭を一回振った。
「そこで魔人は気付いたのよ。
自分より先にこの馬の騎士を倒した奴がいるんだって。
そしてそいつが地獄の門の鍵の地図と、その封印を解く石を持ち去ったんだろうって。
馬の騎士はかり手強かったわ。
魔人が手こずるほどにね。
そしてそんな馬の騎士を倒せる奴は竜人しかいないって言ったのよ。
魔人はすぐにこの神殿を出て行って、竜人を探しに行ったわ。」
エリーナはそこまで言うと、もう一回鞭を振ってマリーンの正面に立った。
「エリーナ、あなたはまだ魔人と繋がっていたのね。」
マリーンは悲しい声で言った。
「そうよ。
魔人は私に力を与えてくれる。
その代わりに、私は魔人の役に立つことをしてあげる。
私達の関係は、うまくいっているわよ。」
エリーナはそう言って笑った。
「それにしても、マリーン。
フェアリーなんて珍しいものをつれているじゃない。
どこで見つけたの?」
そう言うエリーナに、エレンは「教えてあげないよーだ。」と言って舌を出した。
「生意気なフェアリーね。」
エレンは吐き捨てるように言った。
「ねえ、マリーン。
私そろそろあなたに追いかけられるのがうっとうしくなってきたわ。
ここであなたを殺してあげる。」
そう言ってエリーナは不敵に笑った。
「私もあなたを止めないといけない。
ここで決着をつけましょう。」
マリーンは弓矢を構えた。
対峙するマリーンとエリーナ。
「じゃあいくわよ、マリーン。」
そう言ってエリーナが鞭を振ってきた。
マリーンはそれをかわし、矢を放った。
エリーナもその矢をかわした。
マリーンは次の矢を構えた。
再び、マリーンとエリーナの闘いが始まった。




竜人戦記 第四十三話

  • 2010.09.18 Saturday
  • 09:36
 マリーンとフェアリーのエレンは、エリーナを追ってウッズベックという街に来ていた。
しかしもうこの街にエリーナがいないことは分かっていた。
ウッズベックの街からエリーナの気がしないのだ。
きっとエリーナは、ウッズベックの北の海を渡ったに違いない。
ドワーフのクルックが言っていた。
地獄の門の鍵に関する神殿は、カリオンの街から西に三日ほど歩いた場所にあると。
カリオンの街はウッズベックの北の海を渡った所にある街だ。
きっとエリーナはそこを目指したのだろう。
ウッズベックは港街だ。
だから港に行けば、カリオンの街に乗せて行ってくれる船があるかもしれない。
マリーンは港へと向かった。
「わあ、海だあ。」
エレンが海を見てはしゃぐ。
「エレンは海を見るのは初めて?」
マリーンは聞いた。
「うん。
そうだよ。
海って大きいのねえ。
どこまで続いてるんだろう。」
エレンはマリーンの肩に乗ってそう言っている。
「海は丸いのよ。
世界中の海は繋がっているの。」
マリーンがそう言うと、エレンは「嘘だあ。」と言って笑った。
「本当よ。
水平線をよく見てみなさい。
少し曲がっているでしょ。」
エレンは水平線をじっと見つめた。
「本当だ。
ちょっと曲がってる。
海って丸いんだね。」
エレンは驚くように言った。
それからマリーンは港を歩いていた一人の男性をつかまえて、カリオンの街に行く船がないか聞いてみた。
するとその男性はエレンを見て驚いていた。
「フェアリーなんて初めて見たよ。
本当にいるんだな。」
それから男性はマリーンの質問に答えてくれた。
「そこのデカイ船がもうすぐカリオンの街に出航するよ。」
男性は親切に教えてくれた。
「ありがとう。」
マリーンはお礼を言い、その大きな船に向かった。
「マリーン。
あの船に乗るの?」
エレンが尋ねてくる。
「そうよ。
きっとエリーナもこの港から海を渡ったはずだからね。」
マリーンは言った。
「私、船に乗るのも初めて。
ドキドキするね。」
エレンは嬉しそうに言った。
マリーンはエレンに微笑み返し、大きな船に出入りしている若い船員をつかまえて聞いてみた。
「あの、私達カリオンの街に行きたいんです。
あの船に乗せてもらえませんか?」
船員はエレンを見て驚き、「フェアリーだ。」と言ってじっと見つめていた。
「あの、そこの大きな船に乗せてもらいたいですけど。」
マリーンはもう一度言った。
すると船員はハッと我に返ったようになり、「ちょっと船長に聞いてみないと分からないなあ。」と言った。
「じゃあ船長さんに聞いてもらえませんか?」
マリーンはその船員をじっと見つめながら言った。
マリーンにじっと顔を見つめられ、顔を赤くした船員は「じゃあ聞いてみるよ。」と言って船に入って行った。
「船に乗せてもらえるといいね。」
エレンがマリーンの目の前を飛びながら言う。
「そうね。
何としても海を渡ってエリーナを追わなければならないから。」
マリーンは言った。
それから少しして船員が戻ってきた。
「あの、大丈夫だそうです。
船長が船に乗ってもいいって。」
船員はまだ顔を赤くしながら言った。
「ありがとう。」
マリーンは船員に微笑んだ。
船員は照れたように顔を伏せたあと、船に戻って言った。
「やった!
これで船に乗れるね。」
エレンが喜んで言う。
マリーンはその言葉に頷き、大きな船に乗った。
船はマリーン達が乗り込んで少ししてから出航した。
フェアリーのエレンは、船の中でも船員達から珍しそうに見られていた。
エレンの周りに船員達が集まる。
エレンは集まった船員達に愛嬌を振りまいていた。
「いやあ、フェアリーなんて本当にいるんだな。」
「可愛いもんだな。」
船員達が口々にエレンを見た感想を言っている。
マリーンはそんな光景を、少し離れた場所から見ていた。
すると、マリーンが船に乗せてくれないかと頼んだ若い船員が、手に二つカップを持ってマリーンの元へやって来た。
その若い船員は顔を赤らめながら、「コーヒーだけど、よかったらどうぞ。」と言って持っていたカップの一つをマリーンに手渡した。
「ありがとう。」
マリーンは微笑んで受け取った。
若い船員はマリーンと並んでコーヒーを飲み始めた。
「あなたはフェアリーを見にかないの?」
マリーンは若い船員に尋ねた。
「いや、その、何ていうか。
あなたとお話ししたくて。」
若い船員は言った。
「私と?」
マリーンはコーヒーを一口飲んで言った。
若い船員はもじもじしながら、マリーンに聞いてきた。
「あの、あなたの名前は何ていうの?」
若い船員はマリーンの顔を見ずに、カップを見つめて言った。
「マリーンよ。
あなたは?」
「マリーンか。
いい名前だだね。」
そう言ったあと、若い船員は自分の名を名乗った。
「僕はカインっていうんだ。
まだ見習いの船員だけどね。」
カインはそう言うと、コーヒーを一口飲んだ。
「あなたもいい名前だわ。」
マリーンは微笑みながら言った。
「本当に?」
カインは嬉しそうにして言った。
「あの、マリーンはどうしてカリオンの街に行くんだい?」
カインは尋ねてきた。
「ちょっと事情があってね。
妹を追っているの。」
「へえ、そうなんだ。」
カインは次の言葉を探すように宙を見た。
「マリーンはエルフだよね。
僕、エルフを見るのは二回目なんだ。」
カインは言った。
「そうなの?
一度目はいつ見たの?」
マリーンはコーヒーに口をつけながら尋ねた。
「うん。
このついこの前のことなんだけどね。
鞭を持ったとても美人なエルフを見たんだ。
彼女もカリオンに行く船に乗っていたみたいだけどね。」
エリーナだ。
マリーンは思った。
エリーナはつい最近この海を渡って行ったのだ。
「マリーン、どうしたの?
急に真剣な顔になって?」
マリーンの顔を見ながら、カインが尋ねてくる。
「いいえ、何でもないわ。」
マリーンは笑って誤魔化した。
エリーナはもうカリオンの街に到着しているだろう。
そして地獄の門の鍵に関する神殿に向かっているかもしれない。
マリーンはコーヒーの入ったカップを眺めた。
「あ、あのさ、マリーン。」
カインが顔を赤くしながら尋ねてくる。
「何かしら?」
マリーンはカインを見つめて言った。
カインは照れたようにマリーンから目をそらした。
「マリーンは、その、お付き合いしている人とかいるの?」
「いいえ、いないわよ。」
マリーンはそう言ってコーヒーを飲んだ。
マリーンは分かっていた。
カインが自分に好意を持っていることを。
そしてマリーンは思った。
もしカインが付き合ってくれないかと告白してきたら、いかに彼を傷付けないように断ろうかと。
自分に好意を持ってくれるのは嬉しい。
しかし今のマリーンには男性と付き合っている余裕はなかった。
エリーナを追うことで精一杯なのだ。
カインは爽やかでいい青年だ。
彼の気持ちを傷つけるようなまねはしたくない。
マリーンはエレンの周りにいる船員達を見ながらそう考えていた。
「あのさ、マリーン。」
カインがコーヒーを一口飲み、それからマリーンをじっと見て言った。
「その、あの、もし付き合っている人がいないなら、その、あの、僕じゃダメかな?」
きた、とマリーンは思った。
「僕は今は見習いの船員だけど、いつか自分の船を持つことが夢なんだ。
出来たら、マリーンにもその船に乗って欲しいなあ、なんて思ったりして・・・。」
カインは顔を真っ赤にして俯いた。
マリーンは微笑みながらカインを見た。
「それってつまり、私の彼氏になりたいってことかしら?」
マリーンは言った。
カインは小さく頷く。
「僕は今は頼りないけど、いつか立派な男になってみせる。
その、僕じゃダメかな?」
カインは顔をあげ、真剣な眼差しでマリーンを見つめた。
マリーンもカインの顔を見て、その真剣な眼差しを受け止めた。
そして言った。
「カイン。
あなたはとても優しくて、爽やかないい青年だと思うわ。
けど、今の私には誰かと付き合うっていう余裕がないの。
あなたの気持ちはとても嬉しいわ。
でも・・・。」
マリーンはそこで一旦言葉をくぎり、一呼吸置いた。
「でも、ごめんなさい。
あなたの気持ちにはこたえられないわ。」
マリーンはカインの目をじっと見て言った。
なるべくカインを傷付けないように断るつもりが、結局普通の断り方になってしまった。
カインは顔を伏せ、しばらく黙り込んでいた。
そして顔をあげ、マリーンを見た。
「そうか。
ちゃんと返事を聞かせてくれてありがとう。」
カインは無理矢理笑顔を作って言った。
マリーンは微笑んでカインを見た。
「あなたは素晴らしい青年だわ。
そのうち、きっと私なんかよりいい彼女ができるわよ。」
こんなフォローしか出来ない自分に、マリーンはちょっと悲しくなった。
「いや、いいんだ。
慰めてくれなくても。
僕はマリーンに一目惚れした。
けど、マリーンには何かやるべきことがあって、僕の気持ちにはこたえられない。
それでいいんだ。」
カインはそう言うと、「ちゃんと僕の気もちにこたえてくれてありがとう。」と言った。
マリーンは顔を伏せ、「ごめんなさい。」と呟いた。
「おい、カイン!
なにさぼってやがる。
こっちを手伝え!」
先輩の船員から呼ばれて、カインは「はい、すぐ行きます!」と答えた。
「いつか自分の船を持てるといいわね。」
先輩の船員の方に走って行くカインに、マリーンはそう言った。
「うん。
必ず自分の船を持ってみせるよ。
この船に負けないくらいのね。」
カインは笑顔でそう言い、先輩の船員の待つ方へと走って行った。
マリーンは海を眺めた。
太陽の光を反射してキラキラ輝いている。
そこへエレンがやって来た。
「マリーン、何してたの。
ずっとあの若い船員と話してたわね。」
エレンは悪戯っぽく笑って言った。
「見てたの?」
マリーンは言った。
「うん。
もしかして愛の告白とかされた?」
エレンが笑いながら聞いてくる。
「それは秘密よ。」
マリーンはそう言って微笑み、キラキラと輝く海を見つめていた。





竜人戦記 第四十二話

  • 2010.09.17 Friday
  • 09:19
 トリスという人間の学者につれられて、ケイト達は白い建物へと入った。
そこに現れたのは、地獄の門の鍵の地図と、その封印を解く石を手に入れる為に闘った馬の騎士の双子の兄だった。
前回の馬の騎士は相当手強かった。
しかし今度の相手はそれより強いとトリスは言った。
鎧を着た人間の上半身に、馬の胴体と足、そして手には槍を持っている。
その姿は前回闘った馬の騎士と変わらない。
しかしケイトとは感じていた。
この馬の騎士は、前回闘った馬の騎士より強い気を持っていると。
馬の騎士の強さを知っているウェインは、最初から本気で挑むつもりのようだった。
ウェインの体を光の膜が覆い、大剣は黄金の光を放ち始め、その顔立ちは竜と人を混ぜたようになった。
ウェインはケイト達に向かって言った。
「こいつの相手は俺がする。
手は出すな。」
そう言うとウェインは馬の騎士に斬りかかった。
馬の騎士は槍でウェインの大剣を受け止める。
大剣と槍がぶつかる大きな音が響いた。
ウェインは大剣を振りかざして連続で斬りつける。
馬の騎士はそれを余裕を槍で受けていた。
馬の騎士はウェインの大剣を槍で受け流すと、ウェインの心臓めがけて槍を突いてきた。
その槍の突きは凄まじく速く、ウェインはなんとか体をひねって回避しようとしたが、かわしきれずに右肩に槍をくらってしまった。
それでもウェインはひるまずに大剣で斬りつける。
馬の騎士はそれを受け流しながら、隙を見てウェインに槍を突く。
馬の騎士の槍によって、ウェインは左腕と右足を傷つけられた。
ウェインは一旦後ろにジャンプして、右手を出して光の球を放った。
馬の騎士は片手で光の球を受け止めると、光の球を握り潰してしまった。
するとウェインは大剣を下から上へ大きく振り上げた。
炎の竜巻が発生して、馬の騎士を襲う。
馬の騎士は槍を振りまわすと、強烈な衝撃波を放って炎の竜巻を消し去った。
ウェインは再び馬の騎士に距離をつめて斬りかかる。
馬の騎士は槍を突いて応戦する。
ウェインの大剣は馬の騎士の槍によって阻まれ、馬の騎士の槍はウェインの大剣の隙間をぬってウェインの体を突いてくる。
どう見ても馬の騎士の方が優勢だった。
ケイトは強く十字架を握ってウェインの闘いを見ていた。
フェイ達も心配そうに見ている。
トリスは表情を変えないまま、黙ってウェインと馬の騎士の闘いを見ていた。
ケイトは祈るような気持ちでウェインの闘いを見ていた。
どうかウェインさんが勝ちますように。
そしてどうかウェインさんが無事でありますように。
ケイトはそう願いながら闘いを見ていた。
ウェインが馬の騎士の真上にジャンプした。
そして大剣を振りかぶって馬の騎士に斬りかかろうとした。
その時だった。
馬の騎士の槍が、ウェインのお腹を貫いた。
「ぐはあああ!」
ウェインは苦しそうな声をあげて血を吐いた。
馬の騎士は、ウェインを突きさしたまま槍を振りまわした。
馬の騎士の槍から体が抜けて、ウェインは壁に叩きつけられた。
そこへ馬の騎士が襲いかかる。
ウェインは馬の騎士の槍を防ごうとした。
しかし馬の騎士の槍の方が速かった。
ウェインの右腕は馬の騎士の槍に突きさされた。
大剣を握っていたウェインの右腕に槍が突きささり、ウェインは大剣を落としてしまった。
そこへ馬の騎士の槍が襲いかかる。
狙いは心臓だった。
ウェインは咄嗟にかわそうとしたが、かわしきれずに、右胸に馬の騎士の槍をくらってしまった。
右胸を馬の騎士の槍で突かれ、ウェインはまた苦しそうな声をあげて血を吐いた。
ウェインは両膝をついて苦しそうにする。
馬の騎士は再びウェインのお腹に槍を突きさすと、そのまま槍を持ち上げた。
「ぐわあああ!」
ウェインが苦しさのあまりに叫ぶ。
ケイトは泣きそうになっていた。
このままではウェインがやられてしまう。
その時思った。
聖者の首飾りを使えば、光のシールドがウェインを守ってくれるのではないかと。
ケイトは聖者の首飾りを握った。
しかしそこでふと思った。
ウェインは馬の騎士の相手は自分一人でするから手を出すなと言った。
今ウェインを助けたら、それはウェインのプライドを大きく傷つけるのではないかと。
いや、そんなことを考えている場合じゃない。
ケイトは聖者の首飾りに願った。
ウェインを守って欲しい。
聖者の首飾りが光り出す。
しかしそこでトリスが言った。
「それは聖者の首飾りだね。
彼を守るつもりかね?」
ケイトは頷いた。
するとトリスは言った。
「この闘いは竜人と馬の騎士の一騎打ちだ。
助太刀はやめた方がいい。」
そう言われてケイトは聖者の首飾りから手を離した。
聖者の首飾りの光が消える。
ケイトはウェインを助けたい気持ちでいっぱいだった。
しかしそれを我慢した。
これはウェインの闘いだ。
ケイトが手を出すことじゃない。
ケイトは涙を流した。
涙を流しながら、ウェインの闘いを見た。
どうかウェインが無事でありますように。
ケイトは十字架を握って強く願った。
そのケイトの肩に、リンが優しく手を置いた。
ケイトはリンの顔を見た。
リンは真剣な顔をして、「大丈夫だよ。ウェインはきっと勝つから。」と言った。
ケイトは肩に置かれたリンの手に触り、「うん。」と言って頷いた。
そしてケイトは涙を拭き、ウェインを見た。
ウェインは馬の騎士の槍にお腹を突きさされたまま持ち上げられていた。
苦しそうな顔をしているウェイン。
馬の騎士は槍を上へと突き上げた。
ウェインの体が槍から抜け、宙を舞う。
そして床に落ちた。
ウェインは血を吐きながら倒れていた。
そこへ馬の騎士が迫る。
馬の騎士はウェインの左肩を突いた。
苦しむウェイン。
馬の騎士は倒れいるウェインどんどん突いていった。
ウェインの体は馬の騎士の槍によって痛めつけられていく。
そして馬の騎士は槍を大きく上に持ち上げた。
狙いはウェインの心臓だった。
「ウェインさん、負けないで!」
ケイトは叫んでいた。
馬の騎士の槍がウェインの心臓めがけて迫ってくる。
もうダメだ。
ケイトはそう思って目を閉じた。
そしてドスン!という音がした。
きっとウェインが心臓を槍で突かれた音だと思った。
ケイトはまた涙を流しながら、目を開けてみた。
すると、ウェインの心臓には槍は刺さっていなかった。
その代わりに、馬の騎士の体にウェインの大剣が食い込んでいた。
これはどういうこと?
ケイトは思った。
大剣はウェインの手から落ちて床あったはずなのに。
ウェインは右手を馬の騎士に向けていた。
そしてウェインは「はあああ!」と気を込めるように言った。
すると馬の騎士の体に食い込んでいたウェインの大剣が、馬の騎士の体を離れてウェインの右手まで飛んできた。
ウェインは飛んできた大剣を握った。
その時ケイトは思った。
もしかしてウェインの大剣は手から離れても、自分の意思で操れるんじゃないかと。
ケイトのその予想は当たっていた。
馬の騎士が倒れているウェインめがけて槍を突いてくる。
ウェインは右手に握っていた大剣を、再び気合の声とともに馬の騎士に向けた。
すると大剣はまるで自分の意思を持っているかのように、馬の騎士の胸をめがけて飛んでいった。
そして馬の騎士の槍がウェインを突くより速く、ウェインの大剣が馬の騎士の胸に突きささっていた。
「ぐぬううう!」
苦しそうな声をあげて後退する馬の騎士。
ウェインは何とか立ち上がり、馬の騎士の胸に刺さった大剣を掴んだ。
そしてそれを大きく横に振った。
馬の騎士の胸は大きく斬られて、槍を持っていた右腕も斬り落とされてしまった。
ウェインはすかさず馬の騎士の体に斬りつける。
ウェインの大剣をまともにくらって、馬の騎士の体は大きく傷つけられた。
そしてウェインは馬の騎士の首に大剣を当てた。
「これ以上闘うなら、その首を斬り落とす。」
ウェインは馬の騎士に向かって言った。
すると馬の騎士は「ふふふ」と笑い、部屋の奥まで後退していった。
「見事な闘いだった。
竜人よ、この勝負、お前の勝ちだ。」
馬の騎士はそう言うと、自分が出て来た魔法陣の中へと戻って行った。
そしてウェインが斬り落として床に落ちていた馬の騎士の右腕も消えた。
馬の騎士が出て来た魔法陣は消えた。
すると部屋の中央に小さな魔法陣が現れ、そこに透明な小さな石が出てきた。
ウェインはその石を拾い上げた。
おそらくあれが岩の壁を消す石なのだろう。
ケイトはウェインの元に駆け寄り、聖者の腕輪を使ってすぐにウェインの怪我を治した。
「ウェインさん、無事でよかった。」
ケイトは泣きながら言った。
ウェインはケイトの顔を見て少し笑い、肩をポンと叩いてくれた。
「竜人よ、見事だった。」
トリスが言った。
「あの馬の騎士に勝つとは、さすがは竜人。
やはり強いな。」
トリスは感心したように言った。
「さっき君が拾った透明な小さな石が、岩の壁を消す石だ。」
トリスはウェインに向かって言った。
ウェインはその石を見ると、懐にしまった。
「いやあ、勝ててよかったな。」
フェイが安心したように言う。
「本当だよ、すごく心配したよ。」
リンも少し泣いていた。
「しかし手強い相手だったな。」
マルスが言った。
その通りだ。
ケイトは一瞬本当にウェインが死んだと思ったのだ。
しかしウェインは勝った。
そして無事だった。
そのことが、ケイトにとっては何よりも嬉しかった。
「もうこんな場所に用はない。
さっさと出よう。」
ウェインのその言葉を合図に、ケイト達とトリスは馬の騎士のいた白い建物をあとにした。
そしてケイト達はトリスの家に集まっていた。
「竜人よ。
君の強さはしっかりとこの目で見させてもらった。
満足したよ。」
トリスは言った。
ウェインは何も答えず、ただトリスを見ていた。
「これから君たちは地獄の門の鍵を見つけに行くのだろう。」
トリスが聞いてきた。
「はい。
魔人より先に見つけるつもりです。」
ケイトは答えた。
「ふむ。
だったらこれを渡しておこう。」
そう言ってケイトがトリスから渡されたのは鍵だった。
「これは何ですか?」
ケイトがトリスに向かって尋ねた。
「それは地獄の門の鍵が封印されている塔に入る為の鍵だ。
その塔には地獄の門の鍵を守る為、私が何人かの強力な見張りをつけている。
彼らに勝てば、地獄の門の鍵を手に入れられるだろう。」
トリスはそう言った。
「あの岩の壁を消す石も手に入ったことだし、さっさと旅を再開しようぜ。」
フェイが言った。
「そうだな。」
ウェインはそう言い、トリスの家を出て行こうとした。
「竜人よ、旅の無事を祈っているよ。」
トリスはウェインに向かって言った。
ウェインは少しだけ笑って頷き、トリスの家を出た。
「それじゃあ私達も行きます。」
ケイト達もトリスの家を出た。
「気をつけて旅を続けるんだぞ。」
後ろからトリスの声が聞こえてきた。
ケイトは振り向き、頷いてみせた。
ウェインが無事で本当によかった。
村を出てから岩の壁に向かうまで、ケイトはずっとウェインの顔を笑顔で見つめていた。

竜人戦記 第四十一話

  • 2010.09.16 Thursday
  • 09:34
 魔女の占い師がいた町から、旅を続けること三週間。
途中にあった村で一晩泊ったものの、あとはずっと野宿だった。
ケイト達は今、池のほとりで休んでいた。
「地獄の門の鍵のある所まで、あと一ヶ月って所だな。」
マルスが、池のほとりにある岩に背をあずけながら言った。
「まだ一ヶ月もあるのかあ。」
リンが宙を見て呟いた。
ケイトは澄んだ池の水を見ながら考えていた。
シェリーは近い未来、魔人が襲って来ると言っていた。
あれから三週間。
もうすぐ魔人が襲って来るのではないかと心配していた。
もし魔人が襲って来れば、ウェインが応戦するだろう。
しかし心配なのは、地獄の門の鍵の地図と、その封印を解く石を魔人に奪われはしないかということだった。
ケイトは張り詰めた表情で池を見つめていた。
「ケイト、どうしたの?
そんなに心配そうな顔をして。」
リンが近寄って尋ねてくる。
「うん。
シェリーの言ったことが気になっていたの。
シェリーは近い未来に魔人が襲って来るって言ってたわ。
あれから三週間。
もうすぐ魔人が襲って来るんじゃないかって思って心配なの。」
ケイトがそう言うと、フェイが笑いながら言った。
「そんなのただの占いだろ。
どうせ当たらねえよ。」
するとマルスも言った。
「俺もそう思うな。
そんなに心配することはないと思う。」
しかしケイトはそうは思っていなかった。
シェリーは魔女だ。
だから当然魔法も使える。
だからシェリーの占いも魔法によるものだとしたら、その占いは当たるのではないか。
ケイトはそう思っていた。
「ケイトは心配症だね。
きっと大丈夫だよ。」
リンが笑顔で言う。
「そうだといいんだけど。」
そう言いながらケイトはウェインを見つめた。
ウェインはケイト達の会話が聞こえているはずなのに、それには全く反応せず、ただ池を見つめていた。
「そろそろ休憩も終わりにして旅を再開しようか。」
そう言ってマルスが立ち上がる。
ケイト達はマルスの言葉を合図に、旅を再開した。
歩いている途中でウェインが地図を広げた。
それをフェイが覗き込む。
「このまま真っすぐ行けば、村に行きあたるな。
どうする?
その村によって行くか?」
フェイがマルスに尋ねた。
「いや、村にはよらない。
このまま地獄の門の鍵を目指して旅を続ける。」
ウェインはそう言うと地図をしまった。
それから少し歩くと、村が見えてきた。
ウェインの言った通りに、みんなは村を通り過ぎて行く。
そしてしばらく歩くと、道の真ん中に大きな岩の壁が現れた。
まるでケイト達の行く先を塞いでいるようだ。
ウェインは再び地図を取り出した。
「地図にはこんな岩の壁があるなんてのっていないな。」
ウェインが言う。
ケイトも横から地図を覗き込んだ。
確かにこんな岩の壁は地図にはのっていなかった。
どうしたものかとみんなで考え込む。
するとウェインが大剣を振りかぶって岩に壁に斬りつけた。
そうすると、岩の壁は光ってウェインの大剣をはじき返した。
ウェインは再度岩の壁に斬りつける。
結果は同じだった。
岩の壁が光ってウェインの大剣をはね返す。
岩の壁の周りに道はない。
しかしフェイが無理矢理道なき場所を通って、岩の横を通り過ぎようとした。
すると岩の壁が光って、フェイははじき返された。
尻もちをつくフェイ。
「こんな岩の壁、登ればいいじゃねえか。」
そう言ってフェイが岩の壁に近づく。
するとまたも岩の壁は光って、登ろうとしたフェイをはじき飛ばしてしまった。
「痛てて。」
はじき飛ばされてこけたフェイが、そう言いながら起き上がる。
つまり、この岩の壁を越えて行かないと向こう側へ行けないということだ。
「一体この岩の壁は何なんだ?」
マルスが顔をしかめて言う。
みんなしばらく岩の壁の前で立ち往生していた。
するとそこへ一人の男性が現れた。
「あんたら、何をしとるんだ。」
白髪混じりのその男性は、訝しげにケイト達を見つめた。
「私達はこの先の道に行きたいんです。
でもこの岩の壁が邪魔をして先に進めないんです。」
ケイトはその男性に言った。
するとその男性は答えた。
「その岩の壁はその道の向こうに行けないようにする為に作られとるんだ。
あんた達、その道の向こうに何か用があるのか?」
男性がこちらに近寄って来ながら尋ねてくる。
「はい。
私達はある物を探してこの先に行かなければいけないんです。」
すると男性は言った。
「そのある物って、もしかして地獄の門の鍵のことか?」
ケイト達は驚いた。
「どうして地獄の門の鍵のことを知っているんですか?」
ケイトは勢い込んでその男性に尋ねた。
「わしらの村にトリスさんという偉い学者がおってな。
トリスさんから地獄の門の鍵の話を聞いたんだよ。
その岩の壁は、そのトリスさんがドワーフと魔法使いに頼んで作ってもらったものなんだ。」
ケイトは岩の壁を見上げながら言った。
「そのトリスさんっていう人は何者なんですか?」
「さあ、わしらも詳しくはしらん。
ただ数年前からわしらの村に住みついておるんだ。」
ケイトは男性に近づいて言った。
「そのトリスさんという方に会わせて頂けませんか?」
「そりゃあいいけど・・・。」
まだ訝しげな目でケイト達を見る男性に、ケイトは言った。
「私達は魔人より先に地獄の門の鍵を見つけなければいけなんです。
その為に旅をしているんです。
そのトリスさんという方に是非会わせて下さい。」
そう言うと男性は「魔人!」と驚くような声で言った。
「あんたら一体何者だ?」
男性が聞いてくる。
ケイトはチラリとウェインの方を見た。
するとウェインはその男性に言った。
「俺は竜人だ。
魔人が地獄の門を開くの防ぐ為に奴を追っていた。
しかし地獄の門の鍵の地図を手に入れたから、魔人より先に地獄の門の鍵を見つけ出すことにした。」
男性はウェインの言葉を聞いて、また驚いた声で「竜人!」と言った。
「竜人と魔人の話ならトリスさんから聞いている。
いいだろう。
あんた達をわしの村に案内して、トリスさんに会わせよう。」
そう言うと男性は「ついて来なさい。」と言って先を歩き出した。
ケイト達はその男性について言った。
そして到着した村は、さっき通り過ぎた村だった。
その男性は村に入ると、トリスという人の家の前まで案内してくれた。
「ここがトリスさんの家だ。」
そう言って男性はトリスの家に入ると、「トリスさん、竜人が来たぞ。」と中にいる男性に言った。
「本当か!」
そう言ってトリスと呼ばれた男性は椅子から立ち上がった。
「この大剣を背負っている人が竜人だそうだ。」
男性はトリスに説明した。
「どうぞ、中に入ってくれ。」
トリスはケイト達を家の中に招き入れた。
「じゃあわしはこれで失礼するよ。」
そう言ってトリスの家まで案内してくれた男性は去って行った。
ケイト達はトリスの家の中に入った。
家の中は本棚でいっぱいで、多くの本が本棚に入っていた。
そしてトリスのものと思われる机の上にも、多くの本がのっていた。
「ようこそ。
あなた達を歓迎するよ。」
トリスはケイト達に向かって言った。
トリスはとても紳士的な雰囲気のする男性で、短い顎鬚をたくわえていた。
年齢は五十歳くらいという所だろうか。
トリスはケイト達をじっと見つめると、「君達、いや、正確には竜人が来るのを待っていた。」と言った。
「どういうことだ?」
ウェインは尋ねた。
「実は私は竜人と魔人を研究している学者でね。
他にも地獄の門のことも研究している。」
トリスは短い顎鬚を触りながら言った。
「君たちは地獄の門の鍵の地図と、その封印を解く石を持っているか?」
トリスが尋ねてきた。
「はい。
あるドワーフに、池の中から出てくる神殿に案内されて、そこで手に入れました。」
ケイトは答えた。
「そのあるドワーフとは、ベッカルのことじゃないのかね。」
トリスは言った。
「ベッカルさんを知っているんですか?」
ケイトは思わず聞き返した。
「もちろんだ。
なぜなら、地獄の門の鍵の地図と、その封印を解く為の石を隠す神殿を建ててくれるように彼に頼んだのは、私だからね。」
そう言えばベッカルは言っていた。
人間の偉い学者に頼まれて神殿を建てたと。
それがこのトリスだったのか。
「神殿の中にいた馬の騎士は手強かっただろう。」
トリスは笑いながら言った。
「あの馬の騎士も、私が説得して連れて来たんだよ。」
そう言えばベッカルはそんなことも言っていた。
「あの岩の壁のことについて聞きたいんですけど。」
ケイトはトリスに言った。
「ああ、あれね。」
トリスはそう言うと自分の椅子に座った。
「あれは地獄の門の鍵のある場所へ行くのを防ぐ為にあるんだ。
あの岩の壁をどうにかしないかぎり、絶対に先へは進めないようにしてある。」
トリスは言った。
「私達は、魔人より先に地獄の門の鍵を見つける為に急いでいるんです。
あの岩の壁をどうにかしてもらえませんか。」
ケイトはトリスに向かって言った。
するとトリスは目を細めてケイト達を見た。
「あの岩の壁を消す方法がある。
それはある石を手に入れることだ。」
トリスは言った。
「その石はどこにあるんですか?」
ケイトは尋ねた。
「さっきも言ったが、私は竜人と魔人のことを研究している。
彼らの力がどれほどのものか知りたいんだ。
だからあの岩の壁を消す石は、ある強敵に預けてある。
その強敵を倒せば、その石は手に入る。」
そう言ってトリスはウェインを見た。
「竜人よ。
私は君の力がどれほどのものか知りたい。
その強敵と闘う覚悟はあるか?
もしかしたら命を落とすかもしれないが。」
ウェインは少し笑って言った。
「もちろんだ。
あんたはその強敵の居場所を知っているんだろう。
こっちは急いでいるんだ。
さっさとその強敵とやらのいる場所へ案内しろ。」
トリスはその言葉を聞いて笑った。
「分かった。
ではその場所に案内しよう。」
こうしてケイト達が連れて行かれたのは、村を抜けた奥にある白い建物だった。
「この中にあの岩の壁を消す石を持った強敵がいる。」
トリスはそう言い、ケイト達はトリスと一緒にその白い建物に入った。
中は広い部屋があるだけだった。
「何でえ。
強敵なんていねえじゃねえか。」
フェイが腕を組んで言う。
そうするとトリスが部屋の中央に歩いて行った。
すると部屋の奥に魔法陣が現れた。
そこから現れたのは、あの馬の騎士だった。
「彼は君達が闘った馬の騎士の双子の兄でね。
もちろん君達が以前に闘った弟の馬の騎士より強い。
さあ、勝てるかな。」
そう言ってトリスは不敵に笑った。
ウェインが大剣を構えて前に出る。
ウェインは、以前闘った手強い馬の騎士より、さらに強い相手と闘おうとしていた。
ケイトはウェインの無事を祈り、強く十字架を握りしめた。




竜人戦記 第四十話

  • 2010.09.15 Wednesday
  • 09:17
 酒場にいた人間だと思っていた占い師は、実は魔女だった。
シェリーという名前で、赤い瞳をしている。
ケイトはシェリーとしばらく見つめ合っていた。
シェリーの赤い瞳がわずかに光る。
ケイトはじっとシェリーの瞳を見ていた。
ウェインはシェリーが魔女であることを見抜いた。
そして何か企んでいるのではないかと言った。
しかしシェリーは「ただ静かに暮らしていたいだけ。」だと言った。
ケイトはその言葉に嘘は感じられなかった。
シェリーからは邪悪な気は感じない。
きっとシェリーは言葉通り、静かに暮らしていたいだけなのだろう。
しかしウェインはシェリーの言葉を信じてはいないようだった。
ウェインはきつい表情でシェリーに言った。
「魔女がただ静かに暮らしていたいだと。
本当は何か企んでいるんだろう。」
ウェインの口調はきつかった。
しかしシェリーは首を横に振った。
「いいえ。
私は何も企んでなんかいません。
本当に、ただ静かに暮らしていたいだけです。」
シェリーはウェインを見据えて言った。
シェリーの赤い瞳がまた光った。
「ウェインさん、シェリーさんは嘘をついていないと思います。
邪悪な気は感じないし、シェリーさんの言葉に嘘はないと思います。」
ケイトはウェインに向かって言った。
ウェインはシェリーを見たまま黙り込んだ。
ケイトはシェリーに言った。
「さっき私が言ったことを占って下さい。
地獄の門の鍵を、魔人より早くみつけられるかどうか。」
シェリーは微笑み、「分かりました。」と言って水晶を見た。
そしてそれに手をかざす。
水晶がわずかに光り出す。
ケイトはじっとシェリーを見ていた。
やがて水晶の光が消えた。
シェリーは顔をあげてケイトを見て言った。
「残念ですが、あなたの言った占いの結果は見えませんでした。
あなた方が、魔人より先に地獄の門の鍵を見つけられるかどうか、私の力では占えません。」
「そんな・・・。」
ケイトはがっくりして言った。
するとシェリーはケイトに向かって微笑みながら言った。
「占いには限界があります。
あなた方が地獄の門の鍵を魔人より先に見つけられるかどうか、それはこの世の命運に関わることなのです。
そこまで大きなことを、私は占えません。」
シェリーのその言葉に、ケイトはいかに自分達が大きな使命を背負っているかを感じた。
「ごめんなさい。
期待にこたえられなくて。」
シェリーはケイトに謝った。
「いえ、いいんです。
私達は必ず魔人より先に地獄の門の鍵を見つけますから。」
ケイトが言うと、シェリーは再び水晶に目をやった。
「せっかくですから、あなた方の近い未来のことを占ってさしあげましょう。」
そう言うと、シェリーは水晶を見て手をかざした。
水晶がわずかに光る。
そして水晶の光が消えると、シェリーは顔をあげて言った。
「邪悪な気があなた方に迫って来るでしょう。
その邪悪な気は、あなた方を襲うでしょう。」
シェリーは言った。
「その邪悪な気って、魔人のことですか?」
ケイトは聞いた。
「そうです。
魔人はあなた方の持っている地獄の門の鍵の地図と、その封印を解く石を狙って来るでしょう。」
ケイトは息を飲んだ。
魔人がケイト達を襲って来る。
その目的は地獄の門の鍵の地図と、その封印を解く為の石だ。
何としても守らなければ。
ケイトは十字架を握りしめた。
「他に何か占って欲しいことはありますか?」
シェリーは尋ねてきた。
ケイトは特に占って欲しいことは思いつかなかった。
強いて言えば、自分がいつ立派なシスターになれるかどうかを占って欲しいと思ったが、そういうのは結局は自分の努力次第の問題であって、占いに頼ることではないと思った。
もう特に占ってもらうことはない。
ケイトはそう思った。
すると突然リンがシェリーに向かって言った。
「ケイトの彼氏はいつ出来るんですか?」
ケイトは赤い顔をしてリンを見た。
「ちょっと、いきなり何を言うのよ!」
ケイトは顔を赤くしたまま言った。
するとリンは悪戯っぽく笑った。
「分かりました。
占ってみましょう。」
シェリーはそう言って、水晶を見て手をかざす。
水晶がわずかに光り出す。
「いいです、いいです!
占わなくていいですから!」
ケイトは慌てて止める。
「そうですか。」
シェリーは占うのをやめた。
「えー、占ってもらえばいいじゃない。」
リンが口を尖らせて言う。
「いいの。
そんなことは占わなくて。」
ケイトは言った。
そこへフェイとマルスがやって来た。
「さっきから何をやってんだ?」
フェイがケイトとシェリーの間を覗き込みながら言った。
「何でもない。」
ケイトはまだ赤い顔のままで言った。
しかしリンは笑顔でフェイに言った。
「この人占い師なんだよ。
お兄ちゃんも何か占ってもらえば。」
するとフェイは笑った。
「俺はそういうのは信じねえからいいや。
マルスはどうする?」
するとマルスも「俺も占いは信じないからいいよ。」と言った。
ケイトは椅子から立ち上がった。
「シェリーさん、色々と占ってくれてありがとう。」
するとシェリーは二コリと微笑んだ。
「あなた方の旅の無事を祈っています。」
シェリーのその言葉を聞き、ケイト達は酒場をあとにした。
そして宿屋へ向かった。
宿に入ると、ウェインはさっさと自分の部屋に入ってしまった。
「ここの宿ってお風呂があるんだよ。
今から私とケイトが入るから、お兄ちゃん達は入ってきちゃダメよ。」
リンは言った。
「はいはい。」
フェイはそう言い、マルスとともに自分の部屋へと入って行った。
「ねえ、お風呂に入ろう。」
そう言ってリンがケイトの腕を引っ張る。
「そうね。」
ケイトも頷き、二人でお風呂に入った。
お風呂には誰もいなかった。
ケイトとリンの貸し切りだ。
リンはケイトの胸を見てため息を吐いた。
「やっぱりケイトの胸って大きいよねえ。」
そう言えば以前にも同じことを言われた気がする。
「そんなことないわよ。
リンだってきっと大きくなるから。」
リンは自分の胸を見て、またため息を吐いた。
「そうだといいんだけど・・・。」
リンは顔を半分お湯につけてぶくぶくと泡をふいた。
「それにしても、シェリーの言っていたことが気になるわね。」
ケイトは言った。
「シェリーの言っていたことって?」
リンが聞いてくる。
「ほら、言ってたじゃない。
近い未来に魔人が襲ってくるって。
きっと私達の持っている地獄の門の鍵の地図と、その封印を解く石を狙って来るのよ。
でもそれは少し未来のことだから、魔人は私達が地獄の門の鍵の地図とその封印を解く石を持っていることを、今はまだ知らないと思うの。
きっとどこかでそのことを知るのよ。」
ケイトが言うと、リンは手でお湯をばしゃばしゃしながら言った。
「心配しなくても大丈夫だよ。
だって私達にはウェインがついてるじゃない。
きっとウェインが魔人を倒してくれるよ。」
リンは楽観的に言う。
「そうだといいわね。」
しかしケイトは心配だった。
魔人のことだから、何を企んでくるか分からない。
もし地獄の門の鍵の地図と、その封印を解く石を奪われたら、魔人は地獄の門の鍵を手に入れてしまう。
そうなったら、魔人は地獄の門を開くだろう。
そうすればこの世は地獄に変わる。
ケイトはそうなった時のことを考えてぶるっと震えた。
何としても地獄の門の鍵の地図と、その封印を解く石を魔人に渡してならない。
ケイトが真剣な顔でそう考えていると、リンがケイトの顔にお湯をかけてきた。
「やだ、何するのよリン。」
ケイトは濡れた顔を手で拭きながら言った。
「ケイトったらさっきから思い詰めた表情ばっかりしてる。
今はお風呂につかってるんだよ。
リラックスしなきゃ。」
リンはくつろいだ表情で言う。
「そうね。
今はお風呂につかってるんだもの。
リラックスしなきゃいけないわね。」
ケイトはそう言い、リンの顔にお湯をかけ返した。
そうするとリンもお湯をかけ返してきた。
そうやってしばらく二人でお湯をかけ合いながら遊んでいた。
「もうそろそろお風呂からあがろうか。」
ケイトは言った。
「そうだね。
これ以上つかってたらのぼせちゃうもんね。」
ケイト達はお風呂をあがり、自分達の部屋に行った。
そこでリンと他愛無いお喋りをしたあと、荷物の中から食べ物を出して夕食をとった。
「たまには一緒に寝ようよ。」
リンがケイトのベッドに自分の枕を持って来る。
ケイトとリンは同じベッドで、手を繋いで寝た。
翌朝、宿屋の外にみんなが集合した。
「それじゃ旅の再開といくか。」
フェイが背伸びをしながら言った。
ケイト達は町の出口に向かって歩き出した。
そして町の出口まで来た所で、ケイトはみんなに言った。
「ごめん、ちょっとここで待ってて。」
「どこかに行くの?」
リンが尋ねてくる。
「うん、ちょっとね。」
ケイトはそう言い残し、酒場へと向かった。
昨日と同じ場所にシェリーはいた。
ケイトはシェリーの前に座った。
「おはよう。
何かご用かしら?」
シェリーが尋ねてくる。
ケイトは背筋を伸ばして言った。
「一つ占って欲しいことがあるんです。」
「何でしょうか?」
シェリーがケイトの目を見て言った。
「私の友達にエルフのマリーンという人がいます。
彼女は自分の妹を追って旅をしています。
そのマリーンが、今無事で旅をしているかどうか分かりますか?」
ケイトは真剣な眼差しで言った。
「分かりました。
そのマリーンという人が無事がどうか占ってみましょう。」
シェリーは水晶を見て手をかざした。
水晶がわずかに光る。
ケイトは息を飲んでシェリーの言葉を待った。
やがて水晶の光が消え、シェリーはケイトに顔を向けた。
「そのマリーンという人は無事ですよ。
今も妹さんを追って旅をしているようです。」
ケイトはその言葉を聞いて安心した。
マリーンは無事に旅をしている。
それが分かって、ケイトの心に柔らかな風が吹いた。
「占ってくれてありがとう。」
そう言ってケイトは椅子を立った。
「魔人より先に地獄の門の鍵を見つけられるといいですね。
そうなるように祈っています。」
去り行くケイトにシェリーがそう言葉をかけてくれた。
「必ず魔人より先に地獄の門の鍵を見つけます。
シェリーさん、色々と占ってくれてどうもありがとう。
それじゃあ。」
ケイトはそう言って酒場を出た。
町の出口ではウェイン達が待っていた。
「何やってたの?」
リンが聞いてくる。
「ちょっとね。」
ケイトは言った。
「何だかケイト嬉しそう。」
リンが言った。
「うん、ちょっと嬉しいことがあったの。」
ケイトは笑って言った。
マリーンは無事。
それならまたいつかきっと会える。
ケイトはそう思いながら、ウェイン達とともに旅を続けた。

竜人戦記 第三十九話

  • 2010.09.14 Tuesday
  • 09:29
 盗賊から村の火の神様の力の宿った赤い宝石を取り返してから二週間。
ケイト達は地獄の門の鍵のある場所を目指して旅をしていた。
ただただ地獄の門の鍵を目指して歩き続けていた。
ケイトはそろそろどこかの村か町の宿屋に泊りたいなと思っていた。
そう思って歩き続けていると、一つの町が見えてきた。
ケイトはこの町で一晩泊りたいなと思った。
しかしケイト達は地獄の門の鍵を見つける為に急いでいる。
もしこの町に泊りたいと言ったら、ウェインは嫌な顔をするかもしれない。
町がだんだんと近づいてくる。
ケイトはどうせ断られるだろうなと思ってウェインに聞いてみた。
「ウェインさん、あの町で一晩泊りませんか?」
案の定、ウェインは嫌そうな顔をした。
やっぱり断られるのだ。
ケイトはそう思った。
しかしマルスが助け舟を出してくれた。
「そう言えばもう二週間も野宿だもんな。
ケイトは疲れているだろう。
ウェイン、あの町に泊らないか?」
マルスはウェインに言った。
「そうだね。
私も町の宿屋のベッドで眠りたいな。」
リンもそう言ってくれた。
「ウェインさん、ダメですか?」
ケイトはウェインの顔色を窺うようにして言った。
するとウェインははあっとため息を吐き、「仕方がないな。」と言ってくれた。
こうしてケイト達はその町に一晩泊ることになった。
町はありふれた光景で、人々の家が建ち並び、教会があった。
酒場もある。
ウェインは町に入ると、さっさと酒場へと行ってしまった。
「俺達も酒を飲むか。」
フェイがマルスを誘う。
「そうだな。
じゃあケイト達は宿の予約をしておいてくれないか?」
マルスが言った。
ケイトは頷き、リンと一緒に町人に宿屋の場所を聞き、そこへ向かった。
宿屋へ入ると歳のいった男性が宿屋の番をしていた。
ケイトはその男性に近寄り、「この宿屋に泊りたいんですけど。」と言った。
下を向いて本を読んでいた男性は顔をあげ、ケイト達を見た。
「泊るのはあんた達だけ?」
番をしている男性が聞いてくる。
「いえ、全部で五人です。
男三人に、女二人です。」
そう言うと番をしている男性は「男と女で部屋は分けた方がいいかい?」と聞いていた。
もちろんだ。
ケイトは「そうして下さい。」と言った。
すると男性は「料金は前払いだよ。」と言った。
ケイトは懐からお金を出して男性に渡した。
「二階に上がって、一番奥の右側の部屋が男の部屋、その手前が女の部屋だよ。」
男性はそう説明してくれた。
「分かりました。
一応予約だけで、あとでまた泊りに来ます。」
ケイトがそう言うと、「はいよ。」と男性は答えて、また本に視線を戻した。
「とりあえず荷物だけ部屋に置いていこうよ。」
リンが言った。
「そうね。」
ケイトはそう答え、二階の部屋に上がった。
部屋はそこそこの広さで、リンと二人で泊るには十分な広さだった。
ケイトとリンは荷物を置き、部屋を出て一階に下りた。
宿屋を出ていく時、番をしている男性が本から顔をあげて言った。
「一階の奥には風呂もあるからな。
好きな時に入ってくれ。」
その言葉を聞いてケイトとリンは喜んだ。
「あとで一緒に入ろう。」
リンがケイトの腕を引っ張って言う。
「ええ、そうしましょう。」
ケイトは笑って答えた。
宿屋の外に出たケイト達は、ウェイン達がいる酒場へ向かうことにした。
酒場に入ると、数人の客がいて、一番奥のテーブル席にウェイン達が座っていた。
ケイト達はウェイン達の元へ歩み寄る。
「宿の予約をとっておいたよ。」
ケイトはマルスに言った。
「そうか。
ありがとう。」
マルスが笑いながら返事をした。
ケイトとリンはウェイン達と同じテーブル席についた。
そしてケイトは酒場の中を見渡した。
すると酒場の左側の奥に、二人掛けのテーブル席に座った、黒い服を着た女性がいた。
そのテーブルには拳くらいの大きさの水晶がのっていた。
肩までの黒い髪に、赤い瞳をしている。
赤い瞳をしている人間なんて珍しいなとケイトは思った。
とても綺麗な女性だった。
ケイトはその女性のことが気になり、テーブルを立って、カウンターに行き、マスターにその女性のことを尋ねてみた。
「ああ、あの女性ね。
シェリーっていうんだ。
占い師だよ。」
マスターはそう説明してくれた。
「占い師。」
ケイトはマスターの言葉をオウム返しに言った。
「そうだよ。
結構当たるって評判なんだ。
あんたも何か占ってもらったらどうだい。」
マスターにそう言われ、ケイトは本気で何かを占ってもらおうかと思った。
ケイトはシェリーと呼ばれたその占い師をじっと見つめていた。
そこへリンがやって来た。
「何してるの、ケイト?」
リンが尋ねてくる。
「ほら、あそこの左側の奥に座っている黒い服を着た女性がいるでしょ。
あの人占い師なんだって。」
ケイトがそう言うと、「占い師!」とリンが驚いた。
「私、何か占ってもいらいたい!」
リンが子供のようにはしゃいだ。
「じゃあ二人で何か占ってもらおうか。」
ケイトが言うと、リンは笑顔で頷いた。
ケイト達はシェリーという占い師の元へと近づいて行った。
その気配を感じたシェリーがこちらを見る。
「何かご用で?」
シェリーは言った。
「はい。
占いをして欲しいんです。」
リンは声を弾ませて言った。
「ではその椅子にお掛け下さい。」
シェリーは自分が座っている椅子の、反対側の椅子をリンにすすめた。
リンはそこへ座った。
「では、何を占って欲しいのですか?」
シェリーはとてもハスキーな声で言った。
「はい。
私って、いつ彼氏が出来るんですか?」
リンは真剣な顔をして聞いた。
「分かりました。
占ってみましょう。」
シェリーはそう言うと、水晶を見てそれに手をかざした。
水晶がわずかに光る。
ケイトとリンはじっとシェリーを見ていた。
やがて水晶の光が消え、シェリーはリンに顔を向けた。
「あなたに彼氏が出来るのは、まだ少し先のことです。」
シェリーは言った。
「まだ少しってどれくらい先なんですか?」
リンが聞き返す。
「そうですね、あと三年後という所でしょうか。」
それを聞いたリンは複雑な表情をしていた。
「三年後かあ・・・。」
嬉しいような悲しいような声だった。
「他に何か占って欲しいことはありますか?」
シェリーは言った。
「はい。
私、立派な武道家になれますか?」
リンは目を輝かせながら言った。
シェリーは再び水晶に目をやり、それに手をかざす。
水晶がわずかに光り出した。
そして水晶の光が消えると、シェリーはリンに向かって言った。
「努力を怠らなければ、五年後には立派な武道家になっているでしょう。」
「五年後かあ・・・。」
リンはまた複雑な表情をした。
そしてリンは「ありがとう。お金はいくらですか?」と言った。
するとシェリーは言った。
「占いは無料です。」
「ええ、そうなんですか!」
驚くリン。
ケイトも驚いた。
この人は占い師だ。
なのに占いが無料って。
一体どうやって生活しているんだろうと思った。
するとシェリーはケイトの方に目をやり、「あなたは何か占って欲しいことがありますか?」と聞いてきた。
「ほら、ケイトも色々と占ってもらいなよ。」
リンが椅子を立って、代わりにケイトを座らせる。
ケイトは何を占ってもらおうかと迷った。
自分は立派なシスターになれるか。
彼氏が出来るかということも、ちょっと聞きたかった。
しかしケイトが占ってもらったのは、今一番大事なことだった。
「私達は今、ある物を探しているんです。
でも他にもそれを狙っている奴がいます。
私達は、そのある物を一番最初に見つけられますか?」
ケイトがそう言うと、シェリーはケイトの目をまっすぐ見た。
ケイトはシェリーの赤い瞳に少し気圧された。
「あなたが探しているある物とは、地獄の門の鍵のことですね。」
そう言われてケイトは驚いた。
そんなケイトをよそにシェリーは続けた。
「そしてそれを狙っている奴とは魔人のことですね。」
ケイトは横に立つリンと顔を見合わせた。
なぜ分かったのだろう。
シェリーは何も占いをしていないのに。
ケイトが驚いていると、いつの間にかウェインが後ろに立っていた。
ウェインはシェリーを見つめていた。
「そちらの方は竜人ですね。」
シェリーは言った。
ケイトはまた驚いた。
どうして分かるのだろう。
するとウェインがシェリーに向かって言った。
「あんたは人間じゃないな。
俺はあんたとよく似た気を知っている。
そいつは魔女のレインと名乗っていた。
あんたも魔女だろう。」
ウェインの言葉にシェリーは何も返事をしなかった。
ケイトはシェリーを見た。
この人が魔女。
確かに普通の人間とは違った雰囲気を感じていたけれど、それでも魔女だなんて。
するとシェリーはウェインを見上げて言った。
「やはり竜人の前では、正体を隠すことは出来ないようですね。」
シェリーはわずかに微笑んだ。
「魔女がこんな所で何をしている?」
ウェインはきつい表情で言った。
「見ての通り、占い師をしています。」
ウェインは警戒した表情でシェリーを見ながら言った。
「それだけか?
何か企んでいるんじゃないのか?」
その言葉に、シェリーは首を横に振った。
「確かにそういう時期もありました。
でも今は違います。
ただ静かに暮らしていたいだけです。」
ケイトはシェリーの言葉に嘘は感じられなかった。
ケイトはシェリーを見た。
その瞬間シェリーと目が合った。
シェリーの赤い瞳が、わずかに光った。




竜人戦記 第三十八話

  • 2010.09.13 Monday
  • 08:23
 ケイト達は、無事に盗賊達から赤い宝石を取り返した。
火の神様の力の宿ったという赤い宝石。
これを村に早く持って帰らなければ、また村は魔物に襲われてしまう。
ケイト達は村に戻る足を速めた。
そして村に到着すると、村はまた魔物に襲われていた。
最初に村を襲った魔物と同じやつだった。
ワニの頭に人間のような体、手には槍を持っている。
数は十匹はいた。
魔物に追いかけられて逃げ惑う村人。
フェイがすぐさま村人を助けに行く。
リンとマルスもそれに続く。
フェイが魔物の頭に回し蹴りを放つ。
魔物は苦しそうな声をあげて倒れた。
リンは魔物の槍をかわし、強烈な肘打ちをくらわしていた。
マルスは剣で魔物の頭に斬りつけていた。
ウェインは大剣を振りかざし、一気に三匹の魔物を真っ二つにした。
ウェイン達によって、魔物達はあっという間に倒された。
ケイトは火の神様の力の宿った赤い宝石を村長に手渡した。
村長は魔物を倒してくれたことと、赤い宝石を取り返してくれたことにお礼を言ってくれた。
そして村長は村の奥にある祠に赤い宝石をおさめた。
赤い宝石は一瞬輝き、その瞬間聖なる力が村を覆った。
「ありがとうござしました。
これで村が魔物に襲われずにすみます。」
村長はしきりに感謝していた。
「よかったですね。
火の神様の力の宿った赤い宝石が戻ってきて。」
ケイトは言った。
「はい。
これもみなさんのおかげです。
本当にありがとうございます。」
そう言うと村長は、「ちょっと待っていて下さい。」と言って自分の家に戻っていった。
そしてケイト達の所に戻って来る時には、手に何かを持っていた。
「これは火の神様の力の宿った赤い宝石を取り返してくれたお礼です。
どうか受け取って下さい。」
そう言って村長がケイトに手渡したのは、青い宝石がはめ込まれた銀色のネックレスだった。
「いえ、そんなつもりでやったわけじゃないですから。」
ケイトはそのネックレスをもらうのを遠慮した。
しかし村長は言った。
「いいんです。
受け取って下さい。
これは私達村人の気持ちです。」
村長が真剣な眼差しで言うので、ケイトは断りきれずにそのネックレスをもらった。
するとウェインが言った。
「そのネックレスも聖者の腕輪と同様に、聖職者にしか使えない道具だ。」
ということは、このネックレスも聖者の腕輪と同様に不思議な力を持っているということだ。
ケイトはそのネックレスを首につけた。
「村人を代表してもう一度お礼を言わせて頂きます。
本当にありがとうございました。」
村長は深く頭を下げた。
「いえ。
私達は大したことはしていないですから。
もうこの村が魔物に襲われないように、あの火の神様の力の宿った赤い宝石を大事にして下さいね。」
ケイトの言葉に村長は頷き、ケイト達は村をあとにした。
「このネックレスって、一体どんな力があるんですか?」
ケイトはウェインに尋ねた。
「それは聖者の首飾りと言ってな。
自分の大切なものを守る力があるのさ。」
「大切なものを守る力?
どんな力ですか?」
ケイトは聞き返した。
「そのうち分かる。」
ウェインは言った。
ケイトの首には十字架と聖者の首飾りがついている。
ケイトは聖者の首飾りを握ってみた。
一体どんな力があるのだろう?
ケイトは聖者の首飾りを見ながら考えた。
ウェインはそのうち分かると言っていたけど、何か戦闘で役に立つものだろうか。
そうだったらいいなとケイトは思った。
戦闘になればケイトはほとんど役立たずだ。
だから少しでもみんなの役に立ちたかった。
そんなふうに思いながら、ケイトは歩いた。
ケイト達は地獄の門の鍵のありかを目指して西に向かっていた。
そうして歩いていると、深い森にさしかかった。
ケイト達はその森の中を歩いていく。
そこで一人の男が現れた。
それはあの火の神様の力の宿った赤い宝石を盗んだ盗賊の一人、リックだった。
リックはケイト達の前に立ちはだかり、薄ら笑いを浮かべていた。
「尻尾巻いて逃げた奴が、一体何の用だ?」
フェイがリックに向かって言った。
するとリックは、懐からいびつな形の笛を取り出した。
「さっきはよくもやってくれたな。
復讐しに来てやったぜ。」
リックはいびつな形の笛を、自分の顔の前で振りながら言った。
「ほう、復讐。
一体どうやってやるんだ?」
フェイが笑いながら言った。
「そうやって笑っていられるのも今のうちだ。」
そう言ってリックはいびつな形の笛を前に突き出した。
「こいつは魔物の笛っていってな。
これを吹くと魔物が現れて、その魔物を従わせることが出来るんだ。」
リックは笑いながら言った。
「面白れえ。
やってみろよ。」
フェイが言う。
するとリックは魔物の笛を吹いた。
奇妙な音が森の中にこだまする。
すると森の中からぞろぞろと魔物が現れた。
村を襲った魔物と同じだった。
ワニの頭に人間のような体、そして手には槍を持っている。
魔物は全部で三十匹以上はいた。
そしてリックの後ろから、その魔物達の親玉のような存在が現れた。
ワニの頭に角が生えており、人間のような体は硬そうな鱗で覆われており、その体は他の魔物の三倍くらいの大きさはあった。
手には大きな槍を持っている。
「さあ、やっちまえ!」
リックが魔物達に命じた。
「やってやるぜ!」
フェイが襲いかかってくる魔物に挑んだ。
フェイが魔物に数発のパンチを浴びせた。
その魔物は後ろに倒れていった。
そしてフェイの周りを魔物が取り囲んだ。
「俺達もいくぞ!」
マルスがそう言い、魔物に闘いを挑む。
マルスは三匹の魔物に囲まれた。
マルスは正面の魔物に斬りかかり、後ろから襲ってくる魔物の攻撃をかわした。
「私もいくわ!」
リンも参戦した。
リンが魔物に飛び蹴りを放つ。
それをくらった魔物は後ろへ吹っ飛んでいった。
そして魔物は四匹でリンに襲いかかってきた。
リンは魔物の槍をかわしながら攻撃を加えている。
リンのパンチと蹴りをくらった魔物は、ノックアウトされた。
ウェインも大剣を振りかざして魔物に闘いを挑む。
ウェインは大剣を振り、一気に四匹の魔物を真っ二つにした。
フェイを取り囲んでいた魔物が、一斉にフェイに襲いかかった。
フェイは真上にジャンプしてそれをかわし、空中で連続で蹴りを放った。
フェイが地面に着地するのと同時に、三匹の魔物が倒れた。
マルスは自分の周りの三匹の魔物からの攻撃を剣で受け流し、そしてそのうちの一匹の魔物の顔に斬りつけた。
その魔物は苦しそうな声をあげて倒れた。
リンは素早く動きながら魔物を翻弄していた。
そして隙を見て攻撃を加えていた。
ウェインは相変わらずの強さで、大剣を振る度に三匹の魔物が真っ二つにされていた。
そうやって闘っていると、魔物の親玉が襲いかかってきた。
巨大な体を走らせ、大きな槍をリンめがけて突いてくる。
リンはそれをかわしたが、後ろにいた魔物がリンを羽交い絞めにした。
「ちょっと、離してよ!」
リンが叫ぶが、魔物はリンを離さなかった。
身動きがとれなくなるリン。
そこへ魔物の親玉の巨大な槍が襲いかかる。
「リン!」
ケイトは叫んだ。
周りにいたウェイン、フェイ、そしてマルスがリンを助けようとした。
しかし他の魔物が邪魔をしてそれをさせなかった。
リンに巨大な槍が襲いかかる。
もうダメだ。
そう思ってケイトは目をそむけた。
その時だった。
突然聖者の首飾りが光り出した。
するとリンの周りに光のシールドのようなものが現れた。
光のシールドは、魔物の親玉の槍を防いだ。
魔物の親玉は何度も光のシールドを槍で突くが、光のシールドはびくともしなかった。
やがて聖者の首飾りの光が消え、リンを覆っていた光のシールドも消えた。
「リン!」
フェイが叫ぶ。
リンを助ける邪魔をしていた魔物を倒したフェイが、リンを羽交い絞めにしている魔物に強烈なパンチを放った。
ドスン!という低い音が響く。
リンを羽交い絞めにしていた魔物は倒された。
その間にウェインは魔物のほとんどを倒しており、魔物の親玉の前に立ちはだかった。
魔物の親玉がウェインめがけて大きな槍を突く。
ウェインは大きく上にジャンプしてそれをかわすと、魔物の親玉に向かって大剣を振り下ろした。
魔物の親玉はウェインによって一刀両断された。
魔物の親玉の巨大な体が、ドスンと音を立てて崩れ落ちる。
残った魔物はマルスが倒していた。
素早く剣を振り、魔物を斬り裂いていく。
リンも残った魔物に強烈な蹴りをお見舞いしていた。
こうしてリックが呼び寄せた魔物は全て倒された。
「な、何者だ、お前ら・・・。」
リックが驚きながら後ずさりする。
「さあ、もう魔物はいなくなったぜ。
次はお前が相手をするのか?」
フェイがリックに言った。
リックはさらに後ずさる。
フェイは拳を握りながらリックに近づいて行く。
リックは魔物の笛を懐にしまいながら言った。
「誰がお前らみないな化け物と闘うか。」
そう言ってリックは深い森の中を逃げて行った。
「この野郎!
待ちやがれ!」
フェイがそのあとを追おうとする。
そこでリンが言った。
「いいよ、お兄ちゃん。
放っておきなよ。」
「しかし・・・。」
フェイが悔しそうな顔をする。
「どうせあんな奴を懲らしめた所で、どうにもなるわけじゃないし。」
リンは言った。
フェイはリックの去って行った方を睨んでいた。
「リン、怪我はない?」
ケイトがリンに駆け寄って言った。
「うん、大丈夫だよ。
それにしても、あの光のシールドみたいなの、一体なんだったのかしら?」
リンが不思議そうに言う。
ケイトは聖者の首飾りを見ながら言った。
「この首飾りが突然光り出したの。
そしたらあの光のシールドが現れたのよ。」
そこでウェインが言った。
「言っただろう。
その首飾りには大切なものを守る力があると。」
そこでケイトはハッとした。
もしかしてこの首飾りは、自分の仲間が危機に陥った時に、それを守ってくれるんじゃないかと。
「この首飾りのおかげで、リンは守られたんだよ。」
ケイトはリンに言った。
そう言うとリンは首を横に振った。
「違うよ。
ケイトが守ってくれたんだよ。
ケイトが私のことを大切に思ってくれてるから、その首飾りが守ってくれたんでしょ。
だから、ケイトが守ってくれたのと同じことだよ。」
リンは笑いながら言った。
ケイトはその言葉が嬉しかった。
ケイトは仲間のことを大切に思っている。
これらももし仲間が危機に陥った時、きっとこの首飾りは仲間を守ってくれるのだろう。
そしてケイトは戦闘の役に立てたことも嬉しく思った。
今まではただ見ているしかなかった魔物との闘い。
いや、聖者の腕輪でゾンビを倒したことがあるかと思い出したが、それでも今回の闘いの役に立てたことが嬉しかった。
ケイトが聖者の首飾りを触って喜びにひたっていると、ウェインが言った。
「先を急ぐぞ。」
その言葉で、みんなは先を歩き始めた。
ケイトは聖者の首飾りを優しく触りながら、仲間を守ってくれてありがとうと、心の中で呟いた。

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